昭和シェル、アブダビの太陽光発電の実証実験で1.7倍の発電量を確認、中東進出の足掛かりとなるか?

昭和シェル株式会社は2015年1月14日、一般財団法人国際石油交流センターとアブダビ首長国国営の石油精製会社であるTakreer(タクリール)と行っていた共同事業への太陽光発電システム導入に関する実証化実験と調査が終了したことを発表しました。

この実験は製油所関連施設に太陽光発電システムが導入可能か、運転状況や砂塵対策などの内容についてを確認し、2011年から4年間にわたり検証がなされてきました。石油供給の安定確保と原産国との友好を深めたい日本側と、製油所での消費電力の一部を再生エネルギーによって賄うことによって原油輸出余力を増やしたいアブダビ首長国側の方針が一致ししたことによって実現した事業であり、両国の意向が反映されています。

供給されたのは昭和シェル石油の子会社であるソーラーフロンティアのCIS薄膜太陽電池で、タクリールが操業している製油所関連施設屋上とアブダビ市内の製油所内建屋屋上に設置されました。合計で77kWになる両発電所は順調に稼働しており、発電量も日本と比べて1.7倍が得られているのだそう。

ちなみに中東地域に特有の問題である砂塵対策として2014年に防汚塗料と清掃用ロボットも導入したということ。
ソーラーフロンティアの高温耐性の高さに加えてこうしたメンテナンスがどれほど効果を示したのかは特に今回は公表されませんでした。

ちなみにアブダビと同じくアラブ首長国連邦の一国ドバイでは、ソーラーフロンティアの競合でもある化合物系ファーストソーラーが200MWという大規模な受注に成功しています。
昭和シェルの同実証実験が始まったのはファーストソーラーがドバイの第一期目の受注を受けた2012年よりも前のこと。
しかし、”実験”をしているうちになんだか先を越されているような感が否めません。

「同事業はアブダビ首長国との関係強化や日本との友好関係にも貢献するとして期待されています」
と締めくくられる
同発表ですが、実際の発電プロジェクトに関する気配が全く感じられないのは、単なる秘密主義によるものでしょうか。

クリーンエネルギーに未来を託すアブダビの課題

最近MENA(中東・北アフリカ)の話題が多いですね。
今月16日には毎年アブダビで行われるエネルギー・環境関連見本市World Future Energy Summit(WFES)が開催されました。

「アブダビのあるアラブ首長国連邦は、何に関しても世界一だとか世界最大だとか世界初になりたがるようだ」
というのはグリーンテックメディア(GTM)。

なんでも集光型太陽熱発電施設で世界最大の100MWというShams-1が、3月までに建設完了する予定なのだとか。

これがShams-1 ↓ かっこいいです!!

アブダビの2020年までの「ピーク需要の7%を再生可能エネルギーで」という目標は以前も触れましたが、実際7%となると、約1,600MW(1.6GW)。

しかし、UAEの今までの姿勢、豪奢でエネルギー効率の悪い建造物を次々に建て、電力使用への”補助金”によって経済成長以上の電力時用の増加があること、そしてその結果として一人当たりの二酸化炭素排出量が世界5位だったりすることなどを考えると、UAEのクリーンエネルギー政策に疑心を抱く人も多いのではないか、ともあります。

二酸化炭素の排出量を減らすには先述の電力使用への補助金をやめれば早い話ですが、以前それを行った国で大きな混乱を引き起こした例もあり、アブダビ政府はエネルギーミックスを多様化し、再生可能エネルギーの割合を高める事で対応しようということで、今の動きにつながっているようです。

マスダールはSham-1の他にも、ロンドンの沖合に建設されている世界最大1,000MW(1GW)の沖合風力発電施設”London Array”にも出資しています。


さらに”マスダール・シティ”と呼ばれる計画都市は、国際的な再生可能エネルギー組織のホームとなることだろう、ということ。

これらを見ると、やることなす事とにかく”派手”なUAEのクリーンエネルギー政策。
しかしUAEは、ただただイメージ投資を行っているのではなく、エネルギーの安全性や人的資本への投資と考えているよう。

天然ガスや石油だけでなく、エネルギーの分野で将来的にもリーダーシップを保ちたいアブダビは、豪華絢爛主義(市内の一流ホテル内にある金の自販機など)からの脱却が、どこかの時点で必要だろうというのが、GTMの見解。ごもっともです。

参考

石油産出国も多いMENAで太陽光発電が注目される理由とは?


中東と北アフリカを含むMENA地域は、今後注目の太陽光発電市場という事でこれまでもこの地域に含まれる国々での再生可能エネルギー政策についてお伝えしてきましたが、「石油産出国も多い国がなぜ?」と思った方も多いのではないでしょうか?

現在のMENA地域のエネルギー事情、今後の再生可能エネルギーに対する政策についてなどを扱った記事がGTMから出ていて興味深かったのでご紹介します。

MENA地域における需要の高まりについてのリサーチは前ポストにてお伝えしたとおり。

MENA地域では、人口の増加や都市化、工業化に伴う経済成長などが原因で、電力の需要がどんどん増えていくと考えられています。

もうひとつ重要なのは、電力需要の増加は政府の電気代の補助がさらにこの需要を高める原因になっているということです。

つまり、経済成長に増して電力需要の増加速度が速い事を意味します。2017年までに新たにこの地域で120GWの需要増加がみられる計算になるとのこと。

石油産出国の多いこの地域では、化石燃料による火力発電が主な電力源で、再生可能エネルギーに対する注目度は低めでした。ドバイやアブダビなどを擁するアラブ首長国連邦は、石油の輸出で世界第5位、一日230万バレルを世界市場に送り出しています。
埋蔵量では世界7位、また天然ガスの埋蔵量でもトップ10位に入っています。

しかし化石燃料の有限性により注目が集まるようになり、UAEは再生可能エネルギーの導入・エネルギーのさらなる効率化・安全な原子力の活用に関して、地域を先導するための計画を推し進めています。その中でも太陽光発電はより手軽に始められる、UAEにとっては魅力の大きい電力源ということです。
MENAの平均的な地域では、1㎢の日射量で年間およそ150万バレル分の太陽光による電力が得られるそうです。

毎年アブダビではWorld Future. Energy Summitというエネルギー・環境関連見本市が開催されます。また「Masdar」という会社を設立し、再生可能エネルギーとクリーン技術の開発、持続可能な都市化についての投資も行っています。
このマスダールを通じてアブダビ国内には100MWの集光型太陽熱発電施設(Shams-1)も建設されています。再生可能エネルギーの目標値を2020年までに7%と定め、今後も開発は拡大していく予定です。

他にもMENA関連のニュースは「MENA」タグでまとめてあります。
石油も出て、太陽光発電にも最適なんて、なんて恵まれた土地なんでしょうね!

参考

にほんブログ村 環境ブログ 風力発電・太陽光発電へ
↑ ↑各メーカーのパネルの発電量が気になる方は上記サイトが一番お勧め!実際に設置しているご家庭のナマの発電状況が閲覧できます

中東・北アフリカ(MENA)に注目が集まる今後3年の太陽光発電

太陽光発電の需要形態がFiT政策による売電目的のものから、本質的な電力需要(遠隔地やグリッドコストの高い地域、電力不足の地域など)へと多様化していくにつれ、中東から北アフリカにわたるMENA(Middle East and North Africa)地域の需要は2015年までに3.5GWに達し、世界的な需要の約8%を占めるまでに成長するという調査報告が出されました。
img via GTM

その中でも主要な市場となるのがトルコサウジアラビア。MENAすべての需要の70%程度を占めることになる予測です。
MENAでは初めてのギガワット級の市場となると予測されるサウジアラビアは、2030年までに太陽光発電で16GW、集光型太陽熱発電で25GWを設置する目標を掲げています。

その他の国では、カタールが2014年までに1.8GWの設置目標、ドバイが2030年までにエネルギー供給量の5%を太陽エネルギーでまかなうという目標を発表しています。

アブダビは100MGの集光型太陽熱発電施設の発注をしています。

この報告をしているGTMリサーチとESIAは、1月16日にアブダビで行われたWorld Future Energy Summitで、さらに詳細なMENAの太陽光市場展望を発表したということです。

昨年のWorld Future Energy Summitについてはこちらでも触れています。

今年のサミットの速報についても、ニュースが出次第ご報告します!

参考