電力会社各社がスマートメータ普及を加速、15年度には1000万台超

2015年度、電力会社では、一般家庭などで、利用者と双方向で情報をやり取りできる新電力計のスマートメーターの普及を加速します。
スマートメーターは、通信機能のついた新しい電力計で、企業や会社で計測した電力の使用量を30分ごとにインターネットを通じて電力会社などに送るもので、家庭で時間ごとに、電気の使用量が分かるようになり、効果的に節電できるものです。電気の使い方に応じた料金メニューを選ぶ際にも役立ちます。国内での普及台数を1000万台を超える見通しです。

スマートメーターを使用することで、いつでも電気の使用量を把握することができ、照明やエアコンなどの家電の制御などといった、節電の工夫がしやすくなるというメリットがあります。また、電気の使用データーから高齢者の見守りなどの新しいサービスが始まることも期待されます。電力会社におけるメリットは、検針員が訪問して電力使用量を点検するという手間が省けることから、人件費の削減が可能になることです。

一方、通信機能を持つスマートメーターの導入において、個人情報などのデータの流出や使用料のデータの改ざんなどの防止のために、経済産業省で、安全対策を強化するための議論も進められます。

参考

2015年1月版、電力自由化の市場動向 – 新電力の参入状況など

富士経済が、電力自由化に関する新規参入状況に関する調査を発表しました。

2014年11月時点で409社の新電力の半数以上が実態なし

調査によると、2014年11月7日の時点で登録されている新電力は409社。
しかし、過去約一年で登録された新規参入企業を中心に332社へのアンケート調査を実行したところ、電力事業の実績があるのは10%程度にとどまり、さらには今後電力事業を行う計画さえ不明瞭な企業の登録が半数以上もあることがわかっています。

またアンケートに協力した企業のうち40%超130社以上が太陽光発電関連事業ということ。
固定価格買取制度で爆発的に増えたメガソーラーや中規模太陽光発電所の事業者が、登録していると予想されます。

この結果の背景として、現状ではまだ電力会社としての届出基準が明確でないことが挙げられています。

2013年度は227億kWhが新電力経由で販売

新電力によって販売された電力の合計は2013年度で227.1億kWhにのぼったということ。
参考までに、東京電力の2013年度の販売電力量は2667億kWhなので、この12%弱の規模になります。ただ新電力は一般電気事業者からのベース電力の利用も含まれています。
2014年度はさらに供給量は伸びて277.7億kWhになる予定だということ。

新電力の主要プレイヤーとして、エネットJX日鉱日石エネルギー昭和シェル石油、オリックスなどが挙げられています。

経産省「優先給電ルール」改定で火力発電は抑制の最優先に

経済産業省は電力小売り自由化後の出力抑制について「優先給電ルール」を見直し。
これまで対象が一般電気事業者のみであった火力発電を最優先に出力抑制する決まりから、対象を新電力にまで広げ、太陽光発電などの再エネ設備の出力抑制をできるだけ少なくできるような体制に変える見込みだそうです。

参考

JX日鉱日石エネルギー、電力小売り自由化後は「電力事業が柱に」

JX日鉱日石エネルギー社長の杉本務氏は2015年1月20日に応じた毎日新聞社のインタビューの中で、2016年4月の家庭向け電力販売の自由化と同時に、首都圏で電力とガソリンのセット販売を開始する方針であることを明かしました。

販売は首都圏内のENEOSカード会員およそ100万人で、同社系列のガソリンスタンドやプロパンガスなどの特約店を流通経路とし、電力とガソリンの割安セット販売などのサービスを提供していく考えです。

今後は電力が柱に、今秋目標に準備を進める

杉森氏は「ビジネスの要である石油の需要が減少する今、電力事業は次世代ビジネスの柱となる」とし、今秋中にも顧客情報システムの構築を完了させると語っています。

また、同じく今秋中には通信会社との提携をまとめる方針であるとも明かしましたが、これは携帯電話と電力のセット販売などを想定してのものとみられています。

JX日鉱日石エネルギーは石油元売り最大手として知られる会社で、原油などの調達力を活かして、火力や風力による発電設備を全国で複数所有しています。その合計発電量はおよそ150万キロワットとされ、2016年4月から開始する電力事業ではこれらの電力の内自社消費を除く80万キロワットを家庭や企業向けに販売する予定です。

日立造船が新電力立ち上げ、ごみ焼却場での電力も

2015年1月20日、日立造船は2月1日付けで「新電力事業推進室」を立ち上げ、4月にも特定規模電気事業者として電力小売事業に参入することを発表しました。

同社既に茨城県常陸大宮市にあるガスタービン発電所の電力を東京電力他に販売している実績を持っており、小売を始めることでさらに電力事業を強化する狙いで、平成28年の電力小売自由化に備え一般家庭向けの販売も視野に入れています。

特にごみ発電の実績は高く、地産地消を推進するモデルの構築に生かすため同社が開発したごみ焼却発電所が位置する地域で公共施設などを中心に販売先となる需要家を探す予定だということ。

参考

日立、東電ら、電力自由化後の電気事業者向けシステムで業務提携

一昨年から「情報システムサービス」に関して戦略的業務提携を進めていた日立システムズ日立東京電力の3社は昨年3月「日立システムズパワーサービス」を設立。
この新会社も含めた4社で新たに電気事業者向けの電力システムサービスを提供すると発表しました。

その名も「ePower Cloud」

新電力なども含めた電力自由化後のエネルギー業界のプレイヤーにとって、電源確保はもちろん、受給をより効率的にするマネージメントの方法の確立は必須と言えます。
今回日立システムズパワーサービスが主な事業主体となって提供される「ePower Cloud」は、発電実績管理、ばい煙排出量管理、メーターデータ管理、料金計算等の業務システムの他、人事労務、経理等の経営管理システムをクラウドサービスで提供されるというもの。

海外展開も計画

2015年3月にまずは国内中心にサービス開始をしていきますが、今後は需要が高まることが予想される海外市場にも積極的に目を向けていくとしています。

また自由化による新電力への顧客流出を少しでも食い止めたい東京電力ですが、この取組みを通じた競争力の強化も狙っているということです。

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東芝、水素による電力貯蔵を2020年実用化に目途、コストは蓄電池の半分

2014年12月に世界で初めてFCV(燃料電池自動車)を発売したトヨタをはじめとし、水素を用いた電力保存の方法が各社で模索されています。

東芝によると、水素を使った電力貯蔵技術に関して2020年にも実用化ができる見込みを発表。
それによると、蓄電池を使った電力貯蔵に比べて設置・運用費用が半分で済むのだそう。また蓄電池よりも長期の電力保存が可能というころで、再エネ設備の出力吸収の一つの打開策として強力視されます。

参考

米メーカー、ハワイに蓄電システム提供でマイクログリッド構築

独自の蓄電池を持つアメリカのエネルギー貯蔵システムメーカーAqunion Energy社はハワイに構築される予定のマイクログリッドに自社のシステムを供給することを1月7日に発表しました。

太陽光発電をベースとする容量1MWhの独立型のタイプで太陽光発電で得られた電力を蓄電し、構築される予定のハワイ島Bakken Haleのすべての消費電力を賄えるとされています。

太陽光発電の経験が豊富な米Renewable Energy Services社が設計と施工を行い、年間発電量350MWhを見込んでいます。
太陽光発電システムは出力176kW、蓄電池システムは容量1MWh、さらに非常用のプロパンガス発電機という構成です。
(ちなみに太陽光発電のキロワットあたりで見込まれている年間発電量は1988kWhで、日本の2倍弱というなんともうらやましい気候です。)

日中8時間の発電と充電、夜間16時間の放電サイクルに同社の蓄電池が向いていると言われています。

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電力小売り自由化に向け、2015年末までに各社準備を進める

電力小売りの自由化が2016年に実施される予定であり、経済産業省も制度設計の検討・関係政省令の整備を15年前半に進める予定をしています。

電力小売りが自由化されると事業区分が無くなりすべて対等な条件となりますが、大手の電力会社では電源設備が豊富なため有利であるという点については変化はなさそうです。

プレイヤーが出揃う2015年後半からは各社企業向けサービスで肩慣らし

そのため顧客を持つ事業者と設備を保有する事業者が提携して大手に対応するという状況が進みそうです。電力小売業者は自由化に伴って登録制となりますが、新たに参入する業者がシステムを整えたり販売体制を確立するには半年は要するため合従連衝のピークは15年前半となる見通しで、登録が始まるとみられている15年7月頃には新規業者が出そろうとみられています。

家庭や小規模な事業所など契約電力が50キロワット未満の電力販売が大手電力会社に限らず開放されることになりますが、家庭向けにとどまらず15年後半には企業向けの新しいサービス等、自由化の足掛かりとなる事業展開が見られると予測されます。

新電力側から期待されるのは「セット販売」などの新サービス形態

実際すでにそうした動きも見られ、ソフトバンクグループのSBパワー(東京・港)が全国展開しているメガソーラーで発電した電力を大口顧客向けに販売し始め、開始から5か月ほどですでに約100拠点の契約が進んでいます。
ソーラーパネルを設置している家庭の電力を1円上乗せして買い取るというサービスを開始し、既存の顧客はもとより新規顧客の開拓も見据えているのです。

また他に通信と電力の組み合わせやガス・電機・自動車などの他分野でも電力との融合を考えた新規サービスの準備が進められています。

電力会社は域外進出を中心に準備を整える

大手電力会社ではエリア外でも電力販売を行うなどの事業展開に乗り出しているところもあります。このように事業者同士の競争で新たなサービスの登場や需要する側が電力を選べる仕組みなどがたらされるとともに、企業の立場としては電力コスト削減に取り組むことになりそうです。

参考

「廃炉のコストは電気料金に上乗せで徴収」経産省が枠組みを設ける

電力小売りの自由化後も、従来と同様に原子力発電所の廃炉に掛かる費用を電気料金に上乗せし、全ての利用者に請求・収受する方針が、経済産業省による有識者会議にて了承されました。

経済産業省は、原子力発電所の老朽化が進み廃炉を決定した場合、それに伴う巨額費用を確実に回収できる料金制度の確立が必要との見解を示し、自由化後は、配送電会社により、送電線利用料の上乗せ分として徴収を行う枠組みを設けるとのことです。