放射線はなぜ怖い?簡単に言ってしまえば、放射線物質が放射線を出し、その放射線に当たると(=被曝すると)人体に被害を及ぼすためです。このページでは、放射線物質とはどんなもので、放射線がそこからどのように放出されるのか、また2011年の福島第一原子力発電所事故により、被曝(放射線を浴びる事)の危険にさらされていると言うが、実際人体にはどの程度影響があるのかまでをご説明しています。
放射性物質は私たちの身の回りに日常的に存在しています。私たちの身体を構成する物質にも、カリウム40、炭素14といった放射線物質が含まれています。原子力発電で使われる燃料となるウラン235も、自然界に存在する天然ウランに含まれているものです。
この放射線物質の原子核に状態変化を起こし、放射性崩壊を引き起こすことで放射線が放出されます。放射線物質が放射線を放出する能力を放射能といいます。
放射線が人体にあたることを被曝と言いますが、私たちは体内に存在する放射線物質から放出される放射線や、宇宙からの放射線(宇宙線)などにより、微量とはいえ恒常的に被曝しています。
被曝の恐怖は被曝によって受ける放射線の量が多くなった時現れます。日常生活においての被曝(自然被曝)の量は、人体に影響を及ぼすほどではないと考えられています。
この項では、私たちが生活するうえで被曝するさまざまな状況についてご説明しています。
被曝の種類 | 外部被曝 | 内部被曝 |
---|---|---|
自然放射線による自然被曝 (ほぼ防ぎようのないもの) |
宇宙線や地上の放射線によるもの | 体内に存在するカリウム40や炭素14によるもの |
自然放射線による人間活動からの被曝 (職業活動や人間活動に起因し 防ごうと思えば防げるけれど そこまで必死に防がなくていいもの) |
放射性物質を扱う採鉱・製錬などの産業活動 航空機内での宇宙線の増加 |
食事・呼吸・経皮吸収 |
人工起源の放射線よる被曝 (影響を最小限に防ぐべきもの) |
原子力発電や核実験によって放出される放射線 |
外部被曝とは、放射性物質からの放射線をそのまま浴びる事を言います。
外部被曝は「防護の3原則」でその影響を極限に減らすことが可能だと言われます。
その3原則とは「線源からより遠く離れる」「線源の近くにいる時間をより短くする」「線源との間に遮蔽(しゃへい)を置く」です。これは放射線が、ちょうど懐中電灯の光が光源から遠ざかるほど弱くなるように、線源(放射性物質がある場所)から離れるほど減っていく性質と、放射線が物質を通り抜ける性質が、ある物質の一定量の厚さで食い止められる事を利用した対策法です。
外部被曝を受ける状況として、人体の各部において一様に放射線が照射された場合が基準とされています。
内部被曝は、放射性物質を体内に取り込んで、体の中で物質が放射線を出すことで内側から被曝することを言います。内部被曝の影響と危険度は、外部被曝と比べてより大きく捉えられます。
外部被曝でより重要視されるのは物質を透過する力がより強い放射線(X線やガンマー線)の影響で、皮膚を通すほどの透過力も無い放射線(α波など)の影響はほぼ無視してもよいレベルと考えられています。一方この透過力の弱い放射線を放つ放射性物質が内部に取り込まれた場合、内部被曝による発がんのリスクがより高まる事が懸念されています。(発がんリスクの数値については下の項を参照)
α波のように透過性の低い放射線は、周りの細胞を集中的に壊します。局所的に壊された細胞がガン細胞化するリスクは、外部被曝のように"広く浅く"細胞を壊される場合に比べて高くなることが原因です。
内部被曝の影響を考える際しばしば取り上げられる概念に「半減期」があります。内部に取り込まれた放射性物質の持つ物理的半減期と生物学的半減期という2つの半減期を照らし合わせ、その放射性物質の危険度がより高くなるか、低くなるかを推し量るのに使われます。
物理的半減期とは、その放射性物質の持つ放射能が半分になる時期の事をいいます。
生物学的半減期とは、取り込んだ放射性物質が、代謝によって体外に排出されていき、体内に残っている物質量がちょうど半分になる期間をいいます。
放射線の量 (ミリシーベルト) |
被曝による影響 |
---|---|
7000~10000 | 100%の人が死亡 |
3000~5000 | 50%の人が死亡 |
1000 | 10%の人が悪心、嘔吐 |
500 | 末梢血中のリンパ球の減少 |
200 | これより低い線量では臨床症状が確認されていない |
より高線量の被曝を全身被曝した場合には、左の表のような影響を人体に及ぼします。
実際にこの表にあるような高線量の被曝を受ける場合とは、原発事故や原子力爆弾により直接的な影響を受けた場合などになります。
私たちの普段の生活の中でより重要となってくるのは、低線量の放射線による被曝の影響です。
一年間の平均線量2.4ミリシーベルトに、医療行為や航空機の利用による線量を加えた数字が一定量を超えないようにすることが、発がんリスクなどを抑えることに繋がります。
放射線の量 (ミリシーベルト) |
被曝の例 |
---|---|
20~100 | 放射線事故など非常時に設定する参考レベル(急性/年間) (100ミリシーベルトで発がんリスク0.5%増) |
10 | ブラジルのグァラパリ地方における自然放射線(年間) |
1~20 | 計画被曝状況での職業被曝拘束値 非常状況での避難参考レベル(急性/年間) (20ミリシーベルトで発がんリスク0.1%増) |
6.9 | CTスキャン(1回) |
3.4 | 発がんリスク11%増(年間) マーチン・トンデル氏の研究結果 |
2.4 | 一人当たりの自然放射線の世界平均(年間) |
1 | 医療は除く一般公衆の人工放射線量の限度(年間) |
0.6 | 胃のX線集団検診(1回) |
0.2 | 東京 - ニューヨーク航空機旅行による宇宙線の増加(1往復) |
0.05 | 胸のX線集団検診(1回) 原子力発電所(軽水炉)周辺の線量目標値(年間) |
線量とそのリスクを示す上の表の中に、矛盾する内容があることをお気づきでしょうか。
「20ミリシーベルトで発がんリスク0.1%増」という内容は、「3.4ミリシーベルトで発がんリスク11%増」という内容と、明らかに噛み合いません。
表中で青文字はICRP(国際放射線防護委員会)が出している「ICRP2007」という勧告に記載される内容がもとになっています。
対してオレンジ文字は、ECRR(欧州放射線リスク委員会)が被ばくモデル例として挙げているマーチン・トンデル氏による疫学調査の結果です。この調査はチェルノブイル原発事故後、スウェーデン北部のある地域において1988年から1996年の間のガン発症率とセシウムCs-137の汚染レベルの相関性の調査として行われました。
ICRPの勧告に示される基準は、各国政府によって利用されているいわば国際基準ですが、その背景には「事故後もその地域で生活を続ける個人の意思や尊厳、自由を尊重する哲学(参考)」があり、その基準を持って政府による「移住や除染、食品の規制などの対策がスムーズに行われる」ようにすることが主な目的です。
それに対してECRRは、マーチン・トンデル氏の研究結果などを参考に、低線量被曝の発がんリスクが過小評価ないよう、警鈴を鳴らしています。そもそもICRPの基準は「急性の高線量の外部被曝」の数値を元に作られており、前項でもご説明した通り、慢性的な内部被曝の影響は全く異なる次元のものです。
とはいえICRPも、低線量による発がんリスクに関しては「ブラックボックス」「ミステリー」という言葉をもって断定は避けている状態です。
低線量の発がんリスクに関しての見解にこれほど差があるのは、低線量の放射線によるリスクがその他の行為による発がんリスク(食生活や、喫煙の有無など)と比べて低くなる事から、一概にそれが放射線量だけのリスクとは言えないから、という事がよく言われます。
どちらにせよ、一年に1ミリシーベルトという一つの基準を参考にしながらも、線量は低く抑えるに越したことはないと考えられます。
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