WWFによる「さらに一歩踏み込んだ分析」によると、九州で太陽光の申請分の制限は不要

パンダのマークでおなじみ、WWF(World Wide Fund for Nature:世界自然保護基金)の日本支部、WWFジャパンが、「脱炭素社会に向けたエネルギーシナリオ提案」を基にした自然エネルギー接続保留に関する定量的分析に基づく結果と提言を発表。

まとめを先に言ってしまうと、「九州電力地域において連系申請が出されている太陽光1180万kWを含む自然エネルギーは、出力制限なしで連系が可能」だそうです。

政府のWGは余裕を持ったシミュレーション
WWFはより現実に近いシミュレーションを使用

一番の違いは、太陽光発電と需用電力の差について、政府の系統ワーキンググループ(WG)では太陽光が最高出力を出す可能性を過大評価しているという点。

政府が過大評価しがちなのは、停電が起こる可能性を極限まで無くし、万が一の停電が産業と経済に支障を起こさないようにすることを優先すべきだと考えているからだと予想します。万が一の停電の際、復旧にかかる全体コストも考えているかもしれません。

一方で「一国の産業や経済よりも、地球環境すべてにおいてのメリット」を優先するのがWWFの役目。

WWFでは、アメダスによる気象データを利用してより実際に近い形でシミュレーションしています。
そうすると、九州・中国間の地域間連系線を使わない場合に、全発電電力量の3.24%以下の余剰が発生する可能性があるという結果になったのだそう。つまり、全量を連系したら、電力融通などがうまくいかなかった場合に停電が起きる可能性が高まるということになります。
九州・中国間の地域間連系線を使えば、余剰の出る可能性はゼロ。

ならいいじゃない!と思うかどうか、ですね。
政府は1%でも停電を起こす可能性を増やすべきじゃないと考えているのではないかと予想します。
個人レベルでは「数分の停電を気にするなんて、本当に日本人は細かいよね」と思うのですが、産業レベルではそんな悠長な話ではないのかもしれません。

政府のWGは原発併用でシミュレーション
WWFは原発用の揚水発電を自然エネルギー専用にしてシミュレーション

多くのメディアで言われているように、WWFが指摘するのは揚水発電の活用。
現在、原発の余剰を蓄電しておくために機能する揚水発電ですが、WWFはこの際、原発を取りやめて揚水発電を自然エネルギーの余剰吸収に活用せよ、と提言しています。

原発をなくして揚水発電を自然電力専用にする方が太陽光発電の余剰分を極限まで九州でき、ピークシフトが容易になります。

さらなる自然エネルギーの拡大のためには水素製造でのエネルギー保存が有効

WWFはさらに、今後の目標としての提言で、余剰電力を使ってEVなどの燃料としての水素をどんどん作っていこうよ、というようなことも言っています。

燃料が安価に手に入るようになると、EV産業も促進されますしね。


もし、国民投票なんかを行ったら、WWF側の意見を尊重したい方はきっと多くいるでしょう。ただ、政策を決定するのは政府です。

最後になりましたがWWF検証シミュレーションでは、申請保留中の太陽光発電が連系可能となり晴れて全設備の稼働が開始した暁には、九州電力圏内の自然エネルギーは、発電量ベースでも23%に達するという結果が出ているのだそうです。

そんなに?と思うのか、まだまだ、と思うのか。

個人的には、蓄電池なしでも23%なら、まだまだ伸びしろに期待したいと思っています。