日々、新しい試みが進められていく農業と太陽光発電事業の併業を行うソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)。
背の高い架台の上にパネルを固定するタイプの一番典型的といえるソーラーシェアリングは、すでにおなじみといっていいほど各県で実証実験が進み、採算性や農業との両立可能性はすでに確立された感もあります。
ソーラーシェアリングについて詳しくはこちらのページで
他にも追尾型やビニールハウス上の設置などが検討されている中、今回は国内初の「手動回転式」の太陽光発電が静岡県に完成したというニュースをお届けします。
総工費などは公表されていませんが、かなりメリットも多いようで、後に続く農業者の方が今後増えていくことが予想されます。
プロジェクト概要
田んぼと畑の上、それぞれ約1,000m2に44kWを設置して合計88kWの規模。田んぼでは稲が、畑ではサトイモが育てられるということ。
地上設置型では1MWあたり1~1.5haが必要といい、比較的光飽和点が低い作物に関してはソーラーシェアリングの場合も同じくらいの面積が使われている例が多いようです。
今回の稲と里芋は光飽和点が高めなので広めの間隔で設置されているようで、1MW換算で2.27ha。通常の約半分のパネル密度といったところ。
メリットがたくさんの手動式回転システム
1.植物の生育に必要な光量を確実に届けられる
ソーラーシェアリングを行う際にパネルの下の土地で生育する植物は、ワラビのように光飽和点が低い植物を選びます。
今回は光飽和点が比較的高い稲(田んぼ)およびサツマイモ(畑)を育てながらの太陽光発電。
なので、光量が足りない際はパネルを回転させて太陽に向かって直角にすれば、生育にも支障をきたす心配はありません。
2.気候条件に合わせやすい
例えば強風時にはパネルを水平にして風を避けたり、積雪時には雪を落としたりといった対応も可能。
洗浄もしやすいと報道ではあります。
3.発電量(売電収入)のメリット
太陽の南中高度は年間で大きく変わりますが、通常の発電所では年間を通してパネルに当たる日射量が一番多くなる角度を採用する場合が多いです。(参考:パネルの設置角度と発電量)
しかし手動で回せるタイプなら季節に合わせて常に最適な角度に向けるという、”半”追尾型のような使い方も可能なため、より多くの発電量(設備利用率)が期待できます。発表では「角度固定型に比べ5%程年間発電量がアップ」とされています。
静岡県の年間発電量は全国的にも高く、平均1368kWh(設備利用率15.62 %)という実際の発電所によるデータもありますが、仮にこれに+5%の発電量が得られるなら、年間約126400kWh、404.5万円の売電収入になると考えられます。(2014年度の売電価格を適用した場合)
発表では400万円の売電収入を見込むということ。
さてこの国内初手動式回転太陽光発電、運用状況に注目したいところです。
【関連:10kW以上の太陽光発電の価格と収支、注意点やデメリットなど】
参考