スコットランドで再エネ発電から水素を貯蔵生成する実証実験、東芝がEMS提供

東芝は、他の7つの団体と共同での海外初の水素実証試験への参加を発表しました。風力と太陽光だけで水素を製造し、燃料電池車に供給する他、燃料電池に送り電力を得るというもので、スコットランドのファイフ州メチルで行います。

スコットランドは、電力源に占める再生可能エネルギーの比率を高める政策を打ち出しており、洋上風力などで2020年には100%を目指しています。メチル港には、風車(出力750kW)と、電力を利用して水から水素を生成する水電解装置(出力30kW)があります。これらは、水素関連施設を運用するBright Green Hydrogen社が設置しました。近くには、ファイフ州が470万ポンドを投じ、Fife Renewables Innovation Centreを完成させ、同センターへの電力は、系統電力と風車による電力と水素燃料電池の電力とを切り替えて送り、暖房用温水は、燃料電池以外の電力で地中熱ヒートポンプを駆動して供給します。

実証試験期間は2015年4月~2020年3月までで、2016年度内に新たな設備を導入し、残り4年間で運用データを集めます。導入する設備は太陽光発電システム(出力200kW)、2種類の水電解装置(60kWと250kW)、水素貯蔵タンク、燃料電池(出力100~150kW)、25台のハイブリッド車です。

試験では、風力発電と太陽光発電で電力を供給し、水を分解して得た水素をタンクに蓄え、その水素を水素燃料電池とハイブリッド車の燃料として供給します。また、燃料電池を通じて電力を得て、メチルのビジネスパークに供給します。

東芝は、「水素EMS(エネルギーマネジメントシステム)」の提供とシステム全体の制御を担います。これは電力の需給予測に基づき、水素の製造、貯蔵、利用を最適制御する仕組みです。
東芝では他にも複数の場所で水素EMSを運用し、異なった運用データを得る予定です。

参考

独ベレクトリック、イギリスで太陽光発電と蓄電池の制御実証実験

2015年2月12日、ドイツの太陽光発電関連業者のベレクトリックの英国法人は、太陽光発電と蓄電池の最適制御により電力網を安定化する技術をイギリス国内で実証させる「Enhanced Frequency Control Capability Project」、通称「EFCCプロジェクト」を発足することを発表しました。

このプロジェクトはイギリスの電力ガス市場規制庁(Ofgem)の承認の下、イギリスの電力業者であるNational Gridが主導となって行われるもので、電力網の要所に蓄電池をベースとするバックアップシステムを装置するなどの工夫を加え、電力網と電圧の周波数を安定化させることで運転予備力の容量最小化とそれにかかるコストの削減を目指すとしています。

イギリスは化石燃料発電からの依存脱却を目指して大規模太陽光発電所と風力発電所を拡大させていますが、これらには出力変動による電力網の過剰な電圧上昇や需給バランスの維持などの課題が残っており、これを解消するためには膨大なコストがかかるものとされていました。今回のEFCCプロジェクトが成功すれば、想定されたものよりも低いコストで課題を解消できるものと見られています。

EFCCプロジェクトには前述のベレクトリック社の他、フランスの重電大手であるアルストム社やイギリスのCentrica社なども参加し、ベレクトリック社は2ヶ所の蓄電システムの設計、設置、運用を、アルストム社は電圧や周波数の変動の監視及び制御システムを、Centrica社は電力網の安定化技術を担当する予定です。

参考