系統の接続保留問題に関して国の系統ワーキンググループ(WG)での検討のために四国電力が提出した算定結果について、同社が公表しています。
それによると四国電力管轄圏内の太陽光発電の接続可能量は219万kW(2190MW)。
WGでは四国電力の報告を含む各電力会社や事業者などの意向をまとめる作業に移ります。
系統の接続保留問題に関して国の系統ワーキンググループ(WG)での検討のために東北電力が提出した算定結果について、同社が公表しています。
それによると東北電力管轄圏内の太陽光発電の接続可能量は552万kW(5520MW)、そして検討保留を発表した2014年9月29日の時点でこの限度量を既に超過しているということ。
さらに提出された提案には、連系が確定している設備については極力出力抑制を制度で認められている範囲内に抑え、さらに連系を保留している分については制度変更を前提とし、導入の拡大を検討したいとする意向を盛り込んだということ。
この先はWGでは東北電力の提案を含む各電力会社や事業者などの意向をまとめる作業に移ります。
太陽光発電の売電事業において、発電分の買取価格を「接続契約時」に後ろ倒しにすることで、ほぼ決決まりそうです。
経済産業省資源エネルギー庁では、接続保留問題の解決のためにワーキンググループで調査を進めていました。買取価格の後ろ倒しは10月の時点で案として出ていたものの、その際は「稼働開始時期」という内容でした。
この案には、事業の先見性が低まると金融機関や発電事業者サイドから反論が出たことで、間を取って今回の案(電力会社との接続契約時)におさまりそうだということ。
当サイトコンテンツのチェックリストでもご案内していますが、設置をお考えの方は住宅用であっても産業用であっても、1月くらいを目安に見積もりはしておく方が無難でしょう。
パンダのマークでおなじみ、WWF(World Wide Fund for Nature:世界自然保護基金)の日本支部、WWFジャパンが、「脱炭素社会に向けたエネルギーシナリオ提案」を基にした自然エネルギー接続保留に関する定量的分析に基づく結果と提言を発表。
まとめを先に言ってしまうと、「九州電力地域において連系申請が出されている太陽光1180万kWを含む自然エネルギーは、出力制限なしで連系が可能」だそうです。
一番の違いは、太陽光発電と需用電力の差について、政府の系統ワーキンググループ(WG)では太陽光が最高出力を出す可能性を過大評価しているという点。
政府が過大評価しがちなのは、停電が起こる可能性を極限まで無くし、万が一の停電が産業と経済に支障を起こさないようにすることを優先すべきだと考えているからだと予想します。万が一の停電の際、復旧にかかる全体コストも考えているかもしれません。
一方で「一国の産業や経済よりも、地球環境すべてにおいてのメリット」を優先するのがWWFの役目。
WWFでは、アメダスによる気象データを利用してより実際に近い形でシミュレーションしています。
そうすると、九州・中国間の地域間連系線を使わない場合に、全発電電力量の3.24%以下の余剰が発生する可能性があるという結果になったのだそう。つまり、全量を連系したら、電力融通などがうまくいかなかった場合に停電が起きる可能性が高まるということになります。
九州・中国間の地域間連系線を使えば、余剰の出る可能性はゼロ。
ならいいじゃない!と思うかどうか、ですね。
政府は1%でも停電を起こす可能性を増やすべきじゃないと考えているのではないかと予想します。
個人レベルでは「数分の停電を気にするなんて、本当に日本人は細かいよね」と思うのですが、産業レベルではそんな悠長な話ではないのかもしれません。
多くのメディアで言われているように、WWFが指摘するのは揚水発電の活用。
現在、原発の余剰を蓄電しておくために機能する揚水発電ですが、WWFはこの際、原発を取りやめて揚水発電を自然エネルギーの余剰吸収に活用せよ、と提言しています。
原発をなくして揚水発電を自然電力専用にする方が太陽光発電の余剰分を極限まで九州でき、ピークシフトが容易になります。
WWFはさらに、今後の目標としての提言で、余剰電力を使ってEVなどの燃料としての水素をどんどん作っていこうよ、というようなことも言っています。
燃料が安価に手に入るようになると、EV産業も促進されますしね。
もし、国民投票なんかを行ったら、WWF側の意見を尊重したい方はきっと多くいるでしょう。ただ、政策を決定するのは政府です。
最後になりましたがWWF検証シミュレーションでは、申請保留中の太陽光発電が連系可能となり晴れて全設備の稼働が開始した暁には、九州電力圏内の自然エネルギーは、発電量ベースでも23%に達するという結果が出ているのだそうです。
そんなに?と思うのか、まだまだ、と思うのか。
個人的には、蓄電池なしでも23%なら、まだまだ伸びしろに期待したいと思っています。
沖縄電力県内では太陽光発電の接続可能容量を超え、新規での売電申請が実質中断されている状態です。
それを打開するために沖縄市のチュラエコネットが開発したのが「SAKU(Solar Auto Kickback Uploading)システム」で、簡単にいえば昼間太陽光発電から蓄電池に充電し、夜間など太陽光発電の出力が下がる時間帯以降を中心に放電を行うという製品。琉球新報の記事をもとにご案内します。
同システムの内容は、50kWの発電所3箇所を一つの50kW(正確には49.9kW)のパワーコンディショナに接続し、一か所の発電所からは通常通り発電してそのまま売電、残る2箇所からは全量を蓄電池に充電し、運転制御盤によって夜間を中心に売電する、というもの。
50kW以上では高圧対応になり建設コストが高くなるため、50kW未満の事業を対象としています。
蓄電池の設置でコストがかかる分、パワーコンディショナにかかるコストを3分の一に減らせるのは、事業者にとってメリットと言えそうです。
ちなみに琉球新報では「50キロワットの太陽光パネルを3枚使用する」と記載されていますが、1枚50kWのパネルなんてありません。正しくは「50kWの事業を3箇所」です。
さて、一事業者が隣接地で50kW以上の太陽光発電を行う場合、50kW未満を2箇所というように敷地分割をすることは認められていません。
そのため、3箇所それぞれの利害関係の異なる事業者が、同システムをシェアするのが一般的な利用例として考えられます。
そうなると、どのシステムから直接売電してどのシステムから充電するのかで揉めそうですし、どこの発電所がどれだけ発電したかを計測する必要ももちろん生じますが、このシステムにはそのような内容は含まれていないようです。
なんだかちょっと詰めが甘い商品だな、というのが正直な意見です。
沖縄電力も「今後、接続の申請があれば、技術的な検討を含め、個別に対応していく」とコメントしており、同社もこのシステムを利用したい事業者が多くないと考えているのかな、なんて想像してしまいます。
追い打ちをかけるようですが、実は固定価格買取制度は蓄電池からの売電についてカバーしていません。
太陽光発電由来の電力であっても、一度蓄電池を通してしまうと、同じ売電価格を適用できないのが事実です。
沖電のコメントに「個別対応」とあるのは、こうした意味も含まれているのではないかと思います。つまり、制度上クリアしなければいけない問題が残っているため、現時点でこうしたシステムの利用を積極的に勧められないのです。
例えばこのシステムを提供するにしても、事業者にシステムを販売するより、エネルギーマネージメントサービスのような形で利用者を募り、発電した電力を集約して新電力のような形でこのチュラエコネットさん(もしくはサービスを代理で提供する事業者)などが買電する、といったビジネス展開はできないものでしょうか?
同システムを開発したチュラエコネットという沖縄市の会社に詳細を問い合わせをしようとしたのですが、会社情報が見つからず、断念した次第です。
今回の製品で面白いと思ったのが、パワーコンディショナ1台で3倍の容量の太陽光発電をさばこう、というアイデアですが、チュラエコネットさんに限らず、蓄電池を利用して同様の試みを行うビジネスが、今後はもっと出てくるのではないかと予想しています。例えば既存の稼働設備のパワコンを使って、新設の発電設備の発電分から夜間に売電する、など。
発展に期待したいところですね。
九電をはじめとした系統連系問題について、検討されている案の一つに「買取価格適用の時期の変更」が挙げられているようです。
現在の制度では、発電所の検討段階でも連系の申請時点の買取価格が適用されます。
資金調達、土地の確保などは認定取得後から始める例も多く、実体のない事業がかなり多くあることが問題視されていました。
現在は悪質な例に関しては経産省のメス入れによって排除され始めていますが、海外の基準からするとこの制度は、かなり「甘い」ようです。
ドイツなどでは、今回検討されているような「稼働開始時の価格適用」によってFIT制度が行われていたために、メガワット級の事業も数週間で建設するような例もあります。
実際、回答保留にあっている当事者にとっては、工期が遅れれば収益減につながるのですが、
個人的には比較的リーズナブルな案ではないかと思います。
九州電力が50kW未満について、9月24日以前の申請分を回答すると発表しましたが、その際50kW以上に関しては、経産省の委員会の一つに設けられた「系統ワーキンググループ」による検証の結果次第で方針を決めるとしています。
一方北陸三県を管轄する北陸電力は、7月末時点で約103万kW(1.03GW)の認定容量があるとし、その他の再エネ発電容量と合計すると軽負荷期のピークと同等になるため、同ワーキンググループに同じく検証を申し入れると発表しています。
すぐに連系の中断につながるわけではないにせよ、同WGの検証結果次第で年度末前に方針を変える可能性もあることを示唆しています。
朗報です。
九州電力は管轄地域の九州本土において、前回の回答保留の際に対象外となっていた10kW未満の余剰売電に加え、前回の発表の公表日(9月24日)以前に既に申し込んでいた50kW未満低圧の案件の回答を再開したと発表。
ただしこれには敷地分割と呼ばれる、50kW以上の案件を50kW以下の複数案件に分けて設置するものは除かれます。
九電ショックと言われるくらいのニュースになった買取中止問題。申込みの再開には事業者からの強い意見申し立てが効いたようです。
経済産業省に対しての反発の声も強まったこともあり、国からは「安定供給に支障のない範囲で対応するように」という要請が下ったとしています。
今回申請回答再開の対象とされたのは32万1000kW(32.1MW)の容量にあたる1万1129件分。
合計で1153万5000kW(約1.15GW)というボリュームのある50kW以上の5万5559件分については、国の専門委員会による受け入れ可能量の検証が済み次第、方針が発表されるということ。
国の専門委員会とは経済産業省総合資源エネルギー調査会省エネルギー新エネルギー分科会新エネルギー小委員会(長いですね…)の下に設けられた「系統ワーキンググループ」を指し、年内には各電力会社の接続可能量に対して何かしら対応策を発表するとしています。
日経新聞によると
既存の発電事業者からの買い取りを制限できる余地を増やし、新たな事業者の受け入れ枠を確保する案を検討している。
としており、既に売電を開始している事業の収益に影響を及ぼす可能性をにおわせていますが、既設の事業者からしてみれば「そんなの聞いてない」となってしまいますよね。
ちなみに経産省および九電のリリースではそのような内容が確認できないので、日経独自の調査によるもののようです。
詳細がどのようなものなのか、早急に突き止めたいと思いますので、各種SNS等で最新情報をご確認ください。
10kW以上の全量買取で、新規申し込み中断となった地域に朗報?
新電力会社のエナリスは東芝ITコントロールシステムから蓄電池システムを大量調達し、「バッテリーマネジメントサービス」として提供していくと発表しました。
このサービスはどんなものかというと、
まず蓄電システム(東芝ITCのリチウムイオン蓄電池9.9kWh・出力10kW)をエナリスが太陽光発電などの発電事業者に安価に販売し、
そして稼働している発電所からの電力を、エナリスが需給バランスを見ながら遠隔で充電/放電操作する
というもの。
同社の電力アグリゲーターとしての技術と経験が生かされる形となります。
同社のリリースによると
再生可能エネルギー買取の新規契約中断を一部の電気事業者が発表するなど、固定価格買取制度の課題が指摘される中、バッテリーマネジメントは再生可能エネルギー普及にむけた突破口になると考えています
としていますが、
詳細を問い合わせてみたところ現状ではちょっとした制度上の課題が残っているようです。
この「バッテリーマネジメントサービス」の最大の欠点が、蓄電池に貯めた電力は売電できないということ。
現時点では、再生可能エネルギーから蓄電池にいったん充電してしまうと、FITの全量買取制度を利用した売電はできないということです。
住宅用の余剰売電であれば、系統連系型の蓄電池システムを利用する場合はダブル発電が適用され、単価は下がるものの売電できることになっています。
全量売電に関しては蓄電池を利用した場合の再生可能エネルギー由来の電力に関して、単価や買取方法が決まっていません。
またエナリスにFIT同等の価格で蓄電池からの電力を販売できるかどうかも、否、です。
貯めた電力の使い道としては事業所等で自家消費をするなどが考えられます。
そうすると電気代が削減できることになりますが、その金額は全量売電の単価に比べると3/4程度に減ってしまうと考えられます。
蓄電に回さないといけない電力量がどれくらいなのかも前もってわかるものではなく、さらに蓄電池の購入資金は自分持ち、というと
さすがに導入を躊躇してしまう要素が多すぎるのではないでしょうか。
現状で同サービスを利用するのは金銭的なリスクも高く、災害対策といった面を重視する方に限られたサービスといえそうです。
しかし蓄電池システムとスマートなエネルギーマネージメントが、今後特に重要になってくることは間違いありません。
エナリスの同サービスはそれを先取りしたものともいえます。
制度上解決しなければいけない課題がまだ残っているものの、市場の準備はできていることは心強いですね。
各電力会社による太陽光発電の全量申込み保留(実質的買取中止)を受けて、新電力の一つであるエナリスがコメントを発表(参考:各電力会社の買取状況の速報)
業績に与える影響は軽微(参考)
としています。同社は子会社には太陽光発電の施工会社も持ち、太陽光発電等の開発サポートも行っていますが、一番力を入れているであろう事業はいわゆる新電力のジャンル。
そんなエナリスが「業績に与える影響は軽微」というコメントしています。
このコメントもあってか、一部のQ&Aサービスで「電力会社がだめなら、新電力に買い取ってもらえばいい」という回答を読んだことがあるのですが、これは必ずしも正しいとは言えないのが筆者の考えです。
「間違い」とも言い切れないものの、かなり難しい、状況によるところが大きい、というのが適当だと思います。
新電力の概要を簡単に説明すると、既存の電力会社の系統(電線)を借り受け、受給先のマッチングおよびその単価設定などを独自に行うサービスです。
今回、九州電力をはじめとした電力会社の買取の中止は、現在の電力網ではコントロールしきれない容量の発電施設から連系の申込みが来ていることが原因で起きていますが、新電力も同じくこの電力網を利用して提供されるサービスであることを考えると、系統自体が強化されない限り新電力でも買い取れない、というのが基本的な考え方になると思います。
ただエナリスは全国展開をしており、隣接する地域の電力会社に電力を売る、ということも実際に行っているということ。
これを利用して隣接の電力会社に申請する方法を取ることになるかと予想していますが、どちらにせよ地域や容量によっては確実とは言えないと考えています。
(現在エナリスさんには、そのあたりの事実確認をしている最中なのですが、まだ回答が得られていない状況です。進捗がありましたらこのポストの後記、または最新ニュースとしてお知らせしていく予定です。各電力会社の買取状況の速報ページと併せてブックマークなどをご利用の上、最新情報をご確認ください。)