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一般家庭の住宅内で利用するエネルギー源は主に電気、ガス(都市ガスおよびプロパンガス)、灯油(石油)の3種類があります。多くの電化製品の動力となる電気に比べ、ガスと灯油の用途は主に熱を作る事に限られるため、電気の利用料金が光熱費の多くを占める家庭も多く、利便性などの面からも電気のみに一本化するオール電化仕様の家も少なくありません。一方で熱効率はガスや灯油の方が良く、単価も安いことから、暖房に関わるエネルギー消費が多い地域は石油ストーブなどを活用しながら光熱費の負担を抑えています。
最適なエネルギー利用計画はご家庭の状況によっても変わりますが、特にエネルギー使用の比率が多い暖房と給湯において、効率の良い機器に買い替えることで光熱費の削減を測れる可能性が高いです。また太陽光発電を載せられるご家庭は、売電収入だけでなく長期的な面での光熱費の削減のメリットが大きくなります。
まず初めに住環境計画研究所の調査による標準的な家庭におけるエネルギーの使用状況のデータをご案内しながら、お家のどの部分でどのエネルギー源をどれくらい消費しているのかを大まかに把握していきます。
図1は家庭のエネルギー消費の用途別内訳を地域別に示したものです。また、呼応するそれぞれのデータ詳細は表1でまとめています。
照明、家電の使用量は地域差が少ないことが分かります。北陸地方だけ家電・照明の消費量が平均と比べて多くなっていますが、広めの敷地面積により多くの世帯人数で住まう傾向が指摘されています。いずれにせよ、一人頭の家電や照明の消費量は全国的に大きな差異はないと言うことができるでしょう。ただ、他のカテゴリーにおけるエネルギー消費量が80年代から大きな変動が無いのに対して、この照明、家電カテゴリーは年々増え続けており、80年代と比べると倍近くのエネルギーを照明、家電において消費するようになっていることは注目したいポイントです。
単位 GJ | 冷房 | 照明 家電等 |
給湯 | 厨房 | 暖房 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|
全国 | 0.8 | 14.8 | 13.6 | 3.2 | 11.2 | 44.0 |
北海道 | 0.0 | 15.0 | 14.6 | 3.0 | 35.6 | 68.7 |
東北 | 0.3 | 16.0 | 15.5 | 3.1 | 23.7 | 59.1 |
関東 | 0.7 | 13.8 | 14.7 | 3.4 | 9.6 | 42.5 |
北陸 | 1.4 | 19.6 | 16.2 | 2.8 | 18.7 | 59.2 |
東海 | 0.9 | 15.4 | 14.3 | 3.2 | 9.6 | 43.8 |
近畿 | 1.1 | 14.6 | 13.5 | 3.0 | 8.5 | 41.1 |
中国 | 1.2 | 14.2 | 11.7 | 2.6 | 9.6 | 39.6 |
四国 | 1.1 | 16.5 | 11.8 | 2.8 | 7.7 | 40.2 |
九州 | 1.0 | 14.2 | 10.1 | 2.7 | 7.3 | 35.6 |
表1 用途別の消費量内訳
冷房の消費量は意外にも少ないことに驚かれた方も少なくないかもしれません。「家の作りようは夏をむねとすべし」と兼好法師が徒然草に書いたように、日本の夏のうだるような暑さは冬の寒さと同等、もしくはそれ以上に耐えがたいと考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、一時間単位の気温推移において、暖房稼働時間は冷房稼働時間の7.5倍にもなる※上に、冷房稼働時間帯の多くは学校や仕事で家を空けている昼間に当たるのでさらに家庭での冷房の使用時間は限定的になります。
暖房は全国的には全体のエネルギー消費の4分の1程度となっているものの、北海道など特に冬の寒さが厳しい地方では消費エネルギーの半分以上が暖房に使われることもあります。
電気 | 都市ガス | LPG | 灯油 | |
---|---|---|---|---|
単価/GJ | 7,800円 | 3,700円 | 6,000円 | 2,500円 |
(金額の幅) | 7,200~8,600円 | 3,000~5,700円 | 4,200~8,000円 | 1,700~3,100円 |
表はそれぞれのエネルギー源において、1GJ当たりの単価を掲載したものです。LPガス料金は地域差がかなり大きく、その差は4,200~8,000円と2倍も異なる場合があります。詳しくはLPガスの高い料金の秘密と適正価格を検証でもご案内していますが、交渉次第で安くなる場合もあるので一括見積などもご検討ください。
単純に単価を比較すると「灯油、都市ガス、LPガス(プロパンガス)、電気」という順に高くなる一方で、実際にかかってくる光熱費はご案内した単価の他に使用する機器の効率も大きく関わってくるので、一概に比較しきれない部分があることは注意が必要です。例えば電気ストーブは光熱費がかさみやすい暖房機器と言える中で、ヒートポンプを使って熱を作り出すエアコンのように高効率の暖房器具であれば消費電力に対して2~4倍の暖房効率が見込めるので、灯油と比べてもランニングコストが安くなる場合が多いです。
安全性の問題を考える時、常時にも安全に使える、不意の事故が起きにくい構造である、といった機器自体の性能に加えて、災害時ライフラインの復旧速度を考慮する方が増えています。大震災などの災害時、電気はガスよりも早く復旧できる傾向にある※ことからオール電化を良しとする方もいる一方で、電気だけに頼ってしまうよりもガス併用のほうがリスク分散ができる、という意見もあります。また、ガスでも大規模なインフラに頼らない、個別配送のプロパンガスの方が良いという声もあります。
こうした大震災のような事態は頻繁に起こるものではなく、平均化された復旧日数などはあまり意味のないものかもしれません。災害対策を考える際はできるだけ多様なシナリオに対応できるよう準備するに越したことはなく、例えば、コストはかかるものの蓄電池を使いながらガスはLPガス、など常時のコスト比較や災害時対策の優先度なども合わせて選択していくのが良さそうです。
常時の安全面では、空調においては利便性や安全面、さらにエネルギー効率の面でエアコンを選ばれる方が多いようです。エアコンの風が苦手、という方は足元からじんわりと温めてくれる床暖房なども注目されています。調理器具のガスコンロとIHの安全面での比較も視点も、以前はIHを支持する声もありましたが、ガスコンロに安全自動制御センサー(Siセンサー)の搭載義務化で消し忘れなどのリスクが格段に減ったことや、実際に炎が見える方が間違って高温部に触ってしまう可能性が低いといった点から、ガスを選ぶ方も増えています。
いずれがより安全で災害に強いかという問題に対して、絶対という解は残念ながら存在しませんが、ガス併用・オール電化のいずれを選択するにしても、センサー制御やタイマー制御などのカスタマイズ機能が充実した機器の選択などで万一に備えるのがいいかもしれません。
ガスや電気の環境への影響度合いを推し量る指標には、単位を揃えたCO2排出量を使うのが一般的です。以下の表では家庭で利用する電気、ガス(都市ガスおよびLPガス)、灯油における1MJ(メガジュール)あたりの二酸化炭素排出量を一覧にしてご案内しています。
エネルギー源 | CO2排出量 (kg/MJ) |
---|---|
電気 | 0.08~0.17 |
都市ガス(13A) | 0.050 |
LPガス | 0.063 |
灯油 | 0.068 |
電気の二酸化炭素排出量は変動幅が大きいことに注意が必要です。電力会社ごとや、時世によっても変動します。原子力を使用していた年の二酸化炭素排出量は0.3~0.4kg/kwh(約0.08kg/MJ)程度だったのに対し、原発稼働停止後は特に石炭による火力発電が増えたことで0.7kg/kwh(0.17kg/MJ)強まで約倍増しています。一方、太陽光発電を自宅に設置し、直接利用するような場合には二酸化炭素排出量はゼロになります。
また、表ご案内する二酸化炭素排出量に加えてインフラの末端に当たる使用機器のエネルギー効率も大きく関係してきます。例えば同じ電気を利用する温水器であっても、ヒートポンプを利用して水を温めるエコキュートは約3分の1の使用電力で同じだけお湯を作ることができます。
結局、どんなエネルギー利用が一番環境に良いのか、と考えた場合、可能であればエコキュートのような高効率の電気温水器を太陽光発電の電力を使って利用する、というような設備が考えられますが、そもそもマンションなどで太陽光発電が設置できなければ現実的な話ではなくなります。傾向としては電気よりもガスや灯油の方が二酸化炭素排出量が少ないと言えるため、ガス等利用でより高効率の暖房・給湯機器などを導入する方が環境に良いと言うことが言えそうです。
おうちの設備やエネルギー利用計画を考えた場合、経済面、環境面、そして安全対策面いずれにおいても各家庭の状況ごとに望ましい選択肢が異なってくることは、既述の通りです。それでは具体的に、どのような家庭の状況でどんなエネルギーミックスが適当と言えるのか、最後にまとめとして具体例を挙げながらご案内していきます。
都市ガスのある地域ではリスク分散などの面でも、ガス併用をお考えになる方も多いと思います。また、お料理好きな方にはやはりガスコンロが人気です。使用量が多くなるほど単価が上がる電気とは逆に使えば使うほど単価が安くなるガス料金形態を最大限活用するために、給湯器もガスを利用するもので構成するのが通常です。暖房は、快適性の高い床暖房をリビングなどを中心に構成し、寝室などはエアコンといった構成が多いです。床暖房にも種類がいくつかありますが、ガス温水を使うものを選び、エコジョーズなど高効率のものと組み合わせるとお得でより快適な住宅を実現できます。エコに興味がある方は、100%自然の力で湯を沸かす太陽熱温水器などの導入も考えてみてもいいかもしれません。
戸建てで、東西南のいずれかに向いた広くて影のかからない屋根をお持ちの場合であれば、太陽光発電の設置がお得です。売電単価にもよりますが、7~8年で初期投資回収ができる程費用対効果が高くその後大事に使えば30年以上は持つとされる太陽光発電は、売電単価が毎年下がる事なども考えると、機会があるタイミングで迷わず取り付けるのが良さそうです。
太陽光発電の容量は一般家庭でガス併用なら3~6kW程度あれば多くの電力がまかなえると考えられます。初期費用を抑えるために小さめにするのか、売電収入を増やすために多めの容量にするのかはお財布とご相談を。設置後10年を過ぎたら売電するよりも自家消費する方がお得になるので、蓄電池の設置を検討したり、温水器の買い替えのタイミングが合えば電気温水器に替えるといった選択もありです。
オール電化を選択される場合、エコキュートなどの高効率電気温水器を中心に電気だけのシンプルなエネルギー利用が魅力的です。冬も比較的温暖な九州地方などなら空調はエアコンで十分な場合も多いでしょう。ただ、冬の寒さが厳しい地域ではいくらエコキュートを使ったとしても電気代がかさみがちになるため、以下でご案内する灯油と電気のハイブリッド利用などの方がお得と言えます。
戸建てであれば同じく太陽光発電の設置がおすすめですが、オール電化家庭はガスや灯油を併用する家庭と比べてより多くの電力を利用するので、パネル容量もより多めで検討するのが良さそうです。
特に寒冷地などではオール電化などでは暖房費がかかさみやすくなります。寒冷地で消費量が多くなる暖房には灯油を使うとライニングコストが下げられることが多いので、石油給湯器や灯油ストーブなどで冬はしっかりお家を暖めながら、雪国でも12%以上の設備利用率でしっかり発電できる地域などは太陽光発電も利用しながら電気使用量をしっかり抑えるといった設備プランが考えられます。
災害時にも生活に困らないエネルギー利用計画をするには、自宅でしっかりエネルギーを創れる設備を取り入れながら、暖房を中心に異なる電源を利用する機器を複数種類用意してリスク分散を図るとよさそうです。具体的には大容量の太陽光発電と蓄電池、さらに太陽熱温水器で、万が一ライフラインが途絶えた場合にも電気とお湯を確保できるようにし、暖房はエアコンや床暖房、灯油ストーブなども常備しておくといいかもしれません。給湯は太陽熱温水器をバックアップとして利用できるため、電気、ガス、灯油は平常時の利便性を優先して選んで問題ないでしょう。
マンション居住などで太陽光発電が設置できない場合、二酸化炭素排出量が多くなりがちな電力はできるだけ避けたいところです。二酸化炭素排出量が少ない都市ガスの地域にお住まいであれば、エコジョーズなどの高効率ガス給湯器を中心にガス併用の機器構成にするのがいいかもしれません。暖房は快適性を求めるならガス温水式の床暖房がおすすめ。居住面積が小さめで断熱がしっかりできているお宅であれば、電気を使うエアコンでも省エネで快適な住空間を得られそうです。
コストパフォーマンスを重視する場合、エネルギー利用の半分から3分の2を占める給湯と暖房に、単価の安い灯油やガスを選ぶのがおすすめです。単価が特に安い灯油を使う石油給湯器は初期費用は高くなりますが、世帯人数の多いご家庭にとってはお得な選択肢である可能性が高いです。その際暖房も灯油を中心に使い、調理はIHにしてガスの利用を無くせば基本料金も一本化できるのでお得になります。
世帯人数が少なく、給湯にかかる光熱費が限られている場合は安価なガス給湯器を購入する方がお得な場合が多いかもしれません。暖房はコストを重視して灯油ストーブも選べますが、居住面積の限られたマンションなどでは換気に特に気を付けることをお忘れなく。
ご家庭によって最適な選択肢が大きく変わるおうちのエネルギー利用計画は、プロの手に頼るのも手です。以下では電気、ガスを中心におうちのエネルギー利用を助けてくれる、各部門の専門業者を上手に探すために便利なサイトなどをまとめてご案内しています。ぜひご活用ください。
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