和歌山市、新電力切り替えで電気代、年間数千万円削減

和歌山市は市内の施設の電力供給において新電力の切り替えを予定し、入札で供給会社の選定を行いました。

まず本庁舎においての入札を実施、和歌山電力株式会社が4,825万285円(税抜)で落札しました。これは従来と比べて数千万円安い価格だといいます。

このほかに和歌山市は市内で全80施設の電力調達先切り替えを考えているとのこと。

参考

大分県、100以上の県有施設で電力調達先を競争入札

大分県は今年新たに100以上の県有施設を対象とした、電力調達先を一般競争入札で決めました。
入札に切り替えることによって新電力会社が参入することのできる機会を大幅拡大するのが目的です。

対象となる県の機関は37カ所・県教育委員会が59カ所・高校や支援学校など53校・警察署13署・県運転免許センターなどが含まれます。
入札は個々ではなく九つのグループに分けられてそれぞれで募集されます。

14・15日の両日に入札が行われます。これらの契約期間は3月から来年2月までの1年間です。

新電力会社から電力を調達することによって、コストの軽減にもつなげることができます。これらの試みは、全国の自治体でも広がっており、九州では福岡・宮崎も取り組んでいます。

参考

新電力への切り替えの際の補償金にガイドライン、自治体の売電先切り替えを容易に

日本では電力システムの改革が必要とされており、数社しか存在しない電力会社に集中していた流通経路について、小売の全面自由化によって新電力の販売に多くの業者が参入できるよう、政府は地方自治体に対し、契約の変更を柔軟に行えるための努力をしています。

電力の売買契約が自由化されれば、自治体の収入が増えるとの試算が出ています。自治体では水力発電所を運営していますが、その規模は小さく、契約を変更したくても電力会社との随意契約の関係上、売電価格が魅力の新電力に切り替えるには、電力会社から多額の補償金を請求される可能性があります。
実際に、東京都が2013年にF-Powerという新電力に切り替える際、契約中の電力会社から52億円もの補償金を請求されることがありました。結局は裁判で、13億円以上の補償金を支払うことになったという事例が残っています。その後2年間は収益が賠償金で相殺されるかたちで収入が増えることはありませんでしたが、新電力のF-Powerとは2019年までの契約となっているため、残りの4年間で補償金を支払う必要なく、新電力による高単価な売電収入を伸ばすことができるようになります。

この東京都の例に見られるように、多くの自治体があまりにも多額な補償金の影響で、新電力に切り替えられないことに悩んでおり、政府は売電契約のガイドラインを、全国の自治体に設置する方針です。同時に電力会社に対しても補償金に関する契約内容の見直しを促すために、解約の際に新電力へ切り替えの代替電力調達コストを今までの単価で差し引いて、契約期間をかけ合わせるかたちで算出する方法を考えています。この方法の代替電力は、電力自由化が始まった後の価格競争で安くなる可能性を秘めており、今の売電契約の単価を大幅に上回ることがないとしています。

参考

新潟県、水力発電の売電先を新電力に変更で96億円増収

新潟県の企業局は県内12ヶ所にある水力発電所のうち11ヶ所の電力供給先を、現在の東北電力から日本テクノ日本ロジテック協同組合の新電力2社に切り替えることを決定しました。
これは同局が実施した一般競争入札の結果に基づくもので、この切り替えによって新潟県の売電収入はおよそ96億円増加する見込みです。

売電期間は2015年4月1日から2017年3月31日までの2年間。入札は11ヶ所の水力発電所を2グループに分ける形で行われ、県北部にある三面発電所を始めとした3ヶ所(年間発電量およそ3億4000万kWh)を日本テクノが1kWhあたり16.48円(税抜き)で、残りの8ヶ所(同2億kWh)を日本ロジテック協同組合が1kWhあたり15.90円(同)で落札しました。どちらも現在の東北電力の買取価格の2倍以上の単価になるのだそう。
新潟県はこの収入増加分を福祉事業の拡充などにあてる予定です。

新電力各社は2016年の電力小売完全自由化に向けて供給力増加の必要を迫られており、日本テクノ日本ロジテック協同組合の2社も全国への供給拡大を積極的に進めています。

参考

先立つ新電力切り替えの実情と、独立型系統の未来

2016年には電力の小売自由化も始まりますが、これによって未来の電力構造はどのように変わるのでしょうか?

半歩先を行く電力利用をする自治体と個人について特集した2014年12月14日の記事を元に、未来の電力構造をちょっとだけ考えてみようと思います。

自治体による脱電力会社

群馬県で自治体による全国初の新電力「中之条電力」設立

地方自治体で、脱大手電力会社の動きが高まっています。昨年の9月には、群馬県中之条町が全国で初めて、新規の電力事業に参入し「新電力」を設立し、今も大きな注目をあびています。

中之条町では「電力の地産地消」のため、自然エネルギーを推進するとして条例を制定した後、町と新電力「V-power」とが共同出資して一般財団法人「中之条電力」をたちあげました。
中之条町には3つのメガソーラー発電所があり、町内の公共施設の需要を十分満たせるだけの電力供給が見込めます。中之条電力は、町内の公共施設に直接売電しています。現在、中之条町では東京電力から電気を購入していた頃よりも年1,000万円の経費削減を実現し、中之条電力の売電による利益は個人宅の太陽光パネルへの補助金に活用されてきました。

結果として、今や個人宅に設置された太陽光パネルの合計は1000kW(1MW)を超え、再エネを活用した地方復興の好例として全国からの視察が絶えない状態です。

これまでの売電先を変更し収入増につなげる

新電力の活用方法は電気代削減にとどまりません。
固定価格買取制度以前は再エネ設備による発電電力の買い取りに関する制度はなく、電力会社と任意の単価による売買が行われていました。(太陽光発電の売電単価推移

一方、固定価格買取制度以前に稼働した再エネ設備を持つ地方自治体の中には売電先を新電力に変え、固定価格買取制度を新たに適用させることで増収につなげる動きが出てきています。

東京都では猪瀬直樹前知事の「脱東電」の指示のもと、都内三か所の水力発電施設による電気の売電先を、東京電力から新電力の「エフパワー」へ切り替えました。

これにより売買収入は年間約17億円と、7割もの増収に成功しました。契約中であったために、東電に違約金約14億円を支払うことになりましたが、その犠牲を払ってでも新電力へと切り替えることに大きな価値を見出していたのでしょう。

現在、大手電力会社は電気料金値上げや、原発再稼働に邁進していますが、そのような動きは、東日本大震災以後地方自治体や一般家庭に与えた大手電力会社への不信感に拍車をかけてしまっていると言えるでしょう。

こうした自治体による新電力への切り替えはこうした消費者による脱大手電力会社/脱原発意識を象徴するという見方もあります。
他にも昨年一月末には神奈川県が公共施設の9割を新電力に切り替えたと公表し、長野県や長崎県も新電力からの電力購入割合が高くなっています。


売電をしないことによる究極の脱電力会社

ここまでにご案内したのは、自治体による新電力の活用の実態。契約先を従来の電力会社から変更するという点では脱電力会社の動きの一つとも言えますが、新電力に売電する際には電力会社が持つ従来の送電網を使っており、実は完全なる脱電力会社ではないとも言うことができます。

記事には売電制度さえも利用せず、 蓄電池(バッテリー)に貯めた電力で完全なる自給自足をしながら生活する方々の実情も紹介されていました。

ここで紹介されていた「自給エネルギーチーム(自エネ組)」という独立型太陽光発電システムの施工を行う団体は、全国で29か所で独立型太陽光発電を設置してきたといいます。

「沢水を引いて、薪で調理して。夜はランプの生活」

という生活は現代の暮らしに慣れた私達からすると考えられないかもしれませんが、

「すごく楽しかったんですね。生きる喜びを感じました」

と語る自エネ組の共同設立者木村俊雄さんはなんと元東電職員。
「原発に未来はない」と直感したことが、この組織に関わる動機にもなったのだそう。


未来の電力構造は?

電力自由化によって需要者は従来の電力会社以外にも購入先を選ぶことができるようになります。前半の自治体のような例をそのまま個人レベルに落とし込んだ例が2016年以降は増えることは、誰もが予想できる未来です。

これに加えて後半でご紹介したような完全独立型電力消費の形は、太陽光発電のコスト(kWhあたりの価格)が系統電力以下に下がった今、(グリッドパリティ)蓄電池の普及促進でさらに広がる可能性も秘めています。

記事では

オフグリッド生活を始めると、自然に寄り添う暮らしになるのかもしれない

と締められていますが、人々の消費傾向が多様化し、より本質的な意味で自分に心地いい消費の仕方が見直されてきていると感じる昨今、こうした独立型(オフグリッド)発電設備も根強く普及を進めるとみるのも自然ではないでしょうか。