イタリア太陽光発電累計16GW達成・補助金はあとわずか

イタリアのエネルギー機関Gestore dei Servizi Energetici SpA (GSE)によると、イタリア国内の系統連系がされている太陽光発電の累積量が16GWを超えたという事です。

さらに665MWが奨励金申請をしていますが、まだ系統連系はされていないという事です。
申請中ものもを含めて64億7300万ユーロの奨励金がすでに使われており、残りは2億2700万ユーロ(約230億円)。67億ユーロ(約6870億円)に達したところで打ち切られるため、イタリアの太陽光発電市場も今後縮小がみられると考えられます。

ちなみに日本では1年ごとに太陽光発電を含む再生可能エネルギーへの補助金に充てる予算が決定します。
2010年度には太陽光発電には463億円(うち住宅用に401億円)の予算が充てられ、2011年度には511億円(同429億円)が充てられていましたが、2011年は東北地方太平洋沖地震をきっかけに太陽光発電の導入が急増。11月で予算が底をつき、第3次補正予算で869.9億円が上乗せされたという経緯があります。
2012年度には349億円の予算が太陽光発電の補助金に充てられています。

つまりイタリアの230億円は、震災前の2010年度予算の半分程度という事です。
すぐにでも終わってしまいそうな金額ですね。

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チェコの太陽光発電市場・累積2GWに近づくも衰退状態

チェコ共和国の太陽光発電の累積設置量が2012年の9月終わり時点で1.999MWに達したと、チェコのエネルギー調整オフィス(ERU)が発表しました。

チェコの太陽光市場は数年前までに急速な成長を遂げました。しかしFiT価格の値下げや2011年の3月1日をもっての地上設置型のシステムへの補助廃止などが決定された2010年の法改正により導入数は一気に低下しました。

現在のチェコのFiT価格は30kWまでのシステムに対し1kWあたりCZK5.08(20.6円)ですが、ERUはこの価格を今後5kWから30kWまでのシステムにCZK1.90(7.7円)、5kW以下にCZK2.46(10円)に減らす意向を出しているとphotonが明かしています。

チェコは以前ヨーロッパの小国による太陽光発電の難しさについての記事でも取り上げられていました。

太陽光発電は行政的な補助が大きくものを言う市場だという事が再確認できます。

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ドイツは今でも太陽光発電の先進国

FIT(フィードインタリフ)の引き下げにもかかわらず、ドイツでは今年9月に前月の329MWを大きく上回る980MWの設置量があったという事で、今年に入ってからの累計では6.22GWの太陽光発電の設置量となった、という事です。

9月の設置量が急速に増えたのは10月から10MW以上の太陽光発電所に補助金が出なくなった事も影響していると考えられます。
145MWのメガソーラーを5週間で完成させたツワモノ(もちろん施工スピードで世界最速記録)もいましたね!

今年第1四半期の時点で今までの累計が26.5GWだったので、4月以降の設置を含めるとドイツは累計30GWを超しているでしょうね。

52GWで太陽光発電の買取制度が中止になるという法案が決定しているため、我先にと設置を急ぐ人もこれから増えそうです。

アメリカでは2012年の太陽光発電の設置量は3.2GW。70%という健全な成長率ですが、ドイツはこの10倍の速さで設置が進んでいるのだそう。

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ルーマニアは次の成長市場?

日本やインドなど明らかな成長市場を尻目に、ルーマニアが密かに注目を浴びているようです。
GTMリサーチでは今年初めに日本の太陽光市場の急速な成長を予想し、またラテンアメリカや中東、北アフリカの市場を含む市場予測を今年出す予定ですが、中でも特にこれからのルーマニア市場について”注意”していきたいとのこと。

ルーマニアはドイツと同レベルの日射量が得られるそうです。特に黒海に近い地域に多くの日射量が期待できるようです。

隣国のウクライナにはオーストリアの”アクティブソーラー”が、黒海に突き出たクリミア半島と黒海沿岸のオデッサに合計300MW弱のメガソーラーを建設していましたね。

このルーマニアで近年再生可能エネルギーが盛んに導入され始めたのはEUの排出量削減目標の達成のために導入された政策のためです。
例えば2009年時点で系統に連結された風力発電は15MW以下であったのに対し、同年4月に決定された法により20億米ドル近くが投入され、この3年で1GW以上が建設されています。

そして今年の4月に批准された再生可能エネルギー法の緊急規定により、太陽光発電の市場も炸裂するだろうという事です。

現時点で最大の太陽光発電所は国内のデベロッパーであるFomco Solar Systemsが建設した2MWの施設ですが(中国製のZNShineパネル)今年10月だけでも以下のプロジェクトが発表されています。

  • Hareon Solar Technology: 122MW
  • Aion Renewables: 80MW
  • CEED & ePD: 48MW
  • Samsung Group: 45MW
  • EDP (total of four): 38MW
  • Espero: 20MW

つまり、デベロッパーにしてみれば魅力的に見える市場でも、GTMリサーチからすれば、思いがけない(しかしすでに前例もあり、確実に落ちる事となりそうな)落とし穴があるという考えのようです。

ルーマニアの太陽光発電協会などによると、合計520MWのプロジェクトが系統への連系を承認され、さらに1200MWが承認待ちの状態だと言います。
GTMリサーチは、2011年までに5MW以下の導入量であった事実も踏まえ、現状維持の状態であれば、今年中に50MW、来年にさらに320MWの導入量であると予測しています。
GTMリサーチのアナリストAndrew Krulewitzによれば、
「チェコで起こったように、政府は経済的に無理な約束をして、それを撤回せざるを得ない事態にもなりかねない。」
とのこと。

ルーマニア政府がギガワットレベルの市場を維持できるとは思えないし、再生可能エネルギーの促進プログラムも約束の時期を満たずに撤回することになりそうとのことです。

カナダのオンタリオ州やスペイン、イタリア、チェコ共和国でも過去に、一時的な市場の急上昇のすぐ後に市場規模を縮小し、業界の崩壊や破綻を招いたことから、ルーマニアのような小国での市場の成長は注意しながら見る必要がある、という事ですね。

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インリーソーラー、中国政府からの不正な補助金に対する告発を拒絶

昨日、EUから中国に対して自国の太陽光産業に不正な補助金を支給していたことに対する告発がありましたが、インリーソーラーはその告発を棄却しました。

インリーグリーンエナジーの代表であり、最高経営責任者のMr. Liansheng Miaoの言葉

「我が社はニューヨーク証券取引所にも上場し、公的な取引を行っています。その資金財源とその額に対しても透明性が十分に示されています。通常の市場レートで融資を受け、国際会計基準と規範に則って経営を行っています。2009年から2011年にかけての借入金は6.3%から7.1%と、平均的な金利です。政府からの不法な補助金は決して受け取っていません。我々の成功は、イノベーションに焦点を合わせた経営と、最新鋭の機器、設備類への投資、そして信頼から成り立つ長期的なパートナーシップによるものです。」

インリーグリーンエナジーヨーロッパの、最高経営責任者Darren Thompsonの言葉

「太陽光発電業界はヨーロッパだけでなく、世界中でメジャーなクリーンエネルギー源となる可能性を持っています。懲罰的な関税が課せられれば太陽光製品の価格は高騰し、業界の多くの働き手の職を奪う事になります。特にヨーロッパの熟練工や中小企業が受ける打撃は大きいことでしょう。」

EU vs 中国 ”価格抗争”のタグで今までの抗争劇が確認できます。

中国の太陽光メーカーが影響力が増すのは日本や欧米のメーカーにとっては苦しいことでしょうが、一方価格は下がれば下がる程普及は進むし、二酸化炭素排出量の削減にも繋がるでしょうね。

中国のメーカーは国際社会においても、CSR活動もしっかり行っています。
それに比べたら日本のメーカーはメガソーラーへのパネル提供の話はよく聞きますが、途上国へのパネル寄付などの活動はあまり聞かないですね。

インリーソーラー:プレスリリース

EUから中国にまたもや圧力。中国政府による不正な太陽光企業への援助はあったのか?

今月6日、中国に対するアンチダンピングの申し立てに続き

24日の会合で一度協調の姿勢を見せた中国とEUですが、またもやEUのソーラーパネルメーカーが25日、中国に対して「中国の太陽光メーカーに不正な補助金を出している」と申し立てを出しました。

EUの業界団体プロサンのMilan Nitzschkeに言葉によると、
「多くの中国の太陽光パネル製造会社は中国政府からの度重なる補助金を受けていなければ、とっくに倒産しているところだ」
ということです。

また、政府の補助金と介入によって、国内需要の20倍、世界的な需要のおよそ倍ものソーラーパネルの生産が行われたとのことです。

欧州委員会によると今や世界の65%の太陽光パネルが中国製という事。
それらがこのような政府の大規模な介入による大量生産だとしたら、他国の企業は太刀打ちできるはずもないですね。

申し立てから調査の有無の決定には、前回のアンチダンピング調査決定と同様、45日間もかかるそうです。

貿易額にして過去最大のこの申立て、EUはどうにか調査にこぎ着けたいところでしょうね。
しかし、これらの調査に対して中国製品に関税が課せられるとしたら、価格低下のスピードはさらに緩まることになるのでしょうか。

参考サイト

もうひとつ気になる情報が同日に出ています。中国政府の直属のChina Development Bank Corp.(国家開発銀行)は、中国の太陽光パネルメーカー大手3社のサンテックトリナソーラーインリーソーラーに対して経済的支援を強化するようです。また他にもHareon Solar、Chaori Solar、Sungrow Powerの名を挙げ、他にも名前を挙げてはいないもののあと6社、合計で12社に優先的な支援を行うつもりらしいです。
北京のブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスのアナリストであるJessica Ngは、「12社に絞った支援は、中国が業界の強化を早急に計りたい意図が見え隠れしている。構図的にはサンテック、トリナ、インリーがこの支援で生き残り、LDKソーラーが苦戦することになるだろう。」と言います。

New Energy Financeのデータによると、CDB(国家開発銀行)はこれらの12社に対して2010年から432億ドルに上る貸付を行ってきたそうです。

Bloomberg

この国家開発銀行の支援の事実が、前述の「政府の介入」の申立てにどう影響するのか気になるところです。

2030年までに太陽光が15%をカバー予測:EUエネルギー事情最新情報

9月25日にEPIA(欧州太陽光産業協会)がドイツのフランクフルトから出した情報によると、ヨーロッパにおける太陽光発電を含む再生可能エネルギーは近年ヨーロッパのエネルギー産業で重要な位置を占めており、2030年までに15%(またはパラダイムシフトが行われた場合では25%)を占めるまでに成長するとみられています。

EPIAは、伝送と分配の両方面でのネットワークオペレーターへのインタビューをもとに、外部のエキスパートのアドバイスも含めながらレポートをまとめました。

価格において

2012年にはシステム自体の価格が、€1.22~€2.31/W、2022年には€0.92~€1.78/Wと、安くなることが予想されています。

これは、住宅用の3kWの屋根置き型システムが2000年の時点で€20,000したものが、2012年の現在では€6,000まで下がり、さらにこの10年が終わるころには€4,500まで下がるということになります。

価格の低下の速度は弱まるものの、システム価格は年々低下が約束されていると考えられます。

太陽光の割合について

エネルギー行動計画(National Renewable Energy Action Plan: NREAP)の出している2020年までの太陽光普及率目標は2.4%ですが、ベースラインのシナリオでも4%、パラダイムシフトシナリオで12%の予測です。
2030年には10%(ベースラインシナリオ)、25%(パラダイムシフト)の予測が出されています。

この数字の現実性について、具体的にヨーロッパの各地域での普及率を例示しています。

  • イタリアで5%の電力需要をカバー
  • ピーク時の需要においては10%のカバー率
  • EU内における15の地域では、年間ベースで太陽光が10%近くをカバーしている
  • スペインのExtremaduraにおいては、この数字は18%以上

EU対中国 価格抗争速報

EUにおける中国製太陽光パネルの価格について抗争のあったEUと中国は、両者間の価格調整で協力を合意しました。
EU委員会は、中国の独占禁止法の執行機関である国家発展改革委員会(NDRC)と国家工商行政管理総局(SAIC)と、調整・協力体制の強化の合意をしました。
合意の覚書には、カルテルやその他の制約的な同意、支配的市場地位の乱用についての立法とその施行、技術協力に関してが含まれています。

EU:プレスリリース

EU、中国製品をアンチダンピング調査開始

今年7月25日、EUの業界団体プロサンが中国製品に対するアンチダンピング調査要請を出したことを受け、9月6日ヨーロッパ連合(EU)は調査の開始を報告をしました。

EUは中国の太陽光産業にとって主要な輸出先で、輸出高の約8割がEUでの売り上げです。
2011年、中国はEUに対して太陽光発電パネルと周辺機器を含め210億ユーロの輸出をしており、EUにとっても非常に重要な申し立てとなります。

 

15か月の調査期間ののち、十分な証拠が得られれば、暫定で9カ月のダンビング防止関税が課される予定です。

EU:プレスリリース

太陽光発電先進国ドイツに学ぶ

クリーンエネルギーで生み出した電力を一定期間買い取る、固定価格買い取り制度を最初に始めたのはドイツです。2011年までの累計で、太陽電池の導入数の約75%が欧州に、その約半分がドイツに占められると言われています。つまり、日本より少し小さいくらいの面積しかないドイツに、世界の40%弱の太陽電池があるという計算です。

ドイツの例に見る太陽光の今後

上記のような成果を得るため、ドイツではFIT(feed-in tariff)と呼ばれるクリーンエネルギーの固定価格買取制度制度を、世界で初めて実施しました。売電で利益を得ようと多くの産業用太陽光発電施設が建設され、販売数がいっきに増えた結果価格競争を促し、2011年のはじめにはシステム価格が1kWあたり2422ユーロ(26万7000円)まで下がってきています。比べて日本のソーラーパネルは、2012年の時点で一番安くて30.7万円/kW(グリッド/SO-KPC5-182G)、平均でいうと40万円を切れば格安という印象を受けます。
ドイツのシステム価格は産業用の大規模発電100kWあたりの数字なので、家庭用の太陽光発電の平均価格と同じように比較しようとすると正確さに欠けますが、買い取り制度によって日本の産業界でも太陽光導入計画が進んでおり、ドイツと同程度の低価格化は、近い将来日本の太陽光発電業界でも実現不可能な数字ではないと言えます。

ドイツでの太陽光システム価格の低下は今後も進んでいき、2012年には「グリッドパリティ」と呼ばれる状態を達成できると予想されています。つまり、通常の電気代と、太陽光発電のコストが等しくなる状態です。これ以降は、買い取り制度や補助金がなくても、設置メリットがあるので、自然と設置がすすみます。日本の太陽光発電も、この状態まで持っていくまでが、一つの達成すべき目標だと言えます。

現在のドイツは、世界で唯一、2000万kW超の太陽光発電出力量を達成しています。これは、原子炉20基分に当たり、東京電力福島第一原発事故後、脱原発社会を目標にクリーンエネルギーのさらなる普及を目指しています。

ドイツの失敗

2012年4月3日、ドイツの太陽光大手Qセルズが経営破綻しました。この会社は固定価格買い取り制度の後押しもあり、2007年にはドイツ最大手にまで上り詰めた企業ですが、5年の間に中国企業の参入などの影響で光発電システムの価格は暴落し、大幅な赤字を計上しました。この他のドイツの同業他社も破産が相次ぎ、太陽光発電設置がピークを過ぎたと言われる今後、さらなる業績悪化の恐れがあります。

ドイツ国内の太陽光産業への影響に加え、買い取り制度の国民負担金が極端に増えたことなども踏まえて、2012年6月29日にFIT(フィードインタリフ/全量買取価格制度)の見直しをする法案を成立させました。それによると、太陽光発電の固定買取価格を20%から30%引き下げることに加え、この買い取り制度に対して明確な“終了時期”を設定しました。2012年第一四半期の時点で累計の導入量が2,650kWですが、それが5200万kWに達した時を境にこの固定価格買取制度は廃止される見込みです。これ以外に、10kW以上のシステムに対する9割のみの部分買取制度の実施など、徐々に政府が太陽光発電導入の補助から手を引いていく方向へ向かっています。

ドイツの雑誌シュピーゲル誌は「太陽光はドイツ環境政策の歴史の中で最も高価な誤りになる可能性がある」と指摘していますが、環境保全の観点に立てば太陽光発電の導入数が増えることは決して悪いことではありません。導入数が世界一であることに加え、先に記述したとおり太陽光価格の低下もドイツ国内で進んでいるため、過去10年間の勢いこそないものの、この先もドイツ国内では徐々に累積太陽光導入数が増えることは十分に考えられます。

日本は2012年7月から産業用太陽光発電に対しての全量買取制度が制定されたことから、企業の大規模産業用太陽光発電参入が相次ぎ、累積設置容量はさらに伸びていく予想です。設置数増加と価格低下を促しつつ、日本の太陽光メーカーの経営を支えられるよう、固定価格買取制度の価格設定は細心の注意が払われなければなりません。