電力自由化後は原発へもFITを検討

2016年の電力販売自由化に伴い、大きな問題となってくるのが原発の今後です。原発は、建設から発電までに、10年程度かかる上、5000億円もの初期投資が必要です。さらに、操業開始後も、事故による長期停止のリスクがあり、安全対策にも費用がかかります。2020年に、事業コストに一定の利益を上乗せして電気料金を定める「総括原価方式」が廃止されると、コストの回収が保証されなくなるため、電力会社は不安定でコストの大きい原発から撤退する可能性があります。

そこで経済産業省は昨年、原発で発電した電力に固定価格を定め、市場価格がそれを下回った場合、差額を上乗せして利用者に支払わせる制度案を提出しました。しかし高い固定価格は利用者の負担を増やすばかりか、原発による発電の電力が石炭や天然ガスによる発電の電力価格を上回り、産業界にも悪影響があるので、各方面から反発が生じています。このため政府では米国に倣い、原発建設コストの8割を政府が負担する案も出ています。

政府は、今夏までに策定する、電源ごとの発電比率を示した電源構成の中で、原発依存度を15~25%とする方向です。中長期的に原発依存度を維持するため、老朽原発は廃炉にするのではなく、敷地内での建替を容認する見込みです。しかしその方向性の裏づけとなるはずの、原発推進策の具体化の検討は、誰がどのくらいコストを負担するかという難題に関わるため後回しにされています。

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東京電力と中部電力が電力自由化に向け共同運営会社設立

2015年2月9日に、東京電力中部電力と共同出資を行い、共同運営会社を設立する契約を行いました。
東京電力は、電力の小売り全面自由化に備えて、火力発電と送配電、小売の3事業を2016年4月に独立させる計画があります。その計画に先立つ形で、中部電力との共同運営を開始し、中部電力の火力発電部門を取り込むことになりました。今後、中部電力との提携範囲は、送配電まで拡大することが予定されていて、後々には中部電力のほかにも東北電力なども加わって広域にサービスを拡大させる計画です。更には小売に関しても、ガス会社や石油会社、通信事業者、流通業などの企業と連携して、全国にサービスを展開させる計画です。

これらの経営方針をまとめた、『新・総合特別事業計画』が発表されて、火力発電・送配電・小売の部門ごとの成長戦略が明確になりました。
新会社は、2015年の4月中旬に、東京電力と中部電力の折半出資で設立が行われます。この新会社の設立により、電力発電・送電・小売のコストを削減して、原子力発電設備を稼働させない状態でも、電気料金を値上げせずにする見込みになりました。今回の経堂会社の設立は、電力業界の大きな一歩で、これを機に他の電力会社や他の大手ガス会社などの提携などの動きが活発化されることが予想されます。電力会社業界では、収益の悪化に苦しむ、関西電力・東京瓦斯・東邦ガスなどの大手会社の動向に現在注目が集まっています。
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2020年4月までに送電分離を義務付け、追ってガス市場も

政府は、電力市場改革について新たな動きを見せました。東京電力関西電力に対して「2020年4月」までに送電部門の分社化を義務付ける方針を掲げました。

また同時に、ガス市場改革についても、17年の家庭向けガスの自由販売化に続き、東京ガス関西ガス東邦ガスに「2021年から2023年」までにガス管部門の分社化を義務付ける方針も掲げました。

これらの分社化は、エネルギー市場の販売の自由化に合わせ、新規参入事業を公平に扱う体制を整えるためです。

東京電力ら4社ら送電部門などで提携決定

東京電力北海道電力東北電力中部電力の4社が2015年度から電線や電柱を共同調達する送電線部門の提携を決定しました。将来的に電気料金が引き下げに繋がる可能性もあります。
4社は送配電網でも協力し、北海道や東北で再生可能エネルギーを利用して作られた電気を首都圏に送ることも検討しています。

電柱や電線などの部品調達や工事の発注は現在は各電力会社が個別に行っていますが、随意契約が多い為コストが高いという指摘があり、これを4社で提携して共同調達することにより、コスト削減を目指します。
東電は、火力発電の燃料の液化天然ガスを中部電力と共同で調達する予定をしており、発電コストの引き下げに繋がりそうです。

各社の提携の背景となっているのは、2016年からの電力小売の自由化を円滑に進めたい政府の目論見があるようです。大手4社の送電線の運営コストを引き下げることにより新規の参入をしやすくし、電力市場を活発化しようという政府の思惑がうかがえます。

東京電力、スマートメーターを新たに190万台設置

東京電力では、2014年4月にスマートメーターの設置を多摩地区から開始して、東京以外の地域を含め年度末までに合計190万台の設置計画を進めています。
まず先に、多摩地区の家庭に設置したスマートメーター約14万台を対象に、新しいサービスを開始します。

スマートメータと電力会社のシステムをつないで機能を実装する新サービスは2つで、引越をする場合、検針に立ち会わなくても移行処理が完了すること、停電になった場合でもスマートメーターの通電状況を遠隔で確認することによって、早く復旧させることが出来るという特定の状況に限っての場合だけとなります。この2つのサービスに続いて7月からスマートメーターを使用して電力使用量の見える化サービスの開始をする予定です。このサービスは多摩地区だけではなく、スマートメーター設置済みの家庭が対象となり、パソコンやスマートフォンで毎日使う電力使用量の詳細データーを確認することが出来ます。

2016年4月から始まる電力の小売全面自由化に向けて、他の電力会社もサービス開始の準備を進めています。東京電力もスマートメータを活用した新しいサービスを提供することで、顧客の囲い込みを図ることが最も大きな狙いとなります。

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経産省、新設の「電力市場監視委員会」を最強の8条委員会に

経済産業省は、電力自由化に伴って新たに設置する規制機関「電力市場監視委員会(仮称)」に従来に無い権限を持たせ”最強の8条委員会”にする方針を発表。

経済産業省に意見具申を行うことができるうえ、卸・小売市場や送配電部門の行為規制の監視が単独で行える権限を持つことになります。
専属の事務局は、数十人規模となる見込みで、『電気事業者から独立』・『電気事業者と肩を並べるほどの専門性を持つ』・『規制のとりこにならない』の3つの特徴を持つ組織であるのが特徴です。同委員会は、将来の電力小売り全面自由化に伴い、電力の卸・小売市場の健全性を行う行為を監視します。

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経産省「優先給電ルール」改定で火力発電は抑制の最優先に

経済産業省は電力小売り自由化後の出力抑制について「優先給電ルール」を見直し。
これまで対象が一般電気事業者のみであった火力発電を最優先に出力抑制する決まりから、対象を新電力にまで広げ、太陽光発電などの再エネ設備の出力抑制をできるだけ少なくできるような体制に変える見込みだそうです。

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JX日鉱日石エネルギー、電力小売り自由化後は「電力事業が柱に」

JX日鉱日石エネルギー社長の杉本務氏は2015年1月20日に応じた毎日新聞社のインタビューの中で、2016年4月の家庭向け電力販売の自由化と同時に、首都圏で電力とガソリンのセット販売を開始する方針であることを明かしました。

販売は首都圏内のENEOSカード会員およそ100万人で、同社系列のガソリンスタンドやプロパンガスなどの特約店を流通経路とし、電力とガソリンの割安セット販売などのサービスを提供していく考えです。

今後は電力が柱に、今秋目標に準備を進める

杉森氏は「ビジネスの要である石油の需要が減少する今、電力事業は次世代ビジネスの柱となる」とし、今秋中にも顧客情報システムの構築を完了させると語っています。

また、同じく今秋中には通信会社との提携をまとめる方針であるとも明かしましたが、これは携帯電話と電力のセット販売などを想定してのものとみられています。

JX日鉱日石エネルギーは石油元売り最大手として知られる会社で、原油などの調達力を活かして、火力や風力による発電設備を全国で複数所有しています。その合計発電量はおよそ150万キロワットとされ、2016年4月から開始する電力事業ではこれらの電力の内自社消費を除く80万キロワットを家庭や企業向けに販売する予定です。

日立、東電ら、電力自由化後の電気事業者向けシステムで業務提携

一昨年から「情報システムサービス」に関して戦略的業務提携を進めていた日立システムズ日立東京電力の3社は昨年3月「日立システムズパワーサービス」を設立。
この新会社も含めた4社で新たに電気事業者向けの電力システムサービスを提供すると発表しました。

その名も「ePower Cloud」

新電力なども含めた電力自由化後のエネルギー業界のプレイヤーにとって、電源確保はもちろん、受給をより効率的にするマネージメントの方法の確立は必須と言えます。
今回日立システムズパワーサービスが主な事業主体となって提供される「ePower Cloud」は、発電実績管理、ばい煙排出量管理、メーターデータ管理、料金計算等の業務システムの他、人事労務、経理等の経営管理システムをクラウドサービスで提供されるというもの。

海外展開も計画

2015年3月にまずは国内中心にサービス開始をしていきますが、今後は需要が高まることが予想される海外市場にも積極的に目を向けていくとしています。

また自由化による新電力への顧客流出を少しでも食い止めたい東京電力ですが、この取組みを通じた競争力の強化も狙っているということです。

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電力小売り自由化に向け、2015年末までに各社準備を進める

電力小売りの自由化が2016年に実施される予定であり、経済産業省も制度設計の検討・関係政省令の整備を15年前半に進める予定をしています。

電力小売りが自由化されると事業区分が無くなりすべて対等な条件となりますが、大手の電力会社では電源設備が豊富なため有利であるという点については変化はなさそうです。

プレイヤーが出揃う2015年後半からは各社企業向けサービスで肩慣らし

そのため顧客を持つ事業者と設備を保有する事業者が提携して大手に対応するという状況が進みそうです。電力小売業者は自由化に伴って登録制となりますが、新たに参入する業者がシステムを整えたり販売体制を確立するには半年は要するため合従連衝のピークは15年前半となる見通しで、登録が始まるとみられている15年7月頃には新規業者が出そろうとみられています。

家庭や小規模な事業所など契約電力が50キロワット未満の電力販売が大手電力会社に限らず開放されることになりますが、家庭向けにとどまらず15年後半には企業向けの新しいサービス等、自由化の足掛かりとなる事業展開が見られると予測されます。

新電力側から期待されるのは「セット販売」などの新サービス形態

実際すでにそうした動きも見られ、ソフトバンクグループのSBパワー(東京・港)が全国展開しているメガソーラーで発電した電力を大口顧客向けに販売し始め、開始から5か月ほどですでに約100拠点の契約が進んでいます。
ソーラーパネルを設置している家庭の電力を1円上乗せして買い取るというサービスを開始し、既存の顧客はもとより新規顧客の開拓も見据えているのです。

また他に通信と電力の組み合わせやガス・電機・自動車などの他分野でも電力との融合を考えた新規サービスの準備が進められています。

電力会社は域外進出を中心に準備を整える

大手電力会社ではエリア外でも電力販売を行うなどの事業展開に乗り出しているところもあります。このように事業者同士の競争で新たなサービスの登場や需要する側が電力を選べる仕組みなどがたらされるとともに、企業の立場としては電力コスト削減に取り組むことになりそうです。

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