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太陽光発電の設置角度と発電効率

傾斜のある屋根に太陽光発電を設置する場合、その屋根の傾斜角度がそのまま設置角度になる場合が多くなります。しかし地上設置の場合、もしくは陸屋根に土台を設置する場合は、その事業に最適な角度でパネルを設置することができます。

発電に一番効率的な角度は30°と言われますが、これはあくまで平均的な値であり、地域や季節、方位によって最適な設置角度は異なるばかりでなく、設置状況によってはあえて最適角度にしない方法を取る場合もあります。

発電量が最大になる角度、方位の設置条件を理解する

太陽光発電は日光を直角に受けられるような角度にパネルを傾けることでより多く発電することができます。太陽の位置(高度)は時間や時期によって異なるため、最適なパネルの傾斜角度というのは厳密に言えば毎時毎分変わっていくものだと言えます。太陽の高度に応じてパネルの傾きを変えられるシステム以下参照があれば年間を通じて最大限に日射を活用できると言えますが、こうしたシステムは初期費用もメンテナンス費もかさむことから、通常は角度が固定して設置します。そうなると年間を通じて一番多くの日射を集められる方位角を知ることが重要になります。

方位は真南が一番効率が良い

まずは設置方角について確認していきます。日射量は昼の12時、太陽が真南にある際に最大になります。晴天時の発電量のグラフは12時を境に綺麗に弧を描いて推移します。太陽光発電を設置する際には、この時間帯にできるだけ多く日射を集められる方角、つまり南向きにパネルを向けるのが一番効率良く発電できると言えます。

南向き以外でもよりメリットを高めるには▼(開く)

南向き以外でもよりメリットを高めるには

屋根の向きが決まっている場合などは南向きに設置できないこともあります。屋根は片流れ屋根でない限り2面以上あるのが通常ですが、いずれかの面が少しでも南に偏っているのであればそちらの面にパネルを載せるのが正解です。例えば北西と南東に2面ある屋根の場合は南東面に設置すると、大きく発電量を損ねるリスクが低くなります。

南からどれくらい方向がずれるとどれくらいの発電量ロスに繋がるのかは、設置角度にもよります。詳しくは以下の項でご案内していますが、東や西よりも北側に寄らない限り発電量のロス率は10%未満で抑えられる可能性が高いと言えます。

西と東の2面に屋根が分かれている際は両方に付けるという選択肢もありますが、1面でも4kW以上が載る場合は片面だけ載せて初期費用を抑えることもできます。この場合、特に夏場に気温が高くなりがちな夕焼けの時間帯に発電する西側よりも、気温が比較的低い時間帯に発電できる東側の方が若干ですが多めの発電量が得られると言われます。

「より多く発電する方位」から少し発想を変えて「より多く自家消費できる方位」を考えてみたことはあるでしょうか。現在、固定価格買取制度(FIT)における売電単価と電力会社から買う電力の単価はほぼ同等の30円前後となっています。この場合どの時間に発電した電力も、同等の価値で取り扱われることになります。一方FITで定められた10年を過ぎると、売電単価は電気代単価の半分以下まで下がる可能性が高いと考えられます。こうなると自家消費した電力の価値は余剰になる電力の2倍以上になることになります。こちらのページでは具体的に一日の発電量推移を図に示しながらご案内していますが、例えば朝の7時に発電量のピークがあるようなご家庭であれば南よりも南東の方が自家消費率を上げられ、長期的にはお得になる場合もあると考えられます。

地域ごとに異なる最適設置角度

日本の場合、南向き設置で傾斜を30°程度にするのが最適とされる事が多いのですが、設置角度については地域差があります。以下では年間で総合して一番多く発電できる角度を、各都道府県についてまとめたものです。

(単位:度)
  • 各都道府県の県庁所在地において年間の傾斜面日射量が最大になる設置角度を表示

太陽の高度は6月の夏至を最高点として弧を描くように年中移動しています。地域にもよりますが、夏至周辺はパネルを0〜5度、冬至周辺は55〜65度に傾けて設置すると日射を最大利用できることになります。

年間の日射量は夏が一番多いと思われがちです。実際のところは、総体的には夏場の方が日射量が多めとは言えるものの、梅雨をはじめとしてして夏場は雨天も多いため、必ずしも夏場の日射量が目立って多いとも言い切れないのも事実です。

上述の地図を見ていただいてもお分かりのように、沖縄を除く日本全体の年間における最適設置角度は24〜36度の間になっています。この角度の場合、秋分や春分の周辺で最大発電量を得られる可能性が高いと言えます。

最適設置角度の調べ方

先の項では都道府県別に最適設置角度をご案内しました。しかし各都道府県の中でも気候が全く異なる地域があるようなところも多いため、より詳細な地域における最適設置角を調べられるとより理想的です。経済産業省所管の独立行政法人NEDOでは、国内837地点、約30年にもわたる日射量のデータベースを保有・公開しています。年間を通じて一番多くの日射を得られる角度や、その角度で得られる日射量などを実測値を使って高精度で予測するこのシステムは、太陽光発電を始める際に必須と言える情報を提供してくれます。

NEDOデータベースで最適設置角度を調べる

  1. NEDOの日射量データベースにアクセス
  2. 年間月別日射量データベース(MONSOLA-11)を選択
  3. 「エリア」「地点」を選択し、グラフを表示
  4. 左上、オレンジのボックス内の「表示データ選択」で「角度指定」を選択し
  5. 一つ下の青いボックス内、最適傾斜角を選択
  6. 右側に月々の最適傾斜角度と、年間、季節別の最適角が表示される

屋根の勾配と発電量の変化

多くの屋根は傾斜が緩め

既築の住宅に太陽光発電を導入する場合は屋根の傾斜を利用することになります。住宅の屋根勾配はお家の屋根は0.5寸勾配(約2.8度)から矩(かね)勾配などとも言われる10寸勾配(45度)まで様々ですが、標準的なお家の屋根勾配は3寸(約16.7度)〜5寸(約26.6度)程度と言われています。 つまり太陽光発電の最適設置角度と比べると少し緩い傾斜の屋根が多いということになります。

屋根勾配ごとの発電量

南東に4寸の屋根があるけどどれくらい発電するんだろう、といった疑問を解決するには、以下の一覧表をご確認ください。以下の3つの表は最適設置角度が低めの地域(鹿児島)、中間の地域(小田原)、高めの地域(仙台)、において、屋根の勾配や方位がぁわるとどれくらい発電量が変わるのかを、最適設置角を100%として比率で示したものです。

仙台(年間最適角度は34.5度)
傾斜角度 (南) 45° 90°
(東・西)
135° 180°(北)
88%
10° 94% 92% 87% 82% 80%
20° 98% 94% 85% 75% 70%
30° 100% 95% 82% 68% 61%
40° 100% 94% 79% 61% 53%
50° 98% 91% 75% 55% 46%
60° 94% 86% 69% 49% 40%
70° 87% 81% 64% 44% 35%
80° 79% 73% 58% 40% 31%
90° 70% 65% 52% 36% 29%
小田原(年間最適角度は31.1度)
傾斜角度 0°(南) 45°(南東・南西) 90°(東・西) 135°(北東・北西) 180°(北)
90%
10° 95% 94% 89% 84% 82%
20° 99% 95% 87% 78% 74%
30° 100% 95% 84% 71% 64%
40° 99% 94% 80% 64% 56%
50° 96% 90% 75% 57% 48%
60° 91% 85% 70% 51% 42%
70° 84% 79% 64% 46% 36%
80° 76% 71% 58% 41% 32%
90° 66% 63% 52% 37% 29%
鹿児島(年間最適角度は27.7度)
傾斜角度 0°(南) 45°(南東・南西) 90°(東・西) 135°(北東・北西) 180°(北)
92%
10° 97% 95% 91% 87% 85%
20° 100% 96% 89% 81% 77%
30° 100% 96% 86% 74% 67%
40° 99% 94% 82% 66% 58%
50° 95% 90% 77% 59% 50%
60° 89% 84% 71% 52% 43%
70° 81% 77% 65% 47% 36%
80° 72% 69% 59% 42% 32%
90° 62% 61% 52% 37% 29%

屋根の傾斜を調節することはできるの?

例えば10度の勾配しかないお家があれば傾斜を上げて30度になるように設置する、ということができるのか疑問に思った方もいらっしゃるかもしれません。太陽光発電メーカーは安全面や施工性などを考えた専用の架台を用意していることが多く、それらはどれも屋根の傾斜に沿って設置するようデザインされています。メーカー指定の架台を使わない場合は施工店が独自で架台を調達することになりますが、そうなるとコストが上がりやすいだけでなくメーカー保証なども受けられなくなるなどの大きなデメリットがあります。さらには屋根の美観にも影響を与えがちなので、先例が多くないのも理解に難くありません。

最適角度をあえて外すメリット

角度の決まった傾斜屋根への設置と異なり、陸屋根や地上面への設置の場合は設置するパネルの角度を架台で調整することになります。ソーラーパネルの容量あたりでより多くの発電量を得るためには、上述のように年間における最適角度を採用するのが一般的ですが、プロジェクトの環境によって最適設置角をあえて外して設計することがあります。以下ではその例とメリットをご案内しています。

設置容量を増やす
小設置角・東西ジグザグ設置

地上設置と影の問題

パネルを地上面から架台で持ち上げて設置すると、その後ろに影ができます。この影が後ろのアレイ(パネルの列)にかかると、影のかかった部分は発電ができなくなり、ロスにつながります。

仮に北緯37°の位置における冬至の日を例に取ると、高さが1mの物体が北側につくる影の長さは、太陽がパネルに当たり始める朝8時の時点で約4m、9時には約2.5m、10時には約2m、南中時は約1.75mとなります。

この条件で後列アレイにかかる影を完全に避けるためにはアレイ間の距離を4m程度にして設置する必要があることになりますが、実際の現場では年間で数時間程度の発電量ロスには目をつぶり、それよりも土地の有効利用を優先することが多いので、アレイ間隔はパネル高の2倍程度で設計されることが多いようです。

小設置角のメリットをシミュレーション

産業用のプロジェクトの場合、土地の利用効率が特に重要な場合が少なくありません。こうした条件ではパネルの角度を小さくしてパネルの高さを抑え、アレイ間の距離をさらに小さくして同じ面積にさらに多くのパネルを敷き詰めるような設計をすることがあります。

ソーラーパネルの設置角度と設置間隔02
高さ1mのソーラーパネルに対する設置角度と設置間隔の関係

例えば最適設置角度が35°の地域で設置角を20°まで抑えると、発電量が約2%落ちる代わりに同面積に対して約1.2倍ものパネルが設置できることになります。更に傾斜角を10°まで下げるとアレイ間隔は20°の際の約半分で済む計算になります。

極論を言えばパネルを水平にすれば、影のためにアレイの間隔を空ける必要はなくなります。水平設置は陸屋根の住宅などで使われることがあります。こうすることで地上面からは屋根の上に載せたパネルが見えなくなるため、おうちの見た目を重視する方などにおすすめの方法です。

一方、大規模な発電設備ではメンテナンスのために人が通れるくらいの間隔は空けておく必要があるので低くても20度前後の傾斜で固定することが多いようです。

低設置角を採用するメリットは設置枚数を増やす他にもあります。設置角度が大きくなるとパネルが受ける風の影響が大きくなります。強い風圧が予想される設置環境(高層ビルなど)では架台や設備に余分にコストをかける代わりに、低設置角を採用することもできそうです。(実際に設置の際は見積もり段階で風圧を加味したシミュレーションをして設備を決定するとさらに安心です)

また低設置角と合わせて過積載という手法が使われることもあります。

東西ジグザグ設置

東西ジグザグ設置はさらに設置容量を増やせる設置方法で、東と西に傾斜をつけたパネルをジグザグ(M字型)になるように並べて設置することで、20〜40%設置容量を増やすことができます。設置角度にもよりますが南面と比べて発電量は10〜15%程度落ちますが、東西二面に分けてパネルを設置すると昼間のピークを抑えられたり、光が反射して対向面のパネルに当たることで数パーセント発電量が上がったりと、東西面設置ならではのメリットもあります。

設置角を大きくする場合は主に豪雪地帯でメリットあり

日本海側の豪雪地帯の場合、パネルの雪を落ちやすくするためにわざと設置角度を高くすることがあります。冬季でも少なくない日射量が得られる地域であれば、年間発電量を大きく落とさず積雪対策ができると言えます。

パネル面から雪が落ちるとその下にたまる事になりますが、落ちた雪がパネル下部を隠す事がないくらいの位置まで架台で底上げをする必要があります。パネルの角度が急なことに加えて架台でパネルを高い位置にする事で、アレイの後ろ側により長い影がかかることになり、同面積で設置できる容量は大きく下がります。保有の空き地で行う場合はいいのですが、土地の賃貸料が発生するような場合は、高設置角の採算性は吟味する必要があります。

自家消費をメインに考えると冬をメインにした設置角度も良いかも?

これまでの太陽光発電は、年間を通して最大の発電量が得られるように設計されることが多くありました。売電単価が電気料金単価よりもはるかに高く設定されていたために、発電量が多ければ多いほどお得になる可能性が高いことが大きな理由と言えます。2017年あたりから電気代と売電単価が平衡し始めていますが、今後は2020年に11円/kWhを目標としてどんどん売電単価が引き下げられていくと考えられます。こうなると、自家消費が多くできる方がお得、ということになるので、日照時間の減る冬場により多く発電量が得られる設置角度(40度以上など)を採用して、年間を通じた発電量の上下差をできるだけ少なくし、自家消費率を上げる、という設置方法がより有効になるかもしれません。

自動で首振り、角度調整する追尾型は発電量を最大化する究極のシステム

太陽の動きに合わせてパネルの向き(方位と角度)が変わる「追尾型太陽光発電システム」は小面積で最大の発電量を得るための究極の選択肢です。可動式の軸が首振りのようにソーラーパネルの方位・角度を変えながら常に最適角度で発電できるため、年間を通して1.7倍の発電量が得られたという実験結果も出ています。一方システム価格が高い事から実験的な意味合いで導入される例が多いと言えます。

季節ごとに手動で調整、角度可変の架台もあり?

追尾型のように全自動で太陽を追うわけではありませんが、設置角度のみを変えられるシステム架台も販売されています。季節ごとに年4回程度、手動で調整することになるのでその手間も合わせて導入を考える必要がありますが、地上設置用の架台はコストも含め選べるくらいの商品バリエーションがあるので、一度検討してみるといいかもしれません。

住宅用にこうした架台を導入できるかどうかですが、設置する場所が高くなるにつれて耐風対策が必要になる場合があります。一度施工店に確認してみるのが良いでしょう。

傾斜のある屋根については、屋根に登る危険性もあり、角度可変の架台を商品化している会社は見当たりません。小規模ではあれベランダの手すりに掛けるような形で設置できるDIY架台はいくつか見当たります。自家消費のみを行うのであればこうした架台を使ってみるのも手ですが、余剰分を売電したいのであれば系統連系の申請が通るようシステムを構成する必要があるため、施工店に相談するのが無難です。

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