2020年4月までに送電分離を義務付け、追ってガス市場も

政府は、電力市場改革について新たな動きを見せました。東京電力関西電力に対して「2020年4月」までに送電部門の分社化を義務付ける方針を掲げました。

また同時に、ガス市場改革についても、17年の家庭向けガスの自由販売化に続き、東京ガス関西ガス東邦ガスに「2021年から2023年」までにガス管部門の分社化を義務付ける方針も掲げました。

これらの分社化は、エネルギー市場の販売の自由化に合わせ、新規参入事業を公平に扱う体制を整えるためです。

東京電力ら4社ら送電部門などで提携決定

東京電力北海道電力東北電力中部電力の4社が2015年度から電線や電柱を共同調達する送電線部門の提携を決定しました。将来的に電気料金が引き下げに繋がる可能性もあります。
4社は送配電網でも協力し、北海道や東北で再生可能エネルギーを利用して作られた電気を首都圏に送ることも検討しています。

電柱や電線などの部品調達や工事の発注は現在は各電力会社が個別に行っていますが、随意契約が多い為コストが高いという指摘があり、これを4社で提携して共同調達することにより、コスト削減を目指します。
東電は、火力発電の燃料の液化天然ガスを中部電力と共同で調達する予定をしており、発電コストの引き下げに繋がりそうです。

各社の提携の背景となっているのは、2016年からの電力小売の自由化を円滑に進めたい政府の目論見があるようです。大手4社の送電線の運営コストを引き下げることにより新規の参入をしやすくし、電力市場を活発化しようという政府の思惑がうかがえます。

東京電力、スマートメーターを新たに190万台設置

東京電力では、2014年4月にスマートメーターの設置を多摩地区から開始して、東京以外の地域を含め年度末までに合計190万台の設置計画を進めています。
まず先に、多摩地区の家庭に設置したスマートメーター約14万台を対象に、新しいサービスを開始します。

スマートメータと電力会社のシステムをつないで機能を実装する新サービスは2つで、引越をする場合、検針に立ち会わなくても移行処理が完了すること、停電になった場合でもスマートメーターの通電状況を遠隔で確認することによって、早く復旧させることが出来るという特定の状況に限っての場合だけとなります。この2つのサービスに続いて7月からスマートメーターを使用して電力使用量の見える化サービスの開始をする予定です。このサービスは多摩地区だけではなく、スマートメーター設置済みの家庭が対象となり、パソコンやスマートフォンで毎日使う電力使用量の詳細データーを確認することが出来ます。

2016年4月から始まる電力の小売全面自由化に向けて、他の電力会社もサービス開始の準備を進めています。東京電力もスマートメータを活用した新しいサービスを提供することで、顧客の囲い込みを図ることが最も大きな狙いとなります。

参考

太陽光発電増加で国民負担が増加

経産省によると再生可能エネルギーの固定価格買取制度を導入すると太陽光発電が現在のペースのまま増えると昨年の約1800万kWから2030年には約1億4千万kWに達してしまうことから実際導入するには送電設備が足りず多額の費用が必要になるということ。

昨年認定した設備の発電出力は約7千万kWで太陽光が9割以上を占めました。すべての発電を始めた場合の国民負担は年間2.7兆円と大幅に膨らむ計算。

経産省は2030年の再生可能エネルギーや原子力などの最適な電源構成(ベストミックス)の議論を始めています。
今後、導入拡大に伴う新たな国民負担を試算して議論していきます。

発電を始めた太陽光発電設備は2013年度以降、月平均約64万kW増えます。このまま無制限に増え続ければ20年に約6500万kW、30年には1億4千万kWに達すると見られ、太陽光は天候などで発電量が変わるため発電線で電気を他地域に流すなど対策が必要です。
実際に1億キロワットを超える太陽光発電を受け入れるには今の送電設備不足とされています。

参考

ソニー、住宅間で直流融通のマイクログリッドシステム技術を構築

ソニーは分散型小規模エネルギー網(マイクログリッド)システムの商用化を始めます。

このシステムでは複数の一般住宅で発電された太陽光エネルギーを直流のままお互いに融通し合うシステムです。通常パワコンで交流に変換される太陽光発電からの電力ですが、直流のままの融通で発電した電力をロスすることなく有効に使うことが出来ます。

しかしながらこのようなシステムは世界的に見ても実用の例がないため、そのノウハウは今から構築していく必要があります。14年に沖縄科学技術大学院大学などとともに行った実証実験で基礎技術を確立し、今後は導入コストの低減に向けて、電力変換装置など構成部品の調達先を見直す。

2年後には一世帯あたりのコスト200万円程度の水準を目指すとしています。

参考

沖縄県宮古島の「島嶼型スマートコミュニティ実証事業」

沖縄県にある宮古島において、2011年度から2014年度にかけて「島嶼型スマートコミュニティ実証事業」と呼ばれる事業が実施されてきました。この事業は、島内で行われる太陽光発電や風力発電について、発電効果を可能な限り活用することを目的とした事業です。沖縄県や宮古島をはじめ、沖縄県が行うスマートエネルギーアイランド基盤構築事業の一環として、三井物産や宮古テレビのほかに、東芝沖縄電力、沖縄エネックといった企業も参加しています。

事業内容は「全島EMS(エネルギー管理システム)実証事業」のほか、「来間島再生可能エネルギー100%自活実証事業」などの事業から構成されています。通称「すまエコプロフェクト」と呼ばれている「全島EMS実証事業」に関しては、地域エネルギー管理システム(CEMS)の構築のために、多くの住宅や事業所、そしてポンプ場などが参加しました。タブレット端末を使って電力消費量を可視化する「見える化」やデマンドレスポンスなども実施され、地下ダムにおける揚水ポンプについては太陽光発電がピークになる時間帯を見計らって、稼働する時間を移行していくといった運用が実証されました。

「来間島再生可能エネルギー100%自活実証事業」は100%自活を実証

当初の計画は31カ所、合計380kWの太陽光発電と蓄電池176kWhを設置するものでしたが、2014年には蓄電池の容量が足りず、もう一台追加し、太陽光発電380kW、蓄電池352kWhという設備で実証実験に挑みました。
そして今回太陽光を使った再生エネルギーなどのみで、宮古島市における来間島内に必要な電力の需要を賄うことが実証に至ったと発表されました。

来間島の人口は約200人、電力需要はピーク時に200kWほどになりますが、屋根の上には380kWになる太陽光発電設備が設置され、島内における電力系統に定置型蓄電池が導入されるなど、連系線による送受電が最小限になる運用も実証されました。

「全島EMS(エネルギー管理システム)実証事業」の結果は後日

全島において行われたEMS実証実験では、デマンドレスポンスに対して平均1割の家庭が応答することを確認。またポンプ稼働を、太陽光発電の稼働が活発になり余剰が出やすい昼間にシフトするなどといった実験を行ったということ。

詳細は2月18日に行われるシンポジウムで報告される予定です。

参考

NTTグループ「エコめがね」利用者を対象に

「エコめがね」の利用者を対象にNTTスマイルエナジーは太陽光発電の発電電力を高価買取する「エコめがねPlus」を全国展開する計画を発表しました。東京電力の管内から離島や東北地方など一部地域を除き各地域に展開します。売電先は新電力エネットになるということ。

「エコめがね」とは太陽光発電の発電状態を視覚化できるサービスで太陽光パネルからNTTスマイルエナジーが運営するエコめがねサーバーへ発電状況が送信され、利用者や太陽光発電の販売会社がインターネット上で閲覧することができます。
そのため、パソコンをはじめとしたスマートフォンや一部携帯端末など様々な端末から発電状況を閲覧することができます。全国でエコめがねの利用者による発電量は350MWを超えています。

太陽光発電は雨天時など様々な気候に左右されるため、供給電力が安定しない欠点がありますが、NTTスマイルエナジーは全国の幅広い地域から太陽光電力を集めることで安定した電力を得ることができると考えています。2016年4月には電力の小売りが全面的に自由化されるため、今後の発展に期待できます。2011年にNTT西日本とオムロンが共同設立したNTTスマイルエナジーは、エコめがねを中心にサービス拡大を目指しています。

参考

西部ガスが福岡県に水素ステーションを開発

西部ガスでは、都市ガスから製造した水素を燃料電池などに共有する「水素ステーション」の建設をすることになりました。

水素ステーションは、九州で初めての水素の製造・貯蓄・販売を1カ所で引き受ける施設となります。場所は福岡県の福北工場。ここでは液化天然ガスから、都市ガスを製造していますが、今後は新設の「ひびきLNG基地」に集約するために同地は27年度中に閉鎖することになっていました。
閉鎖される福北工場跡地は、立地条件も良く、また有効活用にということで、水素ステーションの建設場所として決定したそうです。

水素と酸素からの燃料電池は、市場で拡大してきていると共に、開発も進んできて、現在では全国で4カ所の商用ステーションが稼動しています。経済産業省資源エネルギー庁は、全国100カ所に設備計画を立てていて、今のところ具体化している建設場所は45カ所です。

総事業費約6億円のうち、経済産業省から2億8,000円程度の補助を受けて行われます。

参考

ダイキン工業、JAXA「はやぶさ」のピークカット技術を応用したエアコンを開発

ダイキン工業は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が公開している小型惑星探査機「はやぶさ」の技術を、ルームエアコンに応用する技術の検証を始めます。これは、現在JAXAが進めている、航空宇宙分野における研究成果の民間転用に協力する形で行われるものです。
ダイキン工業は、電子ピークカット制御技術を、自社製品のルームエアコンに適用し、1月28日から開催される「新電力EXPO」で、テストモデルを展示し、デモンストレーションを行う予定です。

参考

経産省、新設の「電力市場監視委員会」を最強の8条委員会に

経済産業省は、電力自由化に伴って新たに設置する規制機関「電力市場監視委員会(仮称)」に従来に無い権限を持たせ”最強の8条委員会”にする方針を発表。

経済産業省に意見具申を行うことができるうえ、卸・小売市場や送配電部門の行為規制の監視が単独で行える権限を持つことになります。
専属の事務局は、数十人規模となる見込みで、『電気事業者から独立』・『電気事業者と肩を並べるほどの専門性を持つ』・『規制のとりこにならない』の3つの特徴を持つ組織であるのが特徴です。同委員会は、将来の電力小売り全面自由化に伴い、電力の卸・小売市場の健全性を行う行為を監視します。

参考