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CdTe(テルル化カドミウム)薄膜太陽電池モジュールのメーカー「ファーストソーラー」。薄膜のソーラーパネルにおけるリーディングカンパニーが2013年11月、満を持して日本進出を果たしました。
ここでは、拠点アメリカでファーストソーラーがどのようにしてリーディングカンパニーに成長していったのか見ていきます。
ファーストソーラーの本社は米アリゾナ州のテンピにあります。母胎のSolar Cells, Inc.から新会社ファーストソーラーが生まれたのは1999年。2002年には製品の生産を開始しました。太陽光市場で主流のシリコンではなく、化合物のCdTeを使ったパネルで市場をリードし、ついに2009年、2位のサンテックを2倍近くも引き離した生産量で、12.8%の市場シェアを獲得。(参考)
その後パネルのシェアでは順位を落とすものの、太陽光発電施設の開発や運用といったパネルの製造の先にある事業(後述)にうまくシフトしていったこともあり、パネルの供給過剰などから始まる太陽光発電業界全体を襲った変動も乗り越えて、健全な経営・財務状況を保っています。
ファーストソーラーの強みと言えば、ソーラーパネルの製造から施工、発電事業の運用やメンテナンス、さらには寿命を全うした後のリサイクルまでもを含めたライフサイクルを通した事業展開です。
日本のパネルメーカーはパネルの製造および設置後のメンテナンスに事業が限られがちです。2012年以降はパネルメーカーが固定価格買取制度を利用して発電事業を行う例も増えてきていますが、ファーストソーラーの発電事業は、拠点が土地が広大なアメリカであることも助け、比べ物にならない規模です。例えば、州を挙げて再生可能エネルギーの普及に努めるカリフォルニアでは、550MWもの大規模メガソーラーを2件(Desert Sunlightおよび Topaz Solar Farm)開発予定だといいます。(参考:2014年4月現在、建設中のものも含め日本最大の太陽光発電施設はユーラスエナジーによる青森県の115MWのメガソーラー。またソフトバンク子会社SBエナジーは、全国合計で200MWを目標にメガソーラーを複数開発中。)
パネルメーカーとしては唯一と言えるほどの独自性は、そのリサイクルプログラムにも見出せます。ファーストソーラーでは2005年からリサイクルプログラムを導入しており、その専門性はトップクラス。使用済み半導体材料の約95%、使用ガラスの約90%がリサイクルで新しく製品として生まれ変わるといい、そのリサイクル施設ではISO 14001(環境マネジメント)やISO 9001(品質)を含む世界的に認められた規格を取得しています。
ファーストソーラーは“世界で初めて発電能力1ワット当たりの製造コストを1ドル未満にした企業”で、2012年11月には67米セント/Wを達成。(例えば200Wのパネルなら、一枚に約13,500円の製造コスト)さらに2017年までに40セント未満にまで下がる見込みだといいます。
さらに重要なのは実際に発電所になった時の、発電量あたりのコスト。先述のDesert Sunlightプロジェクトでは、1kWh当たり5.79セントでの売電契約を結んだとしています。この実績はアメリカでの事業の例ではありますが、日本の基準と照らし合わせると、NEDOが掲げるグリッドパリティの第三段階である汎用電源並(7円/kWh)を凌ぐ発電コストです。
世界的なパネルメーカーが次々に日本進出を果たしている中、遅めのスタートを切ったファーストソーラーですが、他のメーカーとは相容れない魅力は、日本市場でも今後存在感を増していくことは容易に想像できます。世界的なリーディングカンパニーとしての実績に加えた日本での戦略について、ここでは見ていきます。
ファーストソーラーの拠点であるアメリカとは違い、日本は限られた土地でより多くの発電量を得たいという市場に大きな需要があります。そのためファーストソーラーは高効率多結晶シリコン太陽電池を開発した米ベンチャー企業のテトラサン(TetraSun)を買収。安くて効率も高い多結晶パネルを、2014年後半から世界に先駆けて日本市場に投入される予定です。
創立の際にはウォルマートのオーナーとして有名なウォルトン家の資本も投入され、その後も市場に即したビジネスモデルのシフトで健全な財務を保ってきたファーストソーラー。資本の調達から事業の運営までを一貫して自社内で行えることは、他のどのメーカーにも勝る強みと言えそうです。
この資本をもとに設置が急がれる認定済み未設置案件をはじめとし、大規模な発電事業を日本国内でも増やしていくことが予想されます。
ファーストソーラーが製造している化合物系のCdTe太陽電池は、効率が低くて価格も低いというイメージが強くあり、前モデルであるシリーズ3では効率が11.8〜13.2%と、同じ化合物系であるソーラーフロンティアと比べても少し効率が劣っていました。しかし2016年あたりから本社のあるアメリカで販売を始めたシリーズ4では、結晶型に近い効率を達成しています。
Series 4 | |||
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型番 | 出力 | 効率 | サイズ 重量 |
FS-4110-3 | 110.0w | 15.3% | 1,200×600×6.8mm 12kg |
FS-4112-3 | 112.5w | 15.6% | |
FS-4115-3 | 115.0w | 16.0% | |
FS-4117-3 | 117.5w | 16.3% | |
FS-4120-3 | 120.0w | 16.7% | |
FS-4122-3 | 122.5w | 17.0% |
同じシリーズ内に、出力グレードの異なる6型を用意しています。FS-4122-3の17%というのは多くの多結晶パネルの効率を上回る効率であり、化合物系太陽電池の一つの重要なマイルストーンを超えたとも言えます。
ファーストソーラーは、シリーズ4に次ぐ製品の販売を2018年に予定しています。次世代製品では産業用プロジェクトで有利となる大型パネルの製造を目標としており、元々の予定ではシリーズ4を3枚並べて一枚にした製品をシリーズ5として2017年の間に販売をはじめる事になっていましたが、単一パネルの大型化・高効率化を実現する技術に早めに目処が立ったことから、シリーズ5をキャンセルしシリーズ6を2018年のうちに販売する予定を公表しています。
製品のサイズや出力についての詳細は2017年11月現在まだ公開されていないものの、効率はシリーズ4からさらに1ポイント以上高めた17.8~18.2%になる予定とされています。
日本では大手太陽光発電販売代理店であるエクソルで、112.5W(15.6%)、120W(16.7%)の2型の案内がありますが、価格情報やエクセル以外の取扱い販売店は見つかりません。比較的小さな販売店に小売りするよりも、メガソーラーなどの大型プロジェクトからの直接受注により力を入れている可能性があります。
ファーストソーラーと同じ化合物系の太陽電池を作る日本メーカーのソーラーフロンティアの価格情報も合わせてご参考ください。
ここでは、ファーストソーラーの主力製品である「CdTe薄膜太陽電池モジュール」についての詳細をご案内します。
化合物系ではソーラーフロンティアのCIS太陽電池が日本市場での人気を伸ばしてきています。その理由の一つとしてシリコン系の弱みである「高温における出力低下」が、化合物系のパネルでは少ない事が挙げられます。ファーストソーラーのCdTe太陽電池でも同様に高温化での出力低下の少なさが強みとされており、アメリカの砂漠地帯で行われた実証実験で、結晶シリコン系と比べて実発電量が9%多いという結果が得られたとしています。
さらに、製造の際に多くのエネルギーを必要とするシリコンを使わない事から、エネルギーペイバック期間が短いことも、ソーラーフロンティアと通じるメリットの一つです。原料自体がもともと金属加工業の副産物として生まれたカドミウムおよびテルルの化合物であり、わざわざ発電セルのためのシリコンを生成している結晶型パネルと比べて製造の時点で環境に配慮したアプローチをとっているところが特徴と言えます。
製品の性能を証明するためにファーストソーラーは第三機関による認証を取得しています。中でも沿岸地域でのプロジェクトにおいて重要視される塩害耐性を計る「IEC61701」の認証を取得していることは注目したいです。
海外パネルメーカーの平均的な保証内容である出力保証25年と、機器保証10年がついています。
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