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2016年、旧来の大手電力会社(一般電気事業者)のみが販売できた個人・一般家庭向けの電力市場が開放され、日本の電力小売り市場全面自由化が完了します。これによって誰でも自由に電力事業者を選んで電力を購入できるようになります。
1993年に総務庁に出されたエネルギー規制緩和についての提言が出され、1995年には31年ぶりに電気事業法が改正、この後3回の改正を経て、段階的にIPPやPPSの新規参入が認められるようになりました。表では規制緩和年度と、その年に開かれた自由化部門をご案内しています。
2000年(平成12年) | 2000kW以上を小売自由化 |
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2004年(平成16年) | 500kW以上を小売自由化 |
2005年(平成17年) | 50kW以上を小売自由化 |
2016年には、最後まで閉じられていた一般家庭用の低圧部門への電力販売の規制も撤廃され、完全な自由化が達成されます。自由化後の市場において健全な競争を促すため、全面自由化は段階を追って行われる予定です。以下では全面自由化に際したスケジュールをご案内しています。
2012年東日本大震災後は都心を含めた計画停電が実施されましたが、西日本からの電力融通がより柔軟に行われていれば、電力不足の影響は最小限にとどまったかもしれません。そのため経産省ではまず最低限の災害対策として、地域をまたいでより広域に系統が管轄できる権限を持った機関を設立することを決めました。
同機関は日本全体の需要と供給を把握し、運用管理の調整を行う業務を負うことになっていますが、現状ではあくまで緊急時などのセーフティネットを張る程度の役割でしかありません。今後はこの機関が常時の電力市場においても具体的な役割(リアルタイムな受給管理など)を担うべきかどうかの議論が進むと考えられます。
市場規模7.5兆円とされる一般家庭などの従量電灯市場への参入規制が取り払われます。2014年6月に成立した改正電気事業法では、価格競争を十分に促すための一定期間は料金規制を残すこととされます。
電力供給サービスの送電部門の切り離し・中立化を進めていき、電気料金に関する規制を取り払った上で完全な電力小売りの自由化を目指します。
電力自由化によって求められるのは市場開放による価格競争の促進、つまり電気料金を安くすることです。経済活動の基礎的インフラである電力は、これまで安定供給を第一に運用されてきました。その甲斐もあり停電時間の短さは随一である日本の電力網ですが、一方で地域を独占する形で運営していた電力会社のコスト管理の甘さも指摘されてきました。
2016年度からは特定規模電気事業者(PPS)などにも市場が開放されるとともに、電気事業者間の電力の売り買いを仲介する日本唯一の卸市場である電力販売日本卸電力取引所(JEPX)で、現在最短4時間前の需給に沿って取引をしている市場を1時間単位で取引できるようになり、ネガワット取引などでさらに自由度の高い取引が促進されることが予想されます。
インフラの進んだ欧州諸国でさえ年に一時間前後の停電が当たり前な中、日本の年間平均停電時間は9分という圧倒的な好成績を収めています。それらは一般電力会社による設備投資や迅速な復旧作業の徹底化に支えられていました。自由化が進むことによっていっきに停電が増えるというわけではなくても、安定供給への責任感の低下は危惧されるところです。
価格の変動する化石燃料に依存する火力発電をベースとして使用している現状では、自由化後は燃料費が今まで以上に電気代に影響を及ぼす可能性が高くなると言います。また太陽光発電などの増設で再エネ率は年々上がっているもののコスト面ではまだまだ火力発電や原子力発電に敵うほどには低下しておらず、「エコな電力を購入したいけど負担が増えるのは厳しい」とジレンマに陥る消費者も少なくないかもしれません。
電気料金に関しての自由化も開放されるのは2018年以降のため、実質価格面のメリットは即座には実感できないことも多そうです。ただ、これまでは地域の電力会社から電力を買う以外にはオフグリッド電源のような究極の選択肢しかありませんでした。自由化後は顧客はそれぞれにサービスの選択ができるようになり、電力源に対しても選択肢は広がります。また参入企業が増えることで電気事業全体に顧客第一のビジネス体制づくりが加速するのは想像に難くありません。消費者のニーズがサービスに反映されて磨かれるための土台が、やっと形作られようとしている段階だと言えるのです。
2016年4月から電力小売全面自由化が開始されました。その後、どのように変わってきているのかを一般家庭向けの低圧電力契約を中心に調査しました。
2016年9月30日までに電力会社の切り替え申請件数は188万4300件ありました。経済産業省によると一般家庭の契約件数は約6,253万件、切り替えた件数の割合は全体の約3%ということになります。現状ではまだ新電力への切り替えが普及しているとは言えないかもしれません。
電力会社 | 契約口数 (2016年3月) |
申請件数 | |||||||
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3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 合計 | ||
東京電力 | 22955.9 | 315.2 | 202.9 | 129.2 | 115.2 | 110.5 | 101.4 | 108.7 | 1,803.1 |
北海道電力 | 2760.0 | 19.8 | 14.0 | 12.1 | 17.3 | 12.5 | 8.5 | 10.5 | 94.7 |
東北電力 | 5467.0 | 7.6 | 4.7 | 5.3 | 14.8 | 9.0 | 7.5 | 8.1 | 57.0 |
中部電力 | 7615.4 | 20.1 | 23.0 | 20.9 | 19.7 | 25.7 | 16.8 | 20.1 | 146.3 |
北陸電力 | 1236.5 | 1.1 | 0.6 | 0.6 | 0.8 | 0.9 | 1.0 | 1.0 | 6.0 |
関西電力 | 10067.2 | 132.0 | 50.7 | 33.6 | 44.2 | 39.8 | 39.4 | 41.2 | 380.9 |
中国電力 | 3499.0 | 0.4 | 1.5 | 0.6 | 0.7 | 1.5 | 1.6 | 1.4 | 7.7 |
四国電力 | 1941.1 | 2.0 | 0.9 | 1.3 | 1.6 | 1.6 | 101.4 | 2.0 | 11.9 |
九州電力 | 6218.0 | 13.1 | 9.9 | 12.4 | 14.6 | 14.6 | 16.4 | 15.7 | 96.7 |
沖縄電力 | 760.5 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 |
全面自由化開始時の切り替え件数の伸びからは落ち着いてきていますが、徐々にではありますが増え続けている現状です。しかしながら、切り替えた世帯は全国の契約口数の3%というのは期待されていたほどではないかもれません。
切り替えエリアでいうと東京電力エリアが約57.5%、関西電力エリアが約20.2%と都市圏が最も多く、全体を締める割合ではこの2つのエリアで約8割を占めます。これは電力消費者が多いため、新電力が新規参入しやすく、消費者の選択肢が増えたことが切り替えにつながっていると思われます。
各電力会社の契約口数からみる切り替え件数では東京電力の4.7%、関西電力の3.8%に次いで北海道電力管内が3.4%と、切り替える比率が高くなっています。これは北海道電力の電気料金が他に比べ高いことから、電力会社や電力プランの乗り換え検討が進んでいるのかもしれません。沖縄の切り替え件数がゼロなのは、新規参入した電力会社が極端に少なく切り替えた世帯はないようです。
新電力会社は、通信・放送・鉄道関係、都市ガス関係、石油関係などがあり、登録事業者も拡大しています。2015年8月から事前登録申請受付を開始してから、約380件の登録申請があり334者が登録されています。(2016年8月現在)その中で選ばれている電力会社はどこなのでしょうか。
新電力の切り替え先で最も多いのが「東京ガス」の48万件、次いで「大阪ガス」17万件、「ENEOSでんき」10万件、「エネワンでんき(サイサン)」5万件、「東急パワーサプライ」4.3万件、「Looop」1.2万件となっています。
電力自由化に伴って、既存の電力会社もいくつか料金プランを用意しています。2016年8月時点で契約中の電力会社で料金プラン変更した件数は約176万件でした。新電力に切り替えた件数と合わせると364万件、全体の約5.8%となります。電力自由化では既存電力から新電力への切り替えだけでなく、料金プラン変更という選択肢もあります。
実際に新電力への切り替えを実施した方の声には「電気代が安くなってほかにお金が使える」「ポイントが貯まりやすくなった」「周辺サービスの利便性が高まった」「申し込みが簡単」など切り替えに満足しているという意見が多くあるようです。その一方で、国民生活センターには苦情が寄せられています。太陽光設備の設置の勧誘や絶対安くなると無理に新電力との契約をさせらえるなど、電力自由化に便乗した詐欺に類する勧誘が存在しているので、トラブルに巻き込まれないよう注意が必要です。
資源エネルギー庁と電力・ガス取引監視等委員会が9月行ったインターネット調査では「切り替えを検討しない」という回答が前回(3月)行った調査に比べ倍増しているようです。変更しない理由としては「メリットが分からない」という回答が4割もあり、料金メニューの認知不足や魅力を感じていない方が多くいるという結果です。また、切り替えを検討している方も当初に比べ減ってはいるもののまだまだいます。実際に切り替えを実施した方の満足度が高いという結果が出ている中で切り替えによるメリットが世間に浸透していけば多くの家庭で新電力への切り替えが進むと予想されています。今後は、まだ様子見をしている消費者をどう動かしていくかが新電力の課題と言えるかもしれません。
各社多様な電気料金プランを用意していますが、料金体系だけでなく本当に安くなるのかをまずシミュレーションで確認できるサービスも併せて提供されています。以下は主要な電気事業者の電気代シミュレーションができるページをご案内しています。
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