和歌山市、新電力切り替えで電気代、年間数千万円削減

和歌山市は市内の施設の電力供給において新電力の切り替えを予定し、入札で供給会社の選定を行いました。

まず本庁舎においての入札を実施、和歌山電力株式会社が4,825万285円(税抜)で落札しました。これは従来と比べて数千万円安い価格だといいます。

このほかに和歌山市は市内で全80施設の電力調達先切り替えを考えているとのこと。

参考

日立造船、事業所および工場の電力を自社調達に切り替え

新電力の設立を発表していた日立造船は、自社の事業所および工場において電力を自社調達に切り替えると発表しました。

関西電力との契約を引き払い、自社調達を始めることになったのは大阪の本社ビルおよびグループ会社が入居するビル、そして築港工場内の生産棟と技術研究所の4施設で、ピーク電力4000kWに相当する電気料金は数%の削減が見込まれるといいます。
日立造船は他の事業所でも順次自社調達に切り替える方針を明らかにしています。

日本造船も含め、新電力として電力を需要家に販売する場合、自社の発電設備で足りない分を卸電力市場などから購入して販売する方法をとりますが、「調達した電力単価との差が大きい需要家」=「もともと比較的高い単価で電力を購入していた需要家」=「負荷率の低い需要家」を優先的に顧客とすることで収益向上に努めます。

消費地である自社工場が年中均質的に稼働を行う(=負荷率が高い)ような種類であれば、例え自社で新電力事業を行っていようと、収益につなげるのは難しいと言えます。

今回の日立造船の場合、自社工場が産業用機械や発電プラントなどを作る設備であるため稼働率の変動が大きくなります。このように電力を利用する日時と使わない日時の差が激しい(=負荷率が低い)需要家は新電力に切り替えることのメリットが大きくなります。

参考

ローソン、2500店舗の電力調達を新電力に切り替え

先日セブンイレブンの東電切り替えのニュースがありましたが、いち早く電力の切り替えを進めていたローソンは、新電力から電力を調達する店舗を現在の1000店舗から2500店舗に増やす意向を明らかにしました。

高圧受電を行っている店舗から切り替えを進めており、今回2500店舗全体で年間2.5億、一店舗平均10万円の電気代削減を見込んでいるということ。

購入先はエナリスとダイアモンドパワーの2社の名前が上がっています。

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先立つ新電力切り替えの実情と、独立型系統の未来

2016年には電力の小売自由化も始まりますが、これによって未来の電力構造はどのように変わるのでしょうか?

半歩先を行く電力利用をする自治体と個人について特集した2014年12月14日の記事を元に、未来の電力構造をちょっとだけ考えてみようと思います。

自治体による脱電力会社

群馬県で自治体による全国初の新電力「中之条電力」設立

地方自治体で、脱大手電力会社の動きが高まっています。昨年の9月には、群馬県中之条町が全国で初めて、新規の電力事業に参入し「新電力」を設立し、今も大きな注目をあびています。

中之条町では「電力の地産地消」のため、自然エネルギーを推進するとして条例を制定した後、町と新電力「V-power」とが共同出資して一般財団法人「中之条電力」をたちあげました。
中之条町には3つのメガソーラー発電所があり、町内の公共施設の需要を十分満たせるだけの電力供給が見込めます。中之条電力は、町内の公共施設に直接売電しています。現在、中之条町では東京電力から電気を購入していた頃よりも年1,000万円の経費削減を実現し、中之条電力の売電による利益は個人宅の太陽光パネルへの補助金に活用されてきました。

結果として、今や個人宅に設置された太陽光パネルの合計は1000kW(1MW)を超え、再エネを活用した地方復興の好例として全国からの視察が絶えない状態です。

これまでの売電先を変更し収入増につなげる

新電力の活用方法は電気代削減にとどまりません。
固定価格買取制度以前は再エネ設備による発電電力の買い取りに関する制度はなく、電力会社と任意の単価による売買が行われていました。(太陽光発電の売電単価推移

一方、固定価格買取制度以前に稼働した再エネ設備を持つ地方自治体の中には売電先を新電力に変え、固定価格買取制度を新たに適用させることで増収につなげる動きが出てきています。

東京都では猪瀬直樹前知事の「脱東電」の指示のもと、都内三か所の水力発電施設による電気の売電先を、東京電力から新電力の「エフパワー」へ切り替えました。

これにより売買収入は年間約17億円と、7割もの増収に成功しました。契約中であったために、東電に違約金約14億円を支払うことになりましたが、その犠牲を払ってでも新電力へと切り替えることに大きな価値を見出していたのでしょう。

現在、大手電力会社は電気料金値上げや、原発再稼働に邁進していますが、そのような動きは、東日本大震災以後地方自治体や一般家庭に与えた大手電力会社への不信感に拍車をかけてしまっていると言えるでしょう。

こうした自治体による新電力への切り替えはこうした消費者による脱大手電力会社/脱原発意識を象徴するという見方もあります。
他にも昨年一月末には神奈川県が公共施設の9割を新電力に切り替えたと公表し、長野県や長崎県も新電力からの電力購入割合が高くなっています。


売電をしないことによる究極の脱電力会社

ここまでにご案内したのは、自治体による新電力の活用の実態。契約先を従来の電力会社から変更するという点では脱電力会社の動きの一つとも言えますが、新電力に売電する際には電力会社が持つ従来の送電網を使っており、実は完全なる脱電力会社ではないとも言うことができます。

記事には売電制度さえも利用せず、 蓄電池(バッテリー)に貯めた電力で完全なる自給自足をしながら生活する方々の実情も紹介されていました。

ここで紹介されていた「自給エネルギーチーム(自エネ組)」という独立型太陽光発電システムの施工を行う団体は、全国で29か所で独立型太陽光発電を設置してきたといいます。

「沢水を引いて、薪で調理して。夜はランプの生活」

という生活は現代の暮らしに慣れた私達からすると考えられないかもしれませんが、

「すごく楽しかったんですね。生きる喜びを感じました」

と語る自エネ組の共同設立者木村俊雄さんはなんと元東電職員。
「原発に未来はない」と直感したことが、この組織に関わる動機にもなったのだそう。


未来の電力構造は?

電力自由化によって需要者は従来の電力会社以外にも購入先を選ぶことができるようになります。前半の自治体のような例をそのまま個人レベルに落とし込んだ例が2016年以降は増えることは、誰もが予想できる未来です。

これに加えて後半でご紹介したような完全独立型電力消費の形は、太陽光発電のコスト(kWhあたりの価格)が系統電力以下に下がった今、(グリッドパリティ)蓄電池の普及促進でさらに広がる可能性も秘めています。

記事では

オフグリッド生活を始めると、自然に寄り添う暮らしになるのかもしれない

と締められていますが、人々の消費傾向が多様化し、より本質的な意味で自分に心地いい消費の仕方が見直されてきていると感じる昨今、こうした独立型(オフグリッド)発電設備も根強く普及を進めるとみるのも自然ではないでしょうか。