IBMがスイス企業と開発のハイブリッドな集光型太陽光発電は太陽エネルギーの80%を利用可能

IBMは、CSP(集光型太陽熱発電)の製造で革新的な開発を続けているスイスのAirlight Energyと共同で、2000倍もの集光が可能な集光型の太陽光・太陽熱併用の発電システムを開発したと発表。

HCPVT(High Concentration PhotoVoltaic Thermal/冷却熱利用型超高集光太陽電池システム)と呼ばれるこのシステム、呼び名は小難しいものの考え方はシンプルで、太陽光を集めたら光も熱もどっちも集まるんだから、どちらか一方だけじゃなくて両方利用しよう!というものです。

従来製品としては、集光した太陽光を利用して太陽電池で発電する集光型太陽光発電(cpv)と、集光した太陽熱を利用して主にボイラーを回転させる方法で発電する集光型太陽熱発電(csp)がありますが、今回開発したのはこのハイブリッド型ともいえる発電方式。ちなみに追尾機能も備えており、「太陽放射を2,000倍集光し、その80パーセントを有用なエネルギーに変換」できるのだそう。ある意味変換効率80%ですね。(参考:集光型太陽光発電では商品化されているもので効率約35%
太陽のエネルギーをこれ以上に最大利用できる製品はおそらく今までなかったでしょう。2017年までに商品化して市場に出すことを目標としており、今からワクワクします。

sunflower_field_240

写真が今回開発されたHCPVTシステム。まさにひまわりが花咲くような形状をしています。
10メートルの支柱の上に40平方メートルのパラボラ状の台座が設置され、常に太陽の方向を向くよう追尾機能が備わっています。
台座の内部には36枚も楕円形の鏡が太陽の光を中心の発電システムに集めます。
ちなみにこの鏡は厚さ0.2ミリメートルのプラスチック・フォイルを素材としており、経年劣化によって交換が必要となる10~15年後にはリサイクルができるのだそう。

集光された光はレシーバーに実装された1cm角の多接合型の太陽電池チップ(1枚の出力は最大57W、これが何枚利用されるかは未公開)で電力に変換されます。

これだけ集光された日光をまともに受ければチップは1,500℃を超えることになるところを、85℃~90℃の温水を使って”冷却”してチップを動作温度範囲内の105℃に保つのだとか。ここで出た排水に使用方法は幾パターンかが考えられています。
例えばこの温水から飲料水をつくったり、空調に利用したり、海水を蒸留して淡水化したり。
飲料水をつくる場合だと、受光面積1平方メートルあたり一日30~40ℓを作り出すことが可能だといいます。

一台で大容量の電力・温水を作ることができる同システムは遠隔地を含めた多様な場面での採用を想定していますが、商品化に先立ってAirlightとIBMは、2015年12月までに2つの自治体を選定し、HCPVTシステムの試作品を寄贈するとのこと。

参考

産総研が新たな多接合技術を開発、安価な超高効率太陽電池の普及に貢献か?

産業技術総合研究所(産総研)が7月7日「スマートスタック」という技術の開発を発表しました。

これは異種の太陽電池において、自由度の高い直接の接合を可能にしたもので、これによって、発電に使用する波長が異なる様々な種類の太陽電池を接合させ、高効率の発電セルを作れるのだそう。

研究では短波長領域を吸収するガリウムヒ素(GaAs)系高効率化合物太陽電池と、長波長領域を吸収する安価なCIGSやシリコン(Si)に、ガリウムインジウムリン(GaInP)太陽電池を接合した3接合太陽電池では、変換効率24.2%を実現。
またGaAs基板とインジウムリン(InP)基板を基にした4接合太陽電池で変換効率30.4%が得られたとのこと。

これまでコスト面で課題が多かった多接合太陽電池。
製品で言うとパナソニックのHIT太陽電池も単結晶とアモルファスのハイブリッド構造を採用しており、実際他の単結晶パネルと比べて高価に取引される傾向があります。
しかし今回の技術では

複数の太陽電池セルの接合界面にパラジウム(Pd)ナノ粒子を配列することで、電気的・光学的にほぼ損失なく接合できる

ということで、多接合型の安価なパネルの普及に繋がることを期待しているのだとか。

参考

シート一枚で変換効率を最大2.2%向上、日立化成の「波長変換粒子」

日立化成が太陽電池の封止シート向けに「波長変換粒子」を販売。

日東電工が開発していたものと、基本的に機能は一緒で、これまで発電には使えなかった紫外線の波長を変換することで、より多くの発電量をパネルから得られるようにするというもの。
同社が開発した「波長変換粒子」というものを通常の封止シートに添加するだけで、最大2.2%効率がアップすることが期待されるのだそう。
(ここでいう”2.2%アップ”は効率20%のパネルが22.2%になるのではなく、20% × 2.2%=20.44%になるということ)

製品の特長は

耐久性に優れたアクリル樹脂粒子内に蛍光体粒子を含有させた。封止シートに使った場合でも、太陽光パネルの耐久性を損なわず、かつ、封止シートの製造プロセスの変更も不要なため、封止シートの生産性に影響しないという

と説明されています。

パネルの発電量を上げるには、一般的にはセルの効率を上げる方法が取られ、各メーカー競って「世界最高効率のセルの開発」を行っています。
今回の製品は違う角度からのパネル変換効率の向上を試みた製品で、しかも「封止シートに添加するだけ」で、通常の生産ラインを変更したりする必要もないというお手軽さも魅力。さっそく各パネルメーカーでの導入が期待されるところ。

日立化成は、グループ企業である日立製作所が太陽光発電システムを販売していますが、使用されるシリコン系パネルはトリナソーラーのOEM製品。(他にソーラーフロンティアブランドのパネルも取り扱っています。)

パネルは外部調達し、パワコンや提携業者による施工で勝負するというのが現在の日立の戦略ですが、一部のメーカーが行っているように、モジュール組立だけ日本で行って、今回発売されたシートを使った国産パネルを販売すれば、さらに差別化が図れるんじゃないかな、なんて思います。

参考

効率従来の1.6倍、安全性と耐久性も向上したリコーの有機系太陽電池

リコーが、従来の色素増感太陽電池に比べて性能面で大きく向上できるとする「完全固体型色素増感太陽電池」について発表。

有機系の太陽電池は各社が独自で開発を進めていますが、リコーは従来の色素増感太陽電池において電極の間を埋める電解液を固形化することで、効率は従来の1.6倍に向上、さらに耐久性や安全性も高まり、85度の環境に2000時間おいて実験したところ出力低下が無かったのだそう。

電解液の固形化にあたって、金属酸化物ナノ粒子、増感色素、固体電解質をそれぞれ密着したまま固形化することが技術的に難しかったものの、当社がコピー機の製造などで培った成膜技術による実現させたのだとか。

まだまだ研究段階であるものの、6月25日から東京ビッグサイトで行われる「第25回 設計・製造ソリューション展(DMS 2014)」ではすでにこのセルを用いたモジュールのサンプル品を出展するのだとか。

この先は、低コスト化や野外での使用にも耐えられる耐久性の向上などを中心に改善・開発を進める意向だという。

詳細

追尾型で最大4.7倍の発電量が得られることを確認

太陽の動きを追う事でより常に最適角度での発電を可能にする「追尾型」太陽光発電。
大手のパネルメーカーではフジプレアムなども製品を開発しており、その能力については実証実験なども行われているところで、今後の需要の拡大が期待される分野です。

神奈川県平塚市のグリテックスインターナショナルリミテッドは、自社で開発した追尾式太陽光発電システムを使って神奈川県産業技術センターと共同で船上で実証実験し、実際に得られた発電量についての情報を公開。それによると、固定式に比べて春は1.8倍、夏は1.4倍、冬は4.7倍の発電量の増加を確認したのだそう。年間を通した平均で、発電量は1.7倍にのぼりました。

追尾型の魅力は、地上の発電設備で設置面積当たりで得られる発電量が増えるだけでなく、常に動いているような船や自動車への搭載でより大きな効果を発揮できる可能性を秘めていること。

今回開発されたグリテックスインターナショナルリミテッドの「傾斜駆動型ソーラー追尾発電システム」。直径30cm、高さ3.5mの支柱の上に、6.6m × 4m、容量にして4kWのパネルが載っているというもの。面積からパネル効率を計算すると約15%になります。効率で言うと、平均点くらい。(各メーカーのパネル効率比較

気になる価格は250万円を想定しているということでキロワット単価は62.5万円で、現在の相場価格からすると2倍近い値段ですが、1.7倍の発電量が得られることを加味すると6.8kW容量のシステムと同じという事になり、36.7万円/kW程度という事になります。売電収入で十分に回収できる程度の価格帯です。
今後、発電事業などでの採用が増えて価格低下が進めば、追尾型がスタンダードになり得るかもしれません。

ちなみに太陽を追尾するための消費電力は1日約5wH時と無視できる程度。

参考

住友電工、集光型太陽光発電装置(CPV)を製品化

住友電気工業株式会社が、集光型の太陽光発電(CPV)の製品化をし、宮崎大学の木花キャンパス内に設置、発電が開始されたそうです。

2010年から開発を始めたという住友電工のCPVは「薄型」かつ「軽量」なモジュールが特徴。2012年からは社内で実証運転をはじめていました。

今回宮崎大学に設置されたシステムの詳細はプレスリリースから抜粋

この設置したCPVは、64モジュール搭載システム 2基となり、2基を合計したモジュール定格出力は15kW以上となります。また、当社のCPVモジュールは、発電出力を落とすことなく「絵」や「文字」をモジュールに映し出すことが可能で、1基には全面に大学ロゴマークを表示しています。

【当社CPVの特長】

1.高効率、高出力でかつ高温度環境に優れた発電システム
CPVは、発電効率が極めて高い化合物半導体の発電素子を用い、太陽を正確に追尾しながらレンズで直達日射光を集め発電する仕組みになっています。発電効率は標準的な結晶シリコン太陽電池に比べて約2倍で、また発電素子の温度依存性がほとんどないことから、CPV は直達日射量が多く気温が高い地域で有効な発電システムとして期待されています。
2.薄型で軽量なモジュール
集光型太陽光発電装置業界でトップレベルとなる、厚み約100mm、重量10kg未満の薄型軽量モジュールを開発しました。薄型で軽量なモジュールは、輸送時のモジュール積載効率の向上や現地設置作業効率の向上、また、太陽を追尾する架台に多く搭載できるなどのメリットがあり、発電システムのトータルコスト低減に貢献できると考えています。
3.設置エリアの有効活用
太陽を追尾する架台の上にCPVモジュールを設置する構造のため、モジュール下のスペースを駐車場、花壇、農地等として活用することが可能です。

—-

土地の少ない日本では、追尾型や集光型の需要が徐々に高まっていく事が予想されます。

プレスリリース

ビルの外壁で発電、三菱化学の実証実験

NEDOによる色素増感太陽電池実用化のための実証試験の一環で三菱化学が行っていた、「軽量・フレキシブル・シースルー型の有機系太陽電池の実証実験」。

建物の壁や窓部分にシースルーの有機系太陽電池を設置して電力を得、さらに遮光効果なども期待できるというこの技術。
三菱化学は実証実験で培った技術を元に、大成建設と「発電する建物外壁ユニット」を開発しました。

開発されたユニットは、横浜市にある大成建設が技術センター内「ZEB実証棟」に導入し、都市型ゼロエネルギービル(ZEB)の実現に向けての実証実験を始めます。

都市型ゼロエネルギービル(ZEB)とは、年間の1次エネルギー消費量を正味ゼロかほぼゼロにする建築物のこと。
ビルへの太陽光発電設置はビルの屋根上などが想定されますが、ビルが多い都市部では屋根上への太陽光発電設置だけでビルの電力消費を供給するのはハードルが高いのが現状。

高層のため立地面積あたりで消費される電力量が多いのもありますが、高層ビル屋上の強風の環境はパネル設置の障害になったり、隣接の建物の影がかかって十分な発電量が得られなかったりと、ZEBの実現には屋上以外の活用による発電が必須事項となります。

三菱化学と大成建設の外壁を使った発電ユニットは、ZEBの実現に一役買いそうです。

参考

イスラエル企業、水を使わず太陽光パネルを洗浄するロボット

MENA地域やアメリカのカリフォルニア州、中国の砂漠地帯など、砂漠地帯での太陽光発電の運用例がさらに増していく事が予想される太陽光発電市場。
砂漠地帯での問題といえば、砂によるパネルの汚れ。

イスラエルEcoppia社が開発した砂漠地帯での運用を想定したパネルの洗浄ロボットを、中国のパネルメーカー、サンテックが自社製品の洗浄技術に認定したと発表しました。

この洗浄ロボットは水を使わず、回転するマイクロファイバーと空気を吹き付けるエアフローを合わせた技術を使い、パネルを傷付ける事無くソーラーパネル上につもる塵などを99%除去できるということ。

他にも遠隔操作による管理も可能で、遠隔の砂漠地帯での大規模なプロジェクトには魅力の多い技術と言えそうです。

参考

スマートエネルギーWeek 2014「PV EXPO」

スマートエネルギーWeekの一環である「PV EXPO 2014」において、太陽光発電の各メーカーが自社の最新の製品技術などを発表しました。

中国メーカートリナソーラーはその名も「スマートパネル」を出展。
直列接続のソーラーパネルにおいて、一部のパネルの出力が低下すると、その周りのパネルの出力まで下げてしまいます。
トリナソーラーの「スマートパネル」は、影がかかったパネルの発電を停止する機能がついており、全体の発電量に与える影響を最小限にできます。発電量にして20%アップの効果が期待できるのだとか。
年内の販売を目標にしているそうです。

シャープは色付きのパネル、シースルーパネルなどを出展。今後の発展に大きく期待がかかる、有機系の色素増感太陽電池を使用したものかと思われます。
NEDOの助成による色素増感太陽電池の実証実験も行っていたシャープ。太陽電池の技術を長年率いてきましたが、新たな有機系太陽電池の分野でも、他メーカーをリードする存在となるでしょうか。

参考

紫外線を可視光に変えるシートで変換効率アップ

ソーラーパネルの新たなスタンダードになりそうな予感?

日東電工は、ソーラーパネルに一枚のシートを挟むだけで、効率をアップさせることができる「レイクレア」を開発。

原理としては、通常パネルの劣化防止のために封止シートでカットされる紫外線を、可視光に変換するというもの。

使用方法としてはレイクエアを添加したシートをパネルに挟む、もしくは添加剤として使う方法があり、現在のパネル製造過程に大きな変更を加える事無く採用できるのが魅力。

今までカットされていた分の光量が発電に使えるようになり、理論的には現在の性能×2%の効果を生むのだとか。

現在市販されているソーラーパネルはサンパワー(日本では東芝ブランド)の効率20.1%のものですが、仮にこのパネルに「レイクレア」が採用されれば出力が255Wに、効率は約20.5%になる計算。
発電量にして、年間21kWh/kW多い発電量が得られる事になり、一般住宅用の平均およそ4kWの容量のシステムでは年間3,200円弱(38円/kWhで計算)多い売電収入を得られることになります。

売電収入にすると大した事無いようにも見えますが、、、

効率が高いパネルに採用すればする程効果が大きくなるということになるので、集光型のパネルなどに使えばさらに効果が上がるとも考えられます。
問題はこのシートを採用する事でどれくらいコストが上がるかということでしょうか。

販売開始は2014年後半を予定しているということ。

参考