クリーンエネルギーに未来を託すアブダビの課題

最近MENA(中東・北アフリカ)の話題が多いですね。
今月16日には毎年アブダビで行われるエネルギー・環境関連見本市World Future Energy Summit(WFES)が開催されました。

「アブダビのあるアラブ首長国連邦は、何に関しても世界一だとか世界最大だとか世界初になりたがるようだ」
というのはグリーンテックメディア(GTM)。

なんでも集光型太陽熱発電施設で世界最大の100MWというShams-1が、3月までに建設完了する予定なのだとか。

これがShams-1 ↓ かっこいいです!!

アブダビの2020年までの「ピーク需要の7%を再生可能エネルギーで」という目標は以前も触れましたが、実際7%となると、約1,600MW(1.6GW)。

しかし、UAEの今までの姿勢、豪奢でエネルギー効率の悪い建造物を次々に建て、電力使用への”補助金”によって経済成長以上の電力時用の増加があること、そしてその結果として一人当たりの二酸化炭素排出量が世界5位だったりすることなどを考えると、UAEのクリーンエネルギー政策に疑心を抱く人も多いのではないか、ともあります。

二酸化炭素の排出量を減らすには先述の電力使用への補助金をやめれば早い話ですが、以前それを行った国で大きな混乱を引き起こした例もあり、アブダビ政府はエネルギーミックスを多様化し、再生可能エネルギーの割合を高める事で対応しようということで、今の動きにつながっているようです。

マスダールはSham-1の他にも、ロンドンの沖合に建設されている世界最大1,000MW(1GW)の沖合風力発電施設”London Array”にも出資しています。


さらに”マスダール・シティ”と呼ばれる計画都市は、国際的な再生可能エネルギー組織のホームとなることだろう、ということ。

これらを見ると、やることなす事とにかく”派手”なUAEのクリーンエネルギー政策。
しかしUAEは、ただただイメージ投資を行っているのではなく、エネルギーの安全性や人的資本への投資と考えているよう。

天然ガスや石油だけでなく、エネルギーの分野で将来的にもリーダーシップを保ちたいアブダビは、豪華絢爛主義(市内の一流ホテル内にある金の自販機など)からの脱却が、どこかの時点で必要だろうというのが、GTMの見解。ごもっともです。

参考

石油産出国も多いMENAで太陽光発電が注目される理由とは?


中東と北アフリカを含むMENA地域は、今後注目の太陽光発電市場という事でこれまでもこの地域に含まれる国々での再生可能エネルギー政策についてお伝えしてきましたが、「石油産出国も多い国がなぜ?」と思った方も多いのではないでしょうか?

現在のMENA地域のエネルギー事情、今後の再生可能エネルギーに対する政策についてなどを扱った記事がGTMから出ていて興味深かったのでご紹介します。

MENA地域における需要の高まりについてのリサーチは前ポストにてお伝えしたとおり。

MENA地域では、人口の増加や都市化、工業化に伴う経済成長などが原因で、電力の需要がどんどん増えていくと考えられています。

もうひとつ重要なのは、電力需要の増加は政府の電気代の補助がさらにこの需要を高める原因になっているということです。

つまり、経済成長に増して電力需要の増加速度が速い事を意味します。2017年までに新たにこの地域で120GWの需要増加がみられる計算になるとのこと。

石油産出国の多いこの地域では、化石燃料による火力発電が主な電力源で、再生可能エネルギーに対する注目度は低めでした。ドバイやアブダビなどを擁するアラブ首長国連邦は、石油の輸出で世界第5位、一日230万バレルを世界市場に送り出しています。
埋蔵量では世界7位、また天然ガスの埋蔵量でもトップ10位に入っています。

しかし化石燃料の有限性により注目が集まるようになり、UAEは再生可能エネルギーの導入・エネルギーのさらなる効率化・安全な原子力の活用に関して、地域を先導するための計画を推し進めています。その中でも太陽光発電はより手軽に始められる、UAEにとっては魅力の大きい電力源ということです。
MENAの平均的な地域では、1㎢の日射量で年間およそ150万バレル分の太陽光による電力が得られるそうです。

毎年アブダビではWorld Future. Energy Summitというエネルギー・環境関連見本市が開催されます。また「Masdar」という会社を設立し、再生可能エネルギーとクリーン技術の開発、持続可能な都市化についての投資も行っています。
このマスダールを通じてアブダビ国内には100MWの集光型太陽熱発電施設(Shams-1)も建設されています。再生可能エネルギーの目標値を2020年までに7%と定め、今後も開発は拡大していく予定です。

他にもMENA関連のニュースは「MENA」タグでまとめてあります。
石油も出て、太陽光発電にも最適なんて、なんて恵まれた土地なんでしょうね!

参考

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国連「すべての人のための持続可能エネルギーの国際年」・マスダール(アブダビ)の貢献歴

毎年1月にアブダビで行われるエネルギー・環境関連見本市の”World Future. Energy Summit”(WFES)。2012年に行われたこのサミットで、潘基文国連事務総長が提唱した国際的な構想が、この
「すべての人のための持続可能エネルギーの国際年」(Sustainable Energy For All)
でした。

具体的に3点を挙げています。

  1. 近代的なエネルギーサービスに誰もがアクセスできるようにすること
  2. エネルギー効率の改善を、国際基準で2倍に引き上げる事
  3. エネルギーの割合で、再生可能エネルギーの割合を2倍に引き上げる事

来年の1月でこの構想が出されてからある1年がたちますが、それまでに民間セクターや投資家たちから集められた500億ドルに加えて、アジアやヨーロッパ、ラテンアメリカの開発銀行からの何百億ドルもの資金が動員されました。

そうして行われたプロジェクトが以下のマスダールによる事業です。

  • -トンガ – a 500 KW solar project on the island of Vava’u
  • – アフガニスタン – 600戸の住宅用太陽光発電システム
  • -モーリタニア – 15MWプロジェクト
  •     

  • -ザイード未来エネルギー賞 – 国際ハイスクール部門に50万ドルを追加

モーリタニアに初のメガソーラーは15MW、総電力容量の約10%を提供可能

アフリカ西部モーリタニアの首都ヌアクショット(Nouakchott)に、15MWの太陽光発電が建設される計画が発表されました。
建設はアブダビの再生可能エネルギー企業マスダール(Masdar)。

モーリタニア初のメガソーラーで、15MWは国内の総電力容量の10%に相当すると言います。(人口350万人以上の国で150MWしか電力を消費していないというと、日本の76分の1程度の計算!)
ただ、年間需要量は今年も12%増加しており、電力化率は6割以下の同国では電力不足に直面しているため、今回のヌアクショット計画は増加分をまかなう程度です。
風力発電や太陽光発電に比較的適しているアフリカの土地では、再生可能エネルギーが電力不足解消に一役買いそうですね。

国連は今年2012年を「すべての人のための持続可能エネルギーの国際年」と定めています。

マスダールは他にも、トンガやアフガニスタンでも再生可能エネルギープロジェクトを進めていると言います。

参考記事