リコーが色素増感太陽電池を展示、IoTへの応用に期待

2014年末、都内で開かれた展示会にリコーは色素増感太陽電池を展示しました。赤、紫、黄色とカラフルな色をした手のひらサイズの四角いパネルが目を引きます。1平方センチメートルあたりの出力は13.6μWと大きな電力を生むことはできませんが、電卓やソーラー時計に使う非結晶シリコン太陽電池よりも2倍多く、微弱な光でも発電性能が低下しないため室内光での発電に向いています。

IoT(モノのインターネット)の時代には、あらゆる場所にセンサーが張り巡らされることになり、2020年には1兆個ものセンサーが地球上に設置されるとの試算があります。その一つ一つに電池を使用した場合の電池の廃棄量は膨大なものになるでしょう。そこで色素増感太陽電池を使うことにより、センサーを「電池レス」で稼動させることが可能になり廃棄量を減らすことができるのです。

色素増感太陽電池は様々な企業が開発に挑んでいますが、実用的な用途が見当たらず普及に至っていませんでした。IoT時代の到来で色素増感太陽電池の出番がやってきたということです。

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リコーが開発中の色素増感太陽電池を展示会で発表

2014年末の都内の展示会で、リコー色素増感太陽電池を展示しました。手のひらサイズで、赤、紫、黄色のカラフルな四角いパネルです。画像エンジン開発本部の田中氏は、用途を選ばなければすぐに実現できると語っています。

色素増感太陽電池は、微弱な光でも発電性能が低下しないので、照明などの室内光での発電に向いています。大きな電力は発電できませんが、身近にある未利用の室内光を電力に変えるには最適な発電方式とされます。

次世代型の太陽電池として注目される色素増感太陽電池は各社が技術研究を重ねている状態。主要なソーラーパネルメーカー以外の分野からの進出例も少なくなく面白くなってきそうですね!

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チタンを使った夢のような太陽電池の実用化に期待大

奈良県の株式会社昭和がチタンを使って効率を高め、さらに価格は10分の1という太陽電池の開発に成功。現在は経済産業省からの支援も受けながら実用化に向けた研究を行っているということです。

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神奈川県にも同じくチタン加工の昌和という会社があるのでこれかな、と思ったのですが、奈良県の昭和はこちらの企業みたいです。チタン加工一筋な感じが伝わってきますね。

2015年の商品化を目指している同製品は、どうやら技術としては今アツい色素増感太陽電池の原理を使ったもののようです。
低照度での発電に優れ、シリコン系よりも5割も多く発電でき、さらに価格にしてキロワット単価4万円代という、本当に夢のような技術に期待大です。

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大成建設のZEB(ゼロエネルギービル)、環境評価で初の快挙五つ星取得!

ゼロエネルギーハウスは、太陽光発電の設置などにより建物内のエネルギー消費が正味ゼロになる住宅のことを言いますが、これは4kW程度の太陽光発電の設置で達成できるもので、ZEH仕様の家はどんどん増えている状況といえます。

さらに今後の課題の一つは、日本全体のエネルギー消費の40%を占めるというオフィスビルでのネットゼロエネルギー化、「ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)」の実現。

大成建設は6月16日、横浜市戸塚区にある同社の技術センターに新しく、ZEBを達成した実証塔を竣工したと発表。

概要は、まず消費エネルギーを従来の75%カットし、残る25%の消費エネルギー相当分を太陽光発電で作りだすことにより、エネルギー消費のネットゼロを達成しているということ。
と、言葉で言うのは簡単。しかしオフィスビルのように階層があり面積当たりの消費電力が多い建物は、25%とはいえ相当の電力量になります。
今まで国内外にZEBの実証例はあったものの、低層の建物での実現例や、建物以外の敷地で作ったエネルギーを利用する例でした。

今回の大成建設は有機薄膜太陽電池(色素増感太陽電池)を使った「発電する建物外壁ユニット」を使用し、建物本体に設置された発電設備でZEBを実現するという稀有な実例となります。採用された「有機薄膜太陽電池外壁ユニット」は、大成建設と三菱化学が共同開発したものだということ。

都心の狭小なエリアでもZEBを実現できる「都市型ZEB」の実現と位置づけられる大成建設の技術センターZEB棟、「建築物省エネルギー性能表示制度(Building Energy-efficiency Labeling System/BELS」)の評価では最高ランク「☆☆☆☆☆」を取得。

BEI≦0.5(基準一次エネルギー消費量の50%以下)で最高ランク「☆☆☆☆☆」が与えられる事になっていますが、この評価を達成したのは初で、しかもBEIERR=0.14という基準を遥かに下回る数値を叩き出したということ。

大成建設は今回の実績をオフィスビルが集中する都市部でさらに生かしていくということで、今後の大成建設による都市開発に期待が募ります。

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効率従来の1.6倍、安全性と耐久性も向上したリコーの有機系太陽電池

リコーが、従来の色素増感太陽電池に比べて性能面で大きく向上できるとする「完全固体型色素増感太陽電池」について発表。

有機系の太陽電池は各社が独自で開発を進めていますが、リコーは従来の色素増感太陽電池において電極の間を埋める電解液を固形化することで、効率は従来の1.6倍に向上、さらに耐久性や安全性も高まり、85度の環境に2000時間おいて実験したところ出力低下が無かったのだそう。

電解液の固形化にあたって、金属酸化物ナノ粒子、増感色素、固体電解質をそれぞれ密着したまま固形化することが技術的に難しかったものの、当社がコピー機の製造などで培った成膜技術による実現させたのだとか。

まだまだ研究段階であるものの、6月25日から東京ビッグサイトで行われる「第25回 設計・製造ソリューション展(DMS 2014)」ではすでにこのセルを用いたモジュールのサンプル品を出展するのだとか。

この先は、低コスト化や野外での使用にも耐えられる耐久性の向上などを中心に改善・開発を進める意向だという。

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ビルの外壁で発電、三菱化学の実証実験

NEDOによる色素増感太陽電池実用化のための実証試験の一環で三菱化学が行っていた、「軽量・フレキシブル・シースルー型の有機系太陽電池の実証実験」。

建物の壁や窓部分にシースルーの有機系太陽電池を設置して電力を得、さらに遮光効果なども期待できるというこの技術。
三菱化学は実証実験で培った技術を元に、大成建設と「発電する建物外壁ユニット」を開発しました。

開発されたユニットは、横浜市にある大成建設が技術センター内「ZEB実証棟」に導入し、都市型ゼロエネルギービル(ZEB)の実現に向けての実証実験を始めます。

都市型ゼロエネルギービル(ZEB)とは、年間の1次エネルギー消費量を正味ゼロかほぼゼロにする建築物のこと。
ビルへの太陽光発電設置はビルの屋根上などが想定されますが、ビルが多い都市部では屋根上への太陽光発電設置だけでビルの電力消費を供給するのはハードルが高いのが現状。

高層のため立地面積あたりで消費される電力量が多いのもありますが、高層ビル屋上の強風の環境はパネル設置の障害になったり、隣接の建物の影がかかって十分な発電量が得られなかったりと、ZEBの実現には屋上以外の活用による発電が必須事項となります。

三菱化学と大成建設の外壁を使った発電ユニットは、ZEBの実現に一役買いそうです。

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スマートエネルギーWeek 2014「PV EXPO」

スマートエネルギーWeekの一環である「PV EXPO 2014」において、太陽光発電の各メーカーが自社の最新の製品技術などを発表しました。

中国メーカートリナソーラーはその名も「スマートパネル」を出展。
直列接続のソーラーパネルにおいて、一部のパネルの出力が低下すると、その周りのパネルの出力まで下げてしまいます。
トリナソーラーの「スマートパネル」は、影がかかったパネルの発電を停止する機能がついており、全体の発電量に与える影響を最小限にできます。発電量にして20%アップの効果が期待できるのだとか。
年内の販売を目標にしているそうです。

シャープは色付きのパネル、シースルーパネルなどを出展。今後の発展に大きく期待がかかる、有機系の色素増感太陽電池を使用したものかと思われます。
NEDOの助成による色素増感太陽電池の実証実験も行っていたシャープ。太陽電池の技術を長年率いてきましたが、新たな有機系太陽電池の分野でも、他メーカーをリードする存在となるでしょうか。

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ソーラーシェアリングにも有機系太陽電池

色素増感太陽電池の話題が続きます。諏訪東京理科大システム工学部の渡辺康之准教授の研究室が発表した、有機系太陽電池を使った、ソーラーシェアリングの実証実験についての調査結果が報告されました。

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この実証実験では、有機系の太陽電池光を通せる薄いフィルム状に加工できる特性を利用し、太陽電池をビニールハウスにかぶせて栽培を行いながら太陽光発電で電気を作るという方法を検証。

太陽電池は、作物が光合成で使う赤と青の光は透過させ、残る緑の光を使って発電する種類のものを使用。そうした環境で育てたミニトマトは、

生育は若干遅れるものの、収穫量は変わらないことを実証した

ということ。

有機系の太陽電池は効率の低さ、耐久性の低さといったデメリットはあるものの、設置面積を増やして全体の出力を増やしたり、コスト低減によって利用価値は高まるとされ、ソーラーシェアリングの新しい方法として、今後注目が高まります。

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有機太陽電池の効率向上に期待

太陽光発電の次世代を握るとされ、期待が高まる有機系ソーラーパネル(色素増感太陽電池)。その有用性に関してはこの記事でご紹介していますが、ネックとされる効率を向上させようという研究に注目が高まっています。

神戸大の小堀康博教授らの開発した基礎技術は、基板に使う有機分子などを電子レンジに使うマイクロ波で解析し、電流の発生効率を引き上げるというもの。実用化はこれからだということです。
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一方、産業技術総合研究所(産総研)は有機太陽電池の効率の限界値を21%と発表。(記事)現在はまだ10~12%程度ということ。

従来のソーラーパネルとはまた違った用途に期待が広がる色素増感太陽電池。今後の研究に注目したいですね

イタリア・ミラノの大学研究所の太陽電池は赤ワイン色

DSC(Dye-sensitised Solar Cells)ろよばれる色素増感太陽電池の技術は日本でも既に多くの実証実験が行われていますが、太陽光発電の普及で先を行くヨーロッパでも、このシリコンを使わない有機系太陽電池の可能性に大きな期待がもたれています。
イタリアのミラノ・ビコッカ大学の研究所では、ヨーロッパらしく赤ワインのように赤紫の果実の果汁を使った色素増感太陽電池の研究が進められています。

メリット豊富な色素増感太陽電池についての説明をまとめてみると

  • 微光でも発電可能
    明け方のような時間帯でも発電でき、日照量が多い昼間に最適化した場所(主に屋根)への設置が必要なくなり、よりフレキシブルに設置(例えばビルの壁面への応用)ができる
  • コストを大幅に低減できる
    パネルをつくるシリコンの5分の1のコストで製造可能という計算が出ている

対してデメリットは

  • 効率が低い
    効率がシリコン系のパネルだと15%程度なのに対し、有機塗料は6〜7%
  • 寿命が短い
    シリコン系パネルが30〜40年稼働し続けているものがあるのに対し、有機塗料の発電持続期間は10〜15年と言われている

とあります。
とはいえ、応用力の高さ、また通常のパネルでは発電できない光ももれなく使う事ができるというところはむしろ活躍の場がシリコン系のパネルとは全く異なるとも考えられ、現行のパネルと並行して利用することも可能だと考える事もできます。

どの国でも、太陽光発電の次のフェーズは色素増感太陽電池のようですね。

なんでもこの発電の技術は、葉緑素の光合成を基本原理として発展したものだそう。
自然の力ってすごいって改めて感じます。

参考記事