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新築一戸建て住宅において、光熱費ゼロも達成できる「太陽光発電の家」は標準化してきています。2015年度までは産業用太陽光発電が優遇されていたため屋根一面に10kW以上のソーラーパネルを載せるような住宅も売り出されていましたが、2016年以降は必要な分だけ載せて電気代削減の長期的なメリットを追及する方向へとトレンドは移行していく可能性が高いです。
住宅に適切なパネル容量は平均で約5kWです。オール電化の場合は平均値よりも多め、ガス併用の場合は少な目で設計してもゼロエネが達成できる計算です。電気自動車を使う場合は走行距離によって1~6kW追加することで自給自足に近い生活も可能になります。
暮らしの豊かさを向上させる省エネ型の住宅作りをする際も太陽光発電は強い味方となります。見た目が気になるという方には瓦屋根に溶け込む意匠性の高いパネルを使ったり、陸屋根に0度で設置して地上面から見えないような工夫をしたりといった方法もあります。また子世代への相続やおうちの売却などを前提とした長期優良住宅には耐久性と品質、そしてメーカーの長期信頼性なども考慮することが求められます。
太陽光発電の設置数は毎年年変わる売電価格や補助金の関係で変動が比較的大きい傾向がありますが、2016年の統計によると新築市場における太陽光パネルの総販売容量は約550MWでした。これがおよそ何軒分に当たるのかを計算するには新築住宅一軒あたりのパネル積載量に当たる4.2kWで割ればいいことになりますが、こうして算出された数字から毎年約13万戸の新築で太陽光発電が搭載されるということが分かります。これは新築戸建て全体の13.4%に当たります。残る86.6%の人は何らかの理由で太陽光発電を諦めた、もしくは検討さえしなかったということになりますが、その理由は何だったのか考えると太陽光発電のデメリットを知ることができます。
日本は比較的太陽光発電に向いた国であると言えますが、47都道府県のうち、特に東北地域では発電量が伸びない場合が多くなります。また、設置方位が最適でない場合、隣家や樹木の影がパネルにかかる場合はさらに発電量が下がります。
発電量シミュレーションで年間1000kWh/kWを下回る場合は初期費用の10年以内の回収が難しくなってきます。太陽光発電は寿命が30年と長く、保証も20年〜30年と長く提供するメーカーが多いので、本来なら15〜20年で初期費用が回収できれば採算は取れると考えて良いのですが、利益が出るかどうかが数十年先まで分からない、という部分に不安を覚える方も少なくないかもしれません。
都心の狭小住宅ではどんなに効率の高いパネルでも3kWを切る容量しかつけられないという場合があるかもしれません。太陽光発電システムは屋根に付けたソーラーパネルで作った電力をパワーコンディショナで変換するのですが、このパワーコンディショナの最小サイズが3.0kWなのでこれに合わせるパネルの容量が3kWよりも小さくなるとパワコンのオーバースペック分は余分に支払うことになり、単価に換算した時に割高になります。単価が下がらないと採算を合わせるのが難しくなり、設置を諦めてしまうケースも少なくないと考えられます。
太陽光発電の機械的な見た目はかなり特徴的で、住宅の外観には大きな影響を及ぼすと言えます。単純に見た目が好きじゃないから付けたくない、というのは結構少なくない意見なのではないでしょうか。
見た目に影響を及ぼしにくい屋根材一体型のソーラーパネルが、日本では京セラやカネカ、近年はテスラなどでも開発・販売されています。カネカは新築で特にシェアが高い傾向がありますが、見た目に対する需要の高さが伺えます。(メーカーシェア)
こうしたメーカーの製品によって外観に対するデメリットが完全に払拭されればいいのですが、残念ながらこうした屋根一体型パネルは少々値段が張るため、断念せざるを得ない例も少なくないと予想されます。
先ほど、建材一体型の太陽光発電はまだ値が張るとご案内しましたが、標準的な長方形の太陽光パネルの価格は決して高くはありません。特に新築で住宅を購入するような場合には住宅ローンに組み込みやすい、パネルを載せるための耐震性補強費用が必要ない、足場をそのまま使えるなど、費用面のメリットが多いのもポイントです。
実際に最新価格情報をご覧いただくとほとんどのパネルメーカーで30万円/kW未満で購入できるようになってきています。さらに2018年に入ってから大きく値下げをしたメーカーもいくつかあり、20万円/kWを切るメーカーさえ出てきています。標準的な新築住宅への太陽光発電設置容量4.2kWを載せた場合、安くて85万円以下で購入できる計算になります。平均で約200万円かかった2013年と比べると2018年現在はその半額以下で購入することも難しくなくなったと言えます。
今後はこうしたメーカーのさらなるコストダウン努力によって新築における太陽光発電の搭載率が高まることが期待されます。
さて具体的にはどれくらいのパネル容量が適当と言えるのでしょうか。一般家庭の消費電力は年間で約5600kWh、これは4.9kWh分の太陽光発電の年間発電量に相当します。ただこれはあくまで全国平均ですので、地域によってはガス併用の住宅で4kW前半でも足りることが多いです。オール電化で新築をお考えの場合や、家族人数が多い場合は5~7kWが必要だと考えられます。ご家庭の現在の電力消費量がお分かりであれば年間消費電力量を太陽光発電1kWあたりの発電量1140kWhで割ることで実際に必要なパネル積載容量を割り出すことができます。
生活に必要な太陽光発電容量(kW)=年間の消費電力量(kWh)÷1140(kWh)
おうちで使う分よりも多くの電力を発電することで理論的にはネットゼロ住宅が達成できます。ただ太陽光発電は一日の中でも時間ごとに発電量が変わるので、現状では太陽光発電でつくった電力だけを使った生活は非現実的と言えます。一般的には売電制度を使いながら系統電力とも併用して固定価格買取期間である10年の初期費用回収を目指し、10年後以降は価格低下が予想される蓄電池や電気自動車(EV)を活用しながらより家庭内で電力を使うような生活に切り替えるのが一つのゴールデンルートと言えます。特に電気自動車は昼間余剰の電力を充電しておけるようなH2V(ハウス・トゥー・ヴィークル)システムの商品化も進んでおり、買電期間終了後は需要の拡大や選択肢の多様化が進むと予想されます。
将来EV社の導入を計画している場合自動車が消費する電力も考慮に入れることをおすすめしますが、例えば日産のリーフの電費は約9kW/kWh※となっているので、一日の平均走行距離で30km程度のご家庭でパネル1.1kW、150kmのヘビーユーザーなら5.3kWのソーラーパネルで同等の電力を作ることができます。
EV消費電力相当の太陽光発電容量(kW)=年間走行距離(km)÷9(kW/kWh)÷1140(kWh)
EVの購入を考えた場合、消費量に相当する電力を太陽光発電で作るとなると大容量が必要になりますが、10kWを越す場合は注意が必要です。各ハウスメーカーがこぞって販売していた10kW超の全量買取住宅といった商品も既に見かけなくなった事からもお分かりのように、売電単価が大幅に下がった近年は10kWを越す太陽光発電は逆に損になってしまう可能性も高くなってきました。この場合は現時点では10kW未満に抑えながら、後に増設する可能性を考えておく事をおすすめします。
日本の消費者は特に外観にこだわりをもつ傾向があり、何十年も暮らす住宅も例外ではありません。日本の住宅に多い黒い瓦葺きの屋根には、建材として瓦と並べて屋根に敷き詰めることで見た目に太陽電池と分からないような美しい外観を実現する京セラのヘイバーンやカネカのヴィソラなどがおすすめです。
現代風の陸屋根・箱型のおうちは架台で最適角度を合わせやすいメリットがありますが、見た目を重視する場合は角度を付けずにパネルを配置することも可能です。その場合は1割程度発電量が減ってしまうことは覚悟しなければいけませんが、地上面からパネルが見えないためおうちの外観に支障をきたしません。(太陽光発電の設置角度)
近年は長期優良住宅への税制優遇など、建物の長寿化に注目が集まっています。一代で建て替えが当たり前のように考えられている日本の住宅市場は、環境負担や国民の経済負担を軽減するため中古住宅の売買が当たり前な欧米の住宅基準に近づいていくことが予想されます。新築戸建てを購入する時点で既に売却する際のことを考えられる方は現状では少ないかもしれませんが、太陽光発電を含めて省エネでも快適な生活を可能にする住宅は、特に将来の価値に差が出てくると考えられます。
太陽光発電自体は期待耐用年数が20~30年とされており、住宅が長寿化するほど取り換えの可能性が高まってくるため、製品自体の耐久性はもとよりメンテナンス性の高さにも気を配るべきでしょう。
後ろ盾のしっかりした国内メーカーの国産パネルにこだわる理由は品質はもちろんのこと、取り換えの必要が生じた際に形状が同じパネルを容易に購入できる可能性が高いことも一つとして挙げられます。国内に強い拠点ネットワークを築いてきた国内メーカーはメンテナンスの受けやすさという点でもポイントが高いです。
将来の取り換えのことを考えると、上でご案内した瓦一体型を導入するとコストが余計にかかってしまう可能性が高くなります。住宅の売却をお考えの時は汎用性の高いシステム構成(屋根の上に設置するようなタイプ)の方が、のちのコストが抑えられるかもしれません。
この項では費用面について詳しくご案内していきます。先の項でも少し触れたように新築は既築よりも太陽光発電が安く設置できる場合が多く、実際に経済産業省による統計では新築は既築より5%程度安く太陽光発電を購入しているという調査結果が出ています。(2017年のデータ)
一方新築では、単価が高めな瓦型(建材一体型)パネルが採用される事も多く、さらにお家を建ててくれる工務店が必ずしも安くパネルを仕入れられるルートを持っている訳でもない事もあり、平均単価は35.4万円/kW(2017年)と最安値価格と比較すると少し高めになっています。
以下では実際の見積もり価格例をご案内していきます。
以下では新築で太陽光発電を設置した場合の価格例をご案内しています。
設置パネル/容量 | 単価 | 総額 |
---|---|---|
高効率パネルを7kW設置 (ハウスメーカー等) |
¥300,000 | ¥2,100,000 |
高効率パネルを7kW設置 (太陽光専門業者) |
¥250,000 | ¥1,750,000 |
低効率パネルを5kW設置 (ハウスメーカー等) |
¥250,000 | ¥1,750,000 |
低効率パネルを5kW設置 (太陽光専門業者) |
¥200,000 | ¥1,400,000 |
瓦型パネルを4kW設置 | ¥400,000※ | ¥1,600,000 |
新築における太陽光発電の価格は、パネルのグレード・仕様と設置業者の割引率によって変わってきます。
高効率パネルは変換効率が19%以上のもの、低効率は効率17%未満のものとします。瓦型のものは、同製品を選ぶことによって節約できる瓦代(屋根材代金と設置費用)を引いた価格、つまり、実際の太陽光発電の設備費用に当たる金額を表ではご案内しています。
ご案内しているのは最安値価格に相当する価格で必ずしも掲載の価格で購入できる訳ではありませんが、新築で太陽光発電を勧められた場合の比較対象としてご参照いただくと、価格交渉もスムーズに進められます。
以下の表では、太陽光発電をつける場合とつけない場合の電気代を比較しています。東京電力のスタンダードプランを使った場合で、電気代単価には再エネ賦課金として2.9円を加算して計算しています。
太陽光発電をつけない場合の電気代 | 太陽光発電をつけた場合の電気代 | |
---|---|---|
月の消費量 | 400kW | 260kW |
電気代 | 12,585円 基本料金1,404円+電力量料金11,181円 電力量料金の単価 28.0円
|
8,715円 基本料金1,404円+電力量料金7,311円 電力量料金の単価 26.1円
|
新築の場合は断熱基準を今までの住宅よりも高める場合が多いと考えられるため、電力消費量は平均よりも少なめの月400kWhを想定しています。太陽光発電で作った電力は、4kWの場合で約30%が自家消費される想定で計算しています。
太陽光発電をつけると電力会社から購入する電気代が下がるのは当たり前ですが、電気代の単価も下がるところは特に注目したいです。標準的な電気料金プランは消費電力量によって単価が変わる段階制を取っており、使う電力が少なければ少ないほど電力の単価が安くなる仕組みになっています。太陽光発電を設置した場合、電気量単価の最上段階まで電力を使う場合はほとんど無いと予想されます。
一般的には太陽光発電と住宅の発注は別々で行う方が良いといわれています。その理由は品質と価格の2つが挙げられます。実績の高い専門業者の高品質な施工は配線の無駄から生じる発電量ロスや雨漏りなどの事故といったリスクを低めます。パネルメーカーとの信頼関係の強い業者は卸価格も優遇されることが多く、より安く提供できる可能性も高いのが特徴です。
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