下水のバイオガスから水素生成、次世代のクリーンエネルギー

燃料油などの化石エネルギーに変わる新たなクリーンエネルギーとして水素が注目を集めています。素材となるのは下水汚泥で、国内でも燃料電池車(FCV)などに供給する取り組みが行われています。

一例としては福岡市の下水処理場での取り組みで、下水バイオガスから水素を製造し燃料電池自動車(FCV)に充填するまでの技術実証を行う施設が2014年に国費約13億円をかけて建設されました。

浄化槽から下水バイオマスを得て、膜分離装置で濃度上げたメタンを材料に水素を製造するシステムで、下水バイオガスを原料とする水素を燃料自動車へ供給する世界初の取り組みの一環です。

水処理企業のメタウォーターでは国内5カ所の下水処理場に燃料電池を置き、バイオガスを改質した水素を使って1500kWの電力を作っています。2015年までに8カ所に増設し、発電電力を2700kWに高め、燃料電池による発電能力を8割増やす方針です。

また東北大学大学院では、太陽光を利用して下水汚泥に含まれる硫化水素から直接水素を発生させる研究を行っています。バイオガスを作る必要がなく製造過程で有害物質である硫化水素を分解、無毒化する画期的な製造法です。

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長野県、浄化センターのメタンガスで発電、新電力に売電

長野県松本市では市内の浄化センターに出力315kWの燃料電池システムを導入しました。これにより、無駄になっていたメタンガスを利用して発電をすることで、新電力に高いプレミアム価格で販売することとなりました。高価買取によって、事業費4億4,000万円を売電によって回収する予定です。年間発電量としては約168kWhほどをみこんでいます。

企画の発端は、下水処理を行う際に発生する汚泥を細菌を利用して分解をすると、メタンと二酸化炭素が主成分である消化ガスが発生します。このガスを利用して細菌の動きを活性化させるために保温をしていましたが、ガスの消費は3~4割ほどにとどまっていました。そこで、燃料電池システムを導入し、残りのガスを利用した発電を始めました。
この発電によるメリットは効率が高く、メンテナンスが容易で、騒音や振動を生まず、排気ガスを発生しないということが挙げられます。さらに発生する熱も、高温水の形で再利用しています。汚泥消化槽の加温をすることのできる、コージェネレーションシステムを導入しました。

松本市には主要な浄化センターが2か所あり、両島浄化センターと宮渕浄化センターです。消化ガスの利用はまず、宮渕浄化センターで行われ始めました。宮渕浄化センターでは売電は行っていなく、センター内ですべての電力を消化しています。両島浄化センターでは、民間業者のノウハウを生かすために、プロポーザル方式を採用し、2013年9月にメタウォーターが設備建設工事を受注しました。受注当時から経済産業省の制度変更があり、消化槽を動かす電力を消化ガス発電で賄うことが必要となり、工事費用の変更や制御盤の工事などがありました。

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関西電力、大阪ガスは「下水」のエネルギーに注目

新たなエネルギーとして、都市の下を流れている水が注目を浴びています。
「下水エネ」とされるこの新しいエネルギーを活用した電力事業を展開しようというのが、関西電力そして大阪ガスです。

この下水エネは、冬になっても冷たくなりにくい下水の熱やガスを利用します。
新しいエネルギー源として期待をされている下水エネルギーはガソリンなどの化石燃料と比べて環境汚染が少なく、再生可能エネルギーの準じるエネルギーとも言えるでしょう。

下水の水温は地上の空気と比べると10から15度程度高い温度を保っていることから、それを冷水が循環しているパイプと接触させることで熱を利用するといった方法が現在は試されています。

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トヨタ、再エネの余剰や下水エネルギーを利用したCO2フリーの水素生成を検証

トヨタ自動車グループは、二酸化炭素を出すことなく、再生可能エネルギーから水素を産み出す検討を始めました。再生可能エネルギーに強みを持つグループ会社の豊田通商が中心となり、燃料電池車の普及期となる2020年代の実現を目指しています。

このような検討に至ったのは、CO2フリーの社会を目指し、地球規模の環境問題を解決するためです。燃料電池車は、二酸化炭素を直接出すことはありませんが、水素を製造する際に、ガソリン車並みの二酸化炭素が排出されてきました。そこで、豊富な水と自然なエネルギーを使うことによって、資源の枯渇を防ぎます。

しかし、水を電気分解するためには、大規模な施設が必要で、また大量の電力が必要となり、電力コストが低くないと採算に合うか厳しいという問題もあります。

豊田通商は子会社に風力発電大手のユーラスエナジーを持ち、固定価格買取制度後は太陽光発電所の建設でも存在感を出していましたが、これらの売電事業の先の一つに水素ステーションインフラ構築があるとは。
よくよく考えてみれば当たり前ですが、大企業ってすごいですね^^

ユーラスエナジーは系統容量が今ほど圧迫される以前から太陽光発電の開発を行っていましたが、そもそもメガソーラーのような大規模な案件を多く手掛けていることもあり、もともと出力抑制の可能性は想定内でした。
この、抑制されて売電できない発電分(余剰分)をうまく利用して水素生成を行えないか、という検証を今後行っていく予定です。

このほかにも福岡市では下水処理場の処理過程で出るメタンガスから水素を取り出す実証実験を九州大などと始めるそう。