米から中国製品への法的規制・複雑な利害関係・中国メーカー、米国内産業関係者などの意見は?

国際貿易委員会の満場一致で中国製品に対しアンチダンピングと相殺関税を課したアメリカの商務省ですが、これに対する各関係者の利害関係は複雑です。

アメリカの政府側が太陽光発電設置に歯止めがかかると予想されるこの決定に踏み切ったのは、安価な中国メーカーに太刀打ちできない国内の20数社の太陽光発電メーカーから、何百人もが解雇されたことを受け、自国の産業保護のための決断だったと言います。

この規制は、第三国で製造されたセルを使用した中国製モジュールには適用されないとし、その点で有利なインリーグリーンエナジーはこのようなコメントを出しています。

「とにかく、アメリカの調査が終わって、また熱心なお客様への製品提供に全力を注ぐことができるのはとても喜ばしいことです。中国製品がアメリカの太陽光産業に与えた影響は非常に小さいものです。規制は当社にとって部分的に有利ではあれど、このアメリカの決定にEUは随行するでしょうし、再生可能エネルギーの地球規模での普及に注力するべき時代にこのような貿易戦争を目の当たりにすることは非常に悲しいです。アメリカの太陽光産業(デベロッパーや施工店)がこのような政府の決定に立ち向かってくれている事にはとても感謝していますし、一刻も早く自由な貿易ができる状況が実現し、太陽光発電が地球上の多くの地域で利用可能になることを心から望んでいます。」
インリーソーラープレスリリース

インリーソーラーも触れていた「アメリカ国内の太陽光企業」はこの決定に対して”低価格太陽光エネルギー連盟(CASE)”を結束させ、次のようなコメントを出しています。

「より建設的な解決策を模索するよう、アメリカと中国には対談と交渉を続けることを求めます。現代のように相互が密接にかかわる国際市場においてこのように一方的な関税や貿易戦争は、より効率的な競争を促すのには弊害であり、不必要であります。」

サンテックからのコメント

「日に日に高くなる自由貿易の障壁はアメリカ国内の雇用や、地球全体のエネルギー消費量に悪影響を与える。SolarWorld(今回の申立を提出した会社)の偽善的なキャンペーンで、競争に脱落したSolarWorldのしりぬぐいをアメリカ国内の太陽光産業にさせることとなる。アメリカ政府が建設的な対談に応じない限り、自身にさらなる痛手を負わせる結果になるだろう。アメリカにも拠点を持ち、国際的な事業展開をする我々は重ねて、この不必要な課税に反対し、世界中に低価格な太陽光発電を提供できるよう促進するべきだと主張する。」(サンテックプレスリリース)

太陽光発電のモジュール価格が下がるのはもう歯止めが効かない状況で、今重要になってくるのは「施工価格の低下」だとして、1,000ドルの賞金まで用意してSunShot Prizeというコンペティションで施工業者を競わせていたアメリカ。
モジュールメーカーを守ろうとすると、それらの施工業者やデベロッパーが痛手を負うので、諸刃の剣となる可能性がある今回の規制。まだまだ続きがありそうですね。

参照

ペルーに相次ぐメガソーラー建設・40MW級が2つ完成

ペルーは去年あたりから大規模なメガソーラーの建設ラッシュだったのですね!それらがどんどん完成していき、系統供給を始めています。

今月29日には、ペルーのアレキパ地方のMajesとLa Joyaの2地域に合計44MWのメガソーラーが完成しました。
スペインの大手太陽光発電企業T-Solarが事業主となり、2010年に交わされた20年のアレキパ地方での発電事業の契約に則っての建設でした。

パネルはT-Solarの薄膜型アモルファスシリコンパネル。44MW年間80GW分の発電量が得られるとのことです。
日本では1kW当たり年間1000kWh。
ペルーでは1kW当たり1800kWhもの発電量が得られるのですね!

ちなみに日本の標高と同じくらい(10m以下)のドバイでは、日照時間1.77倍で約1700kWhの年間発電量が得られているのに対し、アレキパ地方(1500~2000m)ではドバイと日照時間は大して変わらないか少し少ないくらいなのに、1800kWhの発電量が得られているという事は、標高が高いところだと太陽との距離が多少近くなり、より太陽光発電に適しているということになりますね!
参照サイト

ちなみに年間80GWの発電量は8万人分の電力消費を賄えるという計算だそうです。
日本では年間1人約1437kWhの電力を使いますが(電気代で月2,400円程度)、上記の計算だとペルーは一人年間1000kWhの電力消費量(家庭内)という事になります。

参考記事

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ペルーには今月中旬にも、同規模の太陽光発電所が完成しています。
T-Solarと同じくスペインの施工会社、Solarpackと、Gestamp Solar S.A.に加え、地元の施工会社が関わり、2010年から建設を始めていたプロジェクトだそうです。
ペルー南部のタクナ(Tacna)とモケグア(Moquegua)の2県にそれぞれ20MWずつ。モジュールは中国のインリーグリーンソーラーのものです。

参考記事

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Solarpackはもう一つ、モケグア(Moquegua)に近い場所に16MWのプロジェクトの依頼も受けており、これは2014年完成の予定です。
参考記事

GTMリサーチ予測:2015年までに上位9大手メーカーの7つを中国メーカーが占める?

ボストンに拠点を置くGTMリサーチは、業界の激しい地位争奪合戦ののち、2015年までに生き残る上位9つの太陽光モジュール製造メーカーのうち7つは中国拠点、残る2つはアメリカのメーカーになるだろうという予測を出しました。

現在、太陽光モジュールの過剰供給(今後3年間は平均325GW需要を超過する予想)や、シリコン価格の低下、価格戦争や、相次ぐ政府の助成金の終了などから、太陽光モジュールメーカーの合併などが相次ぐと予想されています。
この予想は2009年からさけばれていましたが、昨年にはその兆候がはっきりと見え始めています。

現在、アメリカやヨーロッパ、日本のモジュールメーカーのが1ワット当たり80セントでの製造を行っているのに対し、中国メーカーは58~68セントという低価格で製造が可能なのだそうです。
合併か退陣かを余儀なくされるだろうという予想。本当にどちらかの道しかないのであれば、すこし残念ですね。

気になる2015年、生き残りメーカーはどこなのでしょうか?

現在最大手のサンテックは、中国の国家開発銀行のサポートも入るという事なのに2015年上位9大手に入っていないというのは不思議ですね。
そして、CISやCPVなど新しい技術を利用したパネルの重要性についても触れていないようです。
さてこの予想はどれだけ当たるのでしょうか。

参考記事

インリーソーラー、中国政府からの不正な補助金に対する告発を拒絶

昨日、EUから中国に対して自国の太陽光産業に不正な補助金を支給していたことに対する告発がありましたが、インリーソーラーはその告発を棄却しました。

インリーグリーンエナジーの代表であり、最高経営責任者のMr. Liansheng Miaoの言葉

「我が社はニューヨーク証券取引所にも上場し、公的な取引を行っています。その資金財源とその額に対しても透明性が十分に示されています。通常の市場レートで融資を受け、国際会計基準と規範に則って経営を行っています。2009年から2011年にかけての借入金は6.3%から7.1%と、平均的な金利です。政府からの不法な補助金は決して受け取っていません。我々の成功は、イノベーションに焦点を合わせた経営と、最新鋭の機器、設備類への投資、そして信頼から成り立つ長期的なパートナーシップによるものです。」

インリーグリーンエナジーヨーロッパの、最高経営責任者Darren Thompsonの言葉

「太陽光発電業界はヨーロッパだけでなく、世界中でメジャーなクリーンエネルギー源となる可能性を持っています。懲罰的な関税が課せられれば太陽光製品の価格は高騰し、業界の多くの働き手の職を奪う事になります。特にヨーロッパの熟練工や中小企業が受ける打撃は大きいことでしょう。」

EU vs 中国 ”価格抗争”のタグで今までの抗争劇が確認できます。

中国の太陽光メーカーが影響力が増すのは日本や欧米のメーカーにとっては苦しいことでしょうが、一方価格は下がれば下がる程普及は進むし、二酸化炭素排出量の削減にも繋がるでしょうね。

中国のメーカーは国際社会においても、CSR活動もしっかり行っています。
それに比べたら日本のメーカーはメガソーラーへのパネル提供の話はよく聞きますが、途上国へのパネル寄付などの活動はあまり聞かないですね。

インリーソーラー:プレスリリース

EUから中国にまたもや圧力。中国政府による不正な太陽光企業への援助はあったのか?

今月6日、中国に対するアンチダンピングの申し立てに続き

24日の会合で一度協調の姿勢を見せた中国とEUですが、またもやEUのソーラーパネルメーカーが25日、中国に対して「中国の太陽光メーカーに不正な補助金を出している」と申し立てを出しました。

EUの業界団体プロサンのMilan Nitzschkeに言葉によると、
「多くの中国の太陽光パネル製造会社は中国政府からの度重なる補助金を受けていなければ、とっくに倒産しているところだ」
ということです。

また、政府の補助金と介入によって、国内需要の20倍、世界的な需要のおよそ倍ものソーラーパネルの生産が行われたとのことです。

欧州委員会によると今や世界の65%の太陽光パネルが中国製という事。
それらがこのような政府の大規模な介入による大量生産だとしたら、他国の企業は太刀打ちできるはずもないですね。

申し立てから調査の有無の決定には、前回のアンチダンピング調査決定と同様、45日間もかかるそうです。

貿易額にして過去最大のこの申立て、EUはどうにか調査にこぎ着けたいところでしょうね。
しかし、これらの調査に対して中国製品に関税が課せられるとしたら、価格低下のスピードはさらに緩まることになるのでしょうか。

参考サイト

もうひとつ気になる情報が同日に出ています。中国政府の直属のChina Development Bank Corp.(国家開発銀行)は、中国の太陽光パネルメーカー大手3社のサンテックトリナソーラーインリーソーラーに対して経済的支援を強化するようです。また他にもHareon Solar、Chaori Solar、Sungrow Powerの名を挙げ、他にも名前を挙げてはいないもののあと6社、合計で12社に優先的な支援を行うつもりらしいです。
北京のブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスのアナリストであるJessica Ngは、「12社に絞った支援は、中国が業界の強化を早急に計りたい意図が見え隠れしている。構図的にはサンテック、トリナ、インリーがこの支援で生き残り、LDKソーラーが苦戦することになるだろう。」と言います。

New Energy Financeのデータによると、CDB(国家開発銀行)はこれらの12社に対して2010年から432億ドルに上る貸付を行ってきたそうです。

Bloomberg

この国家開発銀行の支援の事実が、前述の「政府の介入」の申立てにどう影響するのか気になるところです。