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主に電力の用語で使われることが多いピークカットやピークシフトという言葉の意味を理解するのは難しくありません。以下の画像を見ていただければお分かりの通り、電力の需要もしくは供給は一定でなく波がありますが、この山の上部をまるまる無くしてしまうことをピークカット、山を削る代わりに谷を埋めるような形で、波をより均等に整えることをピークシフトと言います。図の下部には時間が書いてあり、一日当たりの電力の波を表したものであることが分かりますが、一日単位の他に年単位でピークシフト、ピークカットを語ることもあります。
需要や供給をピークカット、ピークシフトで均衡化することで誰がどのようにメリットが享受できるのかは、それがどの電力なのかによって異なります。以下でそれぞれのシチュエーションを確認していきます。
先項でご案内した図は実は日本の一日あたりの電力消費の変動を表したものです。季節や地域によって差がありますが、平日は産業用の需要が全体の需要を大きく引き上げ、昼間にかけてピークがあります。12時周辺はお昼休みの時間帯なので、おそらく電力を特に多く使う産業部門を中心に一時的に需要が減ります。
こうした社会全体の電力需要のピークをできるだけ無くして平衡化することは、電力会社にとって大きくメリットとなります。なぜなら電力会社はピーク需要に合わせた設備を確保する必要があり、需要の山と谷のギャップが大きい程設備を持て余して稼働時間が下がり、事業の効率が悪くなるからです。電力会社はこれまでも、揚水発電など使ったピークシフトを行ってきました。
一日あたりの需要の波に加えて年間の需要の波の大きさも電力会社にとっては悩みの種でした。図は、1968年から2001年にかけて変わっていく月間の最大電力需要の様子です。2001年においては電力需要が下がる春秋と比べて、夏場には50%近く需要が増えることが分かります。季節ごとの需要の波は、揚水発電のようにピークシフトで埋めることができないのでピークカットが重要となります。ここでポイントとなるのが節電、そして太陽光発電です。
節電という言葉が定着してきたことで、夏場のピーク需要は近年は落ち着いています。全国の夏の最大需要は2010年、2011年は共に約180GWでした。2001年とほとんど変わらない数字です。2012年以降は節電がさらに強化されて約157GW、2013年は約161GW、2014年と2015年は共に約155GWと年間の最大需要は確実に減っています。さらに以下でご案内するように、太陽光発電の普及が進んだことで今後はさらに夏場のピーク需要の低下が期待されます。
太陽光発電の累積導入量は2015年末の時点で30GW程度。これは、2010年の年間最大需要(180GW)と2015年の最大需要(155GW)の差(25GW)に近い数字なので、「最大需要が減ったのは太陽光発電の効果だ」と考えがちですが、それは間違いです。
太陽光発電の累積容量の大部分は固定価格買取制度(FIT)の全量売電を利用したものです。作った電気はそれを保有する事業者が、その事業所や工場などで利用するわけではなく、全量を電気事業者に売電されることになります。そして事業所や工場で使われる電力は今まで通り全量を電力会社から購入しています。
住宅用(10kW未満)の場合は余剰売電が適用されるので、太陽光発電で作られら電力はまず家で消費されます。ところが夏場の最大電力の需要地はそのほとんどが事業用なので、太陽光発電搭載家庭がこの時間に購入している電力(≒需要に換算される電力)がゼロであっても、最大需要へのインパクトはごく限られたものになります。
一方で電力会社にとっては2012年以降、夏場の太陽光発電の発電量はかなりありがたいものだったようです。なぜなら原子力発電がほぼ全停止した状態で供給力の不足で最悪の場合大規模な停電が危ぶまれたものの、予備率と呼ばれる安全上確保すべき供給量の余剰分を無事確保することができ、停電も免れています。
今後は産業用の売電価格は既に20円台となり、FITに頼った発電事業から自家消費を目的とした発電事業が増えることが予想されます。次の項でご案内しますが、事業所の年間最大デマンドを下げる(ピークカット)ことにより、事業者は電気代の大幅カットのメリットが期待されるためです。もちろんこれは電気事業者にとってもありがたい話で、年間の需要がさらに均衡化してくることで、無駄を省いた設備投資が可能になります。
工場などの高圧受電家においては、年間で一番多くの電力を使った時間(ピーク)の電力使用量(最大デマンド)を元に電気の基本料金が変動します。さらにその基本料金は1年間変わらないため、特に夏場に増えるピークを抑えることで年間の電気代を大きく抑えられます。これまで製造業においては夏の節電対策として遮熱塗料を塗って室内温度の上昇を抑えるといったことが行われてきました。太陽光発電は初期費用の大きさだけでなく、その重量に工場屋根が耐えられないこともあり、設置事例は限られたものでした。
太陽光発電は現在キロワット単価で30万円を下回る事例も増え、また軽量化に成功したパネルの普及も進んでいます。広い屋根を持つ工場などでは、大容量の太陽光発電を設置することで消費電力の絶対量も減らし、夏場の豊富な日射を電力に変えてそれを自家消費することで夏場のピークカットを行い、電気代を大幅に減らすことができます。
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はじめにご案内したように、電力は一日のうち夜間に特に需要が減ることから、電力会社の多くは夜間電力を昼間に比べて安く提供する料金プランを設定し、一日の需要の均衡化(ピークシフト)を図っています。
一般家庭においてはエネルギー使用のピークを夜間にもっていき、さらにオール電化にしてガスの基本料金の支払いを無くしたことで、光熱費を大幅に減らすメリットがあるとしてエコキュートの普及は進みました。ただ近年は原子力発電の稼働が見込めない中、電力会社の夜間の余剰供給量はこれまでに比べて小さくなっています。このことから夜間割引を廃止する電力会社も出てきており、新たにエコキュートを設置するメリットは薄れつつあります。
蓄電地も夜間電力を貯めて昼間に放電することで電気代を削減できるということで宣伝されましたが、実際に電気代は削減できるものの、その経済的メリットは初期費用を上回ることはないことから災害対策などを目的とした導入にとどまっている状況です。
東京電力は2016年の電力小売り自由化に伴って一新した電力プランで、高圧における最大デマンドによる基本料金設定を家庭用(低圧)にも適用したプラン(スマートライフプラン)を発表しました。30分単位の最大電力消費量によって決まった基本料金はその後1年間適用されます。
例えば現在、40Aの契約で月15,000円を電気代として支払っているご家庭において、電力使用量を平均化すると1時間あたり0.7kWhになります。仮にこのご家庭が年中一定の量で電気を使用したとすると、基本料金は1kWで450円ということになり、従量電灯の40Aの基本料金1,123.2円と比べて月に673.2円、年間約8,000円が基本料金だけで節約できることになります。
ただ実際は電力使用量は時間ごとに揺れ動くのが通常で、東京電力は従来の40Aは新プランでは3kW契約、基本料金は1,350円になると予想してます。つまり、実質的な値上がりです。
こうしたプランはHEMSで電気の使用量を的確に把握し、設定のデマンド値を超えた時点で蓄電池から放電を行う、というような設備があって初めて、お得と言えるようになります。新電力が増えて今後は電気料金のバラエティがさらに増える中、HEMSや蓄電池が入っている家庭は大きくメリットとなり得ると考えられます。
太陽光発電は一日の間に発電量が変化します。パネルが向けられた方位に太陽がある時間に一日の発電量のピークがきます。つまり南面にパネルを付けると、12時がピーク時間帯となります。
ところが場合によってはこのピーク時間帯の電力をわざと捨ててしまうような(つまりピークカット)システム構成を行う場合があります。どういうことかと言うと、太陽光発電システムは実際に発電を行うソーラーパネル(太陽電池)と、その電力をまとめて交流に変えて家の中で使えるようにしたり、系統に送電できるようにするパワーコンディショナーがあり、パネル側の出力をパワコンの出力より大きい状態(過積載)にするのです。
これは主に、パワコンの容量を小さくして初期費用を抑えることを目的としています。この初期費用の削減分が、ピークカットによって無駄になる電力の価値(多くの場合売電単価と掛け合わせた金額)を上回っている場合にこうした方法が取られることが多いです。どれくらいの容量まで過積載しても問題ないのか、という事などは以下のページで詳しくご案内しています。
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