スイス エアライト・エナジー社、追尾集光型の持ち運び太陽光発電「サンフラワー・ソーラー・ハーベスター」を発表

太陽光発電と、海水の淡水化、温熱、冷却の全てを実現し、更には持ち運び可能なシステムである、「サンフラワー・ソーラー・ハーべスター」の開発が進んでいます。同システムを開発しているのは、スイス企業「エアライト・エナジー」。同社によると、2013年から始まったこのプロジェクトは、2016年までに世界各国での試験運転開始と、2017年半ばまでの商品発売を目指しています。

システムは組み立て式で、一つの容器に収容も可能な設計ですが、反射板も含めた全長は10mのものとなっています。いわゆる集光追尾型の太陽光発電ですが、電力だけでなく熱を同時に供給でき、その熱を利用して冷却システムを動かしたり、低温脱塩システムを通して海水を淡水化したりと利用価値を高め、砂漠や無電化地域など遠隔地での活躍が期待される製品となっています。

花弁状に配置した反射板には、お菓子の包装などに使われるホイル素材を利用し、コストカットを実現しました。その反射板が、米IBM社製の水冷式太陽光パネルに光を集約させ、パネルに搭載された太陽電池チップに電力を貯めていきます。このチップは水冷システムによって最適な温度に管理されるため、従来の製品よりも、75%も集約率が高まりました。

参考

IBMがスイス企業と開発のハイブリッドな集光型太陽光発電は太陽エネルギーの80%を利用可能

IBMは、CSP(集光型太陽熱発電)の製造で革新的な開発を続けているスイスのAirlight Energyと共同で、2000倍もの集光が可能な集光型の太陽光・太陽熱併用の発電システムを開発したと発表。

HCPVT(High Concentration PhotoVoltaic Thermal/冷却熱利用型超高集光太陽電池システム)と呼ばれるこのシステム、呼び名は小難しいものの考え方はシンプルで、太陽光を集めたら光も熱もどっちも集まるんだから、どちらか一方だけじゃなくて両方利用しよう!というものです。

従来製品としては、集光した太陽光を利用して太陽電池で発電する集光型太陽光発電(cpv)と、集光した太陽熱を利用して主にボイラーを回転させる方法で発電する集光型太陽熱発電(csp)がありますが、今回開発したのはこのハイブリッド型ともいえる発電方式。ちなみに追尾機能も備えており、「太陽放射を2,000倍集光し、その80パーセントを有用なエネルギーに変換」できるのだそう。ある意味変換効率80%ですね。(参考:集光型太陽光発電では商品化されているもので効率約35%
太陽のエネルギーをこれ以上に最大利用できる製品はおそらく今までなかったでしょう。2017年までに商品化して市場に出すことを目標としており、今からワクワクします。

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写真が今回開発されたHCPVTシステム。まさにひまわりが花咲くような形状をしています。
10メートルの支柱の上に40平方メートルのパラボラ状の台座が設置され、常に太陽の方向を向くよう追尾機能が備わっています。
台座の内部には36枚も楕円形の鏡が太陽の光を中心の発電システムに集めます。
ちなみにこの鏡は厚さ0.2ミリメートルのプラスチック・フォイルを素材としており、経年劣化によって交換が必要となる10~15年後にはリサイクルができるのだそう。

集光された光はレシーバーに実装された1cm角の多接合型の太陽電池チップ(1枚の出力は最大57W、これが何枚利用されるかは未公開)で電力に変換されます。

これだけ集光された日光をまともに受ければチップは1,500℃を超えることになるところを、85℃~90℃の温水を使って”冷却”してチップを動作温度範囲内の105℃に保つのだとか。ここで出た排水に使用方法は幾パターンかが考えられています。
例えばこの温水から飲料水をつくったり、空調に利用したり、海水を蒸留して淡水化したり。
飲料水をつくる場合だと、受光面積1平方メートルあたり一日30~40ℓを作り出すことが可能だといいます。

一台で大容量の電力・温水を作ることができる同システムは遠隔地を含めた多様な場面での採用を想定していますが、商品化に先立ってAirlightとIBMは、2015年12月までに2つの自治体を選定し、HCPVTシステムの試作品を寄贈するとのこと。

参考

米GEが日本の太陽光発電事業に参入

岡山県瀬戸内市塩田跡地に230MWのメガソーラーを建設する、ゴールドマン・サックス、日本IBM、東洋エンジニアリングなども関わる事業に、アメリカのゼネラル・エレクトリック(GE)も関わることになったのだそう。

GEは、このメガソーラーの運営をしている、「くにうみアセットマネジメント」による特別目的会社(SPC)への出資を行い、株式の大半を取得する予定だそうです。

「近く瀬戸内市と土地の賃貸借契約を締結する」とされていますが、この計画が持ち上がったのは2012年、つまり買取価格が42円の年に申請は済ませているものだと考えられます。塩田跡地の土地の整備に費用がかさむことが予想されるとはいえ、パネル価格も安定してきている今、この規模で42円売電のできる発電所は、安定した収益も期待できるのではないでしょうか。

さすがというべきでしょうか、投資のしかたがダイナミックですね!

参考

塩田跡地に230MW・岡山県瀬戸内市

岡山県瀬戸内市は「錦海塩田跡地活用基本計画」の中で、約500haの敷地の中の約250haに最大230MWとなるメガソーラーを建設する事を発表しました。
500haというと、東京ディズニーランド約10個分の広さで、かつては東洋一の規模の塩田と言われたそうです。

しかし平成21年に運営会社が倒産。排水ポンプの運転も停止の弊害として周辺地域への浸水が進むと、約500世帯に被害が及ぶことから、翌年平成22年には瀬戸内市によって取得されました。

7つの企業の連合体に委託されるこの事業、代表は「くにうみアセットマネジメント」で、発電所の設計施工は東洋エンジニアリングと自然電力、情報通信基盤の構築は日本IBMとNTT西日本、街づくりの面でジャーマン・インターナショナルが参画することになっています。

2012年9月の計画当初は250MWの建設が可能と見積もっていましたが、若干小さくなったようです。しかし平成24年度の42円・20年の売電制度が適用されるため、収入面の安定は期待できそうな事業となりそうです。

初期費用のリスク低減のために、太陽光発電事業そのものを証券化して、金融機関や一般市民からの投資を募るそうで、証券化を含む金融財務面はゴールドマン・サックス証券、くにうみアセットマネジメントが担当することになります。