チュラエコネットの蓄電池利用システム、沖縄での売電事業再開に寄与できるか?

沖縄電力県内では太陽光発電の接続可能容量を超え、新規での売電申請が実質中断されている状態です。

それを打開するために沖縄市のチュラエコネットが開発したのが「SAKU(Solar Auto Kickback Uploading)システム」で、簡単にいえば昼間太陽光発電から蓄電池に充電し、夜間など太陽光発電の出力が下がる時間帯以降を中心に放電を行うという製品。琉球新報の記事をもとにご案内します。

50kWシステム×3で一つのパワコンをシェア

同システムの内容は、50kWの発電所3箇所を一つの50kW(正確には49.9kW)のパワーコンディショナに接続し、一か所の発電所からは通常通り発電してそのまま売電、残る2箇所からは全量を蓄電池に充電し、運転制御盤によって夜間を中心に売電する、というもの。
50kW以上では高圧対応になり建設コストが高くなるため、50kW未満の事業を対象としています。
蓄電池の設置でコストがかかる分、パワーコンディショナにかかるコストを3分の一に減らせるのは、事業者にとってメリットと言えそうです。

ちなみに琉球新報では「50キロワットの太陽光パネルを3枚使用する」と記載されていますが、1枚50kWのパネルなんてありません。正しくは「50kWの事業を3箇所」です。

実際のシステム活用には障壁も多い

さて、一事業者が隣接地で50kW以上の太陽光発電を行う場合、50kW未満を2箇所というように敷地分割をすることは認められていません

そのため、3箇所それぞれの利害関係の異なる事業者が、同システムをシェアするのが一般的な利用例として考えられます。

そうなると、どのシステムから直接売電してどのシステムから充電するのかで揉めそうですし、どこの発電所がどれだけ発電したかを計測する必要ももちろん生じますが、このシステムにはそのような内容は含まれていないようです。

なんだかちょっと詰めが甘い商品だな、というのが正直な意見です。

沖縄電力も「今後、接続の申請があれば、技術的な検討を含め、個別に対応していく」とコメントしており、同社もこのシステムを利用したい事業者が多くないと考えているのかな、なんて想像してしまいます。

追い打ちをかけるようですが、実は固定価格買取制度は蓄電池からの売電についてカバーしていません。
太陽光発電由来の電力であっても、一度蓄電池を通してしまうと、同じ売電価格を適用できないのが事実です。
沖電のコメントに「個別対応」とあるのは、こうした意味も含まれているのではないかと思います。つまり、制度上クリアしなければいけない問題が残っているため、現時点でこうしたシステムの利用を積極的に勧められないのです。

今後のサービスの展開に期待

例えばこのシステムを提供するにしても、事業者にシステムを販売するより、エネルギーマネージメントサービスのような形で利用者を募り、発電した電力を集約して新電力のような形でこのチュラエコネットさん(もしくはサービスを代理で提供する事業者)などが買電する、といったビジネス展開はできないものでしょうか?

同システムを開発したチュラエコネットという沖縄市の会社に詳細を問い合わせをしようとしたのですが、会社情報が見つからず、断念した次第です。

今回の製品で面白いと思ったのが、パワーコンディショナ1台で3倍の容量の太陽光発電をさばこう、というアイデアですが、チュラエコネットさんに限らず、蓄電池を利用して同様の試みを行うビジネスが、今後はもっと出てくるのではないかと予想しています。例えば既存の稼働設備のパワコンを使って、新設の発電設備の発電分から夜間に売電する、など。

発展に期待したいところですね。

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