太陽光発電先進国ドイツに学ぶ

クリーンエネルギーで生み出した電力を一定期間買い取る、固定価格買い取り制度を最初に始めたのはドイツです。2011年までの累計で、太陽電池の導入数の約75%が欧州に、その約半分がドイツに占められると言われています。つまり、日本より少し小さいくらいの面積しかないドイツに、世界の40%弱の太陽電池があるという計算です。

ドイツの例に見る太陽光の今後

上記のような成果を得るため、ドイツではFIT(feed-in tariff)と呼ばれるクリーンエネルギーの固定価格買取制度制度を、世界で初めて実施しました。売電で利益を得ようと多くの産業用太陽光発電施設が建設され、販売数がいっきに増えた結果価格競争を促し、2011年のはじめにはシステム価格が1kWあたり2422ユーロ(26万7000円)まで下がってきています。比べて日本のソーラーパネルは、2012年の時点で一番安くて30.7万円/kW(グリッド/SO-KPC5-182G)、平均でいうと40万円を切れば格安という印象を受けます。
ドイツのシステム価格は産業用の大規模発電100kWあたりの数字なので、家庭用の太陽光発電の平均価格と同じように比較しようとすると正確さに欠けますが、買い取り制度によって日本の産業界でも太陽光導入計画が進んでおり、ドイツと同程度の低価格化は、近い将来日本の太陽光発電業界でも実現不可能な数字ではないと言えます。

ドイツでの太陽光システム価格の低下は今後も進んでいき、2012年には「グリッドパリティ」と呼ばれる状態を達成できると予想されています。つまり、通常の電気代と、太陽光発電のコストが等しくなる状態です。これ以降は、買い取り制度や補助金がなくても、設置メリットがあるので、自然と設置がすすみます。日本の太陽光発電も、この状態まで持っていくまでが、一つの達成すべき目標だと言えます。

現在のドイツは、世界で唯一、2000万kW超の太陽光発電出力量を達成しています。これは、原子炉20基分に当たり、東京電力福島第一原発事故後、脱原発社会を目標にクリーンエネルギーのさらなる普及を目指しています。

ドイツの失敗

2012年4月3日、ドイツの太陽光大手Qセルズが経営破綻しました。この会社は固定価格買い取り制度の後押しもあり、2007年にはドイツ最大手にまで上り詰めた企業ですが、5年の間に中国企業の参入などの影響で光発電システムの価格は暴落し、大幅な赤字を計上しました。この他のドイツの同業他社も破産が相次ぎ、太陽光発電設置がピークを過ぎたと言われる今後、さらなる業績悪化の恐れがあります。

ドイツ国内の太陽光産業への影響に加え、買い取り制度の国民負担金が極端に増えたことなども踏まえて、2012年6月29日にFIT(フィードインタリフ/全量買取価格制度)の見直しをする法案を成立させました。それによると、太陽光発電の固定買取価格を20%から30%引き下げることに加え、この買い取り制度に対して明確な“終了時期”を設定しました。2012年第一四半期の時点で累計の導入量が2,650kWですが、それが5200万kWに達した時を境にこの固定価格買取制度は廃止される見込みです。これ以外に、10kW以上のシステムに対する9割のみの部分買取制度の実施など、徐々に政府が太陽光発電導入の補助から手を引いていく方向へ向かっています。

ドイツの雑誌シュピーゲル誌は「太陽光はドイツ環境政策の歴史の中で最も高価な誤りになる可能性がある」と指摘していますが、環境保全の観点に立てば太陽光発電の導入数が増えることは決して悪いことではありません。導入数が世界一であることに加え、先に記述したとおり太陽光価格の低下もドイツ国内で進んでいるため、過去10年間の勢いこそないものの、この先もドイツ国内では徐々に累積太陽光導入数が増えることは十分に考えられます。

日本は2012年7月から産業用太陽光発電に対しての全量買取制度が制定されたことから、企業の大規模産業用太陽光発電参入が相次ぎ、累積設置容量はさらに伸びていく予想です。設置数増加と価格低下を促しつつ、日本の太陽光メーカーの経営を支えられるよう、固定価格買取制度の価格設定は細心の注意が払われなければなりません。