ソーラーシェアリングにも有機系太陽電池

色素増感太陽電池の話題が続きます。諏訪東京理科大システム工学部の渡辺康之准教授の研究室が発表した、有機系太陽電池を使った、ソーラーシェアリングの実証実験についての調査結果が報告されました。

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この実証実験では、有機系の太陽電池光を通せる薄いフィルム状に加工できる特性を利用し、太陽電池をビニールハウスにかぶせて栽培を行いながら太陽光発電で電気を作るという方法を検証。

太陽電池は、作物が光合成で使う赤と青の光は透過させ、残る緑の光を使って発電する種類のものを使用。そうした環境で育てたミニトマトは、

生育は若干遅れるものの、収穫量は変わらないことを実証した

ということ。

有機系の太陽電池は効率の低さ、耐久性の低さといったデメリットはあるものの、設置面積を増やして全体の出力を増やしたり、コスト低減によって利用価値は高まるとされ、ソーラーシェアリングの新しい方法として、今後注目が高まります。

参考

有機太陽電池の効率向上に期待

太陽光発電の次世代を握るとされ、期待が高まる有機系ソーラーパネル(色素増感太陽電池)。その有用性に関してはこの記事でご紹介していますが、ネックとされる効率を向上させようという研究に注目が高まっています。

神戸大の小堀康博教授らの開発した基礎技術は、基板に使う有機分子などを電子レンジに使うマイクロ波で解析し、電流の発生効率を引き上げるというもの。実用化はこれからだということです。
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一方、産業技術総合研究所(産総研)は有機太陽電池の効率の限界値を21%と発表。(記事)現在はまだ10~12%程度ということ。

従来のソーラーパネルとはまた違った用途に期待が広がる色素増感太陽電池。今後の研究に注目したいですね

旭化成のコーティング技術でパネル効率向上、丸紅のメガソーラーで運用

丸紅宮崎県に建設するメガソーラーで、旭化成のコーティング技術を採用するという発表がありました。
パネルの表面にコーティングを施す技術で、静電気の発生を抑えてほこりが付きにくくなり、太陽光の反射量も少なくできるもの。効率にして5%向上できるということです。
例えば効率18%のパネルにこの技術を使用することで約19%の性能が発揮できる計算になります。それに加えパネルの洗浄などのメンテナンス費抑えられるということ。
運営コスト削減や売電収入の増加を期待できるこの技術を、丸紅のメガソーラーでの採用をきっかけに国内外の太陽光発電事業やメーカーにアピールしたい考え。

今回この技術が採用されるメガソーラーは、丸紅が100%出資して設立した「のべおか東海(とうみ)メガソーラー」による事業で、宮崎県延岡市の旭化成の工場敷地内に1062kWの太陽光パネルを設置するもの。

大規模なメガソーラーの計画も相次ぐ丸紅、数年後に現在の規模の約2倍に当たる30万kW(300MW)の稼働を目指すそうです。SBエナジーの200MWよりも大きな規模ですね!

イタリア・ミラノの大学研究所の太陽電池は赤ワイン色

DSC(Dye-sensitised Solar Cells)ろよばれる色素増感太陽電池の技術は日本でも既に多くの実証実験が行われていますが、太陽光発電の普及で先を行くヨーロッパでも、このシリコンを使わない有機系太陽電池の可能性に大きな期待がもたれています。
イタリアのミラノ・ビコッカ大学の研究所では、ヨーロッパらしく赤ワインのように赤紫の果実の果汁を使った色素増感太陽電池の研究が進められています。

メリット豊富な色素増感太陽電池についての説明をまとめてみると

  • 微光でも発電可能
    明け方のような時間帯でも発電でき、日照量が多い昼間に最適化した場所(主に屋根)への設置が必要なくなり、よりフレキシブルに設置(例えばビルの壁面への応用)ができる
  • コストを大幅に低減できる
    パネルをつくるシリコンの5分の1のコストで製造可能という計算が出ている

対してデメリットは

  • 効率が低い
    効率がシリコン系のパネルだと15%程度なのに対し、有機塗料は6〜7%
  • 寿命が短い
    シリコン系パネルが30〜40年稼働し続けているものがあるのに対し、有機塗料の発電持続期間は10〜15年と言われている

とあります。
とはいえ、応用力の高さ、また通常のパネルでは発電できない光ももれなく使う事ができるというところはむしろ活躍の場がシリコン系のパネルとは全く異なるとも考えられ、現行のパネルと並行して利用することも可能だと考える事もできます。

どの国でも、太陽光発電の次のフェーズは色素増感太陽電池のようですね。

なんでもこの発電の技術は、葉緑素の光合成を基本原理として発展したものだそう。
自然の力ってすごいって改めて感じます。

参考記事

NASAでも!宇宙から太陽光発電の電力を送電

以前お伝えしたJAXAの宇宙太陽光発電の地上に送電システムNASAでも同様の開発が行われていて、こちらは2025年の完成も見込めるということです。

JAXAの宇宙太陽光発電送電システム同様、宇宙に打ち上げた巨大な太陽光発電システムを、マイクロ波を利用して地上に送電するという仕組み。地表での私たちの生活に影響を与えない送電の仕組みも考慮済みなのだとか。

太陽光発電の効率を上げる「完璧な鏡」の可能性

MITの物理学教授マリン・ソーリャチッチとジョン・ジョアノプロスが率いる研究者チームが、”効率を全く損なうことなく反射できる”を発明しました。
偶然の産物で、実験中に発明された「完璧な鏡」(どういう”偶然”によって発見されたかはこちらを参照
太陽光発電以外でも、レーザー技術、光ファイバーなどの分野で応用できる可能性を秘めた発見なのだそう。

集光型や追尾型などのように、”パネル自体”の効率を上げることなく太陽光発電の効率を上げることに寄与するのでしょうかね。楽しみです。

次世代を担う「有機系太陽電池」に世界中が注目

太陽電池の市場では、効率ではシリコン系がまだまだ主流、いやいや費用対効果は化合物系の方が上、と意見が分かれますが、最先端の研究の場では有機系の原料で作られる太陽電池「色素増感太陽電池(OPV/organic solar cellなどと呼ばれる)」に注目があつまっている模様。

環境ビジネスオンラインでは「次世代太陽光発電システムの本命の一つ」とも紹介されていました。(参考

効率の記録更新も日々進む中、(Heliatekが12%の有機系太陽電池セルの開発に成功した、などNEDOはこの色素増感太陽電池の早期実用化のために、実証試験を開始すると発表しました。

具体的には3種類の有機系太陽電池を使った製品を実際に利用し、その結果を測定するというもの。


一つ目は「デザインソーラーランタン」
日本写真印刷に助成を行い、京都市内2カ所にこのソーラーランタンを設置します。


2つ目は色素増感太陽電池を壁面に取り付けるもの。
少ない日射量でも発電できたり、入射角に依存しない有機系太陽電池の特徴を生かし、壁面を利用した太陽光発電の実用化に有望だそう。
いまでもパナソニックから垂直設置できる製品が販売されていますが、どうしても高くて実際に設置する例は少ないよう。
生産コストが抑えられる有機系太陽電池の使い道としては一番期待できる分野なのではないでしょうか。
シャープとフジクラにそれぞれ助成が行われ、実証実験をします。


3つ目は軽量・フレキシブル・シースルー型の有機系太陽電池をサンシェードとして使用した屋内実証実験。
これは家庭や小さな店舗などでも簡単に取り入れられそうなので、はやく製品化されるとよさそうですね。

サンシェードで発電できるだけでなく、遮光効果によって部屋の中の気温調整にも役立ち、さらなるエコ効果が期待できます。
実証実験は三菱化学が行います。

シャープがセル発電効率でさらに記録更新・化合物3接合型で37.9%

以前、シャープが研究開発している化合物3接合型太陽電池セルで、世界最高の37.7%を達成した話題をお届けしましたが、それから4か月半、またそれを0.2%上回る37.9%のセル変換効率を達成したことを発表しました。

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太陽光エネルギーの波長に合わせて3種類の化合物の層を組み合わせ、効率的に光を吸収できるようになったということ。

集光型発電システム用や人工衛星などの宇宙用、移動体用への実用にむけて研究をさらに進めるということです。

参考

シャープの太陽光パネルについての詳しい説明はこちら
商品展開や実績に加え、価格相場案内も行っています。

インテリア素材として注目される太陽電池

発電するカーテンの開発や、太陽電池を使った素敵な間接照明の話題を以前にお伝えしましたが、太陽電池のインテリア素材としての活用が注目されています。

平塚市の県農業技術センターでこの夏大規模な実証実験が開始される「色素増感太陽電池」は、弱い光でも発電でき、屋内のインテリアを兼ねた補助電源として期待できるのだそう。

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従来の太陽電池と比べて効率こそ劣るものの、窓ガラスを通した日光や室内照明といった弱い光でも発電できる点、軽くて両面で発電でき、曲げたりもできる事から、様々な製品の素材として応用の効く点が魅力です。

追尾型の可能性?

追尾型の太陽光発電設備に関しては以前にも何度かお届けしましたが、(記事1記事2売電価格が引き下げられる中「より多くの発電量を見込める」事から、注目度が来年度も上がるのでしょうか。

JNCの子会社、千葉ファインケミカルが米QBotix社の技術を導入した太陽光追尾型の発電設備を、日本で初めて建設し、実証実験を開始するニュースが発表されました。

この製品の特長としては、「従来の一般的な追尾システムと比べて設備が簡便で故障しにくい」というところ。
太陽の方向を追いかけることでより多くの日射を発電面で受ける事ができ、通常の太陽光パネルと比べて1.4倍の発電量が見込めるということです。
つまり、設備費が、通常の設備費の1.4倍未満に抑えられれば、利用価値があると考えられます。