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太陽光発電などの再エネ発電の事業者が固定価格買取制度(FIT)を利用して得る売電収入は、電気を利用する人全員が、使用した電力量に応じて「再生可能エネルギー発電促進賦課金」を負担する形でまかなわれています。単価は全国一律で一年に一度変更されますが、2022年度(令和4年度)は3.45円/kWh。例えば電気代として7,000円を支払っているご家庭の場合、さらに882円が上乗せされて徴収されることになります。(40Aで使用量260kWh)
一方で太陽光発電を搭載している家庭は搭載していない家庭と比べて電力使用量が少なくなるため賦課金の負担額も少なくなります。もちろん、それに加えて売電収入も入る太陽光発電はいずれの方面からもお得であると言える一方、パネルを載せられる家庭とそうでない家庭のちょっとした不平等な側面も見逃せません。
再生可能エネルギーの促進のため再エネ発電設備で作られた電力は電気代単価を上回る高額単価で買い取られますが、この買取のための資金は国庫から捻出されるわけではありません。ましてや電力会社が負担するわけでもありません。この買取資金は実は私たちが電気代として支払う料金に含まれています。電気代明細には再エネ発電賦課金のような名目になっています。
固定価格買取制度を利用している再エネ設備で作られた電力は、電力会社が一定単価で一定期間買い取る義務があることが同制度によって定められています。さらにこの制度では、買取り金額はその電力会社から電力を買っている消費者に上乗せして請求できるということまでを定めています。この徴収金は正式には「再生可能エネルギー発電促進賦課金」と呼ばれます。短く再エネ賦課金、再エネ発電賦課金などと呼ばれることもあります。また、かつての太陽光付加金(以下参照)の名残りや、売電される電力のほとんどが太陽光由来であることなどから、太陽光サーチャージといった表現もあります。
2022年(令和4年)5月から1年間の再エネ賦課金単価は1キロワットあたり3.45円です。毎月単価が変わり、さらに電力会社ごとにも金額が異なる燃料費調整額とは違い、再エネ賦課金は一年間変わらない単価で全国一律に適用されます。
以下の表では、賦課金負担額の例として、東京電力と契約する標準家庭の電気料金モデルをご案内しています。なお、燃料費調整額や口座振替割引については省略しています。
従量電灯B | 30A | 40A | 50A |
---|---|---|---|
世帯の例 | 一人暮らし | 標準世帯相当 | 2世帯 |
使用電力量 | 140kWh | 270kWh | 510kWh |
電気代 | 4,244円 | 7,502円 | 15,002円 |
うち賦課金 | 483円 | 931円 | 1,760円 |
月の電力使用量270kWhの標準的な世帯においては賦課金の負担額が931円となっており、前年度と比べて30円程度値上がりしています。世帯人数が多いご家庭やオール電化のご家庭の場合は賦課金がひと月1,760円と少なくない金額を毎月支払う事になります。
再エネ賦課金に限らず、電力会社の料金体系(基本料金、電力量料金、燃料費調整額など)はすべて税込みです。つまり、3.45円の再エネ賦課金の場合約0.3円が消費税相当分となります。
年度 | 太陽光 付加金※1 |
再エネ 賦課金 |
負担額例※2 |
---|---|---|---|
平成22年(2010年5月分〜) | 0.00円 | - | 0円 |
平成23年(2011年5月分〜) | 0.03円 | - | 6円 |
平成24年(2012年5月分〜) | 0.06円 | 0.22円 | 52円 |
平成25年(2013年5月分〜) | 0.05円 | 0.35円 | 74円 |
平成26年(2014年5月分〜) | 0.05円※3 | 0.75円 | 148円 |
平成27年(2015年5月分〜) | - | 1.58円 | 292円 |
平成28年(2016年5月分〜) | - | 2.25円 | 416円 |
平成29年(2017年5月分〜) | - | 2.64円 | 488円 |
平成30年(2018年5月分〜) | - | 2.90円 | 537円 |
令和元年(2019年5月分〜) | - | 2.95円 | 546円 |
令和2年(2020年5月分〜) | - | 2.98円 | 551円 |
令和3年(2021年5月分〜) | - | 3.36円 | 622円 |
令和4年(2022年5月分〜) | - | 3.45円 | 639円 |
表は、再エネ賦課金およびその前身である太陽光付加金(以下参照)の単価と負担額例の推移を示したものです。日本でFITに相当する制度が開始したのは2009年11月(余剰電力買取制度)でしたが、補助金やFITを利用したとしても当時は太陽光発電はかなり高額で普及も限定的であったため、2010年まではサーチャージの徴収もありませんでした。2012年(平成24年)7月には固定価格買取制度が制定され、産業用を中心に太陽光発電の導入量が急速に伸びました。再エネ賦課金の単価も毎年引き上げられてきています。
固定価格買取制度が制定された2012年7月以前のFIT制度に類する制度としては余剰買取制度がありました。その仕組みは現在の10kW未満に適用される固定価格買取制度とほとんど同じで、設置した太陽光発電機器で作った電気を自家消費して余った分は売電、買取資金は太陽光発電促進付加金という名目で電気代から徴収されました。再エネ賦課金と異なり太陽光付加金は地域ごとに独自の単価が適用されましたが、上述の単価推移を見ていただいてもお分かりのように全国的に見てもその負担額は微々たるものでした。現在この制度を利用した再エネ設備は、固定価格買取制度に移行が完了しており、太陽光発電促進付加金の徴収は平成26年の9月分をもって終了しています。
再エネ設備の導入量は今後も増え続けることが予想されますが、そうなると気になるのがどれだけ賦課金が値上がりするのかということです。
経済産業省は2015年7月に2030年のエネルギーミックス目安値を含めた長期エネルギー需給見通しを発表していますが、その中では2030年の再エネ買い取り費用上限を3.7~4兆円に定めています。一方2017年度の再エネ賦課金を算出するにあたり買取費用の総額は2兆7045億円とされました。今後は買取単価を引き下げながら、容量としては2015年末時点よりも4倍程度まで引き上げることが目標とされますが、目標通りの買い取り金額のコントロールが実現できる場合であっても、再エネ賦課金は4円前後まで値上がりする可能性があることを示唆しています。そうなると、電力使用量が少ない場合でも500円、消費量が多くなると2,000円以上の金額を再エネ賦課金として毎月支払わなければいけなくなる可能性が出てきます。
再エネ賦課金に関しては、反対意見も多くあるのが事実です。固定価格買取制度の受益者となる太陽光発電の設置家庭は、設置前と比べて太陽光発電からの自家消費分の電力使用量が減ります。つまり、負担する賦課金額も、太陽光発電設置家庭ほど少なくなるのです。一方でアパート・マンション暮らしなど太陽光発電をつけたくてもつけられない家庭では、売電収入も得られない上に賦課金ばかり払わされる、ということで、世帯による格差が増えるというのが多く見られる意見です。
この制度が公平性に欠けることは否定のしようがありません。しかし今のところFIT制度の仕組みが大幅に変えられる予定はなく、年々買取価格を引き下げていき、家庭への負担を少しでも抑えようというのが政府の意向のようです。もし、屋根はあるけど予算の面で設置を思いとどまっていたという方がいらっしゃるなら、小容量でも導入する方がお得と考えられます。小容量ソーラーのメリットについては、自家消費のすすめも是非ご参考になさってください。
資源エネルギー庁によると、FIT制度によって発電量に占める再エネ率が20%を超える(2011年)ドイツではその対価として2013年の時点で既にひと家庭当たり月1,600円程度のサーチャージを支払っているといいます。既に日本よりも多くの金額を負担しているドイツ国民ですが、アンケート調査では不満よりも前向きな意見が目立っているように見えます。以下の言葉はベルリンのシンクタンクAgora Energiewendeによるものです。
「確かにドイツ国民は多額の金を支払っている。しかし、ドイツは豊かな国であり、私たちはそれを負担することができる。これは世界への贈り物と言えるだろう。」
もちろんドイツ国民でも賦課金を不満に思っている方がいないわけではないでしょう。しかし、目線を日本国内から世界に移してみれば、不平等な賦課金という考えが少し変わってくるかもしれません。
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