原発などのベースロード電源を震災前の6割に引き戻し

政府と自民党は、現在稼動していない原発で発電量を2割程度上積みしたいという背景から、2030年にエネルギーミックスに占める原発や水力発電など「ベースロード電源」の比率を東日本大震災前の6割に戻す方向で検討に入りました。ベースロード電源とは、様々な発電方法の中で中核となる電源のことで、安価で安定した供給が可能な発電所のことです。現在、政府は原子力、水力、石炭火力、地熱の4種類としています。

2010年度、ベースロード電源の発電比率は62%でしたが、震災後に原発が止まったことで2013年度には4割にまで下がりました。最近、経済産業省と政府は諸外国のベースロート電源の比率が6割以上であるとして、日本も6割に戻したいと主張しています。石炭火力は二酸化炭素排出量、水力や地熱は開発時間などから早急な比率向上への寄与が難しいとして、必然的に原発再稼動の2割積み増しが構想の主体となっています。しかし、昨今欧州では太陽光や風力などの再生可能エネルギーの比率が向上し、ベースロード電源の比率が落ちてきています。原発の再稼動を目指す日本とは対照的です。

環境省が試算、2030年には再エネ設備がエネルギーミックスの24%~35%を占める

環境省は2030年には太陽光発電や風力発電などの再エネ設備による発電量が全体のエネルギーミックスのうち24%を占める予測を発表。さらに最大限普及した場合は35%にのぼるとの試算を発表しました。

24%は現状の普及策を続ける場合の試算で2013年度比では約2.5倍にあたります。これは経済環境省の試算を上回ります。広域な電力融通が効果を発揮することが理由としてあげられています。

2030年には、太陽光が現状の約5倍、地熱が現状の約4倍になると試算される中で、特に風力は現状の約8,5倍の410億kWと大きく伸びると試算されています。

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過去最大のCO2排出量を受けて経産省火力発電の省エネ規制導入

経済産業省は、電力自由化後に相次ぐことが予想される火力発電所の新設に対して発電効率が高く、二酸化炭素排出量の少ない設備の設置を義務付ける方針を明らかにしました。設置設備が規制対象となった場合は勧告後の罰金を予定しているということ。

原発事故後に急増した石炭の火力発電

原子力発電の運転停止を受け、例外的な措置として2013年には石炭発電所の新設を認められました。これによって環境アセスメントが必要なく、初期費用が安く抑えられる小型の石炭火力発電所の新設計画は40件近く(合計出力1500万kW)持ち上がっているといいます。
2011年の東日本大震災以来既存の火力発電所の稼働率が上がり、二酸化炭素排出量も年々増えている現状で、2013年は過去最大の13億9500万トン、1990年度と比較して10.6%も多い二酸化炭素排出量があったとしています。

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電力自由化後は原発へもFITを検討

2016年の電力販売自由化に伴い、大きな問題となってくるのが原発の今後です。原発は、建設から発電までに、10年程度かかる上、5000億円もの初期投資が必要です。さらに、操業開始後も、事故による長期停止のリスクがあり、安全対策にも費用がかかります。2020年に、事業コストに一定の利益を上乗せして電気料金を定める「総括原価方式」が廃止されると、コストの回収が保証されなくなるため、電力会社は不安定でコストの大きい原発から撤退する可能性があります。

そこで経済産業省は昨年、原発で発電した電力に固定価格を定め、市場価格がそれを下回った場合、差額を上乗せして利用者に支払わせる制度案を提出しました。しかし高い固定価格は利用者の負担を増やすばかりか、原発による発電の電力が石炭や天然ガスによる発電の電力価格を上回り、産業界にも悪影響があるので、各方面から反発が生じています。このため政府では米国に倣い、原発建設コストの8割を政府が負担する案も出ています。

政府は、今夏までに策定する、電源ごとの発電比率を示した電源構成の中で、原発依存度を15~25%とする方向です。中長期的に原発依存度を維持するため、老朽原発は廃炉にするのではなく、敷地内での建替を容認する見込みです。しかしその方向性の裏づけとなるはずの、原発推進策の具体化の検討は、誰がどのくらいコストを負担するかという難題に関わるため後回しにされています。

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2020年4月までに送電分離を義務付け、追ってガス市場も

政府は、電力市場改革について新たな動きを見せました。東京電力関西電力に対して「2020年4月」までに送電部門の分社化を義務付ける方針を掲げました。

また同時に、ガス市場改革についても、17年の家庭向けガスの自由販売化に続き、東京ガス関西ガス東邦ガスに「2021年から2023年」までにガス管部門の分社化を義務付ける方針も掲げました。

これらの分社化は、エネルギー市場の販売の自由化に合わせ、新規参入事業を公平に扱う体制を整えるためです。

太陽光発電増加で国民負担が増加

経産省によると再生可能エネルギーの固定価格買取制度を導入すると太陽光発電が現在のペースのまま増えると昨年の約1800万kWから2030年には約1億4千万kWに達してしまうことから実際導入するには送電設備が足りず多額の費用が必要になるということ。

昨年認定した設備の発電出力は約7千万kWで太陽光が9割以上を占めました。すべての発電を始めた場合の国民負担は年間2.7兆円と大幅に膨らむ計算。

経産省は2030年の再生可能エネルギーや原子力などの最適な電源構成(ベストミックス)の議論を始めています。
今後、導入拡大に伴う新たな国民負担を試算して議論していきます。

発電を始めた太陽光発電設備は2013年度以降、月平均約64万kW増えます。このまま無制限に増え続ければ20年に約6500万kW、30年には1億4千万kWに達すると見られ、太陽光は天候などで発電量が変わるため発電線で電気を他地域に流すなど対策が必要です。
実際に1億キロワットを超える太陽光発電を受け入れるには今の送電設備不足とされています。

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経産省、新設の「電力市場監視委員会」を最強の8条委員会に

経済産業省は、電力自由化に伴って新たに設置する規制機関「電力市場監視委員会(仮称)」に従来に無い権限を持たせ”最強の8条委員会”にする方針を発表。

経済産業省に意見具申を行うことができるうえ、卸・小売市場や送配電部門の行為規制の監視が単独で行える権限を持つことになります。
専属の事務局は、数十人規模となる見込みで、『電気事業者から独立』・『電気事業者と肩を並べるほどの専門性を持つ』・『規制のとりこにならない』の3つの特徴を持つ組織であるのが特徴です。同委員会は、将来の電力小売り全面自由化に伴い、電力の卸・小売市場の健全性を行う行為を監視します。

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経産省「優先給電ルール」改定で火力発電は抑制の最優先に

経済産業省は電力小売り自由化後の出力抑制について「優先給電ルール」を見直し。
これまで対象が一般電気事業者のみであった火力発電を最優先に出力抑制する決まりから、対象を新電力にまで広げ、太陽光発電などの再エネ設備の出力抑制をできるだけ少なくできるような体制に変える見込みだそうです。

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電力小売り自由化に向け、2015年末までに各社準備を進める

電力小売りの自由化が2016年に実施される予定であり、経済産業省も制度設計の検討・関係政省令の整備を15年前半に進める予定をしています。

電力小売りが自由化されると事業区分が無くなりすべて対等な条件となりますが、大手の電力会社では電源設備が豊富なため有利であるという点については変化はなさそうです。

プレイヤーが出揃う2015年後半からは各社企業向けサービスで肩慣らし

そのため顧客を持つ事業者と設備を保有する事業者が提携して大手に対応するという状況が進みそうです。電力小売業者は自由化に伴って登録制となりますが、新たに参入する業者がシステムを整えたり販売体制を確立するには半年は要するため合従連衝のピークは15年前半となる見通しで、登録が始まるとみられている15年7月頃には新規業者が出そろうとみられています。

家庭や小規模な事業所など契約電力が50キロワット未満の電力販売が大手電力会社に限らず開放されることになりますが、家庭向けにとどまらず15年後半には企業向けの新しいサービス等、自由化の足掛かりとなる事業展開が見られると予測されます。

新電力側から期待されるのは「セット販売」などの新サービス形態

実際すでにそうした動きも見られ、ソフトバンクグループのSBパワー(東京・港)が全国展開しているメガソーラーで発電した電力を大口顧客向けに販売し始め、開始から5か月ほどですでに約100拠点の契約が進んでいます。
ソーラーパネルを設置している家庭の電力を1円上乗せして買い取るというサービスを開始し、既存の顧客はもとより新規顧客の開拓も見据えているのです。

また他に通信と電力の組み合わせやガス・電機・自動車などの他分野でも電力との融合を考えた新規サービスの準備が進められています。

電力会社は域外進出を中心に準備を整える

大手電力会社ではエリア外でも電力販売を行うなどの事業展開に乗り出しているところもあります。このように事業者同士の競争で新たなサービスの登場や需要する側が電力を選べる仕組みなどがたらされるとともに、企業の立場としては電力コスト削減に取り組むことになりそうです。

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「廃炉のコストは電気料金に上乗せで徴収」経産省が枠組みを設ける

電力小売りの自由化後も、従来と同様に原子力発電所の廃炉に掛かる費用を電気料金に上乗せし、全ての利用者に請求・収受する方針が、経済産業省による有識者会議にて了承されました。

経済産業省は、原子力発電所の老朽化が進み廃炉を決定した場合、それに伴う巨額費用を確実に回収できる料金制度の確立が必要との見解を示し、自由化後は、配送電会社により、送電線利用料の上乗せ分として徴収を行う枠組みを設けるとのことです。