NEDO、太陽光発電の設置場所を拡大するための実証実験を開始

水上の太陽光発電堤防の法面を利用した太陽光発電など、限られた土地を有効活用した太陽光発電事業をこのニュースでもいくつかお届けしていますが、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、太陽光発電の設置場所の多様化に向けた実証事業を始めると発表しました。

「太陽光発電多用途化実証プロジェクト」と称するこのプロジェクト、具体的には太陽光発電の設置場所として有効活用できるのに、設置費用など課題がまだ大きい分野に対して障壁を減らしていくための研究に対して共同研究先の法人を採択、NEDOが費用の3分の2を負担する。
2013~2015年度ので、総事業費は約22.5億円。NEDOの負担率は3分の2。

採択した研究事業と共同研究先、研究内容の一覧

  1. 低反射環境配慮型壁面太陽光発電システムの開発/株式会社カネカ
    ビルの壁面への導入に関して、周辺住宅への太陽光反射を抑制した低反射防眩型太陽電池モジュールと設置技術の開発
  2. 低コスト太陽光追尾システムの農地での有効性実証/ダイキン工業株式会社
    農地やビニールハウス等への導入に関して、空気圧駆動式太陽光追尾装置による発電量向上化を低コストで実現、空気圧アクチュエータのダンパー機構により、強風を自動で受け流す機能を付加する
  3. 強度の弱い畜舎向け軽量発電システム開発/株式会社オルテナジー・旭硝子株式会社
    畜舎屋根への設置に関して、耐アンモニアガスを有する軽量部材による屋根面を加工なしで取付可能な架台と、軽量太陽電池モジュールの開発
  4. 太陽電池屋根設置型ビニールハウス植物工場化プロジェクト/ユニバーサリー電工株式会社
    ビニールハウスへの設置に関して、ビニールの撤去・被覆作業時に太陽電池の移設が必要なく、風雨にも強く発電効率のよい太陽電池の設置方法を開発
  5. 簡易的太陽追尾型太陽光発電システムの営農型発電設備への応用開発/伊藤電工株式会社
    営農型発電設備において、発電量向上と低コスト化を兼ね備えた太陽2軸追尾方式のシステムを開発
  6. 傾斜地用太陽光発電システムの実証/株式会社NTTファシリティーズ・株式会社アドテック富士
    多様な形状を有する傾斜地に対し、重機を使わず軽作業で可能な基礎架台技術や、太陽電池の自動取り付けを可能とする自動施工装置といった施工技術を開発
  7. 傾斜地における太陽光発電設置のための小径鋼管杭工法の開発・実証/奥地建産株式会社
    多様な形状を有する傾斜地に対し、架台をユニット化し、半完成品状態で工場出荷、現場にて取付施工する低コスト化を目的とする施工技術を開発
  8. 未利用水面を活用した浮体モジュールの開発及び導入実証/コアテック株式会社
    水上(淡水)において耐候性の高い浮体一体型太陽電池モジュール化技術、運搬・設置・撤去等のメンテナンス性を考慮した構造設計技術等を開発
  9. 海上・離島沿岸部太陽光発電プロジェクト/株式会社シリコンプラス
    水上(海水)において耐塩水に優れた太陽電池モジュール技術、及び電力安定化のためのシステム設計技術等を開発
  10. 鉄道線路内太陽光発電/株式会社フルーク
    鉄道線路内に太陽電池パネルを配置した発電システムの検討、導入先としての可能性を調査
  11. 耐洪水対策の特種架台の設計及び施工方法の検討/株式会社Aースタイル
    河川敷での導入に関して湿地特有の足場の悪い場所での施工技術の検討、課題抽出などを行い、導入先としての可能性を調査
  12. コミュニティ型ベランダソーラーの研究開発/みんな電力株式会社
    集合住宅ユーザー開拓を目的としたベランダ設置を想定し、発電した電力の利用形態や系統連系時の課題等を調査し、ベランダ設置型システムの仕様を検討

研究機関となっている2015年度の終わりには、これらの場所においての設置はどれくらい現実的になってきているのでしょうか。楽しみですね!

参考

北海道電力に蓄電池の実証実験

北海道のメガソーラーが容量超えのニュースで、資源エネルギー庁が約200億円を投じて6万kWh(60MWh)の大型蓄電池の設置を進めるという話題。
今回の蓄電池設置は、住友電工北海道電が次世代型の蓄電池「レドックスフロー電池」の実証実験として進めるもので、国による全額の費用補助を受けて行われます。

寿命が15年以上というレドックスフロー電池は、米航空宇宙局(NASA)が基本原理を発明、住友電工が国内で開発を進めていたものだそう。
大型の高性能蓄電池の研究を進める事で、世界的な再生エネへの需要の増大における日本のリードを勝ち取りたい意向です。

北見工大の「マイクログリッド」実験、電力と熱の効率利用に着目

北見工大が行っているマイクログリッドの実験についての記事がありました。

マイクログリッドとは、太陽光発電などの再生可能エネルギーを含む分散型電源を、それぞれの発電設備の特徴(環境により発電量に差が出るなど)を融通し合えるようコンピュータ管理することで、小規模で地産地消が可能な電力網を実現させるアイデアで、大規模な電力会社によってほぼ独占されている電力事情からの脱却への貢献が期待されています。

北見工大が行う実験はさらにエネルギーの効率利用に加えて、積寒冷地における熱供給の融通も効くモデルをつくるために、国内初の模擬装置を導入しているところが特徴。

北海道は大規模太陽光発電施設の建設に適した環境をもっていながら、「系統のキャパシティオーバー」のために新たな大規模ソーラーの建設をの断念や、規模の縮小を余儀なくされている事業もあったため、こういったマイクログリッド設備が将来北海道のような地域いもたらす恩恵は大きく感じられます。

次世代を担う「有機系太陽電池」に世界中が注目

太陽電池の市場では、効率ではシリコン系がまだまだ主流、いやいや費用対効果は化合物系の方が上、と意見が分かれますが、最先端の研究の場では有機系の原料で作られる太陽電池「色素増感太陽電池(OPV/organic solar cellなどと呼ばれる)」に注目があつまっている模様。

環境ビジネスオンラインでは「次世代太陽光発電システムの本命の一つ」とも紹介されていました。(参考

効率の記録更新も日々進む中、(Heliatekが12%の有機系太陽電池セルの開発に成功した、などNEDOはこの色素増感太陽電池の早期実用化のために、実証試験を開始すると発表しました。

具体的には3種類の有機系太陽電池を使った製品を実際に利用し、その結果を測定するというもの。


一つ目は「デザインソーラーランタン」
日本写真印刷に助成を行い、京都市内2カ所にこのソーラーランタンを設置します。


2つ目は色素増感太陽電池を壁面に取り付けるもの。
少ない日射量でも発電できたり、入射角に依存しない有機系太陽電池の特徴を生かし、壁面を利用した太陽光発電の実用化に有望だそう。
いまでもパナソニックから垂直設置できる製品が販売されていますが、どうしても高くて実際に設置する例は少ないよう。
生産コストが抑えられる有機系太陽電池の使い道としては一番期待できる分野なのではないでしょうか。
シャープとフジクラにそれぞれ助成が行われ、実証実験をします。


3つ目は軽量・フレキシブル・シースルー型の有機系太陽電池をサンシェードとして使用した屋内実証実験。
これは家庭や小さな店舗などでも簡単に取り入れられそうなので、はやく製品化されるとよさそうですね。

サンシェードで発電できるだけでなく、遮光効果によって部屋の中の気温調整にも役立ち、さらなるエコ効果が期待できます。
実証実験は三菱化学が行います。

今度は兵庫県で、フロート式太陽光発電

以前、ウエストホールディングスの水上太陽光発電事業についてご紹介しました。
500kWという大規模な水上太陽光発電(フロート式水上ソーラー)にも成功している、韓国のLS産電との協力で、全国に20MWの水上メガソーラーを計画しているということです。

今度は兵庫県が農業用のため池を利用し、パネルの傾斜角度やフロートの係留方法など最適なフロート式太陽光発電を実証実験すると発表しました。
7月15日に発電を開始するそうです。

フロート式はまだ実例が少ないため、水位変動のあるため池で、最適な方式を開発していくことは、普及・拡大にもつながると考えられます。

上記でご案内した記事には、水上太陽光発電の魅力を他にもご案内しています。

蓄電池を利用した太陽光発電の出力安定化実験開始

太陽光発電などの自然エネルギーの普及が広まるにつれ大きな課題となってくるのが、不安定な出力供給をいかに安定させるかという課題。

それを解決するための実証実験として、6つのプロジェクトが採択されました。

このプロジェクトは、今年度の2月12日から3月4日にかけて公募された、「定格出力1MW以上である大規模再生可能エネルギー発電施設に対し大型蓄電池を整備する実証事業について」のプロジェクトで、15件の応募がありました。

その中でも九州電力の事業は、3つの離島(対馬・種子島・奄美大島)にそれぞれ2~3.5MWの大型蓄電池を設置し、合計8.5MWの風力発電、太陽光発電施設・8.5MWhのリチウム蓄電池となり、規模も大きいです。

さらに離島は本島と比べて太陽光発電や風力発電の出力変動による影響が比較的大きい事も踏まえ、それを安定化する事が大きな課題となってきます。

これらの事業の多くは、すでにある太陽光発電ないし風力発電施設に対し、蓄電池を組み込むことでさらにグリーンエネルギーの有用性を高める実験となります。

まずは太陽光発電を普及させ、その後は蓄電池、と、着々とスマートグリッド社会の実現に向けて進められる中、上手にその波に乗って、エコでスマートな生活を始められるといいですよね!
ちなみにグリッドパリティ(電気代と、太陽光発電のコストが同等になること)も実現したとされるドイツでは、蓄電池の補助金制度も始まっています。

現在日本でも、対象の蓄電システムに対して費用の3分の1の補助金を出していますが、太陽光発電の普及に伴って、蓄電池も今後さらに注目を集めていくことに違いないでしょう。
蓄電池についてのサイトも、合わせてご確認くださいね!