東京電力、丸紅、住友電気工業による自動デマンドレスポンス実証実験の成果を発表

東京電力丸紅が実施しているデマンドレスポンスの実証プログラムに住友電気工業が参加し、電力使用量が計画通りに削減できることを証明するなど電力の需要調整に有効とされるデマンドレスポンスの自動化技術が進化しています。
情報通信関連製品の開発・製造拠点である住友電気工業の横浜製作所が対象となり、レドックスフロー電池と集光型太陽電池、そして熱と電力を供給できるガスコージェネレーションシステムという3種類の最先端蓄電と発電設備を組み合わせた設備です。

要請から10秒でシステム応答、15分で640kWの削減量達成

東京電力からの発令に基づきアグリゲータのエナノック・ジャパンが参加企業に指令を出す方式のデマンドレスポンスにおいて、住友電気工業の横浜製作所ではエナノックからの信号を受け10秒以内にシステムが応答、自動的に電力量削減を開始しました。さらに15分以内には取り決めた削減量の640kWに達し、デマンドレスポンスを実施しているその後1時間にわたっても削減量を維持し続けるという結果でした。
仕組みとしては自社で開発したエネルギー管理システムが蓄電と発電設備を管理し、電力会社からの購入量を調整するというものです。

まだまだ余力のある設備でどこまでのDRに対応できるか

国内最大級の蓄電容量5000kWhを誇るレドックスフロー電池は削減電力量の8倍に相当し、100kWの発電能力がある集光型太陽電池と4000kWのガスコージェネという発電設備のシステム構成で、電力削減量に対し十分な余裕もあります。通信プロトコルには国際標準規格「OpenADR2.0」を採用し、住友電気工業はデマンドレスポンスにおける標準ツールとして、効果を示すことのできたエネルギー管理システム「sEMSA」を広めるという方針を出しています。

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スコットランドで再エネ発電から水素を貯蔵生成する実証実験、東芝がEMS提供

東芝は、他の7つの団体と共同での海外初の水素実証試験への参加を発表しました。風力と太陽光だけで水素を製造し、燃料電池車に供給する他、燃料電池に送り電力を得るというもので、スコットランドのファイフ州メチルで行います。

スコットランドは、電力源に占める再生可能エネルギーの比率を高める政策を打ち出しており、洋上風力などで2020年には100%を目指しています。メチル港には、風車(出力750kW)と、電力を利用して水から水素を生成する水電解装置(出力30kW)があります。これらは、水素関連施設を運用するBright Green Hydrogen社が設置しました。近くには、ファイフ州が470万ポンドを投じ、Fife Renewables Innovation Centreを完成させ、同センターへの電力は、系統電力と風車による電力と水素燃料電池の電力とを切り替えて送り、暖房用温水は、燃料電池以外の電力で地中熱ヒートポンプを駆動して供給します。

実証試験期間は2015年4月~2020年3月までで、2016年度内に新たな設備を導入し、残り4年間で運用データを集めます。導入する設備は太陽光発電システム(出力200kW)、2種類の水電解装置(60kWと250kW)、水素貯蔵タンク、燃料電池(出力100~150kW)、25台のハイブリッド車です。

試験では、風力発電と太陽光発電で電力を供給し、水を分解して得た水素をタンクに蓄え、その水素を水素燃料電池とハイブリッド車の燃料として供給します。また、燃料電池を通じて電力を得て、メチルのビジネスパークに供給します。

東芝は、「水素EMS(エネルギーマネジメントシステム)」の提供とシステム全体の制御を担います。これは電力の需給予測に基づき、水素の製造、貯蔵、利用を最適制御する仕組みです。
東芝では他にも複数の場所で水素EMSを運用し、異なった運用データを得る予定です。

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独ベレクトリック、イギリスで太陽光発電と蓄電池の制御実証実験

2015年2月12日、ドイツの太陽光発電関連業者のベレクトリックの英国法人は、太陽光発電と蓄電池の最適制御により電力網を安定化する技術をイギリス国内で実証させる「Enhanced Frequency Control Capability Project」、通称「EFCCプロジェクト」を発足することを発表しました。

このプロジェクトはイギリスの電力ガス市場規制庁(Ofgem)の承認の下、イギリスの電力業者であるNational Gridが主導となって行われるもので、電力網の要所に蓄電池をベースとするバックアップシステムを装置するなどの工夫を加え、電力網と電圧の周波数を安定化させることで運転予備力の容量最小化とそれにかかるコストの削減を目指すとしています。

イギリスは化石燃料発電からの依存脱却を目指して大規模太陽光発電所と風力発電所を拡大させていますが、これらには出力変動による電力網の過剰な電圧上昇や需給バランスの維持などの課題が残っており、これを解消するためには膨大なコストがかかるものとされていました。今回のEFCCプロジェクトが成功すれば、想定されたものよりも低いコストで課題を解消できるものと見られています。

EFCCプロジェクトには前述のベレクトリック社の他、フランスの重電大手であるアルストム社やイギリスのCentrica社なども参加し、ベレクトリック社は2ヶ所の蓄電システムの設計、設置、運用を、アルストム社は電圧や周波数の変動の監視及び制御システムを、Centrica社は電力網の安定化技術を担当する予定です。

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川崎市、ゴミ回収サイクルで生じるエネルギーを循環型に

川崎市とJFEエンジニアリング(東京都千代田区)は、ごみ焼却で生じる熱で発電した電力を使った電気自動車(EV)で、災害時にはEV収集車に搭載する交換式電池を避難所の非常用電源などとして活用するエネルギー循環型ごみ収集システムの実証実験にとりかかりました。
2016年度中の製品化を目指して国内初で官民連携の低炭素社会の実現にこぎつけることを発表しました。

車載する交換式電池は常時充電可能で、災害時は避難所などに運搬して照明や通信設備などの電源として活用します。JFEエンジニアリングは1年の実証実験を経て2016年度中にはシステムを製品化して全国の自治体などに販売していく計画を立てました。

実証実験の覚書を交わした福田紀彦市長は「環境負荷の低減とともに、さまざまな可能性が広かることを期待している」と、JFEエンジニアリングの狩野久宣社長は「早期に実用化を目指して2020年東京五輪時には全国各地に導入して最先端の環境技術として全世界にPRしたい」と述べました。

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ソニー、住宅間で直流融通のマイクログリッドシステム技術を構築

ソニーは分散型小規模エネルギー網(マイクログリッド)システムの商用化を始めます。

このシステムでは複数の一般住宅で発電された太陽光エネルギーを直流のままお互いに融通し合うシステムです。通常パワコンで交流に変換される太陽光発電からの電力ですが、直流のままの融通で発電した電力をロスすることなく有効に使うことが出来ます。

しかしながらこのようなシステムは世界的に見ても実用の例がないため、そのノウハウは今から構築していく必要があります。14年に沖縄科学技術大学院大学などとともに行った実証実験で基礎技術を確立し、今後は導入コストの低減に向けて、電力変換装置など構成部品の調達先を見直す。

2年後には一世帯あたりのコスト200万円程度の水準を目指すとしています。

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沖縄県宮古島の「島嶼型スマートコミュニティ実証事業」

沖縄県にある宮古島において、2011年度から2014年度にかけて「島嶼型スマートコミュニティ実証事業」と呼ばれる事業が実施されてきました。この事業は、島内で行われる太陽光発電や風力発電について、発電効果を可能な限り活用することを目的とした事業です。沖縄県や宮古島をはじめ、沖縄県が行うスマートエネルギーアイランド基盤構築事業の一環として、三井物産や宮古テレビのほかに、東芝沖縄電力、沖縄エネックといった企業も参加しています。

事業内容は「全島EMS(エネルギー管理システム)実証事業」のほか、「来間島再生可能エネルギー100%自活実証事業」などの事業から構成されています。通称「すまエコプロフェクト」と呼ばれている「全島EMS実証事業」に関しては、地域エネルギー管理システム(CEMS)の構築のために、多くの住宅や事業所、そしてポンプ場などが参加しました。タブレット端末を使って電力消費量を可視化する「見える化」やデマンドレスポンスなども実施され、地下ダムにおける揚水ポンプについては太陽光発電がピークになる時間帯を見計らって、稼働する時間を移行していくといった運用が実証されました。

「来間島再生可能エネルギー100%自活実証事業」は100%自活を実証

当初の計画は31カ所、合計380kWの太陽光発電と蓄電池176kWhを設置するものでしたが、2014年には蓄電池の容量が足りず、もう一台追加し、太陽光発電380kW、蓄電池352kWhという設備で実証実験に挑みました。
そして今回太陽光を使った再生エネルギーなどのみで、宮古島市における来間島内に必要な電力の需要を賄うことが実証に至ったと発表されました。

来間島の人口は約200人、電力需要はピーク時に200kWほどになりますが、屋根の上には380kWになる太陽光発電設備が設置され、島内における電力系統に定置型蓄電池が導入されるなど、連系線による送受電が最小限になる運用も実証されました。

「全島EMS(エネルギー管理システム)実証事業」の結果は後日

全島において行われたEMS実証実験では、デマンドレスポンスに対して平均1割の家庭が応答することを確認。またポンプ稼働を、太陽光発電の稼働が活発になり余剰が出やすい昼間にシフトするなどといった実験を行ったということ。

詳細は2月18日に行われるシンポジウムで報告される予定です。

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トヨタ、再エネの余剰や下水エネルギーを利用したCO2フリーの水素生成を検証

トヨタ自動車グループは、二酸化炭素を出すことなく、再生可能エネルギーから水素を産み出す検討を始めました。再生可能エネルギーに強みを持つグループ会社の豊田通商が中心となり、燃料電池車の普及期となる2020年代の実現を目指しています。

このような検討に至ったのは、CO2フリーの社会を目指し、地球規模の環境問題を解決するためです。燃料電池車は、二酸化炭素を直接出すことはありませんが、水素を製造する際に、ガソリン車並みの二酸化炭素が排出されてきました。そこで、豊富な水と自然なエネルギーを使うことによって、資源の枯渇を防ぎます。

しかし、水を電気分解するためには、大規模な施設が必要で、また大量の電力が必要となり、電力コストが低くないと採算に合うか厳しいという問題もあります。

豊田通商は子会社に風力発電大手のユーラスエナジーを持ち、固定価格買取制度後は太陽光発電所の建設でも存在感を出していましたが、これらの売電事業の先の一つに水素ステーションインフラ構築があるとは。
よくよく考えてみれば当たり前ですが、大企業ってすごいですね^^

ユーラスエナジーは系統容量が今ほど圧迫される以前から太陽光発電の開発を行っていましたが、そもそもメガソーラーのような大規模な案件を多く手掛けていることもあり、もともと出力抑制の可能性は想定内でした。
この、抑制されて売電できない発電分(余剰分)をうまく利用して水素生成を行えないか、という検証を今後行っていく予定です。

このほかにも福岡市では下水処理場の処理過程で出るメタンガスから水素を取り出す実証実験を九州大などと始めるそう。

京セラとIBM、デマンドレスポンス効果を自動報告できるシステムの実証試験を開始

京セラと日本アイ・ビー・エム(IBM)、東急コミュニティーの3社は自動デマンドレスポンス(ADR)に関する実証実験を10月から開始すると発表。

関東の各所で2015年3月までの半年間にかけて行われるこの実証実験では、一連のデマンドレスポンスと、実際に要請(デマンド)に応えた(レスポンス)結果を報告するまでを、すべて自動で行うシステムの有効性を確かめるという内容。
自動デマンドレスポンス(ADR)の国際標準規格OpenADR2.0 Profile bを採用して本実験は行われるということ。

この実証実験は早稲田大学がEMS新宿実証センターで実施するADR連携実証の一環とされるそうで、関東地区の京セラ横浜事業所、商業施設9店舗、一般住宅15世帯の計25ヵ所を使って行われるのだそう。

前回ご案内したエナリスと日産のデマンドリスポンス実証実験同様、電力自由化後の電力サービスの多様化に向けて各社準備を進めている模様ですね。

今回関わっている3社はいずれも、電力アグリゲータとしての各種認証を取得しているということで、新電力もしくは新電力と消費者の仲介のようなサービスの提供は視野に入っていることが伺えます。

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エナリスが日産と、V2Hを活用したデマンドレスポンスを実証実験

エナリスは、日産自動車と共同で日産リーフとリーフを使用したV2Hシステム「LEAF to Home」を活用したディマンドリスポンス(デマンドレスポンス)実証実験を今年10月から開始したのだそう。

神奈川県の複数箇所にて展開される実証実験は、電気自動車に搭載される蓄電池機能を自宅やビルで使えるようにできるV2H(Vehicle to Home)/V2B(Vehicle to Building)である「LEAF to Home」を活用し、系統の逼迫時など電力使用の抑制要請があった際(オン・デマンド)建物で使用する電力を系統から電気自動車(EV)にシフト(リスポンス)することによる、節電効果などを計測するという内容。

デマンドレスポンスによって、電力需要者はインセンティブをもらえるメリットや、電気代削減ができるといった効果も期待できるものの、これまでの手動によるリスポンスには限界があったことから、この実証実験を実施するに至ったのだとか。

エナリスといえば新電力ですが、今後新電力を一般住宅でも選択できる電力自由化後は、電気料金のバリエーションも増えてくることが予想されます。
デマンドリスポンスという形でないにせよ、ピークカットを目的として時間帯ごとに単価を変えるという試みは積極的に行われていくことかと思います。

その際にはV2Hのようなシステムの可能性がさらに高まることになりそうですね。

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京セラ、IBM、東急コミュニティが自動デマンドレスポンスの実証実験開始

2014年10月から2015年3月にかけて、京セラ株式会社、日本アイ・ビー・エム株式会社、株式会社東急コミュニティーの三社により、自動デマンドレスポンス(以下ADR)の実証試験を実施します。

デマンドレスポンスとは、電力逼迫時に発電事業者が家庭や企業等の需要家側に協力を求めて電力使用量を減らし、電力需給バランスを調整する仕組みです。東日本大震災以降、電力逼迫時にも電力の安定供給が可能な体制が求められていますが、現段階における日本では、発電事業家が需要家側に電話やメールで節電要請を出すケースが多く、電力需給のバランスを調整する体制が十分整っているとは言えません。そのような状況を背景に、発電事業者が電力使用量をリアルタイムかつ正確に算定可能となるようなADRの仕組みづくりが求められています。また、ADRの仕組みが確立すれば、電力需要家も節電要請への対応等に応じてインセンティブを受けることが出来、電力小売市場の活性化も期待されています。

今回の実証試験は、京セラ横浜事業所、商業施設9店舗、一般住宅15世帯の計25か所を対象としています。試験自体は、発電事業者より出される節電要請の受発信から、各施設における証明、空調、蓄電池等のエネルギーマネジメントシステム対応機器を制御することにより電力の抑制、最適化を図ることで、節電要請にそれぞれの施設が自動で対応し、その結果を取りまとめ、それらを節電要請をした発電事業者への実績報告としてフィードバックするという日本初の取り組みとなっています。

今回実証試験を実施する三社は、発電事業者と需要家側をとりまとめ、仲介として重要な役割を果たすアグリゲーターの各種認証を取得しており、今回の試験を通じてADRの技術やノウハウを蓄積するとともに、アグリゲーター事業の強化に取り組んでいきます。

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