大阪府が蓄電池関連分野を盛り上げる

2016年9月6日
大阪府は大型蓄電池の国際規格の認証に対するニーズが高まることを予想し、5つの認証機関と連携協定を締結しました。

協定を結んだ認証機関

  • テュフ ズード ジャパン
  • テュフ ラインランド ジャパン
  • 電気安全環境研究所
  • 日本品質保証機構
  • UL Japan

2016年5月に開所した大型蓄電池システム試験評価施設(NLAB)の試験評価機能に加え、認証機関による認証機能を大阪に整備することで研究開発拠点となり、蓄電池関連分野において日本企業の海外市場における競争力の強化につなげていくとしています。

住友商事が東芝の蓄電池システムで米国の周波数調整市場に参入

住友商事と米国子会社の米州住友商事は、米国の蓄電池会社Willey Battery Utility(WBU)社の株式を、英RES社の米国法人より取得しました。

住友商事は今後、WBU社を通じて、米国最大クラスの独立系統運用機関であるPJM Interconnectionが運営する周波数調整市場向けに、蓄電池を使った需給調整サービスを提供します。出力変動を吸収して電力網を安定化する手法の一つとして、蓄電池を使った電力網の需給調整サービスへの需要は高まっています。

WBU社は、東芝製の蓄電池システム(出力6MW、容量2MWh)をPJM Interconnection向けの需給調整サービスに使います。このサービスでは、東芝が蓄電システムの納入とメンテナンスを、再生可能エネルギー開発事業者RES社の米国法人が、変圧器などの供給・設置やシステム管理・操作・制御を担当し、オハイオ州ハミルトン郡で、4月に着工12月に運用開始予定です。

東芝のLiイオン蓄電池に関する技術力、RESグループの開発・設計・建設能力、住友商事グループの電力事業運営ノウハウを融合し、今回を皮切りに他州市場への参画も検討する予定です。

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東京電力、丸紅、住友電気工業による自動デマンドレスポンス実証実験の成果を発表

東京電力丸紅が実施しているデマンドレスポンスの実証プログラムに住友電気工業が参加し、電力使用量が計画通りに削減できることを証明するなど電力の需要調整に有効とされるデマンドレスポンスの自動化技術が進化しています。
情報通信関連製品の開発・製造拠点である住友電気工業の横浜製作所が対象となり、レドックスフロー電池と集光型太陽電池、そして熱と電力を供給できるガスコージェネレーションシステムという3種類の最先端蓄電と発電設備を組み合わせた設備です。

要請から10秒でシステム応答、15分で640kWの削減量達成

東京電力からの発令に基づきアグリゲータのエナノック・ジャパンが参加企業に指令を出す方式のデマンドレスポンスにおいて、住友電気工業の横浜製作所ではエナノックからの信号を受け10秒以内にシステムが応答、自動的に電力量削減を開始しました。さらに15分以内には取り決めた削減量の640kWに達し、デマンドレスポンスを実施しているその後1時間にわたっても削減量を維持し続けるという結果でした。
仕組みとしては自社で開発したエネルギー管理システムが蓄電と発電設備を管理し、電力会社からの購入量を調整するというものです。

まだまだ余力のある設備でどこまでのDRに対応できるか

国内最大級の蓄電容量5000kWhを誇るレドックスフロー電池は削減電力量の8倍に相当し、100kWの発電能力がある集光型太陽電池と4000kWのガスコージェネという発電設備のシステム構成で、電力削減量に対し十分な余裕もあります。通信プロトコルには国際標準規格「OpenADR2.0」を採用し、住友電気工業はデマンドレスポンスにおける標準ツールとして、効果を示すことのできたエネルギー管理システム「sEMSA」を広めるという方針を出しています。

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ポーランド風力発電増設で、系統安定の実証実験に日立ら参加

2020年度までに再生可能エネルギーの比率を15%まで上げることを目標としているポーランドでは風力発電施設を倍増させる計画が進められ、日本の日立製作所グループを中心とした4社が電力系統の安定化技術の面で貢献する予定です。

風力発電の出力変動対応のために日立製作所開発のSPS(Specail Protection Scheme)を導入します。鉛電池とリチウムイオン電池を合わせたハイブリット型で、万一事故が発生しても発電設備の出力を抑制し、安定稼働が続けられるというものです。

11月まで事前調査を行い2016年から3年間実証実験が行われる予定ですが、現地企業もポーランド政府の支援を受け参画します。実証の行われるポーランド北部は年間の平均風速が秒速6メートルを超える恵まれた風況であるため特に風力発電に力を入れ、2013年当時で3400MWだった風力発電導入量を2020年には6600MWに倍増させることを目標としています。

ポーランドではすでにJ-Powerと三井物産が24基で48MWの発電能力を有するザヤツコボ風力発電所の開発に協力しており、年間の発電量としては1億kWhにも達しています。しかしポーランドの電力系統設備は40年以上前に建設されたものも多く安定稼働が課題であり、日本の安定化技術でポーランドの電力系統更新・増強が望まれます。

こうしたポーランドの課題は日本にも当てはまり、国内でも実証プロジェクトが進められています。現在はポーランドに比べて2割少ない2710MW程度ですが、今後ポーランドでの実証結果が日本でも活かせると考えらえています。

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独ベレクトリック、イギリスで太陽光発電と蓄電池の制御実証実験

2015年2月12日、ドイツの太陽光発電関連業者のベレクトリックの英国法人は、太陽光発電と蓄電池の最適制御により電力網を安定化する技術をイギリス国内で実証させる「Enhanced Frequency Control Capability Project」、通称「EFCCプロジェクト」を発足することを発表しました。

このプロジェクトはイギリスの電力ガス市場規制庁(Ofgem)の承認の下、イギリスの電力業者であるNational Gridが主導となって行われるもので、電力網の要所に蓄電池をベースとするバックアップシステムを装置するなどの工夫を加え、電力網と電圧の周波数を安定化させることで運転予備力の容量最小化とそれにかかるコストの削減を目指すとしています。

イギリスは化石燃料発電からの依存脱却を目指して大規模太陽光発電所と風力発電所を拡大させていますが、これらには出力変動による電力網の過剰な電圧上昇や需給バランスの維持などの課題が残っており、これを解消するためには膨大なコストがかかるものとされていました。今回のEFCCプロジェクトが成功すれば、想定されたものよりも低いコストで課題を解消できるものと見られています。

EFCCプロジェクトには前述のベレクトリック社の他、フランスの重電大手であるアルストム社やイギリスのCentrica社なども参加し、ベレクトリック社は2ヶ所の蓄電システムの設計、設置、運用を、アルストム社は電圧や周波数の変動の監視及び制御システムを、Centrica社は電力網の安定化技術を担当する予定です。

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岩手県、11基25.3MWの風力発電施設は蓄電池つき

岩手県は、高森高原の一帯に11基の大型風車と蓄電池1台の岩手県営風力発電所を新設する予定です。風車1基は2.3MWの発電能力で、合計で25.3MWに達し年間5300万kWhの発電量と見込んで、一般家庭1万5000世帯分の使用量に相当します。

高森高原は風況に恵まれ、平均風速6.5メートル/秒に達し、風力発電設備利用で28%程度が予想され、現在の計画で24%の低めの設定の為、実際の発電量予想値より上回る可能性は大きいです。

東北地方での太陽光や風力の導入量の拡大で,新設の発電所には出力制御が求められ、高森高原風力発電所では天候による出力の変動の対応と、余剰電力を充電できるように蓄電容量1万7280kWhの鉛蓄電池の導入の予定で、想定発電量に対し約0.1日分を充電することができる大型の蓄電池を併設します。風力発電所を2017年11月の運転開始予定に伴い、環境影響評価の手続きを完了した後に、2016年4月から工事に入る予定です。岩手県は再生可能エネルギーの電力自給率を2020年に35%までに引き上げる目標ですが、2013年度時点では18.6%にとどまっている為、県が率先して導入量の拡大をしていきます。

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アメリカでPG&EとBMWが提携、EVを使ったデマンドレスポンスなど

PG&E社(パシフィック・ガス・アンド・エレクトリック・カンパニー。米国の電力ガス会社)が1月5日電気自動車の蓄電池を電力系統の運用制御に利用する事業を開始すると発表しました。この事業はドイツのBMW社と提携して行われます。この事業によって、電力が最もよく使われる時間帯に必要な電力を少なくすることが期待されるため、従来よりも送電線や変圧計にかかる負担は減少します。そのため太陽光発電などの再生可能なエネルギーをより多く取り入れることが可能となります。

BMW社はまず、アメリカカリフォルニア州にある技術開発の拠点に大規模なエネルギー貯蔵システムを導入します。この貯蔵システムを利用し電力需要の少ない時間帯に価格の下がった電力を貯め、電力を良く使う時間帯に貯蔵した電力を使用します。

準備が整い次第BMW社は顧客に対しBMWi3(電気自動車)の次期モデルを提供します。その提供したBMWi3の蓄電池をPG&E社の電力系統と連携させます。そうすることでPG&E社は電力需要の多い時間帯の、BMWi3への充電状況を把握できるようになります。その情報をもとにBMW社は蓄電池の充電を遠隔制御して、消費電力の削減を行います。

PG&E社はこうした取り組みへの対価をBMW社に支払い、BMW社はこの資金で電気自動車の所有者の購入及び運用のコストを下げる取り込みを行います。このプログラムの参加者への報酬の支払いもこの資金で賄われ、参加者は携帯電話のアプリケーションでどの程度の報酬が受けられるかを確認することが出来ます。

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先立つ新電力切り替えの実情と、独立型系統の未来

2016年には電力の小売自由化も始まりますが、これによって未来の電力構造はどのように変わるのでしょうか?

半歩先を行く電力利用をする自治体と個人について特集した2014年12月14日の記事を元に、未来の電力構造をちょっとだけ考えてみようと思います。

自治体による脱電力会社

群馬県で自治体による全国初の新電力「中之条電力」設立

地方自治体で、脱大手電力会社の動きが高まっています。昨年の9月には、群馬県中之条町が全国で初めて、新規の電力事業に参入し「新電力」を設立し、今も大きな注目をあびています。

中之条町では「電力の地産地消」のため、自然エネルギーを推進するとして条例を制定した後、町と新電力「V-power」とが共同出資して一般財団法人「中之条電力」をたちあげました。
中之条町には3つのメガソーラー発電所があり、町内の公共施設の需要を十分満たせるだけの電力供給が見込めます。中之条電力は、町内の公共施設に直接売電しています。現在、中之条町では東京電力から電気を購入していた頃よりも年1,000万円の経費削減を実現し、中之条電力の売電による利益は個人宅の太陽光パネルへの補助金に活用されてきました。

結果として、今や個人宅に設置された太陽光パネルの合計は1000kW(1MW)を超え、再エネを活用した地方復興の好例として全国からの視察が絶えない状態です。

これまでの売電先を変更し収入増につなげる

新電力の活用方法は電気代削減にとどまりません。
固定価格買取制度以前は再エネ設備による発電電力の買い取りに関する制度はなく、電力会社と任意の単価による売買が行われていました。(太陽光発電の売電単価推移

一方、固定価格買取制度以前に稼働した再エネ設備を持つ地方自治体の中には売電先を新電力に変え、固定価格買取制度を新たに適用させることで増収につなげる動きが出てきています。

東京都では猪瀬直樹前知事の「脱東電」の指示のもと、都内三か所の水力発電施設による電気の売電先を、東京電力から新電力の「エフパワー」へ切り替えました。

これにより売買収入は年間約17億円と、7割もの増収に成功しました。契約中であったために、東電に違約金約14億円を支払うことになりましたが、その犠牲を払ってでも新電力へと切り替えることに大きな価値を見出していたのでしょう。

現在、大手電力会社は電気料金値上げや、原発再稼働に邁進していますが、そのような動きは、東日本大震災以後地方自治体や一般家庭に与えた大手電力会社への不信感に拍車をかけてしまっていると言えるでしょう。

こうした自治体による新電力への切り替えはこうした消費者による脱大手電力会社/脱原発意識を象徴するという見方もあります。
他にも昨年一月末には神奈川県が公共施設の9割を新電力に切り替えたと公表し、長野県や長崎県も新電力からの電力購入割合が高くなっています。


売電をしないことによる究極の脱電力会社

ここまでにご案内したのは、自治体による新電力の活用の実態。契約先を従来の電力会社から変更するという点では脱電力会社の動きの一つとも言えますが、新電力に売電する際には電力会社が持つ従来の送電網を使っており、実は完全なる脱電力会社ではないとも言うことができます。

記事には売電制度さえも利用せず、 蓄電池(バッテリー)に貯めた電力で完全なる自給自足をしながら生活する方々の実情も紹介されていました。

ここで紹介されていた「自給エネルギーチーム(自エネ組)」という独立型太陽光発電システムの施工を行う団体は、全国で29か所で独立型太陽光発電を設置してきたといいます。

「沢水を引いて、薪で調理して。夜はランプの生活」

という生活は現代の暮らしに慣れた私達からすると考えられないかもしれませんが、

「すごく楽しかったんですね。生きる喜びを感じました」

と語る自エネ組の共同設立者木村俊雄さんはなんと元東電職員。
「原発に未来はない」と直感したことが、この組織に関わる動機にもなったのだそう。


未来の電力構造は?

電力自由化によって需要者は従来の電力会社以外にも購入先を選ぶことができるようになります。前半の自治体のような例をそのまま個人レベルに落とし込んだ例が2016年以降は増えることは、誰もが予想できる未来です。

これに加えて後半でご紹介したような完全独立型電力消費の形は、太陽光発電のコスト(kWhあたりの価格)が系統電力以下に下がった今、(グリッドパリティ)蓄電池の普及促進でさらに広がる可能性も秘めています。

記事では

オフグリッド生活を始めると、自然に寄り添う暮らしになるのかもしれない

と締められていますが、人々の消費傾向が多様化し、より本質的な意味で自分に心地いい消費の仕方が見直されてきていると感じる昨今、こうした独立型(オフグリッド)発電設備も根強く普及を進めるとみるのも自然ではないでしょうか。

エナリスが日産と、V2Hを活用したデマンドレスポンスを実証実験

エナリスは、日産自動車と共同で日産リーフとリーフを使用したV2Hシステム「LEAF to Home」を活用したディマンドリスポンス(デマンドレスポンス)実証実験を今年10月から開始したのだそう。

神奈川県の複数箇所にて展開される実証実験は、電気自動車に搭載される蓄電池機能を自宅やビルで使えるようにできるV2H(Vehicle to Home)/V2B(Vehicle to Building)である「LEAF to Home」を活用し、系統の逼迫時など電力使用の抑制要請があった際(オン・デマンド)建物で使用する電力を系統から電気自動車(EV)にシフト(リスポンス)することによる、節電効果などを計測するという内容。

デマンドレスポンスによって、電力需要者はインセンティブをもらえるメリットや、電気代削減ができるといった効果も期待できるものの、これまでの手動によるリスポンスには限界があったことから、この実証実験を実施するに至ったのだとか。

エナリスといえば新電力ですが、今後新電力を一般住宅でも選択できる電力自由化後は、電気料金のバリエーションも増えてくることが予想されます。
デマンドリスポンスという形でないにせよ、ピークカットを目的として時間帯ごとに単価を変えるという試みは積極的に行われていくことかと思います。

その際にはV2Hのようなシステムの可能性がさらに高まることになりそうですね。

参考