卒FIT後の電気プランと買取|売電継続・蓄電池・V2H自家消費の選び方
このページの要点
住宅用太陽光(10kW未満)の買取期間10年が終わると、売電は電力会社との自由な契約になります。大手電力10社の卒FIT後の標準の買取単価は1kWhあたり7〜9円で、FIT期間中から大きく下がります。電力会社から買う電気(約32円/kWh)と比べると、家で使うほうが1kWhあたり約24円得です。蓄電池で家で使う電気を増やすと、売電を続ける場合との差は年約6.2万円で、10kWh前後の蓄電池(約193万円)をこの差だけで回収するには約31年かかります。在宅時間・蓄電池の予算・EVの有無で選び方が変わります。
住宅用太陽光(10kW未満)のFIT買取は2019年11月から順次満了を迎えています。選択肢は大きく3つで、別の事業者へ売電を続ける、蓄電池やV2Hで家で使う電気を増やす、その組み合わせです。在宅時間・蓄電池の予算・EVの有無から、家庭タイプごとの考え方を整理します。
卒FITの現状と対象世帯
卒FITとは、固定価格買取制度(FIT)の買取期間(住宅用10kW未満は10年間)を満了した状態を指します。2009年11月の余剰電力買取制度を起点に、2012年7月のFIT制度に引き継がれ、最初の卒FIT世帯は2019年11月に生まれました。FIT期間中の買取単価は、設置した年度によって次のように決まっていました。
| 買取開始 | 買取単価 (1kWhあたり) |
満了 |
|---|---|---|
| 2012年度 | 42円 | 2022年度 |
| 2013年度 | 38円 | 2023年度 |
| 2014年度 | 37円 | 2024年度 |
| 2015年度 | 33円 (出力制御対応機器の設置義務あり 35円) |
2025年度 |
| 2016年度 | 31円 (出力制御対応機器の設置義務あり 33円) |
2026年度 |
- 出典:資源エネルギー庁「過去の買取価格・期間等」。余った電気を売る「余剰買取」の単価です。2015〜2019年度の出力制御対応機器の設置義務は、北海道・東北・北陸・中国・四国・九州・沖縄の各電力の区域で適用されました。
買取の満了時期は、買取を受けている電力会社との契約書類などで確認できます。満了の6〜4か月前(電力会社によっては3か月前)を目安に、いまの買取先から通知が届きます。
FIT買取期間と本ページの対象
- 住宅用10kW未満:10年間(卒FIT後は事業者選択制)— 本ページの対象
- 10kW以上:20年間(2012年7月以降の設置分が2032年から満了)
卒FIT後の3つの選択肢
FIT満了後の選択肢は次の3つに整理できます。複数を組み合わせることも可能です。
| 選択肢 | 追加投資 | 向いている家庭 | 留意点 |
|---|---|---|---|
| ① 売電継続 (事業者切替) |
原則なし | 共働き・日中不在で太陽光発電を家で使いきれない家庭 | 大手電力10社の標準は7〜9円。電気の契約とのセットで単価が上がるプランもある |
| ② 蓄電池併用 (自家消費) |
約154〜199万円 (5〜10kWh・工事費込み) |
在宅勤務・高齢世帯・電力会社から買う電気が多い家庭 | 費用を電気代の差額だけで回収するのは難しい(下の試算) |
| ③ V2H併用 (EV自家消費) |
本体128万円(税抜) +工事費 |
EVをすでに所有・購入予定の家庭 | EVの電池を家庭用の蓄電池の代わりに使える |
「売電継続だけ」「蓄電池併用」「V2H併用」のどれが合うかは、在宅時間・蓄電池の予算・EVの有無などで変わります。まず売電を続ける場合の買取単価から見ていきます。
売電継続するなら:大手電力10社の卒FIT買取単価
大手電力10社の、卒FIT後の標準の買取単価(10kW未満・税込)です。いまの買取先と同じ会社なら、手続きなしで移行・継続する会社もあります。
| 電力会社・プラン | 買取単価 (1kWhあたり) |
手続き・ほかのプラン |
|---|---|---|
| 北海道電力 買取プラン |
8.00円 | — |
| 東北電力 シンプル買取 |
9円 | 申込みが必要 |
| 東京電力EP 再エネ買取標準プラン |
8.50円 | 手続き不要で移行 |
| 中部電力ミライズ シンプルプラン |
7円 | 申込みがない場合に適用 プレミアムプラン(電気料金に充当)8円 |
| 北陸電力 かんたん固定単価プラン |
8.0円 | とくとく固定単価プラン(北陸電力の対象の電気料金メニューに加入)10.5円 |
| 関西電力 余剰電力買取 |
8.00円 | 手続き不要で継続 |
| 中国電力 買取プラン |
7.15円 | 申込みがない場合に移行 |
| 四国電力 買取プラン |
7.00円 | 手続き不要で継続 |
| 九州電力 買取プラン |
7.00円 | — |
| 沖縄電力 買取(沖縄本島系統) |
7.7円 | 10kW以上は8.2円 |
- 各社の公式ページで2026年10月6日に確認した単価です。単価は見直されることがあります。
- 「手続き不要」などは、FIT期間中にその会社へ売電していた場合です。いまの売電先が送配電会社などほかの会社の場合は、申込みが必要です。
新電力の中には、電気の契約とセットで大手電力より高い単価で買い取る会社もあります。買取を行う事業者は、資源エネルギー庁の「どうする?ソーラー」の売電できる事業者一覧で探せます。単価だけでなく、契約期間や、電気の契約とのセットの条件も比べるのが確実です。
売電と自家消費の単価差
卒FIT後は、「余った電気を売る」と「電力会社から買う電気を太陽光で置き換える」を1kWhあたりで比べます。
- 売電単価は卒FIT後の代表的な単価(大手電力の標準の単価の中心)、買う電気の単価は大手電力の従量電灯の第2段階(月120〜300kWh)の単価の平均の目安です。燃料費調整額・再エネ賦課金は含みません。家で使った分は、この単価で電気を買わずに済みます。
ただし「家で使える」かどうかは家庭の使い方次第です。日中に家にいない家庭は、蓄電池やV2Hがないと発電した電気の多くを売ることになります。資源エネルギー庁も、売電と自家消費のどちらが得かは一概には言えないとしています。判断のポイントは次の4つです。
| 判断軸 | 内容 |
|---|---|
| ① 日中の在宅時間 | 共働き・日中不在の家庭は発電を家で使いきれず売電が中心。在宅勤務・高齢世帯は家で使う割合を上げやすい。太陽光を使う世帯の平均では、発電した電気のうち家で使うのは約32%です |
| ② 蓄電池の有無 | 蓄電池があれば昼の余った電気を夜に回せる。パナソニックの公表試算では、蓄電池9.7kWhで自家消費率が23.6%から67.9%に上がる |
| ③ EV/V2Hの予定 | EVを所有または導入予定なら、V2Hで『太陽光→車→家』と電気を回せる |
| ④ パネルの状態 | 10年たったパネルは発電量が少しずつ下がっている。蓄電池やV2Hへの新しい投資は、これからの発電量で考える(パネルの寿命と劣化) |
- 世帯平均の自家消費の割合は、環境省「令和5年度 家庭部門のCO2排出実態統計調査 資料編(確報値)」の太陽光を使う世帯の平均(発電5,800kWhのうち家で使う1,847kWh)から計算しています。
蓄電池併用で自家消費する場合の経済性
住宅用蓄電池の本体+工事費は、容量5〜10kWhで約154〜199万円が目安です(主にソーラーパートナーズが公表している2025年1〜12月の成約実績の平均(税込・工事費込み))。国の蓄電池向けDR補助金は2026年度分の受付を5月29日に終了しましたが、お住まいの自治体に蓄電池の補助があれば実質負担を下げられます。蓄電池の主流容量や価格レンジは蓄電池の比較サイトで詳しくご確認いただけます。
| パターン | 年間の金額 | 内訳 |
|---|---|---|
| A:売電を続ける | 31,624円 | 売電 3,953kWh × 8円 |
| B:蓄電池で家で使う電気を増やす | 93,304円 | 家で使う電気 2,570kWh × 32円=82,240円(電気を買わずに済む分) 残りの売電 1,383kWh × 8円=11,064円 |
- 発電量・売電量は環境省「令和5年度 家庭部門のCO2排出実態統計調査 資料編(確報値)」の太陽光を使う世帯の平均(発電5,800kWh・売電3,953kWh)。蓄電池で家で使える量は、パナソニックの公表試算の自家消費率の上がり幅(44.3ポイント)を世帯平均の発電量にあてはめたものです
- 充放電のロス・電池の劣化・燃料費調整額・再エネ賦課金は含みません。計算は蓄電池の費用対効果シミュレーションと同じです
A→Bの差額は年間61,680円(約6.2万円)です。蓄電池(5〜10kWhで工事費込み約154〜199万円)の費用をこの差額だけで回収するには約25〜32年かかり、電気代の差額だけで元を取るのは難しいのが実情です。停電時の備えとしての価値や、お住まいの自治体の補助の有無も含めて判断しましょう。
V2H併用で自家消費する場合の経済性
EVをすでに所有していれば、住宅用蓄電池の代わりにV2H(Vehicle to Home)で、EVの電池に昼の太陽光の電気をためて家で使えます。EVの電池は家庭用の蓄電池より容量が大きい車種が多く、停電時の備えにもなります。
| 項目 | 住宅用蓄電池 | V2H | 備考 |
|---|---|---|---|
| 機器費用 | 工事費込み 約154〜199万円 |
本体128万円(税抜) +工事費 |
V2Hはニチコン現行機の希望小売価格。国の蓄電池向けDR補助金・V2H補助金はどちらも2026年度分の受付を終了 |
| 容量 | 5〜10kWh (上の価格の範囲) |
車種による | V2HはEVの電池を使う |
| 停電時 | 容量と使う機器で決まる | 容量と使う機器で決まる | EVが家にいるときだけ使える |
| 前提 | 単独で導入可 | EV所有が前提 | EVを別途購入する場合は車両費用が加わる |
EVをすでに持っているなら、蓄電池を新しく買うよりV2Hのほうが初期費用を抑えられる場合があります。V2H機器の選び方はV2H導入の選び方でご確認いただけます。
家庭タイプ別の考え方
在宅時間・蓄電池の予算・EVの有無の3つで家庭タイプを当てはめると、考え方を整理しやすくなります。
| 家庭タイプ | 中心になる選択 | 具体的なアクション |
|---|---|---|
| ① 共働き+日中不在 +蓄電池なし |
売電継続 | 大手電力の標準の単価に加え、電気の契約とセットで単価が上がるプランや新電力の買取メニューを比べる |
| ② 在宅勤務/高齢世帯 +蓄電池なし |
蓄電池の導入を検討 | 家で使う電気を増やして買う電気を減らせる。費用を電気代の差額だけで回収するのは難しいため、停電時の備えや自治体の補助の有無も含めて判断 |
| ③ EV所有 +V2H未導入 |
V2H導入 | EVの電池を家庭用の蓄電池の代わりに使え、停電時の備えにもなる。国のV2H補助金は2026年度分の受付を終了しているため、自治体の補助を確認 |
| ④ EV購入予定あり | EV+V2H | 車の購入とあわせて、太陽光の電気を車と家で使う組み合わせを考える。再エネ100%プランとの組み合わせも選択肢 |
| ⑤ パネルの発電量が 大きく落ちている |
点検・交換も視野 | 発電量が設置当初より大きく下がっているなら、点検やパネル・パワコンの交換もあわせて検討。パネルの寿命と劣化で確認 |
事業者切替えの手順(3ステップ)
卒FIT後の売電先の切り替えは、満了までに新しい買取先へ申し込んで進めます。
- 満了通知の確認:満了の6〜4か月前(電力会社によっては3か月前)を目安に、いまの買取先から満了の時期や手続きの通知が届きます。いまの契約が自動で続くかどうかも確認します。自動で続かない場合に新しい契約をしないと、余った電気は一般送配電事業者が無償で引き取ることになります(資源エネルギー庁)。
- 新買取先の検討と申込:本ページの大手電力10社の卒FIT買取単価や「どうする?ソーラー」の事業者一覧を参考に、電気の契約とのセットの可否・買取単価・契約期間を比べ、買取先に申し込みます。必要な書類や工事の有無は買取先に確認します。
- 契約切替:買取先から切り替えの完了の連絡が届けば手続き完了です。切り替えの日から新しい単価が適用されます。
- 通知の時期・満了後の扱いの出典:資源エネルギー庁「どうする?ソーラー」よくあるご質問。
電気料金の見直し・新電力切替の候補
電力プランは家庭の使い方で最適解が変わります。ここでは「市場価格の高騰に左右されにくい料金」「基本料金0円・市場連動で攻める」「複数社を横並びで比較したい」の3つの典型ニーズに対応する代表的なサービスをご紹介します。
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市場連動の調整費がない型・全国対応
オクトパスエナジー
英国大手 Octopus Energy と東京ガスの合弁会社が運営し、沖縄と一部の離島を除く全国に対応。卸電力市場の価格に連動する調整費はかからず、「シンプルオクトパス」は申込みから12か月、基本料金0円で単価が固定され燃料費調整もありません(その後はグリーンオクトパスへ移行)。主力の「グリーンオクトパス」は実質再エネ100%です。解約金なし。
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基本料金0円・市場連動の攻め型
リボンエナジー
基本料金0円・燃料費調整額0円で、使った分だけを支払う市場連動型。電力量単価は卸電力市場(JEPX)に連動して30分ごとに変動するため、安い時間帯に洗濯機・食洗機・EV充電を寄せられる家庭ほど割安になります。市場が高騰する時間帯は単価が上がる点には注意が必要です。
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複数社を横並びで比較したい
エネチェンジ
郵便番号と現在の使用量を入れるだけで、対応エリアの主要プランの年間削減額が10分程度で試算できます。燃料費調整の仕組みが違うプランや市場連動型を一覧で比較でき、ガス・通信とのセット割もまとめて確認可能です。
もっと多くの電力会社を比較したい方へ
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独立系・ガス系・通信系・石油系・再エネ特化型をタイプ別に整理。料金プランのタイプ、セット割、再エネ比率、燃料費調整の上限有無で横並びに比較できます。
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料金タイプ別に主な事業者を並べ、シミュレーションの使い方と申込みの手順までご案内します。
よくある質問(FAQ)
- 卒FITとは何ですか?いつ自分の家が対象になりますか?
- 卒FITとは、固定価格買取制度(FIT)の買取期間が満了した状態を指します。住宅用10kW未満の太陽光は買取期間が10年間で、2009年11月に始まった余剰電力買取制度の時期に設置した家庭から、2019年11月に満了が始まりました。たとえば2016年4月に買取が始まった家庭なら2026年4月が満了です。満了の時期は買取を受けている電力会社との契約書類などで確認でき、満了の6〜4か月前(電力会社によっては3か月前)を目安に通知が届きます。
- 卒FIT後の買取単価はいくらになりますか?
- 大手電力10社の卒FIT後の標準の買取単価は、1kWhあたり7〜9円です(各社の公式ページで2026年10月6日に確認)。電気の契約とセットで単価が上がるプランや、大手電力より高い単価で買い取る新電力もあります。FIT期間中の単価(たとえば2012年度に始まった住宅用は42円)と比べると大きく下がります。
- 売電を続けるのと、自家消費に切り替えるのはどちらが得ですか?
- 1kWhあたりで比べると、売ると約8円、家で使って電力会社から買う電気を減らすと約32円分になり、家で使うほうが約24円得です。ただし家で使える量は在宅時間や設備で変わり、資源エネルギー庁も、どちらが得かは一概には言えないとしています。日中に家にいない家庭は売電が中心になり、蓄電池やV2Hがあれば昼の電気を夜に回せます。
- 蓄電池を追加導入する経済性はどう判断しますか?
- 住宅用蓄電池の本体+工事費は、容量5〜10kWhで約154〜199万円が目安です。国の蓄電池向けDR補助金は2026年度分の受付を5月29日に終了しました(公募再開の予定なし)。太陽光を使う世帯の平均の発電量で試算すると、蓄電池で家で使える電気は年約2,570kWhで、売電を続ける場合との差は年約6.2万円です。蓄電池の費用をこの差額だけで回収するには約25〜32年かかるため、停電時の備えとしての価値や、自治体の補助の有無も含めて判断します。
- EVを持っているならV2Hの方が得ですか?
- EVをすでに持っていれば、蓄電池を買う代わりにV2Hを付けて、EVの電池に昼の太陽光の電気をためて家で使う方法があります。V2H機器はニチコンの現行機で本体の希望小売価格128万円(税抜)に工事費が加わります(国のV2H補助金は2026年度分の受付を8月27日に終了)。EVの電池は家庭用の蓄電池より容量が大きい車種が多く、停電時の備えにもなります。EVをこれから買う場合は、車の購入とあわせて考える必要があります。
- 卒FIT後の売電先切替えはどう進めますか?
- 満了の6〜4か月前(電力会社によっては3か月前)を目安に、いまの買取先から満了の時期や手続きの通知が届きます。いまの買取先との契約が自動で続く場合は新しい単価で買取が続きますが、自動で続かない場合に新しい契約をしないと、余った電気は一般送配電事業者が無償で引き取ることになります(資源エネルギー庁)。売電を続けたい場合は、満了までに買取先を選んで申し込みます。




