沖縄電力の接続可能量は36万kW、系統WGに算定結果を提出

系統の接続保留問題に関して国の系統ワーキンググループ(WG)での検討のために沖縄電力が提出した算定結果について、同社が公表しています。

それによると沖縄電力管轄圏内の太陽光発電の接続可能量は36万kW(360MW)、そして検討保留を発表した2014年9月29日の時点でこの限度量を既に超過しているということ。

この先はWGでは沖縄電力の提案を含む各電力会社や事業者などの意向をまとめる作業に移ります。

参考

チュラエコネットの蓄電池利用システム、沖縄での売電事業再開に寄与できるか?

沖縄電力県内では太陽光発電の接続可能容量を超え、新規での売電申請が実質中断されている状態です。

それを打開するために沖縄市のチュラエコネットが開発したのが「SAKU(Solar Auto Kickback Uploading)システム」で、簡単にいえば昼間太陽光発電から蓄電池に充電し、夜間など太陽光発電の出力が下がる時間帯以降を中心に放電を行うという製品。琉球新報の記事をもとにご案内します。

50kWシステム×3で一つのパワコンをシェア

同システムの内容は、50kWの発電所3箇所を一つの50kW(正確には49.9kW)のパワーコンディショナに接続し、一か所の発電所からは通常通り発電してそのまま売電、残る2箇所からは全量を蓄電池に充電し、運転制御盤によって夜間を中心に売電する、というもの。
50kW以上では高圧対応になり建設コストが高くなるため、50kW未満の事業を対象としています。
蓄電池の設置でコストがかかる分、パワーコンディショナにかかるコストを3分の一に減らせるのは、事業者にとってメリットと言えそうです。

ちなみに琉球新報では「50キロワットの太陽光パネルを3枚使用する」と記載されていますが、1枚50kWのパネルなんてありません。正しくは「50kWの事業を3箇所」です。

実際のシステム活用には障壁も多い

さて、一事業者が隣接地で50kW以上の太陽光発電を行う場合、50kW未満を2箇所というように敷地分割をすることは認められていません

そのため、3箇所それぞれの利害関係の異なる事業者が、同システムをシェアするのが一般的な利用例として考えられます。

そうなると、どのシステムから直接売電してどのシステムから充電するのかで揉めそうですし、どこの発電所がどれだけ発電したかを計測する必要ももちろん生じますが、このシステムにはそのような内容は含まれていないようです。

なんだかちょっと詰めが甘い商品だな、というのが正直な意見です。

沖縄電力も「今後、接続の申請があれば、技術的な検討を含め、個別に対応していく」とコメントしており、同社もこのシステムを利用したい事業者が多くないと考えているのかな、なんて想像してしまいます。

追い打ちをかけるようですが、実は固定価格買取制度は蓄電池からの売電についてカバーしていません。
太陽光発電由来の電力であっても、一度蓄電池を通してしまうと、同じ売電価格を適用できないのが事実です。
沖電のコメントに「個別対応」とあるのは、こうした意味も含まれているのではないかと思います。つまり、制度上クリアしなければいけない問題が残っているため、現時点でこうしたシステムの利用を積極的に勧められないのです。

今後のサービスの展開に期待

例えばこのシステムを提供するにしても、事業者にシステムを販売するより、エネルギーマネージメントサービスのような形で利用者を募り、発電した電力を集約して新電力のような形でこのチュラエコネットさん(もしくはサービスを代理で提供する事業者)などが買電する、といったビジネス展開はできないものでしょうか?

同システムを開発したチュラエコネットという沖縄市の会社に詳細を問い合わせをしようとしたのですが、会社情報が見つからず、断念した次第です。

今回の製品で面白いと思ったのが、パワーコンディショナ1台で3倍の容量の太陽光発電をさばこう、というアイデアですが、チュラエコネットさんに限らず、蓄電池を利用して同様の試みを行うビジネスが、今後はもっと出てくるのではないかと予想しています。例えば既存の稼働設備のパワコンを使って、新設の発電設備の発電分から夜間に売電する、など。

発展に期待したいところですね。

関連:各電力会社の太陽光発電連系受付状況速報

政府が海外に再生可能エネルギーなど技術輸出支援

政府が国際協力機構のJICA(ジャイカ)を通して12つの技術協力の支援を行うと発表。2020年に30兆円のインフラ受注を目指して行われるのだとか。

これはJICAが昨年から行っている「民間技術普及促進事業」のプロジェクトとして採択されるもので、民間提案の技術を途上国に売り込むための支援。
12つのプロジェクトにはそれぞれ2000万円が支援されたということ。

2000万円というと多いようで少ないですよね。すぐに無くなってしまいそうな金額の気もしますが、ここは頑張って将来につなげてほしいものですね。

12つのプロジェクトの中には医療、農業インフラ、水関連に加えて再生可能エネルギーのプロジェクトも2つ選ばれています。

沖電グループ企業は特有の問題に対処できる風力発電の技術を輸出

一つは沖縄電力のグループ会社プログレッシブエナジーによる、トンガへの風力発電の技術輸出。
この風力発電は可変式になっており、天候によって折りたたみができるということ。台風の多い沖縄ならではの技術といえそうですね。

南太平洋の島嶼群からなる国トンガは世界中の小規模な島が同じく抱える電力供給に関する問題を抱えていると考えられます。
つまり、火力発電のための燃料輸送費がかかること、そして、小規模な島に大きな発電施設を建てるのは大変で、環境にも健康にも有害とされるディーゼル発電機を使用しがちなこと。
そのためトンガでは、2020年までに電力需要の半分を再生可能エネルギーでまかなう計画を立てているのだそう。

沖縄電力では、管轄地域内での再生可能エネルギーの接続量が限界に達しているので同地域内ではせっかくの技術を応用しにくい状況ですが、太平洋には同様の問題を抱える島がたくさんあります。
それぞれの規模は小さくても、その道でリードできるような存在になってほしいものです。

住友電工モロッコへの集光型太陽光発電技術輸出

太陽光発電で注目されているMENA地域(中東・北アフリカ)への足掛かりとして住友電工が目を付けたのはモロッコ。
集光型の太陽光発電で最大規模のものはカリフォルニアのものが有名ですが、これは太陽の熱を鏡で集めていわゆる火力発電と同じくボイラーを使った発電設備。
記事では集光型太陽光発電とは書かれているものの、太陽電池を使ったCPVなのか、熱を使ったCSPなのかは明記されていません。

とにかく広い砂漠地帯での発電所ということでは太陽熱を使ったボイラー発電だろうと予想します。つまりソーラーパネルとかは関係ない発電ですね。
砂漠地域の発電というと、熱に強い化合物系のソーラーフロンティアなんかにも頑張ってほしいな、と個人的には思っています。

参考

沖縄電力圏では住宅用も接続保留、九州電力圏では6離島の事業用で接続保留

沖縄電力圏で、産業用の太陽光発電の系統連系が保留になったまま具体的な解決策が出ていない状況で、宮古島市長らは経済産業省資源エネルギー庁に助けを求めにが東京まで出向いてきたそうです。

さらに状況は悪化して今度は住宅用の太陽光発電に対しても申請を保留にしているのだそう。

設置したくてもできない一般家庭の消費者はもちろん、沖縄県内の太陽光発電業者にも事業の支障をきたしているよう。「沖電は説明責任果たせ!」と、関係者のいら立ちを代弁するような社説も見られるものの、沖縄電力だってどうしようもできない状況なのかもしれません。


対する九州電力

圏内の6つの離島で1年程度新規契約を中止、「既に契約している1920件には補償金を支払って一部は送電線への接続を断ることも想定」しているというのは九州電力。
沖縄電力に比べて具体策を出している九電。沖縄電力からは微塵も感じられなかった余裕をこちらからは感じられます。

それもそのはず、九州電力は完全子会社のキューデンエコソルでメガソーラー事業をちゃっかり行っているのですから。

九州電力の子会社が、グループ会社に電力を売って、その差額は消費者に払わせるのってなんだかおかしくない???
と考え始めるとモヤモヤしてきそうなものでしょうが、ビジネスチャンスを逃さず、お金がいるときにはちゃんと(補償金しかり)使える状況にしておく事は健全な企業活動のためには必要と考えるとちょっとはスッキリするかもしれません。

参考

沖縄の系統連系保留の課題に、いまだ解決策無し

宮古市で、系統への負担を理由に新規の太陽光発電事業の申請を見送っている問題について、17日に行われた宮古島市議会の定例会に沖縄電力の古堅宗和企画政策部長が出席し、一般質問に答えました。

質問に答えたとは言いながら現状では具体的な解決策が出ているわけではなく、事業者の人たちは心にもやもやを抱えたままだろうと予想しています。

同様の問題を抱えるのは宮古島市だけでなく、石垣市や久米島町でも接続が保留されているということ。

宮古島市では、東芝などが参画している「宮古島市全島エネルギーマネジメントシステム(EMS)実証実験(すまエコプロジェクト)」を昨年10月から行っていますが、市としてはこのシステムを活用した電力需要調整が導入量の拡大に寄与できないかどうか、といった検討も進めているということで、ちょっとした期待を持てる発表内容でした。

参考

沖縄県宮古島での太陽光発電事業は足止め、解決策はまだ出ず

沖縄電力が宮古島系統で新規接続を保留したというニュースを以前お届けしました。その後沖縄電力は、宮古島で太陽光発電事業を行う予定の企業70社の代表に対し、説明会を開いたということ。

現在190件の新規契約を保留している状態ということですが、受け入れ可能量に対してすでに接続希望申込量が上回っている状態であり、説明会ではこれに対する沖縄電力の見解が明らかにされたようです。

今後の方針としては現時点で契約、接続が完了していない事業者に、出力抑制と蓄電池の設置を提案。
参加者の中には、出力抑制をした場合の売電の補てんなどは行われるのか、と聞いた人がいたそうですが、そんなもの、行われるはずないですよね。沖縄電力も補てんについては行わないと断言しています。
売電の仕組みをわかっていれば、こうした質問以外にもっと聞くべきことがあったと気付いたかもしれません。

事業者の振り落としでより地域に貢献度の高い事業者が出てくることを期待

消費者の願いとしては、売電収入だけを目的にした事業者をここでいっきにふるい落として、地域のスマートグリッド、エコ社会化への貢献をより重要視してくれる事業者が出てきてくれると期待したいところ。

例えばコンビニ業界では、10kW以上を設置しながらもあえて余剰売電を行う方針が主流です。電力を多く消費するイメージの強いコンビニだからこそ、より環境保全に貢献できる店舗の開発を進める企業を、個人的には評価したい、と考えます。

また太陽光発電による発電量を売電せず、地域内の施設で融通しあう三井不動産のスマートシティのような例もあります。

こうした企業の実例は自社内の開発技術力や資金力を生かした、本当に稀な事例なのかもしれませんが、固定価格買い取り制度をフル活用しなくても採算の合う事業にする方法があることを示しています。
どんな企業にでもできることではないのかもしれませんが、この機会に発電事業の環境貢献性、地域への貢献性などを振り返れば、自治体などからの協力・理解も高まりそうな気もします。

蓄電池の導入実験はどうなった??自治体や政府からの支援と沖電の対策にも期待

宮古島では「エコアイランド宮古島宣言」を掲げているといいますが、自治体や政府からの支援の有無も、この問題の解決には不可欠なのではないでしょうか。

宮古島は経済産業省資源エネルギー庁の「離島独立型系統新エネルギー導入実証事業」でマイクログリッドシステム構築の実証実験の場に選ばれています

宮古島系統の最大需要にあたる約50,000kWの8%、4,000kWの太陽光発電を設置し、同容量のNaS電池(出力4,000kW・蓄電容量28,800kWh)で出力の安定化を図るという内容の実証実験。
平成21年度に「離島独立型系統新エネルギー導入実証事業補助金」を受けて始まった実証実験は今年3月で期間満了し、

太陽光発電が大量に導入された場合には電力系統の安定運用が維持できるよう対策し、低炭素社会の実現に向けて引き続き取り組んでいきます

沖縄電力による展望も発表されていますが、説明会においてはこの展望による具体的な対策については言及されなかったよう。

事業者・電力会社・政策決定者の歩み寄りで問題の早急な解決を図り、離島での高度なスマートグリッド構築の実現が見られることを期待しています。

参考