電力自由化後は原発へもFITを検討

2016年の電力販売自由化に伴い、大きな問題となってくるのが原発の今後です。原発は、建設から発電までに、10年程度かかる上、5000億円もの初期投資が必要です。さらに、操業開始後も、事故による長期停止のリスクがあり、安全対策にも費用がかかります。2020年に、事業コストに一定の利益を上乗せして電気料金を定める「総括原価方式」が廃止されると、コストの回収が保証されなくなるため、電力会社は不安定でコストの大きい原発から撤退する可能性があります。

そこで経済産業省は昨年、原発で発電した電力に固定価格を定め、市場価格がそれを下回った場合、差額を上乗せして利用者に支払わせる制度案を提出しました。しかし高い固定価格は利用者の負担を増やすばかりか、原発による発電の電力が石炭や天然ガスによる発電の電力価格を上回り、産業界にも悪影響があるので、各方面から反発が生じています。このため政府では米国に倣い、原発建設コストの8割を政府が負担する案も出ています。

政府は、今夏までに策定する、電源ごとの発電比率を示した電源構成の中で、原発依存度を15~25%とする方向です。中長期的に原発依存度を維持するため、老朽原発は廃炉にするのではなく、敷地内での建替を容認する見込みです。しかしその方向性の裏づけとなるはずの、原発推進策の具体化の検討は、誰がどのくらいコストを負担するかという難題に関わるため後回しにされています。

参考