リコーが色素増感太陽電池を展示、IoTへの応用に期待

2014年末、都内で開かれた展示会にリコーは色素増感太陽電池を展示しました。赤、紫、黄色とカラフルな色をした手のひらサイズの四角いパネルが目を引きます。1平方センチメートルあたりの出力は13.6μWと大きな電力を生むことはできませんが、電卓やソーラー時計に使う非結晶シリコン太陽電池よりも2倍多く、微弱な光でも発電性能が低下しないため室内光での発電に向いています。

IoT(モノのインターネット)の時代には、あらゆる場所にセンサーが張り巡らされることになり、2020年には1兆個ものセンサーが地球上に設置されるとの試算があります。その一つ一つに電池を使用した場合の電池の廃棄量は膨大なものになるでしょう。そこで色素増感太陽電池を使うことにより、センサーを「電池レス」で稼動させることが可能になり廃棄量を減らすことができるのです。

色素増感太陽電池は様々な企業が開発に挑んでいますが、実用的な用途が見当たらず普及に至っていませんでした。IoT時代の到来で色素増感太陽電池の出番がやってきたということです。

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ハンファQセルズ、米企業が開発した太陽電池ウェハー製造をコストカットする技術の商用化に資金提供

Hanwha Q CELLS(韓国)と1366 Technologies(米国)は2015年3月5日に高い効率性かつ低コストな太陽電池セルの開発に向け提携を結んだ事を発表しました。

二社の提携の目的は、1366 Technologiesが開発をしてきた「Direct Wafer」の商用化が目的で、同社によれば、Direct Waferには多結晶シリコン太陽電池用ウエハーの生産コストを従来に比べ半減出来るということです。1366 Technologiesは既に6400万米ドル以上の資金を集めており、Hanwha側も2010年からシリーズBに参加しています。この集まった資金を2015年第3四半期に米国で年産250MW規模の製造設備の建設を始める予定です。この建設計画は今回の提携発表よりも前から公開していました。

Direct Waferによってエネルギーペイバックタイムの短縮(エネルギー収支比の向上)が期待できます。つまりウエハーの製造工程の短縮、製造時に使用するエネルギー・シリコン材料の減少、製造時間の短縮によって、よりエコな方法でパネルを製造できるようになります。

今回製造する装置に投資をする必要が皆無なのに対し多結晶シリコン太陽電池の60%を置き換え可能なのだと1366 Technologiesは発表しています。現在、ウエハーはキャスト法が一般的で、この方法はワイヤーで約0.2MM厚のウエハーをスライシングしますが、その際に約0.1MM分のシリコンが切削くずとなってしまう為、各社スライシングを行わないウエハー製造技術の研究開発が進められてきました。

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NEDOが発電コスト低減のための技術開発事業、新たに2件採択

NEDOは、太陽光発電システムの発電効率向上や維持管理に関する技術開発を新たに2件採択したことを発表しました。
同機構は、2014年度より太陽光発電システムの維持管理技術や周辺機器を対象とした技術開発を開始しており、開発テーマは既に採択されている6件と合わせて、8件となりました。これらの技術開発を通じて太陽光発電のコスト削減・発電量の増加・維持管理費の低減を目標としています。

1件目は、「PVモジュールの防水処理における太陽光発電システムの効率向上」です。防水被膜を太陽電池モジュールの裏面に設けることで、発電システムの出力低下を防止すると共に、故障率低減を図ります。ジー・エム・ジーエコエナジー株式会社との共同開発予定です。
2件目は、「太陽電池の抗PIDコート材料の開発」です。太陽電池モジュールの外周及び表面に塗布する、耐水性に優れた透明撥水コート材を開発し、PID対策と劣化予防を図ります。こちらは、株式会社MORESCOとの共同開発を予定しています。

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JAXAが宇宙太陽光発電システムの実証実験本格開始

米国をはじめとして研究開発が進んでいる「宇宙太陽光発電システム(SSPS:Space Solar Power System)」は次世代再生可能エネルギー技術ですが、日本でも小惑星探査機「はやぶさ」で注目を集めたJAXA(宇宙航空研究開発機構)でSSPSの中核技術が開発中です。宇宙空間という天候の影響を受けない太陽光発電ですが、地上での実証実験も始まっており2030年代にはMW級のSSPSを実用化することを目標としています。

静止軌道上の太陽光発電設備から無線で地上まで電力を送るため、発電された電力をマイクロ波に変換し、地上にビームを放射するという方法が有力で、JAXAでは巨大アンテナを静止軌道に設置し、多数の送電モジュールを配置する方式が考えられています。実用性検証のための地上試験モデルも開発され3月1日には屋外でのデモンストレーションが実施されます。

地上実験モデルの送電部と受電部の距離は55メートル、送電できる電力は最大1.8kWまで可能で、送電した電力をアマチュア無線家の無線機に供給して交信する予定です。
JAXAでは地上実験を継続して長距離でのマイクロ波の送信精度を上げるほか、電力とマイクロ波の交換効率を高たり機器の小型化や軽量化も進める計画があります。また移動体を使っての地上実験が次のテーマで、2020年代には小型衛星を打ち上げることにより宇宙空間での実証実験も開始される予定です。

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JAXAと三菱電機、宇宙太陽光発電システムを無線送受電する技術を実証

2015年2月19日、宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)は宇宙システム開発理容推進機構、三菱電機と共同し、マイクロ波による宇宙太陽光発電システムの無線送受電技術の屋外実装試験を実施することがわかりました。この試験では「高精度ビーム方向制御技術」を用いて、宇宙太陽光発電システムにある巨大なアンテナの方向や位置を手動で変更する試みが行われるとのことです。

高精度ビーム方向制御技術は電子的なアンテナ補正技術で、JAXAが世界で初めて開発したものです。今回の試験では送電部と受信部をそれぞれ55M離れた場所に設置し、宇宙でのアンテナ変形を想定した5.8GHzのマイクロ波を送信することでアンテナの補正を行い、技術を実証するとしています。

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エクソル工場屋根などでコスト削減の接着工法をセメダインと共同開発

2015年2月から販売されるダブル接着工法NAI-Xはエクソルと接着剤で有名なセメダインにより共同開発された商品で、工場や倉庫、スーパーマーケットなどに多い、重ね式折半屋根にも素早く太陽電池を設置できる接着剤工法です。従来の接着剤工法に比べて、屋根への穴あけが不要になるため、雨漏りの心配がないことや工期を最大34日短縮できるとエクソルは述べています。つまり、ほぼ1か月の工期短縮により、人件費をカットすることができるため、太陽光発電システムの導入コストを抑えることができるのです。

同社が接着剤を採用し、セメダインと共同開発を行うのは初めてではなく2011年にもXSOL接着工法を販売しており、今回のダブル接着工法も基本的な考え方は一緒になっています。明らかに違う点は養成期間であり、従来工法が夏季で2週間、冬季で4週間から5週間必要であったのに対して、今回販売される工法は初期固定接着剤のかわりに高機能両面テープを採用したため養成期間が不要となったのです。また、この採用された両面テープの強度も高く、自動車の外装部品や住宅の表札など他の業種で実績のあるテープであり、アクリルフォームを用いています。

環境対応は地上11メートルまでの屋根であることが条件で、塩害対応から海岸線から500メートル離れている屋根に設置ができるようになっています。

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リコーが開発中の色素増感太陽電池を展示会で発表

2014年末の都内の展示会で、リコー色素増感太陽電池を展示しました。手のひらサイズで、赤、紫、黄色のカラフルな四角いパネルです。画像エンジン開発本部の田中氏は、用途を選ばなければすぐに実現できると語っています。

色素増感太陽電池は、微弱な光でも発電性能が低下しないので、照明などの室内光での発電に向いています。大きな電力は発電できませんが、身近にある未利用の室内光を電力に変えるには最適な発電方式とされます。

次世代型の太陽電池として注目される色素増感太陽電池は各社が技術研究を重ねている状態。主要なソーラーパネルメーカー以外の分野からの進出例も少なくなく面白くなってきそうですね!

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NEDO発表の「太陽光発電開発戦略(NEDO PV Challenges)」まとめました

NEDOが「太陽光発電開発戦略(NEDO PV Challenges)」と名付けた膨大な文量の開発指針発表しました。
気になるところだけかいつまんで、まとめています。

発電コストは23円=従量電灯レベルでのグリッドパリティは達成

NEDOの計算では、2013年の時点で23円/kWhを達成し、グリッドパリティと明記はしていないものの、従量電灯と比較すると完全なるグリッドパリティですね。
(2014年10月現在の東京電力の従量電灯において、住宅に多い20A・30Aを契約した場合、基本料金も合わせて24円を切ることはない。)

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今後の指針としては2020年の段階で業務電力価格並の14円/kWhを達成、2030年までに基幹電源コスト並の7円/kWhを達成を掲げています。

具体的には現在最高で21%程度のモジュール変換効率を、2020年には22%、2030年には25%以上を達成するとし、
さらに運転年数(寿命・耐用年数に相当すると考えられる)を30年まで引き上げることを掲げています。

設備利用率15%で計算するとし、キロワット単価27.6万円を切れば達成できることになりますが、
2014年10月現在で26万円/kWの格安パネルの市場に出てきていることを考えれば手の届く範囲でしょう。

2013年度末までの国内の太陽光発電設置容量の累計は14.3GW


2014年1月末時点で13GW超
だった累積設置量は3か月でさらに1GW以上が加えられ、14.3GWとなっています。

日本メーカーの世界シェアの縮小

10ページには太陽電池の産業動向がまとめられています。

2006年までは発電容量ベースで世界一位の生産量を誇っていたとはじめながらも、2007年には全体シェアが中国メーカー合計(32%)>日本メーカー合計(25%)と逆転、2012年の日本メーカーの全体におけるシェアはわずか6%に減ったと報告。
世界のメーカーシェアは中国勢にどんどん奪われていった模様は、当サイトのメーカーシェアランキングでも詳しくご案内しています。

国内メーカーの約3割の製品が海外製

12~13ページにかけては国内メーカーでも海外に生産を委託しているパネルが増えてきていることが言及されています。
参考資料として平成26年1~3月期の容量ベースで「パネルの出荷量に占める日本企業のシェア(図2-6)」と、同期の「パネルの出荷量に占める国内生産のシェア(図2-7)」のグラフが掲載されています。

「日本企業のシェア(図2-6)」については住宅用/産業用が分けられているのに対し、「国内生産のシェア(図2-7)」は全体を総括した容量での割合になっているので一概には言えないまでも、

例えば容量ベースで多くを占める非住宅用の数字と照らし合した際、日本企業64%のシェアに対し、国内生産は44%と20%の差があります。
容量ベースでは約3割の製品が、「日本ブランド国外生産」である可能性があるということです。

さらに付け足しておきたいのが、この表では「セルが海外製、モジュール組立のみ日本」という製品が国内生産品としてカウントされていることです。

各メーカーのパネルの生産国一覧

各国のシステム価格比較と推移

14ページの各国のシステム価格比較は興味深いです。
日本ではシステム価格が2001年から今まで、6米ドル/Wを上下してほとんど変わっていないのに対し、比較されている米国、ドイツ、イタリアは価格がどんどん下がっておりドイツは2012年には2米ドル/Wに到達しそうなくらいまで価格が下がっているのだそう。

これにはちょっと疑問が残り、6米ドル/Wというとキロワット60万円になり、相場からかけ離れている感が否めません。

その次に出ていグラフでは2013年の住宅用太陽光発電のシステム平均単価が約400円/W(40万円/kW)となっており、出典は同じ(みずほ情報総研)にも関わらず内容がズレているのがなぜなのかは、この指標の記述で読み取れなかったのですが(万が一読み落としがあればご指摘願います)

どちらにせよ、欧米よりもまだまだ価格に対して下げ幅の余裕があると考えていいのかもしれません。

施工のシェアは自社開発を行うNTTファシリティーズなどが有利に

おもしろいな、と思ったのが、施工企業のシェアの変化です。
積水ハウスやパナホーム、高島など、新築住宅向け太陽光発電の施工が主であるハウスメーカーのシェアは2009年から2012年でぐんと減り、

自社のメガソーラーをどんどん建設しているNTTファシリティーズが2012年は11%超のシェアで業界一位になっています。

新規企業の参入が相次いだことで上位企業のシェア自体が減っているということですが、自社架台の開発も行っているNTTファシリティーズに関しては今後のシェア拡大もばっちり狙っていることでしょう。

いまだに結晶シリコン系が人気/10年間で太陽電池の変換効率が5%上昇

28ページでは、NEDOによる各種太陽電池のシェア等の比較と、
フランホーファーによる効率向上のグラフが掲載されています。

それによると、2013年の時点で

結晶シリコン系はシェア87%

といまだに大半が結晶系となっています。
2003年の時点で15%程度だったシリコン系の太陽電池の効率は2012年で20%超に(+5.5%)なっており、化合物系との差は埋まることなく、いまだにシリコン系太陽電池には性能的な優位性があることが読み取れます。

全体のシェア8%を占める化合物系は、主要の2社の動向に要注目

化合物系はプレイヤー(製造するメーカー)が少ないことが特徴的ですが、
ソーラーフロンティアに代表されるCIS太陽電池、ファーストソーラーが製造するCdTeはそれぞれシェアが2%および6%。
効率は若干CIS太陽電池の方が上ですが、ファーストソーラーは価格の安さで欧米を中心としたシェア拡大に貢献しています。

ファーストソーラーは日本にも進出し
一方でソーラーフロンティアは海外戦略でシェアの拡大を狙っています

日本の消費者としては、安価な「ファーストソーラー」が選択肢に入ったことで太陽光発電の敷居がさらに低くなることを願う一方で
日本メーカー「ソーラーフロンティア」のさらなる躍進で日本経済を活性化してほしいとも思います。
2社の動向に注目が高まります。

25年度には化合物系がシリコン系に追いつく?

35ページのNEDO PV2030+による性能目標は、結晶シリコン系のモジュール効率25%という実現可能性の高い目標に、CIS系も倣うことを目標としています。現在の1.5倍以上の性能を10年ちょっとで達成しなければいけないことになりますが、ソーラーフロンティアにはぜひ頑張ってほしいものです。

米クァンタムマテリアルズ社、次世代型量子ドット太陽電池の量産

アメリカはカリフォルニアで量子ドット技術の研究開発を行っているクァンタム・マテリアルズ(QMC)は、次世代型の量子ドット太陽電池を生産するための量子ドット材料量産のための生産能力を拡大すると発表。

太陽電池が太陽光から電気を作る際、利用できる光線の波長は限られています。電池を作る材料によって利用できる波長が異なることから、複数の太陽電池からできたハイブリッド型のもの(パナソニックのHITなど)も製品化されていますが、量子ドット構造の半導体結晶を材料として使うとさらに利用できる波長が広域になることで、理論上60%以上のエネルギー変換効率が得られるのだそう。
現在研究レベルで、化合物3接合型のセル変換効率37.9%という記録(シャープ)がありますが、これと比べても量子ドットを使う場合の伸び幅の大きさは期待できそうです。

生産にかかるコストの問題でこれまで製品化が進まなかったものの、今回生産能力の追加により薄膜型太陽電池を製造し、これを利用したプラントの建設を共に行うパートナーを探している段階なんだとか。
どこが勝ち取ることになるのでしょうか。

今回の量産化に際しては、太陽光発電技術の発展に関する政府からの資金援助に消極的なアメリカにおいて、補助金が受けられない状態でコスト削減を目指すために、多くの特許を自社および他社から取得したということ。
その中には、バイエル社のバイエルテクノロジーサービスから買い取った特許群も含まれるのだそう。
バイエル社といえば、ドイツの大手パネルメーカー、ソーラーワールドの発端となった技術の一つも、バイエル社のものでしたね。太陽電池飛行機ソーラー・インパルスも手掛けています。

量産した量子ドット材料はQMCの子会社のソルテラ・リニューアブル・テクノロジーズ社によって太陽電池への応用開発がすすめられます。

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チタンを使った夢のような太陽電池の実用化に期待大

奈良県の株式会社昭和がチタンを使って効率を高め、さらに価格は10分の1という太陽電池の開発に成功。現在は経済産業省からの支援も受けながら実用化に向けた研究を行っているということです。

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神奈川県にも同じくチタン加工の昌和という会社があるのでこれかな、と思ったのですが、奈良県の昭和はこちらの企業みたいです。チタン加工一筋な感じが伝わってきますね。

2015年の商品化を目指している同製品は、どうやら技術としては今アツい色素増感太陽電池の原理を使ったもののようです。
低照度での発電に優れ、シリコン系よりも5割も多く発電でき、さらに価格にしてキロワット単価4万円代という、本当に夢のような技術に期待大です。

参考