「廃炉のコストは電気料金に上乗せで徴収」経産省が枠組みを設ける

電力小売りの自由化後も、従来と同様に原子力発電所の廃炉に掛かる費用を電気料金に上乗せし、全ての利用者に請求・収受する方針が、経済産業省による有識者会議にて了承されました。

経済産業省は、原子力発電所の老朽化が進み廃炉を決定した場合、それに伴う巨額費用を確実に回収できる料金制度の確立が必要との見解を示し、自由化後は、配送電会社により、送電線利用料の上乗せ分として徴収を行う枠組みを設けるとのことです。

経産省、電力小売り自由化後にむけ直属の監視組織設置

経済産業省は16日、2016年4月からの電力の小売りの全面自由化を控え電力取引監視組織の設置を決めました。

電力市場監視委員会(仮)を15年度内に設置し、大手電力会社が新規事業者に対しての不正行為の是正や悪質業者による契約を防ぐ事等を目的としています。

経済産業省の直属機関として強い権限を持たせるとの事です。
電力自由化により新規事業者が増大する事で価格競争が起こり料金低下やサービス向上が見込まれます。

西部電力の電力自由化戦略は「LNG火力発電を活用した電気料金低下」

西部ガスの酒見俊夫社長は、平成28年の電力自由化および29年のガス自由化に伴い、総合エネルギー企業を目指すとする同社の指針を語りました。

カギとなるLNGの火力発電所の新設に先駆け新電力参入

自由化に備えて、将来を左右する正念場の時期にさしかかっている今、27年度中に電力事業に取り組む部署を設け本格的に活動をおこなうという酒見社長。
総合エネルギー企業となるカギが、北九州市若松区に完成した大型液化天然ガス(LNG)の受け入れ設置「ひびきLNG基地」となるのだそう。
この施設の新設により大量の天然ガスを受け入れることが可能となり、最大出力160万キロワットの火力発電所建設を決断しました。
ただ同火力電力の完成は早くても平成32年度で5~6年先になります。
西部ガスではこれに先駆けて「新電力」の申請を完了させ、すでに自由化をされている企業向けの電力市場だけではなく、家庭用電力への販売もできるように準備を整えたということ。

周辺事業から本業のエネルギー分野に資本を集中

西部ガスは、食や介護などいくつかの事業経営を幅広く行ってきましたが、エネルギー自由化になる今、しばらく新たな事業は控え、本業であるガスや電力などのエネルギー分野の経営資源に集中する必要があるとしています。

企業経営上、スピード感の重視、家庭用ガス料金の値下げです。値下げをすることで、「ひびきLNG基地」が稼動したことをお知らせして、メリットをいち早く実感してもらう必要があったからです。

数年の積み上げ期間を経て電気料金数%減を目指す

巨額の設置投資のため、効果が即座に出るわけではなく、値下げ幅も小さいのは否めません、値下げは一気にできるものではなく積み重ねていくものため、数年はかかると予想されるものの、現状よりは数%安くなるとしています。

家庭用ガスだけではなく、企業向けも値下げもします。企業向けのガス販売は新規参入が予想され価格競争も激しくなる中、西部ガスを選んでもらえるような態勢を整えて行いきたいとしている。

参考

東京電力の電力自由化戦略は「顧客重視」で「業務提携によるガスのセット販売」

電気とガスの自由化に向けての準備を現在進めていると、東京電力の数土文夫会長は語ります。これまでは政府が価格を設定していましたが、自由化が始まると顧客が電力会社を選ぶ時代になります。すなわち、顧客に選ばれなかった会社は生き残っていくことはできないということです。
そして、世界の潮流から見ても、ガスと電気をセット販売していくことは今後の必須課題となることでしょう。これは新たな試みになるため、世界ではどのように取り組んでいるのかを詳しく調査している段階だということです。今の段階で言えるのは、ガスと電気の融合は業務提携によって行われることになる見込みだということでした。

福島第一原発事故の賠償をしながら、どのように経営を立て直していくのか。これからの東京電力の動きに注目が集まります。
参考

東京ガスの電力自由化戦略は「電力・ガス・通信のセット販売」

東京ガスは2016年4月から実地される予定の電力小売り全面自由化に向けて新たなプランを発表しました。それは電力とガス、通信などのサービスをセットで販売するというものです。
電力の需要の4割は家庭向けのものなので、東京電力などに対抗するためには、家庭向けのガスを供給するだけでなく電力や携帯電話を含めた光熱費をまとめることによって割引料金を提案できるのではないかという考えです。

東京ガスは現在でも小売業者や工場などに電力を販売しています。発電能力は130万kWあるのですが、それを2倍超の300万kWに拡大する計画を立てています。
電力小売りの自由化に向けて異種業種との提携なども視野に入れて考えているようです。

中部電力の電力自由化戦略は「首都圏などへの域外電力供給も検討」

中部電力の水野社長はインタビューで中部電力の子会社を通して法人向けに行っている首都圏への電力供給について、本体での域外への電力の供給を「余力があれば検討する」と述べました。
当面の域外供給は子会社(ダイヤモンドパワーとシーエナジー)が担うものの中部地域の需要の安定と供給の確保ができれば本体でも電力供給を行う可能性に言及しました。今春にも川内原発の再稼働の可能性があり、西日本への電力の応援供給量の減少が見込まれることから首都圏への電力供給を行いやすくなるという考えを示しました。

東京電力と昨年10月に締結した液化天然ガスなどの包括協定については、「入手情報量が増えた。新たな調達に向けて両者で動いている。」と述べ、手ごたえを示しました。一方、浜岡原発周辺の7市町との安全協定締結には意義を示し、原発再稼働の自治体の事前了承の必要性は提案があれば検討すると述べるにとどめ、原子力規制委員会への安全審査の申請時期は「14年度中」としました。

九電の電力自由化戦略は「原発の安全性確保強化と、競争精神の醸成」

九州電力・瓜生道明社長は昨年10月29日、原子力規制委員会の会合に出席し、田中俊一委員長と意見交換を行い、原発の安全性にゴールはないという事実を受け止めながらも、平成27年度中に原子力規制委員会の安全審査に合格した川内原発1、2号機の再稼働を着実に進めていく姿勢を示しています。

九州電力は電力の安定供給が強く求められている電力会社のひとつであり、原発の再稼働を行うことは不可欠であるため、安全対策を経営の最重要課題と位置づけ、安全を維持すべく対策を行っていく方針です。

また、原発の安全性のみならず、九州電力という企業全体を維持していくために、黒字化を実現する必要があり、そのために川内原発1、2号機の再稼働のみならず、玄海原発3、4号機を含めた合計4基の再稼働を目標に据えています。

原発を再稼働する理由としては、原発の代替となる火力発電燃料を海外から調達することは非常にコストが高いのみならず、資源の乏しい日本においては安定性に欠けており、一定量のしっかりした電源を持つことができないからという理由を述べています。

原発再稼働と同時期に取り組むべき課題としては、平成28年にスタートする電力事業の全面自由化に伴う対応です。九州電力の九州地域の電力需要を独占している現状が大きく変化するため、西部ガスなどといった会社なども九州の電力需要に対し、火力発電所などを建設するなど対応を進めています。
現状のままでは変化する電力需要に対応することができないため、電気エネルギーのみならず他社との協力を踏まえた上でエネルギー全般を供給するという形で会社を維持していく必要があります。
九州電力の強みである長い電力事業の歴史で培ったノウハウを生かしていく必要があります。

参考

先立つ新電力切り替えの実情と、独立型系統の未来

2016年には電力の小売自由化も始まりますが、これによって未来の電力構造はどのように変わるのでしょうか?

半歩先を行く電力利用をする自治体と個人について特集した2014年12月14日の記事を元に、未来の電力構造をちょっとだけ考えてみようと思います。

自治体による脱電力会社

群馬県で自治体による全国初の新電力「中之条電力」設立

地方自治体で、脱大手電力会社の動きが高まっています。昨年の9月には、群馬県中之条町が全国で初めて、新規の電力事業に参入し「新電力」を設立し、今も大きな注目をあびています。

中之条町では「電力の地産地消」のため、自然エネルギーを推進するとして条例を制定した後、町と新電力「V-power」とが共同出資して一般財団法人「中之条電力」をたちあげました。
中之条町には3つのメガソーラー発電所があり、町内の公共施設の需要を十分満たせるだけの電力供給が見込めます。中之条電力は、町内の公共施設に直接売電しています。現在、中之条町では東京電力から電気を購入していた頃よりも年1,000万円の経費削減を実現し、中之条電力の売電による利益は個人宅の太陽光パネルへの補助金に活用されてきました。

結果として、今や個人宅に設置された太陽光パネルの合計は1000kW(1MW)を超え、再エネを活用した地方復興の好例として全国からの視察が絶えない状態です。

これまでの売電先を変更し収入増につなげる

新電力の活用方法は電気代削減にとどまりません。
固定価格買取制度以前は再エネ設備による発電電力の買い取りに関する制度はなく、電力会社と任意の単価による売買が行われていました。(太陽光発電の売電単価推移

一方、固定価格買取制度以前に稼働した再エネ設備を持つ地方自治体の中には売電先を新電力に変え、固定価格買取制度を新たに適用させることで増収につなげる動きが出てきています。

東京都では猪瀬直樹前知事の「脱東電」の指示のもと、都内三か所の水力発電施設による電気の売電先を、東京電力から新電力の「エフパワー」へ切り替えました。

これにより売買収入は年間約17億円と、7割もの増収に成功しました。契約中であったために、東電に違約金約14億円を支払うことになりましたが、その犠牲を払ってでも新電力へと切り替えることに大きな価値を見出していたのでしょう。

現在、大手電力会社は電気料金値上げや、原発再稼働に邁進していますが、そのような動きは、東日本大震災以後地方自治体や一般家庭に与えた大手電力会社への不信感に拍車をかけてしまっていると言えるでしょう。

こうした自治体による新電力への切り替えはこうした消費者による脱大手電力会社/脱原発意識を象徴するという見方もあります。
他にも昨年一月末には神奈川県が公共施設の9割を新電力に切り替えたと公表し、長野県や長崎県も新電力からの電力購入割合が高くなっています。


売電をしないことによる究極の脱電力会社

ここまでにご案内したのは、自治体による新電力の活用の実態。契約先を従来の電力会社から変更するという点では脱電力会社の動きの一つとも言えますが、新電力に売電する際には電力会社が持つ従来の送電網を使っており、実は完全なる脱電力会社ではないとも言うことができます。

記事には売電制度さえも利用せず、 蓄電池(バッテリー)に貯めた電力で完全なる自給自足をしながら生活する方々の実情も紹介されていました。

ここで紹介されていた「自給エネルギーチーム(自エネ組)」という独立型太陽光発電システムの施工を行う団体は、全国で29か所で独立型太陽光発電を設置してきたといいます。

「沢水を引いて、薪で調理して。夜はランプの生活」

という生活は現代の暮らしに慣れた私達からすると考えられないかもしれませんが、

「すごく楽しかったんですね。生きる喜びを感じました」

と語る自エネ組の共同設立者木村俊雄さんはなんと元東電職員。
「原発に未来はない」と直感したことが、この組織に関わる動機にもなったのだそう。


未来の電力構造は?

電力自由化によって需要者は従来の電力会社以外にも購入先を選ぶことができるようになります。前半の自治体のような例をそのまま個人レベルに落とし込んだ例が2016年以降は増えることは、誰もが予想できる未来です。

これに加えて後半でご紹介したような完全独立型電力消費の形は、太陽光発電のコスト(kWhあたりの価格)が系統電力以下に下がった今、(グリッドパリティ)蓄電池の普及促進でさらに広がる可能性も秘めています。

記事では

オフグリッド生活を始めると、自然に寄り添う暮らしになるのかもしれない

と締められていますが、人々の消費傾向が多様化し、より本質的な意味で自分に心地いい消費の仕方が見直されてきていると感じる昨今、こうした独立型(オフグリッド)発電設備も根強く普及を進めるとみるのも自然ではないでしょうか。