NTTファシリティーズのソーラーパッケージ「Mタイプ」のメリットとデメリット

大規模太陽光発電事業を多く手がけるNTTファシリティーズが、新たに「Fソーラーパッケージ Mタイプ」という商品の販売を始めました。

面白い商品なので、メリットやデメリットなどを詳しく見ていこうと思います。

◎ 限られた面積により多く積載できる

「Fソーラーパッケージ Mタイプ」は、通常南向きに設置する太陽光発電を、東西2面のジグザグに設置することで限られた面積により多くのパネルを積載できるようにしています。

太陽光発電が年間を通して一番多い電力が得られるのは南向きです。
しかし、地上設置で南向きにする場合は後方のアレイ(一列に並んだパネルの列)に影がかからないように一定の間隔を空ける必要があります。

一方東西2面にジグザグ施工(南への傾斜はなし)するこの工法なら、アレイの列を限りなく近づけて設置することが可能になり、具体的には面積あたりで35%も多くのパネル容量を積載することができるということです。

地価の高い場所で事業をされている方にとってはぴったりかもしれません。

× キロワットあたりの発電量が減る

一方で南向きの代わりに西・東に傾けることで、同じパネル容量で得られる年間発電量は確実に減ります。その減少率ですが、NTTファシリティーズのサイトでは3%程度になっています。3%の売電収入の低下と、土地代との兼ね合いでどちらが採算性の高い事業となるのかは、事業ごとに精密なシミュレーションをする必要がありそうです。

◎ ピークカットできる(=売電不可のリスクが少し減る?)

天気が良い日、太陽光発電は12時を境に左右対称の山を描きながら発電量が推移していきます。
これは日本全国の太陽光発電に共通の特徴のため、12時は太陽光発電の電力が最も余り易い時間帯と考えられます。このように時間によって発電量に大きな差が出ることは、太陽光発電の難しい部分として捉えられることが多いです。

一方東西にパネルを振り分けると、発電量の波をより平坦にする(ピークカット)ことができます。

また、すでに九州電力の旧管轄地域では一定の時間売電が抑制されることが何度か起こっていますが、全国的な太陽光発電の発電量の波と少しズレを作ることは、売電不可の可能性を減らすことにも繋がる可能性があります。(電力会社は通常、太陽光発電の発電量を予測して揚力発電などでピークシフトができるような対策を取っているため、東西設置が必ずしも売電抑制に繋がるとは言い切れませんが。)

× メンテナンスが面倒になる

大規模な太陽光発電所は定期的にメンテナンスや点検をする事が求められますが、アレイ間に人が通れるスペースを作りにくいMタイプのような設置方法だとメンテナンスが面倒になってきます。場合によっては大きなクレーンなどを持ち込む必要が生じる可能性もあり、メンテナンスコストも気になります。

と、メリットもある一方で無視できないデメリットもあるため、面白い試みではありますが、慎重に検討する必要がありそうですね。

NTTファシリティーズがメーカー別発電実証実験など、大規模施設を北杜市に建設

NTTファシリティーズが全国でもトップクラスの日照時間を誇る北杜市にFソーラーリサーチパークを建設し、太陽光発電の実証プロジェクトに取り組んでいます。海外製も含んだ主要メーカーの太陽電池モジュールを4万平方メートルの敷地に設置し、実際に太陽光を受けて施工性・耐久性をはもちろん発電性能などを検証しています。すでに2011年から開始しているプロジェクトですが、設備と実証テーマを大幅に増やした第2期プロジェクトが2015年から開始予定で、太陽電池モジュールは第1期と合わせ7か国のメーカーで25種類に拡大します。さらに40度の傾斜地にも27種類の太陽電池を設置し、合計では52種類の太陽電池を使う実証研究になります。

新しく拡張した実証サイトでは最新の製品を加えた太陽電池のモジュール評価の継続はもちろん、3種類の素材を使用した架台検証、複数メーカーのモジュールを組み合わせる設計技術検証、蓄電池を併設し出力抑制に対応する「スマートビジネス検証」の4つのテーマに取り組みます。モジュール評価には単結晶・多結晶・アモルファスの3タイプがあるシリコン系や化合物系など10kW程度・25種類の製品を対象に、太陽光の入射角による影響や性能の劣化などの実測データが比較されます。また架台の検証ではスチールとアルミを組み合わせたハイブリッドのほか軽量で耐久性の高いFRP(ガラス繊維強化プラスチック)、腐食に強く環境に優しい木製が採用され、施工のしやすさや設置コストも評価対象です。さらに設計技術面ではメーカーの異なるモジュールを直列に接続した際の発電性能の評価や影響が調べられます。スマートビジネス検証においては応答速度の速いリチウムイオン電池を採用し、翌日の発電量を予測して蓄電池を使った電力供給バランスの調整、予測誤差、出力全体を安定させる技術が検討される予定です。

同じく複数メーカーのパネルを同一条件化に設置してパフォーマンスを観察する実証実験を、ソフトバンクの子会社SBエナジーでも実施しており、当サイトでも同実証実験の結果を用いてメーカーの発電量比較を掲載しています。

余談ではありますが、NTTファシリティーズはSBエナジーに先駆けてこの実証実験を始めていますが、SBエナジーのようにデータを一般公開するのではなく、主に自社内の見地を高めることに用いられるようですね。企業色の違いの分かる一例でした。

参考

ドイツで再エネ自家消費の実証実験にNEDO参画、日本の5企業が事業委託

再生可能エネルギーの開発が進んだドイツでは世界に半歩差をつけて太陽光発電のグリッドパリティを達成し、すでに再生可能エネルギーが国内全体の電気エネルギー使用量の約20%を占めるまでに浸透してきています。

日本の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、ドイツのシュパイアー市でマンションなどの共同住宅施設を対象として、太陽光発電を最大限に有効利用する「自己消費モデル」の確立を目指し実証実験を開始しました。日本からはNTTドコモNTTファシリティーズ野村総合研究所日立化成、日立情報通信エンジニアリングの5社が参加しています。

自己消費モデルは、太陽光パネルと蓄電池、ヒートポンプの3つを組み合わせることで成り立たせ、太陽光パネルは太陽光をパネルに受け、ヒートポンプは外気を利用した蓄熱型温水器として、それを蓄電池により蓄積し、住宅利用するものです。

最適な住宅エネルギーとして活用するために、家庭向けエネルギーシステム(HEMS)によるエネルギーのコントロールを行い、住宅全体の電力として供給およびサポートを行います。

このシステム導入の大きなポイントの一つとして、逆潮流量の最小化があります。系統への逆潮流を極力減らすということはつまり売電量を少なくするということ。すでに系統電力以下の価格でしか買い取られない現状のドイツの制度においては、売電するより自家消費を増やすことが収益上有利になってきますが、これに加えて系統への負担を減らし、系統電力の質を保つという上でも重要な意味を持ちます。

日本でもすでに系統連携の回答保留などの問題で再生可能エネルギーの容量が増えることにより生じる問題が浮き彫りになり始めていますが、ドイツでのこの実証実験の成果が問題解決の糸口となるのか、注目が高まるところです。

参考

「F勝浦太陽光発電所」

各地でメガ単位の太陽光発電所の建設を行うNTTファシリティーズ
千葉県の勝浦市の、新電元工業株式会社が保有する土地に、
今月8日から1.253MWのメガソーラーの建設を始めると発表。
名称は「F勝浦太陽光発電所」です。

5か月の工期で完成を予定する同メガソーラーは、
NTTファシリティーズが独自で開発した発電診断システムを利用しているということ。

遠隔による自動診断で
ストリング(パネルが直列に並ぶ一回路分)/パワーコンディショナ/接続箱
といった単位ごとに発電診断を行い、さらに見える化することで、
故障や不具合に早急に対処できるというものだそう。

参考

NEDO発表の「太陽光発電開発戦略(NEDO PV Challenges)」まとめました

NEDOが「太陽光発電開発戦略(NEDO PV Challenges)」と名付けた膨大な文量の開発指針発表しました。
気になるところだけかいつまんで、まとめています。

発電コストは23円=従量電灯レベルでのグリッドパリティは達成

NEDOの計算では、2013年の時点で23円/kWhを達成し、グリッドパリティと明記はしていないものの、従量電灯と比較すると完全なるグリッドパリティですね。
(2014年10月現在の東京電力の従量電灯において、住宅に多い20A・30Aを契約した場合、基本料金も合わせて24円を切ることはない。)

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今後の指針としては2020年の段階で業務電力価格並の14円/kWhを達成、2030年までに基幹電源コスト並の7円/kWhを達成を掲げています。

具体的には現在最高で21%程度のモジュール変換効率を、2020年には22%、2030年には25%以上を達成するとし、
さらに運転年数(寿命・耐用年数に相当すると考えられる)を30年まで引き上げることを掲げています。

設備利用率15%で計算するとし、キロワット単価27.6万円を切れば達成できることになりますが、
2014年10月現在で26万円/kWの格安パネルの市場に出てきていることを考えれば手の届く範囲でしょう。

2013年度末までの国内の太陽光発電設置容量の累計は14.3GW


2014年1月末時点で13GW超
だった累積設置量は3か月でさらに1GW以上が加えられ、14.3GWとなっています。

日本メーカーの世界シェアの縮小

10ページには太陽電池の産業動向がまとめられています。

2006年までは発電容量ベースで世界一位の生産量を誇っていたとはじめながらも、2007年には全体シェアが中国メーカー合計(32%)>日本メーカー合計(25%)と逆転、2012年の日本メーカーの全体におけるシェアはわずか6%に減ったと報告。
世界のメーカーシェアは中国勢にどんどん奪われていった模様は、当サイトのメーカーシェアランキングでも詳しくご案内しています。

国内メーカーの約3割の製品が海外製

12~13ページにかけては国内メーカーでも海外に生産を委託しているパネルが増えてきていることが言及されています。
参考資料として平成26年1~3月期の容量ベースで「パネルの出荷量に占める日本企業のシェア(図2-6)」と、同期の「パネルの出荷量に占める国内生産のシェア(図2-7)」のグラフが掲載されています。

「日本企業のシェア(図2-6)」については住宅用/産業用が分けられているのに対し、「国内生産のシェア(図2-7)」は全体を総括した容量での割合になっているので一概には言えないまでも、

例えば容量ベースで多くを占める非住宅用の数字と照らし合した際、日本企業64%のシェアに対し、国内生産は44%と20%の差があります。
容量ベースでは約3割の製品が、「日本ブランド国外生産」である可能性があるということです。

さらに付け足しておきたいのが、この表では「セルが海外製、モジュール組立のみ日本」という製品が国内生産品としてカウントされていることです。

各メーカーのパネルの生産国一覧

各国のシステム価格比較と推移

14ページの各国のシステム価格比較は興味深いです。
日本ではシステム価格が2001年から今まで、6米ドル/Wを上下してほとんど変わっていないのに対し、比較されている米国、ドイツ、イタリアは価格がどんどん下がっておりドイツは2012年には2米ドル/Wに到達しそうなくらいまで価格が下がっているのだそう。

これにはちょっと疑問が残り、6米ドル/Wというとキロワット60万円になり、相場からかけ離れている感が否めません。

その次に出ていグラフでは2013年の住宅用太陽光発電のシステム平均単価が約400円/W(40万円/kW)となっており、出典は同じ(みずほ情報総研)にも関わらず内容がズレているのがなぜなのかは、この指標の記述で読み取れなかったのですが(万が一読み落としがあればご指摘願います)

どちらにせよ、欧米よりもまだまだ価格に対して下げ幅の余裕があると考えていいのかもしれません。

施工のシェアは自社開発を行うNTTファシリティーズなどが有利に

おもしろいな、と思ったのが、施工企業のシェアの変化です。
積水ハウスやパナホーム、高島など、新築住宅向け太陽光発電の施工が主であるハウスメーカーのシェアは2009年から2012年でぐんと減り、

自社のメガソーラーをどんどん建設しているNTTファシリティーズが2012年は11%超のシェアで業界一位になっています。

新規企業の参入が相次いだことで上位企業のシェア自体が減っているということですが、自社架台の開発も行っているNTTファシリティーズに関しては今後のシェア拡大もばっちり狙っていることでしょう。

いまだに結晶シリコン系が人気/10年間で太陽電池の変換効率が5%上昇

28ページでは、NEDOによる各種太陽電池のシェア等の比較と、
フランホーファーによる効率向上のグラフが掲載されています。

それによると、2013年の時点で

結晶シリコン系はシェア87%

といまだに大半が結晶系となっています。
2003年の時点で15%程度だったシリコン系の太陽電池の効率は2012年で20%超に(+5.5%)なっており、化合物系との差は埋まることなく、いまだにシリコン系太陽電池には性能的な優位性があることが読み取れます。

全体のシェア8%を占める化合物系は、主要の2社の動向に要注目

化合物系はプレイヤー(製造するメーカー)が少ないことが特徴的ですが、
ソーラーフロンティアに代表されるCIS太陽電池、ファーストソーラーが製造するCdTeはそれぞれシェアが2%および6%。
効率は若干CIS太陽電池の方が上ですが、ファーストソーラーは価格の安さで欧米を中心としたシェア拡大に貢献しています。

ファーストソーラーは日本にも進出し
一方でソーラーフロンティアは海外戦略でシェアの拡大を狙っています

日本の消費者としては、安価な「ファーストソーラー」が選択肢に入ったことで太陽光発電の敷居がさらに低くなることを願う一方で
日本メーカー「ソーラーフロンティア」のさらなる躍進で日本経済を活性化してほしいとも思います。
2社の動向に注目が高まります。

25年度には化合物系がシリコン系に追いつく?

35ページのNEDO PV2030+による性能目標は、結晶シリコン系のモジュール効率25%という実現可能性の高い目標に、CIS系も倣うことを目標としています。現在の1.5倍以上の性能を10年ちょっとで達成しなければいけないことになりますが、ソーラーフロンティアにはぜひ頑張ってほしいものです。

NTTファシリティーズ新発電所計画「F日光太陽光発電所」栃木県日光市に約2.5MW

2014年6月25日、NTTファシリティーズが新しいメガソーラーの建設を発表。

「F日光太陽光発電所」概要

施設名称 日光太陽光発電所
設置場所 栃木県日光市土沢1496-17他
事業者 株式会社NTTファシリティーズ
工事開始予定日 2014年6月下旬
発電開始予定日 2014年11月中旬
設置容量 2,478kW
想定年間発電量 約2,638MWh(一般家庭消費電力 約733世帯分)
想定設備利用率 12.16%(年間約1,065kWh/kW)

【参考都道府県別設備利用率(発電量)比較

「F日光太陽光発電所」の特徴やメモ

  • NTTファシリティーズが初めて栃木県内に建設することになる産業用太陽光発電施設
  • 独自の発電診断システムを導入し、遠隔において故障・不具合・発電量の診断

リリース

「国内」新規稼働開始/建設計画発表のメガソーラー一覧

国内の1,000kW(1MW)以上のメガソーラーで新規に完成した設備、計画が発表したものをまとめています。
完成したメガソーラー

事業主 規模 場所 稼働開始時期 メモ
北陸電力 1MW 石川県珠洲市 2012年10月31日 サイト
apbank 1MW 千葉県木更津市 2012年10月15日 サイト
日本アジアグループ 2MW 香川県坂出市林田町 2012年11月 サイト

新規の建設計画が発表されたメガソーラー

事業主 規模 場所 稼働開始時期 メモ
北海道電力 3MW 北海道中川郡(2か所) 2013年12月・2014年12月 サイト
日本石油輸送株式会社・JX日
鉱日石エネルギー株式会社
2.6MW 茨城県神栖市(2MW)・茨城県神栖市(0.6MW) 2013年3月 サイト
NTTファシリティーズ 2.15MW 広島県廿日市 2013年3月 サイト

北海道電力は北海道伊達市に1MWの施設を保有し、2011年から稼働している。2020年までに5MWの導入を目標としている。
NTTファシリティーズは全国910か所に34MWの太陽光発電導入実績を持つ。

使っていない土地があれば太陽光発電!という感じに、どんどん使われていない土地が活用されていますね。
1MW程度のメガソーラーがうじゃうじゃ出てきています。
これまでに稼働/発表されたメガソーラー計画はこちらでまとめています。
漏れているところなどありましたら、コメント欄で是非教えてくださいね:)