お住まいの戸建て住宅のリフォームや中古住宅の購入は、耐震工事を考える良いタイミングと言えます。地震大国である日本は、国民の安全を図るため建物の耐震性を確保するための基準を設けています(建築基準法の耐震基準)。この基準は最近では1981年(昭和56年)の5月31日に大きく改正されましたが、(新耐震基準)この年以前に建てられた建物においては特に、耐震性能をきちんとチェックしておくことが重要です。2016年現在では築35年以上の建物がこれに当たります。
耐震診断の費用は日本耐震診断協会によると、木造住宅で20~50万円程度、RC造で2,000円/㎡以上(20坪総二階で約20~25万円)となっています。耐震診断については助成金制度を設けている自治体も多く、お住まいの自治体が数千円から調査員を派遣して簡易診断をしてくれる場合や、一般診断の費用を補助してくれる場合もあります。
耐震評点 | 目安 |
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1.5以上 | 倒壊しない (推奨目標) |
1.0~1.5 | 一応倒壊しない (最低目標) |
0.7~1.0 | 倒壊の可能性 |
0.7未満 | 倒壊する可能性が高い |
診断は設計書などの紙面上での予備調査と現地調査を経て、耐震性能を評点することになります。評点は1.5以上を目標とすることが推奨されているものの、予算の関係からとりあえず1.0を目指されることが多いようです。
築23年でも評点が0.35と非常に低く出た例もありますので、「まだ築30年だから」と後回しにするくらいなら簡易診断だけでも受けておくことをお勧めします。
日本建築防災協会は、木造住宅における耐震工事の費用についての実態調査を行った結果から、大体の総工費の目安を割り出す計算式を提供しています。計算式は以下の通り。
27,000円×{(耐震改修で目指す耐震評点)-(現在の耐震評点)}×延べ床面積
例えば、耐震評点が0.5、延べ床面積70㎡の中古木造住宅を購入したとして、余裕をもって1.3を目指して改修工事を行うとしたら、約150万円かかる計算になります。
上でご案内した目安はあくまで平均値に相当します。さらに同協会による資料では、300件超の事例の中でボリュームゾーンは100~150万円という報告をしていますが、とにかく安く済ませるという場合としっかりお金をかける場合では同じ延べ床面積でも4~7倍もの差になるような例もあります。例えば屋根を少し軽くするだけの60万円程度のリフォームでも、数字の面では耐震評点は上がるため耐震工事と言えなくもありません。一方基礎、構造、壁までしっかり補強しようとすると、2部屋だけのシェルター耐震が340万円という事例もあります。耐震性をメインにリフォームを考え、しっかり安心を買いたい場合は300万円程度は用意しておきたいところです。補助金制度が整った自治体もあるので、上手に利用するといいでしょう。補助金申請などのサポートは、ほとんどの場合施工店が行ってくれます。以下でご案内する一括見積などもご利用の上、適正価格×信頼性の高い施工店を是非お探しください。
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耐震工事は内容も様々で、住宅の弱い部分を補うようにそれぞれの工法を組み合わせながら行われるのが通常です。
工事内容 | 価格 |
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合板補強 | 10~15万円/枚 |
強度が心配な箇所に構造用合板を補強で付け加える工事です。外壁側、内壁側いずれからも対処が可能ですが、外壁側のほうが補強後の仕上げの合わせて少し高くなりがちなようです。室内で内装のやり直しが必要ない押し入れ内などに補強工事を行える場合は安く仕上げられる可能性がより高いです。通常はおうちの複数カ所を補強することになるのが通常で、処理する箇所(合板の枚数)に比例して費用は上がります。
製品も充実していて、強度だけでなく調湿効果・消臭効果もあり、そのまま漆喰等の塗り壁仕上げも可能な商品(「モイスかべつよし」)や、既存壁を壊さずに、上から重ねて施工できるような製品(LIXILの耐震リフォーム工法「アラテクト」)、オープンな間取りがいいけど、耐震性が不安という場合に網目状にひかりを通して、壁のような圧迫感の無い耐力壁(LIXILの「パンチくん」)などもあります。
工事内容 | 価格 |
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筋交い追加 | 25万円/箇所 |
金物追加 | 1万円/箇所 |
壁の内側の構造部の中でも柱や筋交い(柱の間に交差して設置される補強材)の強度が不足している住宅では、筋交いや筋交いと柱を補強するための金具、梁や火打梁などを追加して補強が行われます。
工事内容 | 価格 |
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RC基礎新設 | 55万円/箇所~ |
増し打ち補強 | 45万円/箇所~ |
古い木造住宅などでは土の上に束を直接立ててあるような場合もあります。また、筋の入っていないコンクリート基礎部分にひびが入っている時は、増し打ち補強を行います。基礎補強は一カ所10㎡程度で45万円程度から、一軒あたり数カ所において基礎補強を行うのが通常で、金額も数百万円の見積もりが少なくありません。
工事内容 | 価格 |
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軽量瓦への葺き替え | 50万円 |
日本瓦は重厚な美しさの反面、その重みがおうちの構造に負担を与える原因となりがちです。屋根を軽量なタイプに葺き替える事で耐震性を上げることができます。軽量瓦は安価な製品も多いので、屋根の大きさにもよりますが全面葺き替えで50万円程度から施行例があります。
お家全体の耐震工事をすると500万円、600万円といった相当な金額がかかってくる場合に、寝室に集中して耐震補強を行うという対策をする場合があります。予算の許す限り家全体を補強したいところですが、予算が限られている場合は中途半端に家全体を補強するよりも、一部屋を集中して安全性を高める方がいい場合もあります。
工事内容 | 価格 |
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内装新調(10年ごと) | 4万円/部屋~ |
外壁(10年ごと) | 50万円~ |
屋根葺き替え(30年ごと) | 50万円~ |
柱や基礎、内壁など内装部分の補強工事を行う際は壁紙などを一度剥がして行われます。外壁に合板補強を行う場合も、見た目を揃えるために合板の上に仕上げ外装を行うのが通常です。壁紙は部屋の使い方にもよりますが10年で交換、外壁も同じく10年で塗り直しが目安とされています。他にも内装の新調が伴うことの多いリフォームとして、キッチンの移動・新調、トイレ買い替え、間取り変更といったものがありますが、先を見越して必要になりそうなリフォームを一緒に行っておくことでコスト削減につながります。屋根材は30年程度で交換が必要とされます。全面葺き替えするとなると少なくない金額がかかってくるので、耐震を兼ねて行うのが良さそうです。
工事内容 |
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総額:340万円(63万円/坪) |
築80年の依頼主の木造家屋では耐震強度が全体的に低く、対策の必要性がありました。ただ住宅は広く、おうち全体の耐久性を上げるとなると建て替えができるくらいの費用が必要になってきます。子供も巣立ち、老夫婦だけで暮らしているご家庭たっだので、普段利用するリビングの横の部屋を寝室に変え、その部分を中心に耐震シェルターリフォームを行うという選択をしたそうです。リフォーム面積が二部屋(18㎡)のみという内容だったため、坪単価は63万円と高めになっていますが、家全体に対策をするのと比較すると総額的にははるかに安いと言えます。また施工面積が限定的だったため、期間も短く、住みながらの対策が可能となったのもメリットと言えそうです。
工事内容 |
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総額:360万円 |
日本瓦は重たくて耐震性能を低くするものの、50年も住み継いだ家の歴史を感じる外装に手を付けたくなかった依頼主の要望に応え、家の内側に全面的に合板を取り付けていった例です。
工事内容 |
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総額:550万円 |
耐震工事の期間は2カ月が平均的ですがリフォームは工事の音なども気になってきます。住みながらのリフォームでも少しでも快適に過ごせるよう、今回は外側だけ耐震対策という選択になったようです。耐震工事の内容については細かく報告されていないものの、外壁に補強合板を追加する内容だったと予想されます。断熱リフォームも一緒に行うことで安心感とおうちの快適性をどちらも実現させた例です。
先ほど耐震診断には自治体の助成がある場合があるとご案内しましたが、耐震工事自体にも補助を出す自治体も少なくありません。その金額は自治体によって異なりますが、最大150万円と少なくない金額を限度額に設定している市もあります。多くの場合、非課税世帯かどうかや前年度の所得などに応じて補助額上限がもうけてあり、低所得であるほど多くの補助金がもらえるようになっているので、定年して年金生活を送っていらっしゃるご家庭などは、上手に補助金を利用しながらよりお得なリフォーム計画を立ててみるといいかもしれません。住宅だけでなく、保育園などの公共施設に対して補助金を出している地域もあります。補助金申請はほとんどの場合でリフォーム業者が代行してくれるので、補助金利用の旨を見積もりを依頼の際に伝えておくことをお勧めします。
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