包丁などを使った細かい作業も多い台所では、適切な照明が必要となります。壁付け型からオープンの対面型など吊戸棚が無いキッチンレイアウトのタイプにリフォームする際などには、照明も併せて計画をすることも少なくないのではないでしょうか。コンロ上には照明付きのフードを付ければ事足りるかもしれませんが、作業台やシンクなどの照明は天井付けなどで新設が必要となることが多いかと思います。以下ではキッチンにおける照明計画のポイントをまとめています。
照明の種類で料理の旨い不味いが変わるようなことはありませんが、お料理の見た目の良さが味の印象を左右するということは、程度の差はあれ共感できる方も少なくないのではないでしょうか。一昔前の壁付けキッチンなどには吊戸棚の下あたりに照明器具が備え付けてあり、中には蛍光灯が入っている事が多くありました。昔の蛍光灯は微妙な色味が再現できる商品が少なかったことから、当時は食材が青白く、不味く見えるような場合も少なくありませんでした。
光の色味は色温度という指標で示されることが多いのですが、キャンドルなどの赤い光は色温度が低く、中間が白っぽい昼間の太陽の色、色温度が高くなるにつれて青みがかった色になります。余談で、色「温度」とはいうものの、体感的には色温度の低い赤っぽい色の照明の方が温かく感じ、逆に青みがかった昼光色などは「さわやかな」とかいった言葉で表現されるように、涼しい印象を受けることが多いです。
色温度が低く温かみのある色味として白熱灯は昔から人気ですが、消費電力が多かったり熱を持つ事から近年は採用されることが少なくなってきています。その代わりに蛍光灯や、さらに消費電力が少ないLEDなどでも白熱灯の色を再現した商品(電球色などと言われる)も出ているので、こうした商品を使うのもおすすめです。電球色は雰囲気が作りやすいことでも人気があり、ダイニングやリビングと一緒の空間にキッチンがあってトーンを揃えたい場合などにもおすすめです。
一方赤みのある電球色は汚れなどが見にくく、細かい作業が求められる場合にやりにくさを感じる方もいらっしゃいます。清潔感があるという理由からも、色温度が高い昼白色を選ぶ方も少なくないようです。リビングが電球色ベースでその兼ね合いを考える場合は、キッチンも含めた全般照明を電球色にし、ワークトップのみにタスク照明として昼白色を採用することもできますが、光源などをうまくキャビネット裏などに隠して見えないようにする(いわゆる間接照明)方が色味の違いが目立たなくて済みます。
照明器具は、部屋にいるときはずっと付けていることを前提とした全般照明と、特定の場所で特定のタスクを行う時のみに点ける局部照明を組み合わせるのが良いとされます。全般照明は比較的暗め、局部照明は明るめでスポット的に狭い空間を照らせるものが適しており、それぞれの部屋における大体の目安となる照度もJISなどで規定があり、計画時の参考にできます。
キッチンにおいては、ダイニングやリビングと一緒の空間にある場合、全般照明を30~150lx(ルクス)とし、調理用に局部照明を200~500xlの間で必要に応じた照度を確保します。局部照明は全般照明とのコントラストが高いほどスポットが当たった部分が見えやすくなりますが、逆に明るすぎても白く飛んでしまって見えにくくなるので、照度の差は3~10倍の間に収めるのが良いとされます。この方程式に従うと、全般照明が40xlであれば作業台に当てるスポットは200~400xl程度にするのがいい、ということになります。LDKのつながったお部屋で、リビングでテレビを付けていることが多かったり、ダイニングテーブルで子供が勉強をしたりといったシチュエーションが多く想定されるご家庭では全般照明を明るめの150xlなどに設定している事も多いでしょう。この場合はそれに合わせて局部照明も明るめに設定すると、手元が見えやすくなります。
さて、「タスク照明は200ルクス以上」なんて言われても、インテリアや建築の専門でもない限り具体的に想像するのは難しいでしょう。ここではより具体的な照明の数などを確認していきます。
まず全般照明ですが、できるたけ天井にコンパクトに収まっているデザインを選ぶのが適当です。キャビネットがあれば、その上部に直管型の器具を間接照明として取り付けると、雰囲気も出て素敵です。ダウンライトが選ばれることも多いですが、汚れが付いても拭きやすく、また眩しさを抑えられるようカバー付きのものを選ぶのが無難です。キッチン部分の面積7平米程度で蛍光ランプであれば40Wくらいのものが目安です。
局部照明は、ワークトップの大きさにもよりますが全体で蛍光ランプが合計40~60Wくらいが目安です。先ほども少し触れたように、昔の台所のように照明カバーがむき出しで、光源が目に入る位置にあると作業が心地よくないので、キャビネット裏などに光源は隠すようにします。
局部照明はこの他に、スナックなどが入った食品庫や冷蔵庫のあたりだけ照らせるものも用意しておけば、ちょっとビールとするめが出したい、なんて時にキッチン全体の照明を付けなくても済むので便利かもしれません。
先ほど、壁付けであればキャビネット裏に付けるのが良いとご案内しましたが、吊戸棚がないアイランドキッチンなどの対面型ではそれができません。オープンキッチンでは対面側がダイニングやカウンターなどになっているプランも多いのでペンダントライトを付けることが多いですが、スッキリとしたデザインにするとメンテナンスが楽になります。立って作業するキッチン側と、座っているダイニング側で目の高さが大きくずれる場合には、ペンダントライトの高さも少し気を使う必要があります。ペンダントを吊るワイヤーが調整しやすいものなどを選ぶというのも手です。ダイニングに華を添えるシャンデリアをこのアイランドキッチンの上部に設置したいという方もいらっしゃるかもしれません。好きな照明を好きなように選べるのは家主の特権ではありますが、清掃などのメンテナンスについては覚悟しておく必要があります。
実用面では照度や方向が調整しやすいダウンライトを採用する方が無難ではありますが、ダイニング側から見た印象を高めるためにもペンダントやシャンデリアとダウンライトの両方使いをする例も多いです。もし、ペンダントやシャンデリアを施主支給などで後付けにするなどと言った場合は、ダウンライトの光を遮らないよう位置や大きさの調整はしっかり行う必要があります。リフォームなどでダウンライトは施工費がかかる、という場合はライティングレールでも同程度の実用性が得られるだけでなく、照明の位置や数を後から変えられるメリットもあります。
照明までこだわってキッチンづくりをしたいという方は、とにかくシステムキッチンの値引き率で勝負しているような業者ではニーズが満たされないかもしれません。価格だけでなくデザインも、さらには人柄までも含めて、長く付き合っていける施工店を見つけるには、一括見積を利用するのがおすすめです。
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