建物の寿命の本質を知る
木造は65年、RC造は120年以上?

このページを30秒で要点説明

よく聞く木造30年、RC(コンクリート)造37年という住宅寿命は役所的解釈に過ぎず、実際は築100年を超す京都の長屋などをリノベーションして住むような方も少なくありません。

より実質に沿った住宅寿命を推し量る研究はいくつかあり、木造は現時点で65年を平均寿命とするデータが支持されています。一方マンションなどコンクリート造の場合は物理的には約120年は持つというデータが出ています。

こうした指標はひとつの目安になるかもしれない一方で、木造については特にその測定方法などを考えると今後寿命がさらに長くなるのは自明の理であるとも言えます。

住宅寿命の「木造30年・RC造37年」はあくまでお役所的

国土国交省では便宜上の木造住宅の寿命を約30年としていますが、これは取り壊された建物の築年数の平均である27年、または不動産のストック数(住宅総数)とフロー数(新築件数)で割ったサイクル年数に当たる30年という数字から取ったもので、この寿命目安があまりにも現実に即さないという話はよく聞くところです。RC造のマンションにしても37年という数字は建て替えられたマンションの平均築年数であり、その中には都市計画といった耐用年数以外の要因によって早々と取り壊された例も含めての数字です。

その一方で日本最古築700年の民家や、現存する世界最古の木造木造建築物である築1400年超の法隆寺のような例を見ると、建造物の潜在性は底知れないとも感じます。さすがに何百年の月日を超えるには相当に質の良い素材と施工であることや、代々住み継ぐ人々がその家を守り抜く意思を共有していることに加え、天災や都市計画といった外的な要因から逃れられる「運」といった複数の要因が重ならないと難しいものの、こう考えると30年や40年で早々と住み手が飽きてしまったりで壊される住宅がいかに不運かを思い知らされるようです。

実際どれくらいの築年数の住宅にみんな住んでる?

現存する住宅の築年数の状態が分かる総務省統計局の情報を視覚化したのがご案内しているチャートです。(2015年時点)

1980年代のバブル期と重なることから築26~35年の層が20.1%と最も厚くなっています。築年数65年以上の物件はひとまとまりになってしまっていますが、このうち少なくとも6割、つまり全体で2%は終戦(1945年)以前に建てられた築70年以上の建物であると考えられます。平成19年9月1日に刷新した景観政策で町屋の再生プロジェクトがさかんになってきている京都では、築100年も経った町屋を再生させる企業なども注目を集めています。

築年数がすべてではない▼(開く)

このように、日本には戦後の建物を中心にさまざまな世代の建物が入り混じっていることに気付きますが、古くなればなるほど質が悪いとは決して言えないことに注意していただきたいです。例えば学生時代に築40年のアパートに住んだ経験がかなり過酷なものであったとしても(冬は寒く夏は暑く、カビがすぐ生え冬でもゴキブリが出る…など)それを築60年の一戸建てを買わない理由に加えるのは少し早合点かもしれません。その住宅に特に思い入れのない人によって所有される築40年のRC造アパート賃貸や、適時のメンテナンスを欠かさず先祖代々大事に住み継いできた築60年の木造住宅。その住まいの快適性や質には築年数だけで語り切れない要素が複雑に絡み合っていると言えます。また耐震性さえ確保できれば今ではスケルトンリノベーションなどで構造だけ残し、住まいを丸ごと作り直すこともできます。こういった考えから、一定の年数をすべての住宅の寿命として定めることはナンセンスだと言えます。

  • 総務省統計局では1998年以降毎5年ごとに同様の統計を取っていますが、平成10年(1998年)までのものは1950年以前の項目が終戦前(1945年以前)と終戦後(1945~1950年)に分かれていました。この時期の数値を元に築70年以上の建物が全体の少なくとも2%以上は占めていることが算出できます。

各研究が示す、より実質的な住宅の寿命と耐用年数

実は最初にご案内した建前の寿命とは別に建物の推定寿命についての研究はいくつか行われています。以下はそれらの研究から出された推定寿命とその根拠をまとめたものです。

木造の実質平均寿命は65年

木造住宅の寿命について引用されることが多い研究が早稲田大学の小松幸夫教授らが行ったもので、一番新しい2011年の調査では65年という平均寿命を算出しています。

木造
推定寿命 寿命計算方法・根拠など
65年 建物の完工後、残存率(取り壊されていない建物の比率)が50%となるまでの年数
(小松幸夫教授ら・2011年調査)
平均寿命の計算方法▼(開く)
住宅の残存率と平均寿命の考え方

この研究では人間の平均寿命を算出する際の計算方法に倣い、建物の完工を0年として経年で取り壊される件数が全体の半分になった年数を全体の平均寿命として算出しました。イメージを見ていただいてもお分かりのように、何らかの理由ですぐに取り壊されてしまうものもあれば100年を優に超える例も少なからず存在します。

注意したいのがこの数字は統計上のものであり物理的に65年を過ぎると使えなくなるというものではない、ということです。比較的均質的なコンクリート造の建物と異なり、木造は物理的な材木の質の良し悪しにかなり幅があるため、残存率で算出したこの平均寿命は現時点では一番参考になる数値と考えられます。

  • 木造住宅と一言でいっても、細切れの材木を接着した集成材か、木をそのまま使う無垢材かによっても家の耐久性が異なり、さらに無垢材でも木の種類や乾燥状態、樹齢などで、材木としての物理的寿命が大きく異なります。

マンションの物理的寿命は120年

マンション・アパートに多いRC(コンクリート)造の建物については、物理的な寿命つまり実質的な耐用年数として、建材であるコンクリートの耐久年数から117年ないし120年という数字が出されています。一方、上述の木造住宅と同様残存率を使って算出した平均寿命は68年となっており、耐用年数に至るまでに建て替えられる場合がいかに多いかが読み取ることができます。

RC造
推定寿命 寿命計算方法・根拠など
68年 建物の完工後、残存率(取り壊されていない建物の比率)が50%となるまでの年数
(小松幸夫教授ら・2011年調査)
117年 実際の建物の減耗度調査により算出された物理的寿命
(飯塚裕「建築の維持管理」・1979年)
120年 コンクリートの中性化が終わる年数から算出した物理的効用持続年数(≒寿命)
(大蔵省主税局・1951)
150年 同上の研究では外装仕上をした場合、耐用年数は延命できるとされた
(大蔵省主税局・1951)
RC造の耐久年数▼(開く)

鉄筋コンクリートの場合、コンクリート中の鉄筋に錆が生じることでいっきに構造がもろくなってしまいます。アルカリ性のコンクリートは外側から徐々に中性化していき水や空気を通しやすい状態になります。中性の層は年に約0.5mmずつ増えていくとされ、これが鉄筋まで達すると物理的効用持続年数、いわゆる寿命と判断されます。ただ経年後、外装の補強をすることで寿命の延長を図ることができます。逆に地震などでヒビが入ったコンクリートを放置するなどメンテナンスを怠った場合は120年も持たないことも十分あり得ます。コンクリート造のアパート、マンションを購入する場合はこうしたメンテナンスが修繕計画をもってきちんと履行されているかどうかが、決めてとなります。

結局は寿命の本質は「人為的な決定」
中古でも快適な暮らしが今後はさらに当たり前に?

中古住宅を購入する状況に立った場合、目安的な意味で住宅の寿命を把握したいというのは妥当な質問だと考えられます。こうした疑問をすっきりさせてもらうために上述のような研究データもご案内しましたが、正直なところまだ建物の寿命議論の本質的な部分まで理解したとは言い難いです。

"長持ちする家"の条件は質より意思?
築70年メンテナンス無しで住み続ける住人の心理とは?

住宅をメンテナンスすることによる家の耐久性向上を唱える説に懐疑的であった松村秀一教授は、教鞭をとる東京大学の周辺で戦災を免れたエリアの住宅を調査した中で「築70年の木造住宅に住み続けているのは建て替えブームに"ちょっと乗り遅れた"お年寄りの一人暮らしなどで、特別手入れをしているでもなく"死ぬまでは建て替えない"(=築90年は見込まれる予測)つもりのようだ」という方のエピソードに注目しています。

もちろん火災や地震、戦争などで致命的なダメージを受けなかったことや都市計画による立ち退きの必要もなかった一種の"運のよさ"も関係してくるでしょうし、こうした極端な例を持って建材・施工の質やメンテナンスの効果を否定することはできないでしょうが、例えば木造住宅を70、80年持たせようとするくらいのことは難しくないことを証明している例の一つだと言えます。これが400、500年もつ家を作ろうというのであれば建物の構造自体の話にもなってくるかもしれませんが、家を長持ちさせるという目標がせいぜい200年程度ならその秘訣といえば他でもない住人の意思以外の何者でもないのかもしれません。

リフォーム業界のサービスも充実しつつある中、古くても快適な住まいも実現可能に

先ほどの松村教授が紹介されたお宅ですが、70年も手入れをしていなければ見た目にも老朽化が進み、間取りや設備も使いにくい、寒くて空気もちょっぴりかび臭いおうちであっても驚くほどではありません。教授はこのお宅がそうした住環境であったかどうかについてまでは言及していませんが、もし「古い家に住むこと=我慢や妥協」なのであれば、どんなに200年住めますと言ったところで「とはいっても」となるのは当たり前です。

ところが近年はリフォームだけでなく、基礎構造のみ残してスケルトンにした建物をリノベーションするような業者も出てきており、建物自体が古くても十分に安全で快適な環境を確保できることが実例として増え始めています。

住宅の寿命は延長傾向にある?

こうした社会的な意識変化の推移は数字でも確認することができます。木造住宅の寿命についての項でご案内した小松教授らの研究データは2011年に行われた調査に拠るものですが、実は同様の調査は同教授らによってこれ以前に2回行われています。初回の1997年の調査では43.53年とされたこの平均寿命は2006年に54年に伸び、さらに2011年の調査では65年と、3回の調査が行われた14年の間に21.5年も寿命が延長しています。この期間中建築技術が劇的に上がったとは考えづらく、1990年代後半から世帯平均所得が下がり始めたこともありより多くの人が古い家に住み続ける方を選んでいると考える方が自然です。部分的補修を行うリフォームに加えてスケルトンリノベーションが流行りはじめ、中古住宅に新たな価値を付けて販売する業者が増えてきたのも2000年代中盤あたりからと言われています。

いわゆるスクラップ&ビルドが健常であると錯覚させるような新築優位の政策や市場も変わろうとしてきています。2012年あたりからリノベーションブームに拍車がかかってきていることや、長屋や古民家の保存に積極的な各自治体や団体が増えていること、国土交通省などを主導としたリフォーム市場活性化や住宅の長寿命化計画など、今後さらに住宅の寿命が伸びていく予測を裏付ける理由は十分過ぎるくらいです。現在は「築40年はあと何年もつか」という質問がほとんどの中古物件購入者の懸念点でしょうが、これが他でもない住人の気持ちの持ちよう次第だという考えが浸透すれば「築40年の家の残り寿命をいかに伸ばすか」という質問にすり替わっていくと考えられます。

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