インリーソーラー、アメリカのダンピング課税対策に拠点シフトの可能性も

先月アメリカが、中国メーカーの安価な製品に対してアメリカに輸出する際の抜け穴(中国以外でモジュールを組み立てて出荷など)を完全に塞ぐための課税措置を考えていると発表しました。

それに対してモジュール出荷量で世界一、ワールドカップスポンサーもしていたインリーソーラーは、課税が決まった時点で生産拠点を海外に移すことも考えているという報道が出ています。

さてどうなることやら。

”フリーでフェアな貿易”を目指して、中国のパネルメーカーなど149社による太陽光発電協会「CPIA」が発足

中国の大手パネルメーカーインリーソーラーカナディアンソーラージンコソーラー、JAソーラーなどを含む中国の太陽光発電、エネルギー関連の149社が結合して業界団体CPIA(Chinese Photovoltaic Industry Association)を発足。初代の代表にはトリナソーラーのCEO、Jifan Gao氏が選出されたと発表されました。

この組織で今後どのような活動が行われていくのかは発表されていませんが、中国メーカーや中国の太陽光関連事業に関する透明性を高めてEPIA(欧州の太陽光発電協会)やSEIA(アメリカの太陽光発電協会)との関係を強化することなどが主なミッションとされると考えられます。

米・中や欧・中のアンチダンピングを巡ったやりあいに関して、双方の業界を潰しあうことになりかねないとして反対していた立場の人々(太陽光発電の設置業者や発電事業者など)にとっては、CPIAの設立に期待が膨らみますが、米×中のアンチダンピング抗争を仕掛けた張本人であり、最近ではアメリカ政府に対し台湾のセルを使用することでアンチダンピング関税の抜け穴を通っていた中国メーカーのパネルに対する処置を要請していたソーラーワールドなどにとっては苦しい状況となりそうです。

中国製品に対して、アメリカ再度のアンチダンピング関税

アメリカの商務省は今週の火曜、中国のパネルに対して中国政府からの不当な資金援助があったとして、新たに関税をかける計画だと発表。

2012年に課せられた関税は中国で作られたセルに関してのみで、中国のメーカー側は中国以外のセルを使い、関税を逃れて輸出を続けたということ。今回の新しい関税が決定すれば、抜け穴もすべてふさぐことになります。

関税率はサンテックなどのメーカーに対して35.21%、トリナソーラー中国メーカーの中でも一番関税率が低くて18.56%。その他のメーカーは 26.89%の予定。
サンテックは破産後大規模な再建を行いましたが、その際は中国政府からの援助があったのでしょうか。

これらに対して商務省は
「われわれの質疑に対して、中国政府側から十分な返答が得られなかったから(要約)」
としており、「疑わしきは罰する」スタンス。

ちなみに今回も、ソーラーワールドからの要請に米政府が答えたという形のよう。

トリナソーラーの反応

アメリカの消費者に対しての取引は国際的な取引慣行法に則って行われているものであるのに。ソーラーワールドの申し立ては、フェアな貿易という視点に立った場合完全にそれに反するものであり、さらにその理由も正当とは言えない。非常に残念だ。

今後も価格の優位性や垂直統合型の生産体制はアメリカの市場だけでなく国際的に、特に需要が大きい中国国内と日本において、さらには今後現れる新たな市場においても、競争力を発揮していくつもりだ。

参考

意外にも余裕のようですね。
トリナソーラーは確かに、日本での人気も上がっているようで、6月も価格がさらに安くなっています。

一番関税率の高かったサンテックにおいては、まだ声明は発表していません。

参考

米ソーラーワールドが中国によるハッキング疑惑のためセキュリティ強化

中国政府が、アメリカのソーラーパネルメーカーであるソーラーワールドのシステムをハッキングしたという疑惑が持ち上がってことで、同社はITシステムのセキュリティを強化したのだとか。

ソーラーワールドは、中国の安価なパネルメーカーがアメリカの太陽光発電業界を脅かしているとし、アンチダンピング調査を行うよう率先して政府に働きかけた企業でもあります。

アメリカ国内からも、中国メーカーへのダンピング課税などは自国の市場に悪影響を及ぼしかねないという意見があがっていたにもかかわらず課税は決まり、案の定、市場安定には課税はささやかな効果も及ぼさなかったという、ちょっとイタイ過去も持つソーラーワールド。はっきり言って「いい加減にしたら?」という感じもあります。

参考

中国がEUからの多結晶シリコンに反ダンピング措置決定

アンチダンピング抗争がズルズル引きずっていますね。
EU中国からの太陽光発電用ガラスにアンチダンピング措置を行ってから、報復のような形で中国も、EUからの多結晶シリコンの反ダンピング・反補助金の措置を決定したとのこと。

日本の太陽光発電業界ではまだ中国の製品へのアンチダンピングは起こっていません。というよりも、まだ中国製品の価格は下がり切っていない印象もあるので、これから、といったところでしょうか。

参考

中国がアメリカ、韓国のソーラーパネルに反ダンピング税徴収開始

アメリカ中国に対する再度のアンチダンピング調査のニュースもありましたが、対する中国も、アメリカ、そして韓国から輸入される多結晶シリコンの太陽光パネルに対して、反ダンピングの課税をするというニュースが発表されました。
期間は2014年1月20日から5年間。

これによってアメリカの太陽光発電業界はさらに打撃を受けることになるでしょうか。

太陽光発電の普及拡大による環境貢献といった視点に立てば、パネルの価格は安いに越した事はなく、そうしたスタンスを語っている中国の太陽電池メーカーもありました。
とはいえ、ダンピング課税を課したにもかかわらず、アメリカの再度のダンピング調査など、中国も黙ってはいられなかったのでしょうかね。

参考

アメリカは中国に再度反ダンピング調査、一方中国はEUのダンピングに寛容策

アメリカ中国製の太陽光パネルに対して、再度アンチダンピング調査を行うそうです。(記事

アメリカは2011年11月に中国製の太陽光パネルのダンピング調査を行い、その後ダンピングが認められたとして中国製品に対して課税をしています。
しかしこれにも関わらずアメリカの太陽光パネル業界の経営が良化しなかった事による再度のダンピング調査を行った、という専門家が見解を述べています。

太陽電池モジュールは原料から組み立てまで複数の地域が関わって製造されるため、中国のパネルに対する課税措置は米国を含む他地域の太陽光業界にも打撃を与えかねないという意見は当時からすでにありました。

そうした意見の正当性を認めるのではなく、再度のダンピング調査を行うことにした今回の米商務省の措置は、アメリカの太陽光発電業界の必死さが伝わってくる気がします。


一方、中国商務省はEU製の多結晶太陽電池モジュールにおいてダンピングが存在したが、「本件市場の特殊性を考え、初歩的な決定を下した後、臨時の反補助金・反ダンピング対策は講じないことにした」とされています。(記事

アメリカの必死の施策に対し、中国の寛容策。
最後に笑うのはどちらでしょうか。

中国からアメリカに、ポリシリコンの反ダンピング

アメリカが中国に課したアンチダンピング課税ですが、これに対して中国アメリカポリシリコンに対するダンピング調査を行っていました。

そして調査の結果、米国製のポリシリコンに対して反ダンピング課税を今月の20日から始めることを、中国の商務部が発表。

フォーブス誌によると、2012年にはアメリカから中国に、21億ドル(約2,000億円)のポリシリコン輸出が行われ、今年の上半期に中国メーカーが使用したポリシリコンの半分以上が輸入によるものなのだそう。
9月20日以降はこれらのポリシリコンが輸入される際、中国の税関でダンピング率に相当する補償金が払われなくてはいけないということです。

EUのアンチダンピングに中国ワインへの関税で報復!?

中国のソーラーパネルに対してアンチダンピング関税がかけられたことを受けて中国は南欧で多く生産されるワインに対するアンチダンピング調査を開始したそうです。

報復行為にしか見えないですね。
中国はワインの消費量が年々増えており、特にヨーロッパからのワインの輸入は2009年~2012年にかけて年平均で59.8%も伸びたのだそう。

ワインの生産に南欧の気候が適しているのと同じように、人件費の安い中国は安価なソーラーパネルの生産には適しているわけですし、その国の強みを生かしながらフェアに取引していこうよ、というのが中国の言い分でしょう。やり方は子供っぽいんですが、言っている事は至極全うだと思います。

EUの関税で中国製太陽光パネルの価格が45%上昇、中国メーカーは破綻?

アメリカに続き、EUでも安価な中国製太陽光パネルに対して関税をかける事が検討されている。
それによると、3月時点で1ワット換算0.66米ドルの中国のモジュール価格は、課税によって6月には0.97米ドルと、45%も価格が上昇することになるという。
これによって破産に追い込まれる中国メーカーも出てくるとされている。

中国側や、関税に反対する側からの意見では、モジュール価格の世界的な高騰を引き起こして導入量にも影響を及ぼし、モジュール周辺機器のパワコンなどの業界にも影響を及ぼしかねないとしています。また、ヨーロッパ地域の需要を地域内でまかなえる環境も整っていないという指摘もある中、ヨーロッパ側は「中国製品の代替は、その周辺地域のマレーシア、台湾、韓国メーカーが行うこともできる」としていますが、「中国製品の代わりとして韓国、日本、台湾やアメリカの製品を期待しようとも、中国製品以上のコストパフォーマンスが得られるパネルは他にない。また、それらの国は周辺地域の需要の拡大に目を向けており、ヨーロッパの需要をフォローすることは念頭にない。」などと反論。

昨日15日の会合で最終決定がなされ、関税が決定すれば6月6日から実施がされる予定。
15日の会合の内容についてはまだ発表されていませんが、中国のヨーロッパへの輸出の壁が高くなれば、日本への進出もより積極的になるかもしれないという見方もあり、気になるところです。

ちなみに今のところ、日本の市場では中国メーカーと日本のメーカーの費用対効果はそこまで差がついていません。

記事