来間島の100%電力自給自足の実証実験に、蓄電池2号目の建設が決定

県のスマートエネルギーアイランド基盤構築事業の一環として地域内での電力自給率100%を目指す実証実験を行っている沖縄県の宮古来間島ですが、自給100%を目指すには蓄電システムの容量が足りず、2号機が増設されることになったのだそうです。

来間島のピーク時(夏場)の消費電力量は、88戸(約100世帯)全体で220kWになるのだそう。
現在の蓄電池システムは176kW。(容量が176kWhなのか、出力が176kWなのか、記事では明らかではないので、分かり次第追加します。)

88戸の島で太陽光発電の電力を100%自給するにはいくらかかる?

この蓄電池システム、1基あたり1億8,126万円もかかるのだそう。
沖縄県と自治体の予算でまかなわれます。

興味本位で計算してみたのですが、
例えば各家庭で電力の自給自足をそれぞれ行おうとすると、約6kWのパネルと、約12kWh程度の蓄電池を購入するとして500~600万円程度かかります。
来間島の88戸それぞれに同様の設備を付けたとすると、4億4,000万円〜5億2,800万円くらい。

一方この実証実験では総システム費4億7,652万円程度がかかっていると予想します。
内訳は太陽光発電システム380kW×30万円と、
1基1億8,126万円の蓄電池システム×2台。
もっとも総事業費は公開されていないのであくまで推定の費用で、エネルギーマネージメントシステムなどでさらに増えるのかもしれませんね。

2台目の蓄電池を設置するための予算を捻出するのに県からの予算措置が取られたことから、市も特別会計補正予算の措置を行ったのだそう。
沖縄県内の太陽光発電の系統連携が、全量において新規申請の回答保留状態であるいま、県も同実証実験に期待を込めているということでしょうか。

今年度末でいったん運用の区切りが付けられるこの実証実験事業。運用報告には全国から注目が集まりそうです。

参考

風技術センターの「住宅間電力融通」は連系中止問題の解決につながるか?

系統連系問題(各電力会社による売電申請・買取の実質的な中止)を受けて、環境設計などの研究およびサービス提供をおこなっている株式会社風技術センターは、独自の電力融通システムの実証実験の結果を発表。

風技術センターは、スマートグリッドの構想の一部(双方向性・インテリジェント化・見える化・自律制御)は同社が先駆的に2002年から提案しているコンセプトだとした上で、よりシンプルに再生可能エネルギーの導入量を増やす方法として同社の独自コンセプト「ECOネットワーク」を提唱しています。

そして今回この技術を使った実証実験の成果が発表された、ということです。
同社の「ECOネットワーク」は、再生可能エネルギーでつくられた電力を各家庭の蓄電池に充電し、また同様な設備を持った複数家庭を繋いで、同社独自の電力制御技術が組み込まれた電力ルーターで電力を融通しあう、というもの。
アイデアとしては単純で、「今更??」というような技術。
同社にしてみると、そのシンプルさが売りなのだとか。

実証実験には成功だが、系統連系問題の解決にはなりえないのでは?

同社はこのコンセプトの有効性を確かめるべく、山形市内に住む職員の住宅を2軒同システムでつなぎ、7月から実証実験を行っていたのだそう。
結果は、系統への逆流もなく、家電や通常の生活に支障をきたすことなく、蓄電池から各家庭への電力融通が成功したとのこと。

同コンセプトは系統を介さず、独自で電線を用意して近隣住宅の蓄電池同士を繋ぐというだけなので、太陽光発電の発電量が増えても系統に負担を与えないとしています。このことから日刊工業新聞

再生可能エネルギーの新規契約の中断問題の解決策の一つになりそうだ

と結論づけています。
もちろん、反論はありませんが、これには多くの「前提」が必要となると考えています。

日本での適用のためには再エネ制度の改革が必須

この実証実験では風技術センターの職員同士の家庭で、電力を融通しあうというものでした。
なので当事者たちの頭には「研究の成果」が第一にあり、「電気代」の問題は無視されています。

しかし当然、家庭でわざわざお金を出して太陽光発電を購入して発電した電力を、他の家庭にただで融通はしたくありませんよね。ましてや今は、売電した方が収入が多くなるのに。
今の制度での「ECOネットワーク」の使い道というと、かなり限定的になってきそうです。
例えばV2H/H2V(電気自動車と家庭)の電力融通。
また、エネルギー設備の導入コスト自体は、2~4割削減できるということなので、二世帯・三世帯が隣り合う住居などで、お金の出どころに関して気の置けない関係の場合は、同システムで電力融通をするのもいいかもしれません。

集団的・社会的な導入に関しては、売電に関する制度が大きく変わらない限り、普及の可能性はかなり低いと考えます。
例えば売電単価が電気代よりも大幅に低くなってしまい、このシステムの利用者間で売電単価以上の価格での電力の融通が可能なのであれば、このシステムの利用者はメリットをより感じられるかと思います。

パナソニックが神奈川県の藤沢でプロデュースしたエコタウンのような小規模な社会でまずは取組みを行ってみるのもいいかもしれません。

同社のこのシステムに関するアピールの中には、「無電化地域やこれから電力系統を整備していかなければいけない地域にとっての大規模なソリューションとなりうる」という内容も含まれています。
政府による技術輸出支援などで採択してもらえるといいですね。

参考

スマートグリッド、マイクログリッド、そしてこの「ECOネットワーク」、今後も各研究施設などから同様に電力問題の解決につながるコンセプトが出てくると予想しますが、はじめに大きな突破口をつくるのはどの技術でしょうか。もしくはそれぞれが少しずつ役割を果たした、より複雑・高度なソリューションが将来の日本を形作ることになるのでしょうか。

個人的には地産池消(自分の家で作って、自分の家で消費)といった一番シンプルなアイデアがしっくりきます。
バックアップとして系統があればいいのかな、とか。

災害時に独立電源で公衆Wi-Fiを提供するNTT東の自販機が実証実験開始

エコという視点に立った場合、数十メートルごとに自動販売機やコンビニがある日本の都市部は、相当無駄な電力を使っているように感じてしまいます。

コンビニ業界ではエコ化が進んでおり、太陽光発電の設置(その一部を店舗内消費)はほぼスタンダードといっていいほど各コンビニチェーンで採用され、さらにはローソンは一歩先を行って消費電力を節減(具体的には消費電力30%カット)できるコンビニの開発にも取り組んでいます。

自販機においてはコカ・コーラが省エネ仕様のものを実用化したりしていました。(「省エネする前に台数減らせばいいじゃん」という意見は利益を追求しなければいけない企業に通用しないのは重々承知ですが、、、)

そんな中「NTT東が太陽光発電を付けた自販機を開発」というニュースのタイトルを見て、「なんと、自販機の電力を太陽光でまかなえるのか!なんてすばらしい!」と思ったものの、太陽光発電でまかなうのは自販機に取り付けたWi-Fiに必要な電力だけだったと読んですぐに判明した時のちょっとした失望感はさておき、このモデルは蓄電池も併設しており、災害時には自販機付属の独立電源からの電力供給でWi-Fiを飛ばせる仕様になっているそう。地道でありながら、街にフリーWi-Fiスポットが増えるのは嬉しいことですよね。

いまだにほとんどのカフェのWi-Fiが有料サービスとなっている日本ですが、「ここの自販機はWi-Fi使える!」ということで人が集まり、飲料も売れ、ということを想定しているのでしょう。
現在東京・銀座のNTTビルの敷地内に一台、池袋の民間駐車場に一台設置して実験的に稼働している状況で、今後は年間100台を目標に売り込んでいくのだそう。

災害対策と環境対策を兼ね、慈善事業としてではなくビジネスとして成り立つ環境活動を」と意気込む同社のグリーン推進室ですが、環境のことを考えるなら、やはり台数を減らすのがいいのではないかと…例えば半径何メートル以内には自販機を置いちゃダメ、みたいな風にして一つ一つの稼働率を上げ、それぞれの個体にこうしたWi-fiなり太陽光発電なりを搭載する、というのではダメなんでしょうか??自販機で飲料を買うことがほとんどない個人としての単なる一意見です。

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大成建設のZEB(ゼロエネルギービル)、環境評価で初の快挙五つ星取得!

ゼロエネルギーハウスは、太陽光発電の設置などにより建物内のエネルギー消費が正味ゼロになる住宅のことを言いますが、これは4kW程度の太陽光発電の設置で達成できるもので、ZEH仕様の家はどんどん増えている状況といえます。

さらに今後の課題の一つは、日本全体のエネルギー消費の40%を占めるというオフィスビルでのネットゼロエネルギー化、「ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)」の実現。

大成建設は6月16日、横浜市戸塚区にある同社の技術センターに新しく、ZEBを達成した実証塔を竣工したと発表。

概要は、まず消費エネルギーを従来の75%カットし、残る25%の消費エネルギー相当分を太陽光発電で作りだすことにより、エネルギー消費のネットゼロを達成しているということ。
と、言葉で言うのは簡単。しかしオフィスビルのように階層があり面積当たりの消費電力が多い建物は、25%とはいえ相当の電力量になります。
今まで国内外にZEBの実証例はあったものの、低層の建物での実現例や、建物以外の敷地で作ったエネルギーを利用する例でした。

今回の大成建設は有機薄膜太陽電池(色素増感太陽電池)を使った「発電する建物外壁ユニット」を使用し、建物本体に設置された発電設備でZEBを実現するという稀有な実例となります。採用された「有機薄膜太陽電池外壁ユニット」は、大成建設と三菱化学が共同開発したものだということ。

都心の狭小なエリアでもZEBを実現できる「都市型ZEB」の実現と位置づけられる大成建設の技術センターZEB棟、「建築物省エネルギー性能表示制度(Building Energy-efficiency Labeling System/BELS」)の評価では最高ランク「☆☆☆☆☆」を取得。

BEI≦0.5(基準一次エネルギー消費量の50%以下)で最高ランク「☆☆☆☆☆」が与えられる事になっていますが、この評価を達成したのは初で、しかもBEIERR=0.14という基準を遥かに下回る数値を叩き出したということ。

大成建設は今回の実績をオフィスビルが集中する都市部でさらに生かしていくということで、今後の大成建設による都市開発に期待が募ります。

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線路内に太陽光発電??今月から実証実験も

大規模な太陽光発電を設置する土地が少ない日本では、水上や廃棄場跡地など、他に利用できないような土地を有効活用する方法が日々開発されています。

鎌倉市にある太陽光関連のコンサルティング会社「フルーク」が開発し、特許出願も済ませたというのは「鉄道路線内にパネルを設置する」というもの。

鉄道会社による太陽光発電事業はこれまでにもいくつかお届けしましたが、”線路内”に設置するというのは聞いたことがありません。
同社によると、線路内への太陽光発電の設置には土地活用のほかにもメリットがあるそうで、整備された安定性の高い土地ゆえ設置の際の手間やコストが低減されること、さらには送電に既存設備を使えることなどを挙げています。
総工費は2,000kW(2MW)あたり5~6億円程度としており、発表によると”通常の半分の総工費”だそうですが、キロワット単価では25~30万円なので、実質7割程度でしょうか。

しかし多くの方が、振動などへの耐性、そして安全面、保守管理の方法などについて疑問を抱えていることでしょう。
それらを含めた実証実験がNEDO採択のプロジェクトとして今年度から実施され予定だということ。

まずは本数の少ない路線や使われなくなった路線などで、導入可能性を検討ということ。
同社の代表取締役は「売電により赤字の地方路線を救い、地域活性化にもつながる」と語っていますし、地方の鉄道会社の関係者の方、この実証実験は必見です。
というか、”使われなくなった路線”は電車走行時の耐性を考えな良いですし、実証実験をするまでもなく路線を持っている鉄道会社さんはどんどん建設を進めてしまえばいいのではないでしょうかね??

同社は「学校のプールにパネルを敷き詰める方法」なんかも考案しているということ。

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山口県でのり面発電の実証実験

のり面での太陽光発電は各地で行われていますが、山口県は農道や水路などの法面でフィルム型のアモルファスシリコン太陽電池を組み込んだ防草シート「防草発電シート」を使う実証試験を始めました。

柳井市の農業用ダムの管理用道路の法面約80㎡に、出力2.7kWのシートを設置したということで、電力を農業用ポンプでまず使用し、余剰は売電されるという事。

2.7kWというと通常の住宅用太陽光発電と比べても小規模と言える容量なので、余剰売電すると言っても収入としては微々たるものかもしれません。

とはいえ除草作業の必要が無くなったりと、副次的なメリットを考えると、活用例は今後も増えていく可能性もあります。3年の期間を設けて発電および除草効果を検証するということ。
今月24日には現地見学会も予定されています。

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追尾型で最大4.7倍の発電量が得られることを確認

太陽の動きを追う事でより常に最適角度での発電を可能にする「追尾型」太陽光発電。
大手のパネルメーカーではフジプレアムなども製品を開発しており、その能力については実証実験なども行われているところで、今後の需要の拡大が期待される分野です。

神奈川県平塚市のグリテックスインターナショナルリミテッドは、自社で開発した追尾式太陽光発電システムを使って神奈川県産業技術センターと共同で船上で実証実験し、実際に得られた発電量についての情報を公開。それによると、固定式に比べて春は1.8倍、夏は1.4倍、冬は4.7倍の発電量の増加を確認したのだそう。年間を通した平均で、発電量は1.7倍にのぼりました。

追尾型の魅力は、地上の発電設備で設置面積当たりで得られる発電量が増えるだけでなく、常に動いているような船や自動車への搭載でより大きな効果を発揮できる可能性を秘めていること。

今回開発されたグリテックスインターナショナルリミテッドの「傾斜駆動型ソーラー追尾発電システム」。直径30cm、高さ3.5mの支柱の上に、6.6m × 4m、容量にして4kWのパネルが載っているというもの。面積からパネル効率を計算すると約15%になります。効率で言うと、平均点くらい。(各メーカーのパネル効率比較

気になる価格は250万円を想定しているということでキロワット単価は62.5万円で、現在の相場価格からすると2倍近い値段ですが、1.7倍の発電量が得られることを加味すると6.8kW容量のシステムと同じという事になり、36.7万円/kW程度という事になります。売電収入で十分に回収できる程度の価格帯です。
今後、発電事業などでの採用が増えて価格低下が進めば、追尾型がスタンダードになり得るかもしれません。

ちなみに太陽を追尾するための消費電力は1日約5wH時と無視できる程度。

参考

日立がアメリカで蓄電池の実証実験に参加

アメリカで、周波数調整(アンシラリー)および容量(キャパシティー)市場を想定した実証実験に日立製作所の蓄電システムが使われる事になりました。

採用された「CrystEna」は、コンパクトなコンテナ型蓄電システム。エネルギー貯蔵システムの中核製品の一つとなる蓄電システムで、日立の制御システム、パワーコンディショナー(PCS)、およびグループ会社である日立化成のLiイオン蓄電池などで構成されています。
蓄電池の長寿命化制御など、システム性能向上とコンパクトな設計により、経済性を高めているということ。

参考

ドコモの携帯電話グリーン基地局は、太陽光発電×蓄電池で6時間作動を確認

NTTドコモは、太陽光発電と蓄電池を利用する事で「災害に強く、環境に優しい携帯電話基地局」の実証実験を2011年からはじめており、運用状況が発表されました。

パナソニックの創蓄連携システムを使い、ドコモが開発する次世代制御技術「グリーン電力コントローラ」を活用してR&Dセンターで行われた実証実験では、停電などで通常の電力の供給が無くなった場合でも、基地局の機能を最大6時間保持することに成功、同設備に関連する温室効果ガスの発生も30%削減に成功したといいます。

現在、東京都、神奈川県、山梨県の3局に広げて実証実験を続けるドコモ。2014年度はさらに関東甲信越地方の各地10局での実証実験を始めていますが、先には年内の商用化の目標があるということ。

参考

グリーン基地局とは

パナソニックによる創蓄連携システム

NTTドコモが進める「グリーン基地局」事業は携帯電話の基地局を太陽光発電と蓄電池でクリーンな電源で運用するとともに、停電時にもサービスを途絶えさせないようにするための災害対策の一環です。

システムの開発にはパナソニックが関わっており、太陽光、蓄電池、系統のどの電力を使用するかなどを制御できる創蓄連携システムを提供しています。
基地局専用にプログラムされたシステムでは、直流をそのまま貯蔵することで電力の利用効率向上の成果も上げています。

グリーン基地局が目指す事

性能目標

同システムが性能面で掲げる目標は、「災害時でも3日間の電力確保」というもの。
今回実証実験では6時間という成果を上げていますが、システム制御の最適化のための実証実験の結果を元に、蓄電池の容量を増やして達成を目指すものかと予想しています。
基地局自体の消費電力も、まだ見直せる余地があるかもしれません。

市場展望

現在は実証実験の段階ですが、あくまで商用化を念頭に置いたものです。
日本で災害に強い電力網の確保はもちろんなのですが、
無電化地域では固定電話以前に携帯電話の普及が進んでいるような状況もあり、
同様のインフラ設備の有用性は高いと考えているそうです。

中国電力、管轄内の離島で蓄電池を用いた実証実験開始

中国電力は、環境省公募による「平成26年度離の再生可能エネルギー導入促進のための蓄電池実証事業」の採択事業として、隠岐諸島における蓄電池実証事業を始めると発表しました。

この事業は離島において再生可能エネルギーが系統に与える負担を減らすため、国内で初めて異なる種類の蓄電池を組み合わせ、電力系統制御用のハイブリッド蓄電池システムによる技術実証を行うものです。

NAS(ナトリウム・硫黄)電池を4,200kW、リチウムイオン電池を2,000kW組み合わせた蓄電池システム(合計6.2MW)になるということ。

島根県 隠岐諸島(隠岐郡西ノ島町)に蓄電池が設置され、同時に再生可能エネルギーの発電設備も増設を計画しているということ。

参考

(2014年10月24日 追記)

隠岐諸島の実験では再エネ比率20%の運用可能性が実証される

隠岐諸島に設置される再エネ設備は、太陽光7MW、風力4MWの最大11MWということ。太陽光発電の設備利用率を13%、風力の設備利用率を22%とした場合、年間発電量は太陽光で7,980,000kWh、風力で7,708,800kWhとなり、再エネで15,688,800kWh(約15.7 GWh/年)が得られることになります。

一方で隠岐の島町の使用電力量は、平成18年の記録になりますが82,486,675kWh/年(約82.5 GWh/年)となっています。
消費量の約20%にあたると考えられる再エネ比率です。