アメリカ、太陽光の発電コスト5セント/kWhに

アメリカの公的研究機関Lawrence Berkley National Laboratoryが、2014年9月のレポートで大規模太陽光発電システムからの長期電力購入契約単価が平均5米セント/kWhとなったことを発表しました。
調査会社米GTM Reserch社も、アメリカの太陽光発電システムからの電力購入単価が現在4.5~7.5米セント/kWh、大規模太陽光発電システムの設置価格が、連邦政府の税金控除前の金額(1.5米ドル/kWh未満)となるものもあるということを発表しています。

数年前まで、大規模太陽光発電所の設置は国のRPS政策(電力会社が売却する総電力量の一部を、再生可能エネルギー発電で賄うことを義務付けた)のためでした。しかし、太陽光発電は天然ガスを使う火力発電よりも電源コストが低い(例:米Austin Energy社の場合、天然ガスの電源コスト7米セント/kWh, 太陽光の電源コスト5米セント/kWh)ことが次第に明らかになってきたことから、RPS政策以外での太陽光発電導入が増えていきました。
現在では、太陽光発電は投資面に優れ、消費者の電気料金を下げる発電方法として注目されており、一部の州では火力発電よりも低コスト・低リスクの発電方法となりうるため、米国内の電力会社は太陽光システムからの電力購入を増やしています。

全米太陽光発電協会(SEIA)とGTM Reserch社の最新の米国太陽光発電市場レポートによると、2014年第3四半期の総導入量1.35GWのうち、60%以上が大規模太陽光発電所による電力事業で占められていました。GTM Reserch社は、2014年の年間太陽光発電導入量が対前年比36%の6.5GWになると予測しています。また、再生可能エネルギーの設備投資の税額30%を控除できる「ITC政策」が2016年末で終了する予定であるため、大規模太陽光発電所の建設ラッシュは2015~2016年の間は続くとみられています。

日本では系統電力の販売価格相当までやっと下がった太陽光発電のコストですが、さらに高次なグリッドパリティを達成したことで優遇策なしにも太陽光発電の普及が進められるようになったアメリカ。
コスト削減にも大きく貢献していると考えられるのが、アメリカの化合物系太陽電池最大手ファーストソーラー。日本市場での活躍の本格化にも期待が高まりますね。

参考

NEDO発表の「太陽光発電開発戦略(NEDO PV Challenges)」まとめました

NEDOが「太陽光発電開発戦略(NEDO PV Challenges)」と名付けた膨大な文量の開発指針発表しました。
気になるところだけかいつまんで、まとめています。

発電コストは23円=従量電灯レベルでのグリッドパリティは達成

NEDOの計算では、2013年の時点で23円/kWhを達成し、グリッドパリティと明記はしていないものの、従量電灯と比較すると完全なるグリッドパリティですね。
(2014年10月現在の東京電力の従量電灯において、住宅に多い20A・30Aを契約した場合、基本料金も合わせて24円を切ることはない。)

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今後の指針としては2020年の段階で業務電力価格並の14円/kWhを達成、2030年までに基幹電源コスト並の7円/kWhを達成を掲げています。

具体的には現在最高で21%程度のモジュール変換効率を、2020年には22%、2030年には25%以上を達成するとし、
さらに運転年数(寿命・耐用年数に相当すると考えられる)を30年まで引き上げることを掲げています。

設備利用率15%で計算するとし、キロワット単価27.6万円を切れば達成できることになりますが、
2014年10月現在で26万円/kWの格安パネルの市場に出てきていることを考えれば手の届く範囲でしょう。

2013年度末までの国内の太陽光発電設置容量の累計は14.3GW


2014年1月末時点で13GW超
だった累積設置量は3か月でさらに1GW以上が加えられ、14.3GWとなっています。

日本メーカーの世界シェアの縮小

10ページには太陽電池の産業動向がまとめられています。

2006年までは発電容量ベースで世界一位の生産量を誇っていたとはじめながらも、2007年には全体シェアが中国メーカー合計(32%)>日本メーカー合計(25%)と逆転、2012年の日本メーカーの全体におけるシェアはわずか6%に減ったと報告。
世界のメーカーシェアは中国勢にどんどん奪われていった模様は、当サイトのメーカーシェアランキングでも詳しくご案内しています。

国内メーカーの約3割の製品が海外製

12~13ページにかけては国内メーカーでも海外に生産を委託しているパネルが増えてきていることが言及されています。
参考資料として平成26年1~3月期の容量ベースで「パネルの出荷量に占める日本企業のシェア(図2-6)」と、同期の「パネルの出荷量に占める国内生産のシェア(図2-7)」のグラフが掲載されています。

「日本企業のシェア(図2-6)」については住宅用/産業用が分けられているのに対し、「国内生産のシェア(図2-7)」は全体を総括した容量での割合になっているので一概には言えないまでも、

例えば容量ベースで多くを占める非住宅用の数字と照らし合した際、日本企業64%のシェアに対し、国内生産は44%と20%の差があります。
容量ベースでは約3割の製品が、「日本ブランド国外生産」である可能性があるということです。

さらに付け足しておきたいのが、この表では「セルが海外製、モジュール組立のみ日本」という製品が国内生産品としてカウントされていることです。

各メーカーのパネルの生産国一覧

各国のシステム価格比較と推移

14ページの各国のシステム価格比較は興味深いです。
日本ではシステム価格が2001年から今まで、6米ドル/Wを上下してほとんど変わっていないのに対し、比較されている米国、ドイツ、イタリアは価格がどんどん下がっておりドイツは2012年には2米ドル/Wに到達しそうなくらいまで価格が下がっているのだそう。

これにはちょっと疑問が残り、6米ドル/Wというとキロワット60万円になり、相場からかけ離れている感が否めません。

その次に出ていグラフでは2013年の住宅用太陽光発電のシステム平均単価が約400円/W(40万円/kW)となっており、出典は同じ(みずほ情報総研)にも関わらず内容がズレているのがなぜなのかは、この指標の記述で読み取れなかったのですが(万が一読み落としがあればご指摘願います)

どちらにせよ、欧米よりもまだまだ価格に対して下げ幅の余裕があると考えていいのかもしれません。

施工のシェアは自社開発を行うNTTファシリティーズなどが有利に

おもしろいな、と思ったのが、施工企業のシェアの変化です。
積水ハウスやパナホーム、高島など、新築住宅向け太陽光発電の施工が主であるハウスメーカーのシェアは2009年から2012年でぐんと減り、

自社のメガソーラーをどんどん建設しているNTTファシリティーズが2012年は11%超のシェアで業界一位になっています。

新規企業の参入が相次いだことで上位企業のシェア自体が減っているということですが、自社架台の開発も行っているNTTファシリティーズに関しては今後のシェア拡大もばっちり狙っていることでしょう。

いまだに結晶シリコン系が人気/10年間で太陽電池の変換効率が5%上昇

28ページでは、NEDOによる各種太陽電池のシェア等の比較と、
フランホーファーによる効率向上のグラフが掲載されています。

それによると、2013年の時点で

結晶シリコン系はシェア87%

といまだに大半が結晶系となっています。
2003年の時点で15%程度だったシリコン系の太陽電池の効率は2012年で20%超に(+5.5%)なっており、化合物系との差は埋まることなく、いまだにシリコン系太陽電池には性能的な優位性があることが読み取れます。

全体のシェア8%を占める化合物系は、主要の2社の動向に要注目

化合物系はプレイヤー(製造するメーカー)が少ないことが特徴的ですが、
ソーラーフロンティアに代表されるCIS太陽電池、ファーストソーラーが製造するCdTeはそれぞれシェアが2%および6%。
効率は若干CIS太陽電池の方が上ですが、ファーストソーラーは価格の安さで欧米を中心としたシェア拡大に貢献しています。

ファーストソーラーは日本にも進出し
一方でソーラーフロンティアは海外戦略でシェアの拡大を狙っています

日本の消費者としては、安価な「ファーストソーラー」が選択肢に入ったことで太陽光発電の敷居がさらに低くなることを願う一方で
日本メーカー「ソーラーフロンティア」のさらなる躍進で日本経済を活性化してほしいとも思います。
2社の動向に注目が高まります。

25年度には化合物系がシリコン系に追いつく?

35ページのNEDO PV2030+による性能目標は、結晶シリコン系のモジュール効率25%という実現可能性の高い目標に、CIS系も倣うことを目標としています。現在の1.5倍以上の性能を10年ちょっとで達成しなければいけないことになりますが、ソーラーフロンティアにはぜひ頑張ってほしいものです。

米国の太陽光発電、コストが電気料金平均を下回る

米国エネルギー省(DOE)は、大規模太陽光発電事業の発電コストが2013年末時点で11.2セント/kWhになったと発表。3年前の21.4セント/kWhと比べて約半分まで下がったことになります。
アメリカの平均的な電気料金の12セント/kWhよりも安くなった事で、グリッドパリティを達成したということになります。

この成果には、ハード面での価格低下、主にソーラーパネルの価格低下が大きく貢献しているということで、3年の間にパネル価格は約3分の1になっているということ。

DOEは「SunShot Initiative」を掲げ、太陽光発電を他の電源と対峙できる電力源にしようと計画。
具体的には、設置作業費の低下を促そうと、コンテストなども行っていましたが、実際にはソフト面はシステム全体の価格低下にはそこまで貢献しなかったよう。

日本の系統電力が25円前後であるのに対し1kWhあたり約11円とは、アメリカの太陽光発電の発電事情はすでに十分優位にあるようですが、さらにDOEは2020年までに6セント/kWhにまで下げようという目標を掲げています。

参考

NEDOが発表、2017年にはグリッドパリティ達成の予想

NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が12月10日、改訂版「NEDO再生可能エネルギー技術白書」しました。その中に盛り込まれた太陽光発電の市場価格に関する展望について、まとめてご紹介します。

太陽光発電の発電コスト

26ページ参照)
住宅用:33.4~38.3円/kW(世界水準・18.2~36.5円/kW)
メガソーラー:30.1~45.8円/kW(世界水準・15.0~29.9円/kW)

特にメガソーラーに関して、世界水準の最高値が、日本の最低値よりも下回っており、差の大きさを実感します。
システム価格が高いのに加えて、日照条件がやや悪いのも理由だとか。
アメリカでは大きなまとまった土地が確保でき、さらに日照量も多いカリフォルニア州などで大型の太陽光発電施設が多く建設されているほか、ヨーロッパでもイタリアやスペインの地中海地域は太陽光発電の条件も良いようで、そうした地域の設備では発電コストも安くなる傾向があると考えられます。

グリッドパリティ展望

88ページからを参照)
グリッドパリティに関しては、

住宅用

2017年 − 家庭向け電力料金23円を達成(系統による出力変動の安定化による)
2030年 − 家庭向け電力料金23円を達成(蓄電システムを使って太陽光発電単独による)

産業用

2020年 − 業務用の電力料金単価14円を達成

という内容。

2016年には電力自由化が予定されますが、目標によるとその次の年にはグリッドパリティが完了。
各家庭で、クリーンなエネルギーを選択して購入できるようになるのも現実味を帯びてきたと言えるでしょうか。

参考

isofotonが日本でメガソーラー!お国のスペインの太陽光事情は?

近年では南米でさかんに大規模メガソーラー事業を行っているイソフォトンisofoton)。スペインの企業で、太陽光セル・パネル製造メーカーであると同時に発電事業も行っています。今回このisofotonが、日本に合計44MWのメガソーラーを建設する計画を発表しました。

isofotonの拠点スペインでは、太陽光発電設備は2004年から徐々に増え始め、2008年を境にまたプロジェクト数は下降するというゆるやかなブームをたどって、すでにグリッドパリティも達成したという事情もあり、地上設置の場合は売電価格は0.1655米ドルにまで下がっています。(参考)25年間の売電期間とはいえ、日本の売電価格と比べると収入は半分程度に下がってしまうことになります。

isofotonの事業の申請はすでに昨年度中に済ませていたようで、平成24年の42円の売電価格の適用される予定。

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ちなみにスペインでは、20kW以上の屋根上設置型の設備に対しては0.3608ドルが25年と、実は日本以上に寛大な売電価格が設定されているのです。
BIPV=building-integrated photovoltaics(建物一体型太陽光発電)に対してはさらに0.3838ドルにまで単価が上がります。

そして、地中海に面したスペインでは、日本の平均的な年間発電量1050kWh/kWに比べて、約1.7倍の1800kWh/kW近く発電量が得られる地域もあります。

それでも日本に進出してくるという事は、スペインの建物事情が絡んでくるのでしょうか。

ドイツなど・グリッドパリティ達成(太陽光発電のコストと一般電気料金が同等に)

グリッドパリティとは

ヨーロッパのエネルギー関係企業や施設などが参加するPV parityプロジェクトが発表したところによると、ドイツ南イタリアオランダそしてスペインで、太陽光発電のコストが住宅用の電気料金と同等になったそうです。
これに次いで北イタリアポルトガルオーストリアが2年以内にグリッドパリティを達成すると予想されています。

さらに10年後には目標とする11か国(上記の他に、ベルギー、チェコ、フランス、ギリシャ、イギリス)すべてでグリッドパリティになると言います。

先週には国際再生可能エネルギー委員会(IRENA)が、「太陽光モジュールの急速な価格低下により、世界の複数の地域で、近日グリッドパリティの達成がみられる」という発表をしていました。

いよいよここからが注目したいところですね。

グリッドパリティを達成するとつまり、電力会社から電力を購入するよりも太陽光発電を導入したほうがおトクという状態になるので、補助金なしに自然と普及が進む状況になったと考えられます。

グリッドパリティ達成後、太陽光発電の普及がどれくらいのスピードで成長するのか、あるいはしないのか。
日本も数年後には同じ状況になることが大いに考えられるため、ヨーロッパの状況がさらに気になるところです。

太平洋の諸島、太陽光発電で電力を100%まかなう!

ニュージーランド領の小さな嶼群トケラウはハワイとニュージーランドの中間に位置し、1500が住むと言います。
これまで電力はディーゼル発電に頼っていましたが、環境負担と運送コストの負担を解決するため、今回の太陽光発電の導入に踏み切ったと言います。

施行はニュージーランドのPowerSmart Solar。750万米ドル(約6億円)をかけて1メガワットの太陽光発電システムと蓄電池を設置するこのプロジェクトは、今年6月から工事が行われていました。

3つの太陽光パネル+蓄電システムからなるこのシステムは、どれもオフグリッド(独立型)電源では世界最大規模ということです。

今後、ディーゼルの購入輸送に充てていた予算は、社会福祉に回せるという事で、小さな島などの電力確保が難しい場所にとって、太陽光発電は電力供給の様々な問題を一括解決してくれる頼もしい手段だと再確認できますね!

参照元

スカイソーラー(中国)チリに18MWの施設建設でグリッドパリティプロジェクトを推進

中国の再生可能エネルギーのデベロッパー「スカイソーラー」が、企業で初となるチリでのメガソーラープロジェクトを開発すると発表しました。場所はチリの北に位置するArica地方です。

スカイソーラーは中国の首相と今年7月に、パートナーのSigdo Koppers、そして中国開発銀行とともに累計300MWのプロジェクト開発を行うと同意しており、このチリでの18MWのプロジェクトはチリで最大級の地上設置型プロジェクトになり、スカイソーラーの資本を100%使って建設・開発が行われます。

中国企業がチリでこれほどの規模の施設を作ったことはいまだかつてなく、今回のプロジェクトは中国の太陽光産業の活性化につながるだけでなく、チリの北部に安定した電力を供給するという、お互いの利益が合致している、という事で、これをきっかけにチリをはじめとする中南米諸国のグリッドパリティを推し進めていきたいという意向を発表しています。

Arica地方の場所と、SkySolarのその他のプロジェクトについては
世界のメガソーラープロジェクト一覧
をご覧ください。

2020年までに世界の98%がグリッドパリティ(太陽光発電コスト=通常の電気代)になる!?

GBIリサーチによると、2011年の太陽光発電市場は76.2%のヨーロッパが先導したという。
ドイツの安定した成長率40%の数字が際立つものの、年間設置量ではイタリアに抜かれました。それというのも、2010年度のFiT価格の適用を、2011年の7月の系統連系まで引き延ばしたことが大きな原因となったと考えられます。

しかしこの明らかなヨーロッパの市場優位もこの先は大きく変わるだろうというのがGBI Researchの予測です。
インド、中国、オーストラリアなどの国で、政府が太陽光発電推進のためにより寛容な援助体制を整えていき、電力需要の増加、従来の発電方法への依存からの脱出を図る動きなどが市場をより活発にするだろうということ。

市場の成長率は2009年の不景気を差し引いても約25%ということで、2011年に至っては2010年より77%も多く太陽光発電の設置が見られたということです。2011年だけで世界中に27.1GWが設置され、2012年から2020年までの複合年間成長率は15.9%で、2020年には世界の累計で277.1GWになると予想されています。

2020年までに、98%の世界中の人口をカバーする地域で、グリッドパリティ(太陽光発電のコストが、従来の電気代と同じになる状態)になるという調査報告を出しているところもあるほどです。

参考