バイオマス・ジャパン、追尾型の架台を発表

時間によって発電量が変わる太陽光発電は、年間を通して一番発電量が多く得られるよう、夏至の日中の太陽の位置に対し90度になるような角度に設定される事が多い。つまり、真南×その土地の緯度という組み合わせを目指して、架台なりを調整するのだが、追尾型というのは年間を通して固定された方位にパネルを向けるのではなく、季節と時間によって異なる太陽の場所に合わせて、パネルの向きを変えていくという考え方を取っている。私の記憶が正しければ、方位の定まらない船の上などで最大限の電力を得るために使われる事が多かったが、地上での応用も期待されている。

常に最適な角度で日射を得られるので、当然発電量は増え、同時に設備にかかるコストも増えることになるのだが、増える発電量の価値が増えるコストを上回れば、より効率の良い投資となりうる。

追尾型を古くから作っているメーカーと言えばフジプレアム。同社は追尾型の設備の性能について、既にいくつかの実例を出しているが、通常の1.4〜1.6倍というのが平均的な数字のようだ。
今回追尾型の架台を発売するというバイオマス・ジャパンも1.6倍の数字を目安として出している。

アイデア自体は新しくない。土地代が高い日本では一定の土地にできるだけ多くの積載量を得られる事がメリットとなる場合も多いだろう。
しかし中々普及が進んでいないようだ。やはり価格が1.6倍強では済まない場合が多いのかもしれない。

スイス エアライト・エナジー社、追尾集光型の持ち運び太陽光発電「サンフラワー・ソーラー・ハーベスター」を発表

太陽光発電と、海水の淡水化、温熱、冷却の全てを実現し、更には持ち運び可能なシステムである、「サンフラワー・ソーラー・ハーべスター」の開発が進んでいます。同システムを開発しているのは、スイス企業「エアライト・エナジー」。同社によると、2013年から始まったこのプロジェクトは、2016年までに世界各国での試験運転開始と、2017年半ばまでの商品発売を目指しています。

システムは組み立て式で、一つの容器に収容も可能な設計ですが、反射板も含めた全長は10mのものとなっています。いわゆる集光追尾型の太陽光発電ですが、電力だけでなく熱を同時に供給でき、その熱を利用して冷却システムを動かしたり、低温脱塩システムを通して海水を淡水化したりと利用価値を高め、砂漠や無電化地域など遠隔地での活躍が期待される製品となっています。

花弁状に配置した反射板には、お菓子の包装などに使われるホイル素材を利用し、コストカットを実現しました。その反射板が、米IBM社製の水冷式太陽光パネルに光を集約させ、パネルに搭載された太陽電池チップに電力を貯めていきます。このチップは水冷システムによって最適な温度に管理されるため、従来の製品よりも、75%も集約率が高まりました。

参考

福島県いわき市の国内最大ソーラーシェアリングに、フジプレアムの追尾型採用

福島県の太平洋側、いわき市にある大規模トマト生産を行う農業法人「とまとランドいわき」。南を茨城県と隣接するいわき市は首都圏からも行きやすいのでバスツアーなども行われています。そのとまとランドいわきに国内最大級の追尾型75基を含む営農型のメガソーラー施設が竣工。2014年12月8日には竣工式が執り行われました。

このメガソーラーは、追尾型の太陽光パネルを75基と、固定の太陽光パネルを2480枚設置したもの。合計で最大約1メガワットの発電が可能となります。

このプロジェクトは、兵庫県姫路市に本社を置く「フジプレアム株式会社」と、福島県いわき市に本社を置く「有限会社とまとランドいわき」が提携して進められました。2013年の「農地における営農型太陽光発電設備等に伴う農地法の規制緩和(農林水産省)」を背景に、「ふくしまから農業の復興をはじめる」という目的としてスタートしました。営農型の太陽光発電施設を設置することで、「農業収入」+「売電収入」を得る新しい形の農業を推奨し、また、農業法人による企業の参入も促進しています。

追尾型太陽光発電は、太陽の経路を自動的に算出し、発電パネルが太陽を自動的に追尾するのが特長です。そのため、設置面積当たりの発電効率が高く、固定型太陽光発電と比べて1.4~1.5倍の発電が可能になります。また、パネル下の空間が有効利用が可能で、農作物への影の影響が少なく、営農を継続しながら発電が可能という長所も持ち合わせています。

有限会社とまとらんどいわきでは、この追尾型太陽光発電を412.5kW設置し、2014年6月に設置した固定型太陽光発電施設558.0kWと合わせ、約1MWの出力を確保することが可能になりました。固定型太陽光発電システムは、農林水産省の「地域還元型再生可能エネルギー早期モデル確立事業」として採択を請けており、その売電収入の5%を、福島県立磐城農業高校での実習環境整備に活用され、地域還元型事業として地域創生につながる取り組みとなることを目指しています。

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IBMがスイス企業と開発のハイブリッドな集光型太陽光発電は太陽エネルギーの80%を利用可能

IBMは、CSP(集光型太陽熱発電)の製造で革新的な開発を続けているスイスのAirlight Energyと共同で、2000倍もの集光が可能な集光型の太陽光・太陽熱併用の発電システムを開発したと発表。

HCPVT(High Concentration PhotoVoltaic Thermal/冷却熱利用型超高集光太陽電池システム)と呼ばれるこのシステム、呼び名は小難しいものの考え方はシンプルで、太陽光を集めたら光も熱もどっちも集まるんだから、どちらか一方だけじゃなくて両方利用しよう!というものです。

従来製品としては、集光した太陽光を利用して太陽電池で発電する集光型太陽光発電(cpv)と、集光した太陽熱を利用して主にボイラーを回転させる方法で発電する集光型太陽熱発電(csp)がありますが、今回開発したのはこのハイブリッド型ともいえる発電方式。ちなみに追尾機能も備えており、「太陽放射を2,000倍集光し、その80パーセントを有用なエネルギーに変換」できるのだそう。ある意味変換効率80%ですね。(参考:集光型太陽光発電では商品化されているもので効率約35%
太陽のエネルギーをこれ以上に最大利用できる製品はおそらく今までなかったでしょう。2017年までに商品化して市場に出すことを目標としており、今からワクワクします。

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写真が今回開発されたHCPVTシステム。まさにひまわりが花咲くような形状をしています。
10メートルの支柱の上に40平方メートルのパラボラ状の台座が設置され、常に太陽の方向を向くよう追尾機能が備わっています。
台座の内部には36枚も楕円形の鏡が太陽の光を中心の発電システムに集めます。
ちなみにこの鏡は厚さ0.2ミリメートルのプラスチック・フォイルを素材としており、経年劣化によって交換が必要となる10~15年後にはリサイクルができるのだそう。

集光された光はレシーバーに実装された1cm角の多接合型の太陽電池チップ(1枚の出力は最大57W、これが何枚利用されるかは未公開)で電力に変換されます。

これだけ集光された日光をまともに受ければチップは1,500℃を超えることになるところを、85℃~90℃の温水を使って”冷却”してチップを動作温度範囲内の105℃に保つのだとか。ここで出た排水に使用方法は幾パターンかが考えられています。
例えばこの温水から飲料水をつくったり、空調に利用したり、海水を蒸留して淡水化したり。
飲料水をつくる場合だと、受光面積1平方メートルあたり一日30~40ℓを作り出すことが可能だといいます。

一台で大容量の電力・温水を作ることができる同システムは遠隔地を含めた多様な場面での採用を想定していますが、商品化に先立ってAirlightとIBMは、2015年12月までに2つの自治体を選定し、HCPVTシステムの試作品を寄贈するとのこと。

参考

兵庫県相生市の畑地で、フジプレアムの追尾型を利用したソーラーシェアリング

追尾型太陽光発電システムを製造するフジプレアム。自社の追尾型システムを利用したソーラーシェアリング実証実験も姫路市で行っていました。

今回農林水産省による太陽光発電のための農地転用の部分許可を受け、初めてフジプレアム製の追尾型システムが、実際の農地に設置されたのだそうです。

兵庫県相生市の「海のみえるやさいばたけ」は相生市農業協同組合(JAあいおい)の経営する市民農園。ここに4.4kWの追尾型システム4基を設置。容量は合計で17.6kWになります。
パネル自体は「FCT-220Y3」を使用しており、出力220W/効率15.07%の超軽量「希」シリーズを使用しています。
発電量は年間約27,000kWh、1kWあたり1500kWh/年ちょっとを予想。現在稼働中の兵庫県の平均的な発電量が1279kWhなので、実際はもうちょっと多く発電量が得られるのではないかと予想しています。

キロワット単価48万円程度なら利回り10%程度になる計算ですが、実際かかった総工費はどのくらいだったのでしょうかね?

今回はフジプレアムの追尾型によるソーラーシェアリング記念すべき第一弾ですが、実例が増えて単価が下がるのを期待したいです。

参考
フジプレアムについて

いわき市のモデル事業にフジプレアムの追尾型412.5kW受注

追尾型の太陽光発電システムを作るメーカーとしてはおそらく一番大手といえるフジプレアム。ほかにも、超軽量型「希シリーズ」など、ほかの大手メーカーがカバーしきれないニーズにこらえられる製品を作り、パネルブランドの中では異色を放っています。
フジプレアムの太陽光発電

そんなフジプレアムの追尾型太陽光発電システム75基が福島県いわき市の「とまとランドいわき」からの受注を受け、年内に設置される予定だということ。

「とまとランドいわき」は農林水産省から「地域還元型再生エネルギー早期モデル確立事業」を受託し、約2億円の受注金額で、558kWのフジプレアム製の太陽光発電(225w × 2480枚)の設置を完了したばかり。
そして隣接地にはフジプレアムの追尾型を設置していきますが、1基に220Wのパネル25枚がついたもの75基。合計出力は412.5kWになります。

気になるのは追尾型がどの程度発電量が得られるか、ということですね。
兵庫県の併農型太陽光発電でも採用されており、その際は年間1420kWh/kW、設備利用率にして16.2%を見込むという内容を発表していました。
しかし16.2%というと、設置条件が良ければ追尾型でない通常のパネルでも達成可能な範囲。(山梨県や長野県では”平均でも”設備利用率16%以上が出ています。)

実際稼働が開始してから、運用状況などが公開されることを期待しています。

リリース

受注金額は明らかにしていないが、モデル事業の2億円は超えるという。

追尾型で最大4.7倍の発電量が得られることを確認

太陽の動きを追う事でより常に最適角度での発電を可能にする「追尾型」太陽光発電。
大手のパネルメーカーではフジプレアムなども製品を開発しており、その能力については実証実験なども行われているところで、今後の需要の拡大が期待される分野です。

神奈川県平塚市のグリテックスインターナショナルリミテッドは、自社で開発した追尾式太陽光発電システムを使って神奈川県産業技術センターと共同で船上で実証実験し、実際に得られた発電量についての情報を公開。それによると、固定式に比べて春は1.8倍、夏は1.4倍、冬は4.7倍の発電量の増加を確認したのだそう。年間を通した平均で、発電量は1.7倍にのぼりました。

追尾型の魅力は、地上の発電設備で設置面積当たりで得られる発電量が増えるだけでなく、常に動いているような船や自動車への搭載でより大きな効果を発揮できる可能性を秘めていること。

今回開発されたグリテックスインターナショナルリミテッドの「傾斜駆動型ソーラー追尾発電システム」。直径30cm、高さ3.5mの支柱の上に、6.6m × 4m、容量にして4kWのパネルが載っているというもの。面積からパネル効率を計算すると約15%になります。効率で言うと、平均点くらい。(各メーカーのパネル効率比較

気になる価格は250万円を想定しているということでキロワット単価は62.5万円で、現在の相場価格からすると2倍近い値段ですが、1.7倍の発電量が得られることを加味すると6.8kW容量のシステムと同じという事になり、36.7万円/kW程度という事になります。売電収入で十分に回収できる程度の価格帯です。
今後、発電事業などでの採用が増えて価格低下が進めば、追尾型がスタンダードになり得るかもしれません。

ちなみに太陽を追尾するための消費電力は1日約5wH時と無視できる程度。

参考

東レとフジプレアムのメガソーラーは追尾型も採用

東レエンジニアリング(TEK)とフジプレアムは事業会社「北九州TEK&FP合同会社」を設立し、北九州市若松区の7haの土地に約5,783kW(約5.8MW)のメガソーラーを建設すると発表しました。

設計・工事・保守はTEKが、フジプレアムはパネル提供をするということ。
5,783kWのうち45kWは、追尾型の太陽光発電システムその他は単結晶シリコンのパネルだそう。

メがソーラーのほんの一部ですが、追尾型は通常のシステムと比べて稼働率が高い、つまり、同じ容量でもより多くの発電量を得られます。

とはいえフジプレアムも関わる事業にもかかわらず、5,783kWのうちの45kWと、追尾型がプロジェクトの1%にも満たないことをみるとやはり追尾型の価格はまだまだ売電で十分に回収できるほどまで下がっていないと考えるべきでしょうか。
総事業費は約20億円、土地の賃代などすべて含めてキロワットあたり34.6万円なので、まずまずというところ。
東レは太陽光発電のEPC(設計・調達・施工)事業・O&M(運営・保守)事業を今後も発展させていきたいということで、今回追尾型の導入も、今後請け負う事業の可能性拡大に向けたものなのかもしれませんね。
特に、土地が限られた日本で太陽光発電事業を進める場合、土地を有効に使うためのより効率的な方法を模索していきたいところでしょう。
参考

フォードのソーラーパネル搭載車、2年で市販も可能?

アメリカのフォードモーターが、車体の屋根全面に太陽光発電システムを搭載したソーラーカーを開発。

同社の5人乗りプラグインハイブリッド車「C-MAX Energi plug-in hybrid」をベースにしたモデル「C-MAX Solar Energi Concept」は、従来モデルと同等のパフォーマンスを実現、屋根に搭載された太陽光発電システムからの充電も可能なバッテリー(8kWh)は、満タンの状態で約34km(21マイル)走行可能だということ。

車の屋根のように小さな面積でもバッテリーへの蓄電を速やかに行えるよう、ソーラーパネルは”世界最高効率”のパネルを生産するアメリカの太陽光発電メーカー、サンパワー社のものを採用。
さらに灯台などで使われるフレネルレンズによる集光技術と、太陽の向きを追跡する追尾技術を採用しているそうです。

フォードはジョージア工科大学と共同で量産のための実用試験を繰り返し、早くて2年で市販も可能だということ。

参考

追尾型の可能性?

追尾型の太陽光発電設備に関しては以前にも何度かお届けしましたが、(記事1記事2売電価格が引き下げられる中「より多くの発電量を見込める」事から、注目度が来年度も上がるのでしょうか。

JNCの子会社、千葉ファインケミカルが米QBotix社の技術を導入した太陽光追尾型の発電設備を、日本で初めて建設し、実証実験を開始するニュースが発表されました。

この製品の特長としては、「従来の一般的な追尾システムと比べて設備が簡便で故障しにくい」というところ。
太陽の方向を追いかけることでより多くの日射を発電面で受ける事ができ、通常の太陽光パネルと比べて1.4倍の発電量が見込めるということです。
つまり、設備費が、通常の設備費の1.4倍未満に抑えられれば、利用価値があると考えられます。