中国製品に対して、アメリカ再度のアンチダンピング関税

アメリカの商務省は今週の火曜、中国のパネルに対して中国政府からの不当な資金援助があったとして、新たに関税をかける計画だと発表。

2012年に課せられた関税は中国で作られたセルに関してのみで、中国のメーカー側は中国以外のセルを使い、関税を逃れて輸出を続けたということ。今回の新しい関税が決定すれば、抜け穴もすべてふさぐことになります。

関税率はサンテックなどのメーカーに対して35.21%、トリナソーラー中国メーカーの中でも一番関税率が低くて18.56%。その他のメーカーは 26.89%の予定。
サンテックは破産後大規模な再建を行いましたが、その際は中国政府からの援助があったのでしょうか。

これらに対して商務省は
「われわれの質疑に対して、中国政府側から十分な返答が得られなかったから(要約)」
としており、「疑わしきは罰する」スタンス。

ちなみに今回も、ソーラーワールドからの要請に米政府が答えたという形のよう。

トリナソーラーの反応

アメリカの消費者に対しての取引は国際的な取引慣行法に則って行われているものであるのに。ソーラーワールドの申し立ては、フェアな貿易という視点に立った場合完全にそれに反するものであり、さらにその理由も正当とは言えない。非常に残念だ。

今後も価格の優位性や垂直統合型の生産体制はアメリカの市場だけでなく国際的に、特に需要が大きい中国国内と日本において、さらには今後現れる新たな市場においても、競争力を発揮していくつもりだ。

参考

意外にも余裕のようですね。
トリナソーラーは確かに、日本での人気も上がっているようで、6月も価格がさらに安くなっています。

一番関税率の高かったサンテックにおいては、まだ声明は発表していません。

参考

米ソーラーワールドが中国によるハッキング疑惑のためセキュリティ強化

中国政府が、アメリカのソーラーパネルメーカーであるソーラーワールドのシステムをハッキングしたという疑惑が持ち上がってことで、同社はITシステムのセキュリティを強化したのだとか。

ソーラーワールドは、中国の安価なパネルメーカーがアメリカの太陽光発電業界を脅かしているとし、アンチダンピング調査を行うよう率先して政府に働きかけた企業でもあります。

アメリカ国内からも、中国メーカーへのダンピング課税などは自国の市場に悪影響を及ぼしかねないという意見があがっていたにもかかわらず課税は決まり、案の定、市場安定には課税はささやかな効果も及ぼさなかったという、ちょっとイタイ過去も持つソーラーワールド。はっきり言って「いい加減にしたら?」という感じもあります。

参考

太陽光発電の貿易戦争を斬る(米GreentechMediaコラムより)

アメリカの中国製品に対する課税で激化している太陽光発電市場での価格戦争。
これを1930年代の「世界恐慌」になぞらえて警告を発している、米GreentechMedia(GTM)に載せられたコラムをご紹介します。

低価格太陽光エネルギー同盟の代表で、太陽光エネルギーサービス会社”サンエディソン”の創立者、Jigar Shahのコラムより

J. P. MorganのCEO、Henry Fordを始め、多くの反対を押し切って制定されたスムート・ホーリー法でアメリカに輸入される製品に対する関税が記録的な高さに引き上げられ、それに報復する形で各国がアメリカ製品への関税をかけはじめたことで、恐慌が悪化しました。現在の太陽光発電業界における各国の報復的なアンチダンピング調査のし合いなどはそれと同じ道筋をたどることが目に見えていますが、また救済の余地はあります。

アメリカの中国メーカーに対する関税は、アメリカのセルメーカーを救うためという口実でドイツのSolarWorldが始めたものでした。
結果、SolarWorldは要求のほとんどを勝ち取ることができましたが、その”勝利”にもかかわらず、関税は結果的にアメリカのセル/モジュールメーカーの救済の助けにはならなかったことを認めています。

この、結果的に無意味であったSolarWorldの申立てにより、世界中で貿易関連の動きがみられました。

アメリカでの申立を行った後、SolarWorldは同じような内容の申立をEUでも行い、この夏EUは中国に対してアンチダンピング調査を開始しました。
もしこの調査により、中国のアンチダンピングを認められたなら、世界中の太陽光発電市場に大きな影響を与えることとなります。

そして中国はその報復としてアメリカ企業のポリシリコンのダンピング行為の調査を開始し、世界貿易機構まで巻き込んで、EUやその他の国で行われた補助金政策の違法性を訴えました。

そして今では、インドまでもが中国とアメリカ、そしてマレーシアに対するダンピング調査を始めようとしています。

アメリカにおいて、太陽光発電を化石燃料に対抗するエネルギーにしようと奮闘してきた私たちは、この戦争の後に恩恵を受けるのは、石油や天然ガス業界だけであり、どの国の太陽光発電業界にとってもメリットは無いと考えています。

報復や逆襲からは何も生まれず、協力によってのみ、世界の太陽光市場構造を形作ることができます。

アメリカ国内では地元の製造業は重要です。強力な戦略の元、一番効率のいい技術の製品化をもってこの苦境を乗り越えるべきです。
日々更新される研究と発見の中から、経済的、労働力的、地理的にアメリカに一番適した製造業に対して振興を進めるべきです。

国際的には、関税のような非効率的な方法に頼らず、貿易関係の交渉を行うべきです。

アメリカの法律体制は、申し立てを行った者に有利に働くようになっており、全体の経済や消費者の事を考えない、時代遅れで柔軟性のないものです。

このSolarWorldのケースでは、しばしば用いられるこの言葉が適切です。
「過去を忘れるものはそれを繰り返す運命にある」(ジョージ・サンタヤナ)

つまり、1930年代の恐慌時代を忘れるべきではないのです。貿易戦争からは一人の勝者も生みません。

SolarWorldを叩きまくりですね 笑
しかし、アメリカでも、EUでも、この会社の申立が直接の原因だったのだから、ここまで言われても”they deserve it”という感じなんでしょうか。

中国に任せられるものと、アメリカが得意とするものは別であるはずだ、という事でしょうか。

日本の場合まだ、メーカーの「信頼性」などが重視される傾向があるため、メーカー一覧が中国メーカーで埋まっている、というようなことはないですが。
そして、技術的に比較的新しいCIS/CIGSの化合物系への注目度が、ソーラーフロンティアの頑張りのおかげで高いのも見逃せません。

ソーラーフロンティアの詳細・パネル最安値情報など

参考

米から中国製品への法的規制・複雑な利害関係・中国メーカー、米国内産業関係者などの意見は?

国際貿易委員会の満場一致で中国製品に対しアンチダンピングと相殺関税を課したアメリカの商務省ですが、これに対する各関係者の利害関係は複雑です。

アメリカの政府側が太陽光発電設置に歯止めがかかると予想されるこの決定に踏み切ったのは、安価な中国メーカーに太刀打ちできない国内の20数社の太陽光発電メーカーから、何百人もが解雇されたことを受け、自国の産業保護のための決断だったと言います。

この規制は、第三国で製造されたセルを使用した中国製モジュールには適用されないとし、その点で有利なインリーグリーンエナジーはこのようなコメントを出しています。

「とにかく、アメリカの調査が終わって、また熱心なお客様への製品提供に全力を注ぐことができるのはとても喜ばしいことです。中国製品がアメリカの太陽光産業に与えた影響は非常に小さいものです。規制は当社にとって部分的に有利ではあれど、このアメリカの決定にEUは随行するでしょうし、再生可能エネルギーの地球規模での普及に注力するべき時代にこのような貿易戦争を目の当たりにすることは非常に悲しいです。アメリカの太陽光産業(デベロッパーや施工店)がこのような政府の決定に立ち向かってくれている事にはとても感謝していますし、一刻も早く自由な貿易ができる状況が実現し、太陽光発電が地球上の多くの地域で利用可能になることを心から望んでいます。」
インリーソーラープレスリリース

インリーソーラーも触れていた「アメリカ国内の太陽光企業」はこの決定に対して”低価格太陽光エネルギー連盟(CASE)”を結束させ、次のようなコメントを出しています。

「より建設的な解決策を模索するよう、アメリカと中国には対談と交渉を続けることを求めます。現代のように相互が密接にかかわる国際市場においてこのように一方的な関税や貿易戦争は、より効率的な競争を促すのには弊害であり、不必要であります。」

サンテックからのコメント

「日に日に高くなる自由貿易の障壁はアメリカ国内の雇用や、地球全体のエネルギー消費量に悪影響を与える。SolarWorld(今回の申立を提出した会社)の偽善的なキャンペーンで、競争に脱落したSolarWorldのしりぬぐいをアメリカ国内の太陽光産業にさせることとなる。アメリカ政府が建設的な対談に応じない限り、自身にさらなる痛手を負わせる結果になるだろう。アメリカにも拠点を持ち、国際的な事業展開をする我々は重ねて、この不必要な課税に反対し、世界中に低価格な太陽光発電を提供できるよう促進するべきだと主張する。」(サンテックプレスリリース)

太陽光発電のモジュール価格が下がるのはもう歯止めが効かない状況で、今重要になってくるのは「施工価格の低下」だとして、1,000ドルの賞金まで用意してSunShot Prizeというコンペティションで施工業者を競わせていたアメリカ。
モジュールメーカーを守ろうとすると、それらの施工業者やデベロッパーが痛手を負うので、諸刃の剣となる可能性がある今回の規制。まだまだ続きがありそうですね。

参照